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レポート記事の前編で予告(?)したとおり,本稿では少しだけ“健全”で“サービス精神”を前面に出した作品を中心にピックアップしていこう。
もっとも,健全とひと口にいってもいろいろな形がある。出展にあたって審査のない東京ゲームダンジョンにおいてはなおさらだ。
![]() 初出展時に紹介した「Inverted Angel」のチームが,新作(タイトル未定)のデモを展示していた。今回は自由記述による推理を活かした,ポイント&クリック型のアドベンチャーになるらしい |
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というわけで,後編でも「ゲームの迷宮」へとお付き合いいただきたい。
インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン12」レポート(前編)。全館制覇も見えてきた!? 過去最多となる約400団体・3フロアでの開催となった“ゲームの迷宮”を踏破!
2026年5月3日,東京・都立産業貿易センター浜松町館で,インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン12」が開催された。レポート記事の前編では,“一風変わった”作品を紹介していこう。
- キーワード:
- OTHERS:展示会/見本市
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- PC
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- ライター:高橋祐介
せれくとKiss
出展者:Enamel Arcade![]() |
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もはや説明不要なほどおなじみの概念となった“〇〇〇しないと出られない部屋”。永井乳歯氏(@nagainyu)による短編カップリングアドベンチャー「せれくとKiss」は,このテーマを“健全”に描いた作品だ。
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プレイヤーの役割は,男女6人のなかから2人を選んで密室に放り込み,あとはその状況をニヤニヤしながら(いや別に冷徹な眼差しでもいいが)観察するだけ。
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異性ペアだけでなく,同性ペアも可能で,さまざまなイチャイチャを楽しめる……かと思いきや,意外にもくすりと笑えたり,ふと考えさせられる展開も多い。
“キスしないと出られない”というフックで引き込みつつ,お互いの関係性の面白さをしっかりたたき込んでくる。
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永井氏は漫画家でもあるので,そのあたりはお手のものかとお話を聞いてみたところ「ゲームは漫画とはまた違って,ビジュアル,テキスト,音楽の総合で勝負できるのが魅力なんです!」とのこと。ゲームでは,読者のペースを徹頭徹尾コントロールする漫画とはひと味違った演出ができるという。
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会場ではひっきりなしに試遊されており,順番待ちや試遊の間,「ほほえましい」「かわいすぎる」「てぇてぇ(尊い)」といった反応が飛び交っていた。
本作は現在,BOOTHやノベルゲームコレクションなどで無料公開中だ。総当たりの15パターンを試しても1時間程度で遊べるので,気軽に閉じ込めてみてほしい。
![]() 感想を書いたハート型の付箋が並んでいるのを見て,ちょっと和んでしまった |
ノベルゲームコレクション「せれくとKiss」
https://novelgame.jp/games/show/13550
おくすりのめたね
出展者:ふたりぼっちのSolitude![]() |
主人公が真っ白な個室で目を覚ますと,目の前にはほほえむ看護師サンの姿が。彼女は「外は汚れに満ちているから,ここが一番安全なの」などと言っておクスリを差し出してくるが……。
![]() 不安しか感じない(笑) |
本作は,商業連載も持つ漫画家・wano氏(@wano49)と,作曲家・ボカロPの櫻いろり氏(@___irory)らが制作するアドベンチャーゲームだ。
wano氏は心理カウンセラーの資格も保有しているそうで,依存やヤンデレといった「定番」の描写の中にもうっすらと「本物っぽい香り」が漂う。
看護師サンが,甘夢咲りうむ氏(@riumu_amusaki)によるフルボイスなのもあり,おクスリを拒否するのもなんだか申し訳ない気持ちにさせられるのがズルい。
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状況的には,彼女の言葉が嘘であれば「監禁」されているわけだし,本当であれば主人公は「それくらいブッ壊れている」ことになる。
そういえば,なんだか看護師サンのまわりには「ちょうちょ」も飛んでいるし,壁の色もだんだん変になってきたような……。どっちに転んでも不穏で,逃げ場のないシチュエーションが強い。つよつよである。
年内予定の正式リリース時には,どんな仕上がりになるのかが楽しみだ。
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「数日くらいなら看護されたいかも?」などと思ってしまったそこのアナタ,気持ちはわからないでもない。毎日お疲れ様です。健全……いや健康が一番ですね。
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夏のしっぽをおいかけて
出展者:もえねるあめ![]() |
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少し不穏な看護の次は,純粋無垢な“健全”はいかがだろうか。UnityRoomで話題になった「秘密をさがさないで!」を手がけたチーム,もえねるあめによる続編「夏のしっぽをおいかけて」を紹介しよう。
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舞台は,イヌ族やネコ族,ヒト族が共生する世界。プレイヤーは,正体を隠して暮らすドラゴン族の少女・ティアちゃんの“唯一の友達”として,彼女の夏休み最後となる3日間の予定を組んであげることになる。
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ゲームシステムは,宿題やゲーム,サボりなどを「やることリスト」に割り振る予定表作成シミュレーションで,どんなスケジュールを組んだかによって,彼女との関係や結末が変化していく。
このあたりは,「秘密をさがさないで!」の遊びをどこか思い出させるノリだ。
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真面目に宿題をこなすか,あるいは誘惑に負けて一緒に遊びまくるか。それにしても,Live2Dで動く彼女のリアクションを見ていると,弟や妹の宿題を手伝った,遠い夏の日々を思い出してしまう……。
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Steamストアページでは,体験版が配信中だ。休み明けに,すっきりとした気持ちで学校に行けそうな結末を目指すもよし,徹底的にサボり倒すのもいいだろう。そう,勉強は夏休みが終わってもできるが,一日中遊びほうけられるのは夏休みだけなのだ。
なお,ドラゴン族というルーツを隠して生きるティアの心情を描いた,ちょっとだけ真面目でせつない展開もあるらしい。
![]() 特注品なのか,アクリルスタンドも展示されていた |
佐藤さん暇つぶしチャット.exe
出展者:双異典![]() |
「暇つぶしに,知らない女の子とチャットしてみませんか?」
そんな誘い文句にのったが最後,あなたのPCのデスクトップに侵食してくる「佐藤さん暇つぶしチャット.exe」は,チャット型ホラーゲームだ。
![]() いや困りますんで…… |
プレイヤーは,謎の少女“ミナ”と会話を続けるうちに,いつしか(実在っぽく作られた)WebサイトやSNSを使った謎解きへと引きずり込まれていく。
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画面のほうは,ブラウザのウインドウなど,プレイヤー自身の普段の環境にまで侵食しつつ,現実とネットの境界が曖昧になる演出で,自分自身がホラーの世界に迷い込んだような気分にさせてくれる。
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ミナは学校にも馴染めず,家族ともうまくいかない……などと自分のことを語りつつ,“自撮り”をエサにこちらを操ってこようとする。なにかうまくは言えないが,なんだか不自然だ。
とはいえ,こちらを操ろうとする相手は,逆にこちらからコントロールしても胸が傷まないもの。遊んでいるうちに「毒喰らわば皿まで」なんて気持ちにさせられた。
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作者のMYU氏(@myu060309)は,「これからも隣接するテーマの作品をどんどん出していきたい」と,レーベルである「双異典」(@soui_ten)の今後について“健全”に展望を語ってくれた。
Steamストアページで無料配信中なので,暇をもてあましたときなどにPCに招き入れてみてはいかがだろう。
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彼ピ・セラピー・タイピング
出展者:ピセラピ製作委員会![]() |
「タイピングゲーム」と「女の子のセラピー」という,ありそうでなかった組み合わせが興味を引いた本作。数年ぶりに再会した幼なじみの女の子が,どういうわけか情緒不安定になっていた……。そこであなたは,彼女の愚痴や重すぎる要求に対して,制限時間内に返事を選んでタイピングしていくことになる。
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キーボードで返事を打ち込む指の感覚が,「相手をしている感」や「救ってやりたい義務感」を増幅する。とはいえ,スルー気味だと彼女はさらにこじらせていく感じで,LINEや対面で「重たい話」を切り出されたとき,慎重に,かつ迅速に返事をするあの感じが味わえてしまう。
![]() いや知らんがな…… |
作者(@piserapi)によれば,「過去にインディーゲームイベントを回ったとき,ピンクと紫のネオンカラーのブースには人が集まっている法則を発見し,本作のコンセプトが思い浮かんだ」とのこと。
![]() さんざん話したあとに追いメッセージまで来た。きっと不安なのだろう |
確かに振り返ってみると,今回の記事でピックアップしたタイトルにも当てはまるフシがある……。もちろん,会場全体の色彩がネオンカラーになってしまえば,かえって目立たなくなるわけだが,興味深い仮説なので掲載させていただこう。
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娘ディフェンス
出展者:NICE STALKER'![]() |
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色彩の洪水のような会場で,いわゆるゲームらしさとは少し違う,カルチャーな匂いを放っていたのがNICE STALKER'の「娘ディフェンス」だ。
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本作は,過保護すぎる父親が,娘の成長とともに降りかかるあらゆる“障害”をハエ叩きで叩き潰すディフェンシブな弾幕ゲーム。襲い来る敵はすべて文字で,乳幼児期,児童期と娘が成長するにつれ,父親が排除すべき脅威の種類も変わっていく。
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それらは,現実の育児における困難や不安を象徴する単語群だが,劇団NICE STALKERの主宰で劇作家・演出家でもあるイトウシンタロウ氏(@ITO_Shintaro)が,実際の子育ての中で感じたものが反映されているという(笑)。
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ハエ叩きは敵を叩くだけでなく,娘をドラッグして動かすのにも使用するため,画面から受ける印象以上に難易度は高め。
しかし,必死にハエ叩きを連打し,ときに“誘拐犯”を撃退しているうちに,少なくともイトウ氏が感じていたであろう“父性”の何分の一かくらいは感じられたかも。
ステージ間にはノベルゲームパートもあるらしいが,ちょっとやそっとでは到達できないようだ。
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本作は,2026年内のリリースを目指して開発中だそうだ。娘を守り抜いた先に待つものとは……。ちなみに実際の娘さんは,いまも“健全”に,すくすく成長しているそうだ。
![]() ちなみに“誘拐犯”の文字は,娘を画面外に連れ去っていく。さらわれれば一発でアウト |
「娘ディフェンス」公式サイト
http://nice-stalker.com/musume-defense
ハイパー・ユーフォリア
出展者:わくわくゲームズ(開発:キャット・ホイ商事)![]() |
「サイケデリック広島旅情百合サスペンスホラー奇譚」。
どうにかして“健全”にこじつけようかとも考えたが,さすがにこのゲームに限っては降参だ。
本作は,80年代後半のPCゲームの空気を纏ったコマンド選択式のアドベンチャーだ。というか見る人が見れば「MSX2あたりのアドベンチャーゲーム」っぽさがよく分かると思う。
![]() 背景は,写真取り込みのモノクロ。フレーム部分は,こういう青色が多かったイメージがある |
当時をよく知る人なら「ピーチアップ」「もものきはうす(コンパイルの18禁ソフト用の名義)」などで検索すれば「……おお!」と納得していただけるかも。
それもそのはずで,グラフィックスは「GGアレスタ」など数々の作品を手掛けた小玉大合体氏が担当。広島弁監修やロケハン,写真撮影には,じぇみに広野こと広野隆行氏や,PACこと藤島聡氏が関わっているなど,ちょっとした同窓会状態だ。
![]() 2024年にリリースされた「超翼戦騎エスティーク」の顔ぶれでもある |
サウンドも“FM音源のプロ”的な名前が揃っており,その力強い音色を活かした伝奇サスペンス調(?)な曲が流れていた。
キャット・ホイ商事の代表であり,ディレクターの駒林貴行氏(@kakikukecat)は,「オープニングは曲の感じも相まって,日本テレネットさんのゲームみたいでいいんですよ!」と熱っぽく語っていた。
![]() 確かにテレネット作品の「オープニングは最高」だったが,本編が若干不安になるような例えでもある。大丈夫だろうか |
物語は,超念動力を持つ少女探偵コンビが連続殺人事件を追うというもの。埼玉から山口,そして物語の核心である広島へと舞台を移していく。
広島といえば今は亡きコンパイルのお膝元で,元社員やファンにとって聖地巡礼的な楽しさもあるらしい。
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冒頭をプレイしてみたところ,コマンド方式ながら現代のゲームらしいテンポで,どんどん進行していく。プレイ時間稼ぎの無駄な作業や,甘いフラグ管理による詰みなどはなさそうな予感だ。
リリースは2026年5月22日の予定で,プラットフォームはSteamとSwitchとのこと。
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すっとぼけお姉さんにいつも勝てない
出展者:NewfrontiaSoftware![]() |
NewfrontiaSoftwareの設立20周年記念作品として,来場者の注目を集めていた本作。その舞台は米どころの新潟だ。
いたずら大好きな中学2年生の少年あおい君が,近所のおにぎり屋さんの“みゆきお姉さん”にいたずらを仕掛けるものの……。
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お姉さんのほうが一枚も二枚も上手で,結局はすっとぼけた様子のまま超絶テクニックで「わからされて」しまう……いや「にぎにぎ」されてしまう“健全”なコメディである。
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あこがれの先生や近所のお姉さん(お兄さん)に,無茶と知りつつも気をひこうとしてしまう,そんな誰もが通過しがちな“背伸びしたかった頃”を思い出してしまう作品でもある。
作者の城雅音武氏(@newfrontia)に出展の手応えを聞いてみたところ,「ゲームダンジョン12では,過去一で試遊してもらえたかも」と教えてくれた。
![]() いたずらをしかけるため,タイミングよく操作する要素もある |
現在はブラウザで動くプロトタイプ版が無料公開されており,2026年11月にはiOS版(有料版)のリリースも予定されている。
「キュートなお姉さんに,おにぎりにされてしまいたい……」などとよぎった人はさっそく試してみよう。
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「すっとぼけお姉さんにいつも勝てない」公式サイト
https://newfrontia.com/product/itukate/
さて,前編・後編でさまざまな作品を紹介してきたが,いかがだっただろうか。密室でキスを迫られるのも,看護師サンに薬を飲まされるのも,あるいは娘にとっての脅威をハエ叩きで潰すのも。ぱっと見は“健全”というより“特殊”に見えるシチュエーションかもしれない。
だが会場で作品を試遊し,作者たちのお話を聞くうちに,いずれの作品も“健全”だと感じた理由がはっきりとわかってきた。
「作り手が,己の作りたいものを全力で作る」
「プレイヤーが,己の遊びたいものを全力で遊ぶ」
これが同時に成り立っていたことこそ,当日感じていた“健全さ”の正体なのではないだろうか。
次回,8月に開催される「東京ゲームダンジョン13」は,スタートから4周年を迎える記念すべきタイミングだ。ぜひ自分だけの“健全”を探しに足を運んでみてほしい。
![]() 「T&F」(@RoseSunCat)は,月面都市・サイバーパンク・お茶・お花と,作者の好きなものを全部詰め込んだカフェシミュレーション。その“全部入れてしまう”姿勢が,かえって潔く感じられた |
![]() 刃物飛び交うライブ会場を舞台にした,リズムアクションRPG「DEATH A LIVE」(@RabbitTrigger6)は,グッズ抽選用のリアルガチャがほとんどはけていた人気ぶり。なお,配布していたギターピックは実際の演奏にも使用可能な本物だった |
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![]() ラストは,来場者なら誰でも描ける「らくがきスペース」の一部をお見せする。拡大してじっくりどうぞ |




















































































