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レトロンバーガー Order 82:「夢幻戦士ヴァリス」のビキニアーマー,実は今でも息づいているのではと「ELDEN RING」クリア後に思った編
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印刷2022/04/23 16:00

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レトロンバーガー Order 82:「夢幻戦士ヴァリス」のビキニアーマー,実は今でも息づいているのではと「ELDEN RING」クリア後に思った編

画像集#002のサムネイル/レトロンバーガー Order 82:「夢幻戦士ヴァリス」のビキニアーマー,実は今でも息づいているのではと「ELDEN RING」クリア後に思った編

「ああわが魂よ,不死の生を求めるなかれ。
それよりも可能の領域を極めよ」

 古代ギリシャの詩人・ピンダロスは,戦車レースの大会で優勝したヒエロン1世を讃える歌の中で,こう述べました。英訳から「Do not crave〜」や「Do not yearn〜」などとバリエーションがいろいろある詩なので,どれだけ古代ギリシャの原文に沿っているのか分かりませんが,要は「ただ死なないだけなんてくだらねえ。それよりも何をやってやったかっしょ!」ということですね。

 そう,実績やトロフィー,そして達成感のためならば不死なんてつまんでポイです。そんなわけで,ついに「ELDEN RING」PC/PS5/Xbox Series X/PS4/Xbox One)をクリアしました(全ボス撃破)。興味本位であちこち首を突っ込んでいたら,例のカタストロフなENDになりましたが。

画像集#006のサムネイル/レトロンバーガー Order 82:「夢幻戦士ヴァリス」のビキニアーマー,実は今でも息づいているのではと「ELDEN RING」クリア後に思った編

 久々に「ガッツリとしたソウル系」のテイストで,いやあ楽しかったですね。とはいえ,筆者は「BloodborneSEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」PC / PlayStation 4 / Xbox One)もトロコンしたんだから慣れたもんさね」と甘く見ていたため,そのガッツリぶりに苦戦を強いられました。Bloodborneはリゲインの仕様もあって“攻める”パートが明確でしたし,SEKIROでは適切に反応すれば敵の攻撃を無効化できましたが,本作ではガン攻めしてくる敵に対して「避けて,殴る」を徹底しなければいけませんし,攻撃アクションや戦技も多彩です。

 ティシー姐御という最強スーパーヒロインがいてくれたこともあり,ゲームプレイ自体は楽しめたものの,詰めが甘いところは散見されます。イベント進行周りの設計は芳しくなく,こと筆者は「手詰まりにならない限り攻略情報は調べない」かつ「初回は自力攻略」主義ですので,例えば遺灰を強化できる状態にする方法を知ったのは累計プレイタイムが100時間を超えた頃でした。みんなのアイドル・パッチ君は顔すら見ていません。円卓の大祝福へのインタラクト方法に気付いたのはラスボスを倒した後でした。ナラティブの導線が素晴らしかったBloodborneと比べると,見劣りは否めません。

 とくに「どうせいっちゅうねん」と思ったのが火山館です。ぶらぶら歩いていたら着いちゃいましたし,そしたら「招待もしてねー奴が来んじゃねーよ。テメーの肩の間にはオツムじゃなくて糞壷でも乗っけてんのかコラ」的なこと(誇張)を館主に言われて,そのまま辺りを探索していたら何かにょろにょろしたデカブツがいたので,ぶっ飛ばしてみたら館の人が全員去ってしまいました。たぶん皆さん,二次会でカラオケにでも行かれたのでしょう。火山館からカラオケ館へ。

 正直なところ,ELDEN RINGという「容れ物」の出来はいいですし,アクションも熟(こな)れた設計なのですが,詰め込み方が整理されているとは思えません。「だからダメだ」という話ではなく,これは“オープンフィールド”設計(この辺りの解説などはマトモなプレイレポートをご照覧あれ)に挑戦したからこその,必然的な反動と言えます。

 あくまで筆者の持論ですが,ゲームを含む各種カルチャーは「革新,洗練,派生」を繰り返して進歩していくものです。例えば「ドラゴンクエスト」シリーズは,革新的な初代から,より物語性を増した「〜II」,プレイの幅が広がった「〜III」と進歩していきました。そして「〜III」を設計的な下敷きとして,“ストーリーを楽しむもの”として革新された「〜IV」,仲間に関する要素を洗練させた「〜V」,冒険する世界の奥行きを広げた「〜VI」と改めて発展していきます。

 「メタルギアソリッド」は革新的な初代(それ自体が「メタルギア」シリーズからの派生でもある)から,グラフィックスやゲームシステムを強化した「〜2」,カモフラ率や食料などの副次的な要素を展開した「〜3」となりました。「ストリートファイターII」は革新的な初代から,ブラッシュアップの「〜II’」および「〜II’ TURBO」,新キャラや新システムで横幅を広げた「スーパー〜」および「スーパー〜X」となりました。

 「DARK SOULS」シリーズは,前段的な「Demon's Souls」があったり新作の要素が旧作のハイスペック版にフィードバックされたりと変則的な部分が多いものの,おおよそ「基点としての初代→転送やマッチングを改良した〜II→特化派生のBloodborne&SEKIROと,戦技やFP制の導入で次世代のシステムを目指した〜III」という流れとなっています。

 これで言うと,ELDEN RINGは「革新」の段階。まだ「洗練」には至っていないわけです。これもあくまで筆者の主観ですが,3年前には「『DEATH STRANDING』は革新的なタイトルだが,洗練の先にあった『SEKIRO』の方が,ゲームの評価という俎上では勝る」という形で現れていました。

 繰り返しになりますが「だからダメだ」という話ではありません。ELDEN RINGもDEATH STRANDINGも,ゲームとしては言うまでもなく上出来であり,しかも「より上に行ける」というポテンシャルを秘めているという話です。

 「容れ物」はできた。中身はちょっと物足りない。じゃあ,次に入れるのは――? 極めて気の早い話ではありますが,「オープンフィールドなソウル系」の“次”が楽しみで仕方がありません。

 Order 78から始まった「ELDEN RING」プレイ日記の特別編・エルデンバーガー。最終回はそんな感じでお開きです。

 はい,嘘です!!!!!!!


でっかくて元気な生きてるかしこいシステム(ディック)


画像集#007のサムネイル/レトロンバーガー Order 82:「夢幻戦士ヴァリス」のビキニアーマー,実は今でも息づいているのではと「ELDEN RING」クリア後に思った編
 本連載は4Gamerにおける“悪夢の辺境”みたいなもんですので,ちょっとした記事にできるだけのテキストをボケ倒しで消費するくらいは平常運転です。で,ELDEN RINGが一段落したので手を付けたのが,エディアから2021年12月に発売されたNintendo Switch用ソフト「夢幻戦士ヴァリスCOLLECTION」なんですよ。

 「夢幻戦士ヴァリスCOLLECTION2」のクラウドファンディングがサクセスしたので,「そういやアレ積んでたな」と思い出しまして。まあ11年前に「夢幻戦士ヴァリス COMPLETE PLUS」を買って,過去にもそれなりに遊んでいたんですが。


 「夢幻戦士ヴァリスCOLLECTION」にはPCエンジン(SUPER CD-ROM2およびCD-ROM2)版の「夢幻戦士ヴァリス」「ヴァリスII」「ヴァリスIII」の3タイトルが収録されていて,単品版(ダウンロード版のみ)も別途販売されています。開発はD4エンタープライズで,ゲーム自体は同社のプロジェクトEGGにて配信されているものと同じですが,ゲームの状態を少し戻せる“巻き戻し”機能(約2秒ごと・30秒まで),任意のBGMを再生できる“サウンドモード”,カットシーンのみを観られる“ビジュアルモード”などが搭載されていて,「ちょっと触りたいな」と思ったときに楽しみやすい設計となっています。

 ちなみに「夢幻戦士ヴァリス」は,もともとPC-8801(mkIISR以降)向けに開発されたゲームで,PCエンジン版(および「〜COLLCTION2」に収録されるメガドライブ版)はリメイクにあたるもの。後発タイトル相応にゲームシステムやアニメーション表現などが洗練されているので,「〜COLLECTION」で初めてヴァリスシリーズに触れる人は,「II→III→I」の順番でプレイするか,まずプロジェクトEGGでPC-8801版の「夢幻戦士ヴァリス」をプレイしてみると馴染みやすいかもしれません。

アプリ版が配信された当時のプレスリリース
画像集#001のサムネイル/レトロンバーガー Order 82:「夢幻戦士ヴァリス」のビキニアーマー,実は今でも息づいているのではと「ELDEN RING」クリア後に思った編
 なおMSX版の「夢幻戦士ヴァリス」もプロジェクトEGGで配信されていますが,これはステージの削減やカットシーンの省略が行われた簡易版です。また,徳間書店インターメディアから発売されたアレンジ強めのファミリーコンピュータ版が存在するものの,これは未配信。あと筆者は最近になって知ったのですが,2005年にバンダイネットワークス(2009年にバンダイナムコゲームスが吸収合併)からVアプリ(2006年10月以降はS!アプリ)でのリメイク版が出ていたとか。Vアプリ版,ちょっと気になりますね……G-MODEアーカイブス+か何かでワンチャン復活が無いものでしょうか。

 ついでに「ヴァリスII」もいろいろあり,初期PC版(MSX2 / PC-8801 / PC-9801)はPCエンジン版と並行開発のためシステムやシナリオが異なっていて,後期PC版(X68000)はそれにグラフィックスのリファインやサウンドおよびボイスのリニューアルを施したものです。また,メガドライブ用ソフト「SDヴァリス」(「〜COLLECTION2」に収録予定)は,初代でなく「ヴァリスII」をアレンジ移植したもの。うーん,ややこしい。

 「ヴァリスIII」のメガドライブ版とPCエンジン版も,カットシーンや音声の差が大きいですし,PCエンジンのみの「ヴァリスIV」(「〜COLLECTION2」に収録予定)と,そのスーパーファミコン向けアレンジ移植版「スーパーヴァリス 赤き月の乙女」も,けっこうな別物です。良く言えば,当時のゲームハード/PCの違いを体感しやすいシリーズですね……良く言えば。

 まあ,細かいことはいろいろありますが,とりあえず「夢幻戦士ヴァリスCOLLECTION」は“おいしいとこ取り”という内容になっていますので,これをプレイすれば基本的なトリロジーは体験できます。ただゲーム自体は,シリーズを通して「大味ながらシビア」なデザイン。良くも悪くも“1990年頃のゲーム”であり,ELDEN RINGみたいに「クリアした! 語りたい!」となるかは微妙なところです。

 そんなゲームが,なぜクラウドファンディングで目標額300%オーバーの約1567万円を集めることができたのか。

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 エディアは本日,Switch用ソフト「夢幻戦士ヴァリスCOLLECTION」のパッケージ版を,2021年12月9日に発売すると発表した。クラウドファンディングを経て登場する本作は,PCエンジン向け「夢幻戦士ヴァリス」「ヴァリスII」「ヴァリスIII」の3タイトルを,Switch向けに復刻したものだ。

[2021/08/19 16:28]

 やっぱビキニアーマーですよね。


あっちゃーの転生(ディック)


 というわけで,今回はビキニアーマーの話でやっていきましょう。ここから本編です。“メンシスの悪夢”みたいなもんです。

 1980年代,「美少女が魅力的な衣装で無骨な武器を持って戦う」という“あり得なさ”で人々を驚かせ,支持を集めたビキニアーマー。近年も見なくはないですが,今では“あり得なさ”の温度感が変わり「現実的にはこんなのナンセンスなんだけど,見た目的に楽しいじゃん?」的に採用されているケースが多く,国内のコンテンツで「自然体のビキニアーマー」を見ることは,まずありません。10年くらい前なら韓国製オンラインゲーム,数年前なら中国製オンラインゲームに「露出度の高い鎧」が散見されましたが,いずれも規制の強化傾向が強い地域ですので,今後の見通しは暗いでしょう。

 なぜビキニアーマーは前時代的なものとなったのでしょうか。まず,それが確立された背景や,普及の様子をざっくりまとめてみましょう。

※以下,アーマーの有無を問わずSF/ファンタジー作品に登場する架空のビキニを「ファンタジービキニ」と総称する。

  • ホラー/SF/ファンタジー小説の総合誌「Weird Tales」(1923年〜)がセクシーな表紙アートを積極的に採用。
  • 他のパルプマガジンも追随(ファンタジービキニ概念の醸成)。
  • Weird Talesでロバート・E・ハワードによる「Conan the Barbarian」(蛮人コナン)シリーズの掲載が始まる(1950年)。
  • ビキニアーマー系のSF映画「Barbarella」(邦題:バーバレラ)公開(1968年)。原作は同名のフランスの漫画(1962年〜)。
  • Marvel Comicsがライセンスを取得し,コミック版「Conan the Barbarian」を刊行(1970年〜)。
  • Conanコミックのシリーズ作品「The Savage Sword of Conan」で“ビキニアーマー姿のレッドソニア”が確立(1974年)。
  • SF/ファンタジー漫画の総合誌「Metal Hurlant」(1974年〜/フランス)および同誌の英語版「Heavy Metal」(1977年〜/アメリカ)が,ファンタジービキニのアートを積極的に採用。同誌のアートは,寺沢武一氏や大友克洋氏に大きな影響を与えたと言われている。
  • SF映画雑誌「スターログ」日本版(1978年〜)でSF/ファンタジーのアートワークが国内に広まる。
  • 「週刊少年ジャンプ」で,寺沢武一氏による「コブラ」の連載がスタート(1978年。読み切り版は1977年)。
  • 実写映画版「Conan the Barbarian」(邦題:コナン・ザ・グレート)公開(1982年)。高露出の鎧をまとった女盗賊・ヴァレリアが登場。
  • 「週刊少年サンデー」で,高橋留美子氏が「うる星やつら」にファンタジービキニ着用キャラクター・弁天を登場させる(1979年)
  • 「週刊少年チャンピオン」で,手塚治虫氏が「プライム・ローズ」の連載をスタート(1982年)。
  • DAICON FILMが「Daicon IV Opening Animation」を公開(1983年)。バニーガールがファンタジー的な剣に乗ってSF世界を飛び回るアニメーション。
  • 国内のSFファンダム界隈で起こったロリコンブームを受けて,アダルトOVA「SF・超次元伝説ラル」(「くりぃむレモン」シリーズ第3作)が発売される(1984年)。
  • 後続のアダルトOVA「ドリームハンターレム」および,同作の好評を受けて制作された全年齢版「ドリームハンター麗夢スペシャルバージョン 惨夢、甦る死神博士」が発売(1985年)。
  • PC-8801版「夢幻戦士ヴァリス」が日本テレネットから発売(1986年)。
  • アーケードゲーム「アテナ」がSNKから発売(1986年)。
  • ファミリーコンピュータ版「アテナ」がSNKから,同じく「夢幻戦士ヴァリス」が徳間書店インターメディアから発売(1987年)。
  • 特撮Vシネ「スターヴァージン」およびMSX2向け同名ゲーム発売(1988年)。

(一部参考:三才ブックス「ファンタジー資料集成 幻獣&武装事典」/著:森瀬 繚氏)


 こんな感じで,一般的に“ファンタジー世界のビキニアーマー”が確立されたのは,アメコミ「Savage Sword of Conan」だとされています。その原作小説「Conan the Barbarian」が舞台とするのは1万2000年前,大洪水でアトランティス大陸が水没した直後のハイボリア時代です。1万年と2000年前なら,あ・い・し・て……ではなく,現実では後期旧石器時代の末あたり,ゲームで言えば「ファークライ プライマル」の頃,もしくは「エルシャダイ」(1万4000年前)のような神話の時代で,人類は青銅も農耕も騎馬も発明できていません。ELDEN RINGで言えば,恐らく巨人や古竜の全盛期でしょう。この辺りは“石器時代ファンタジー”,もしくは“神話時代ファンタジー”と言えます。

 ただ石器時代を舞台にリアリズムを求めてしまうと,複雑な背景設定やシナリオ展開が困難になりますし,武器が石斧や棍棒というのもカッコ付きません。そこで映画版やゲーム版の「Conan the Barbarian」では,鉄製の武具があったり人々が服を着ていたりと,おおよそ紀元前1〜2000年くらいのテクノロジー水準(を大幅に誇張したもの)となっています。これは“(石器時代をベースとした)古代ファンタジー”と言えるでしょう。ELDEN RINGで言えば,素性:勇者や,ネフェリ・ルー的な文化圏です。


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 スパイク・チュンソフトは本日,オープンワールドサバイバルアクションゲーム「Conan Outcasts」において,追加DLC「鋼の秘密」の配信を開始した。このDLCでは,映画「コナン・ザ・グレート」に登場したアイテムや,劇中の英雄たちと同じ戦化粧などが追加される。

[2019/05/31 15:46]

 アーノルド・シュワルツェネッガーさんの出世作として知られる映画版「Conan the Barbarian」が公開されて数年後,日本のゲーム市場で古代ファンタジーのちょっとしたブームがあり,「アルゴスの戦士」(1986年/テクモ)や「ラスタンサーガ」(1987年/タイトー),「ゴールデンアックス」(1989年/セガ・エンタープライゼス)といった半裸マッチョ(一部,ファンタジービキニの美女も)の暴れるゲームが各社からリリースされます。また,「ドルアーガの塔」(1984年/ナムコ)のギルは14世紀に発明される全身鎧を着ていますが,元ネタであるギルガメシュは紀元前2600年頃・古代メソポタミアの人物です。

 上記リストにあるWeird TalesやHeavy Metalがそうだったように,かつてはファンタジーとSF(現代的なスペキュレイティブ・フィクションでなく,スペースオペラやセンス・オブ・ワンダー的なもの)が近い概念だったため,「ファンタシースター」(1984年/セガ・エンタープライゼス)や「ロストワールド」(1988年/カプコン)のように,SFやファンタジーと,マッチョな兄貴&セクシーな美女を兼ね備えたゲームも数多くあります。また,露出度の高い美少女が原始時代や古代ローマにタイムワープする「タイムギャル」(1985年/タイトー)や,水着状のスーツとSF的な武装をまとった美少女がモンスターと戦う「ガーディック外伝」(1988年/アイレム)なども関連性が見られるタイトルです。

典型的なSFファンタジー系マッチョ&セクシー美女の例(「KUNG FURY」より)
画像集#005のサムネイル/レトロンバーガー Order 82:「夢幻戦士ヴァリス」のビキニアーマー,実は今でも息づいているのではと「ELDEN RING」クリア後に思った編

 このように,ビキニアーマーとは“石器時代〜古代,ないしSFの影響下にあるファンタジー”の要素が強いものです。ですが現在,ファンタジーからSF色は薄れていますし,“中世ファンタジー”が主流となっています。ELDEN RINGで言ったら素性:放浪騎士や,諸々の剣士達の文化圏です。完全に死滅したわけではないものの,ビキニアーマーにとって非常に暮らしにくい環境ですが,どうしてこうなったのでしょうか。

 そのターニングポイントを確認しやすいのが,日本ファルコムの「ドラゴンスレイヤー」シリーズです。初代「ドラゴンスレイヤー」(1984年)のパッケージアートは大臀筋も眩しいマッチョな兄貴。第2弾の「ザナドゥ」(1985年)もパッケージアート(模型)は全身鎧のマッシブな兄貴で,タイトル画面では上腕や太腿を顕にした兄貴が出てきます。ですが「ザナドゥ シナリオII」(1986年10月)はタイトル画面から美青年が出てきて,第3弾の「ロマンシア」(1986年10月)なんてモロにキャラ物っぽくなってますし,MSX2版「ザナドゥ」(1987年)はパッケージに都築和彦氏のコミカライズ版のアートワークを採用しています。第4弾「ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー」(1987年)だと主人公の父が半裸マッチョだったり,第5弾「ソーサリアン」(1987年)および同作追加シナリオだとファンタジービキニ系の女性キャラクターが出てきたりもしますが,第6弾「ドラゴンスレイヤー英雄伝説」(1988年)ではJRPGに典型的な中世ファンタジーの世界およびキャラクターとなります。

 また,ウエストン/セガ・エンタープライゼスの「ワンダーボーイ」シリーズも参考になります。初代「ワンダーボーイ」(1986年4月)は裸,第2弾の「ワンダーボーイ モンスターランド」(1987年8月)は裸でスタートして道中で鎧を入手,第3弾の「ワンダーボーイIII モンスター・レアー」(1988年11月)では最初から鎧を着ています。

 1986年の初夏頃に何があったのか……正確なところは当時の開発者達に聞かなければ分かりませんが,察することはできます。恐らくエニックスの「ドラゴンクエスト」(1986年5月)が世界を変えてしまったのです。それに,ゲームにとって「強い服や鎧を着て強くなる」というのはシステム的にも表現的にも便利な要素です。

 また,ドラゴンクエストが強い影響を受けたことで知られる「Wizardry」「Ultima」の日本語版発売と,Wizardryが参考にした「Dungeons & Dragons」の日本語版発売(いずれも1985年〜),ダンジョンズ&ドラゴンズからの「ロードス島戦記」のスピンオフ(1988年〜),漫画「ベルセルク」の連載スタート(1989年〜),ライトノベル「スレイヤーズ」シリーズの刊行(1990年〜)などによって,中世ファンタジーが爆発的に普及しました。一方,半裸マッチョの暴れる古代ファンタジーは1990年頃を境に伸び悩みます。コミックや映画によるビジュアライズで広まった古代ファンタジーは,少し遅れてビジュアライズされた中世ファンタジーに取って代わられてしまったわけです。

 まあ,それらの原点であるJ・R・R・トールキンの「The Lord of the Rings」(指輪物語)は,紀元前4000〜5000年(現実では新石器時代で人類が文字を発明した頃)が舞台とされていたり,でも近世にヨーロッパへと伝わったジャガイモが言及されたりするので,「そもそも中世ファンタジー的な世界観って,本当に中世か?」と思わなくもないですが,その辺はざっくりと雰囲気で捉えましょう。設定どうこうではなく,作品のトーンで見るということです(もちろん,緻密な考証で作品の魅力が増す場合もありますが)。ドラゴンクエストシリーズなんて,スロットマシン(1898年〜)やバニーガール(1960年〜)があるのに“剣と魔法の世界”だったりしますし。

 あだしごとはさておきつ。中世ファンタジーでも「豪放磊落な女戦士」のキャラクター付けや,神話時代から継承された「神秘的な武装」の表現にビキニアーマーが使われることはありますし,盗賊や魔法使いなどのアウトローぶりを表現するためにファンタジービキニが使われたりもします。それこそドラゴンクエストシリーズで節々に見られる要素です。

 ですが,やはり古代やSFと切り離された中世ファンタジーでは,“普通の人がビキニアーマーを着ている”様子はマッチしません。逆に言うと「ビキニアーマー系のファンタジー作品を描きたい/書きたいけど,どうしても絵面がキマらない」とお悩みの人は,設定を古代とか神話とかにしてみると良いでしょう。

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[2012/04/28 00:00]

 中世ファンタジーが一般的になった今,もはやビキニアーマーは1980年代のノスタルジーに過ぎない……のかもしれませんが,改めて考えてみましょう

 先にも述べましたが,そもそもビキニアーマーが人気となったのは,常識では考えられない巨大怪獣のように,異星文明による宇宙規模構造物のように,少年が巨大な剣で世界の危機へと立ち向かうように,「美少女が魅力的な衣装で無骨な武器を持って戦う」という“あり得なさ”に驚きがあり,面白かったからです。

 この“あり得なさ”,現代ではむしろ主流ではないでしょうか。鎧ドレスを着た女騎士,背負った巨砲をぶっ放す女水兵,手足にメカを装備して空や宇宙を飛ぶSF女戦士……表現方法は変わりましたが,今では多種多様な「美少女が魅力的な衣装で無骨な武器を持って戦う」コンテンツが存在します。もちろん「それが単独のルーツ」という話ではありませんし,細かい話はキリがないので割愛しますが,大まかに表せば「アメコミで革新され,戦闘美少女として洗練され,近年のゲームキャラに派生した」という流れで現在に続いているわけです(アメコミと言っても,コミックス・コードによるアメリカ漫画業界の萎縮から,フランスのバンドデシネに注目が集まり……など,これまた長い話があるのですが)。

 つまり――ビキニアーマーが現在のゲーム市場を作ったと言っても過言ではない。

The Elder Scrolls: Arena
画像集#003のサムネイル/レトロンバーガー Order 82:「夢幻戦士ヴァリス」のビキニアーマー,実は今でも息づいているのではと「ELDEN RING」クリア後に思った編
 まあ,こうやって大仰なことを言う“あり得なさ”が面白いってだけで,実際のところ過言なんですが。

 でも例えば「The Elder Scrolls」シリーズの第1作である「The Elder Scrolls: Arena」(1994年)って,まさにアメコミ的なファンタジービキニがカバーアートで描かれていたんですよね。そんなThe Elder Scrollsシリーズがヒットせず,ハードコア系ファンタジーの土壌が作られていなかったら,ELDEN RINGだって無かったかもしれません。鵜呑みにされても困るので「あー,可能性もゼロではないねー。ゼロではないけど日本のビキニアーマー事情とは無関係だよねー」くらいに捉えていただきたいところですが。

この劇場アニメ版にも用いられたHeavy Metalのアートワークなどが,めぐりめぐって今のあのキャラクター,そのキャラクターにつながっていると考えてみると……おもろいやん?
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