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DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
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印刷2011/09/24 00:00

インタビュー

DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー

画像集#001のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
 シグマA・P・Oシステム販売によって2007年から展開されてきた「DHARMAPOINT」は,「日本人が作る日本人向けの製品」として一定のファンを得たゲーマー向け周辺機器ブランドだ。
 しかしながら,2010年12月にヘッドセット「DHARMA TACTICAL HEADSET(DRTCHD23BK)」を発売した後,パッタリと新製品の情報が出てこなくなり,2011年6月頃からは,公式サイトの更新も滞りがちに。そして,2011年7月29日には,シグマA・P・Oシステム販売を離れ,クラストへの事業移管が行われるというニュースまで飛び込んできたのである。

 一体,DHARMAPOINTに何があったのか。

 4Gamerでは今回,クラストの代表取締役社長である笹田 亮氏と,DHARMAPOINTにブランド立ち上げ時点から関わるメンバーであり,事業譲渡によってクラストの社員となった梅村匡明氏および神尾英人氏に,このあたりを詳しく聞いてきた。新製品が出てこなくなってしまった理由や,DHARMAPOINTの今後の展開についてを詳しく聞いてきたので,その内容をお伝えしよう。

画像集#002のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 笹田さんに4Gamerへ登場いただくのは,さくらインターネットの社長として「LotRO」(The Lord of the Rings Online)を展開されていたとき以来ですね。まずは,クラストがどのような会社か,簡単にご説明いただけますか?

クラスト代表取締役社長 笹田 亮氏
画像集#003のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
笹田 亮氏(以下,笹田氏):
 はい。クラストは,回線インフラ絡みをメイン事業としている会社です。プロバイダさんやポスティング事業者さんに回線を提供したり,ローミングという形でフレッツの接続を提供したりというのが,主なビジネスとなります。
 それ以外にも,さくらインターネットでLotROをサービスしていたチームがまるまるクラストに移ってきて,そのメンバーが「Gamer-Point.net」というサービスを運営したりしています。4Gamerの読者さんなら,こちらのほうが馴染みがあるかもしれません。

4Gamer:
 つまり,そのメンバーにせよGamer-Point.netにせよ,ゲーム系の事業を受け入れる素地のようなものはあるんですよね。では,どういった経緯でDHARMAPOINTを引き受けることになったのでしょう。

笹田氏:
 我々の株主さんから,ゲーマー向け周辺機器事業の譲渡を受けてくれる会社を探しているというお話をいただいたのです。
 ちょうどその頃に,Gamer-Point.netで貯めたポイントが使える物販サービスとして,「Gamer-Point Store」というものを始めていたので,「そこで自社ブランドの製品を出せば,新しいユーザーさんを獲得できるかな」という思惑があり,前向きに検討しましょうということになりました。

4Gamer:
 気になるのは,そもそもどうしてDHARMAPOINTはシグマA・P・Oシステム販売から離れることになったのか,という点です。DHARMAPOINTの事業自体が失敗していたようには思えないのですが。

クラスト WEB&コンシューマー マネージャー 神尾英人氏
画像集#004のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
神尾英人氏(以下,神尾氏):
 事業は好調だったと思うんですけどね。ただ,シグマA・P・Oシステム販売は,もともとOAデスクやチェアなどを作っている会社で,今後はそれに注力していくことになったのです。

笹田氏:
 そういった経緯で,本来の業務からやや離れたところにいたDHARMAPOINTを,「いい事業だけど売却したい」というお話をいただきました。クラストとしても,先ほどお話したように,Gamer-Point Storeで自社ブランドの製品を出していけることに対するメリットがありますし,さらに,ちょうどWi-Fi関連の製品を販売する新事業に着手し始めており,流通面でも問題なくやれそうなタイミングだったのです。

4Gamer:
 ちょうどいい時期に,いい話があったというわけですね。笹田さんから見て,DHARMAPOINTのビジネス的な勝算はどこにあるとお考えですか?

笹田氏:
 低価格帯のマウスやキーボード,あるいはマウスパッドというのは,差別化しづらい商品だと思います。最終的に値段で選ぶ方が非常に多くて,価格勝負になってしまう。「安かろう」の価格帯で大手と競う場合には,全世界に向けて何十万個という数を作らないと,利益的に厳しいものがあります。
 その点,DHARMAPOINTはクオリティや独自性で勝負しているので,差別化しやすいですよね。

4Gamer:
 たしかに,DHARMAPOINTはゲーマー向け周辺機器市場においても,とくに尖った製品を出していますね。
 シグマA・P・Oシステム販売には,DHARMAPOINT以外にも一般向けかつ中級クラス帯のブランドで「ONYX」(オニキス)があったりしましたが,そちらの受け入れ話はなかったのでしょうか。ONYXでも,「クオリティの高い一般向け製品」はけっこう出ていましたよね。

笹田氏:
 そちらは考えていませんでしたね。差別化で勝負するのであれば,ほかでは出てないような製品をもっと出して,こだわり思考のお客様にアピールしていきたいですから。やはりゲーマー向けブランドのほうが,面白いものが出てくるでしょう。

クラスト WEB&コンシューマー マネージャー 梅村匡明氏
画像集#005のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
梅村匡明氏(以下,梅村氏):
 そもそも,笹田社長がゲームで遊ぶ人ですからね。初めて会ったときなんて,1時間ぐらいずっと「EverQuest」の話をしていましたよ。

笹田氏:
 そんなに話してないやろ(笑)。

梅村氏:
 ずっと語ってましたよ,変わった人だなあと思いましたもん。

4Gamer:
 ははは(笑)。社長がゲームに理解があると,製品の開発も円滑に進みそうですね。

梅村氏:
 そうですね。ありがたいことです。

4Gamer:
 ところで,今のところDHARMAPOINTは,新製品の情報が2010年12月の「DHARMA TACTICAL HEADSET(DRTCHD23BK)」でぱったり止まっていますが,これは事業譲渡のために動けなかった……ということでしょうか。

梅村氏:
 そうです。事業譲渡の話が出た時点で,「とりあえず開発を止めてくれないか」と(上長から)言われて,ですね。

神尾氏:
 製品を出す計画は,2011年の6月分ぐらいまであったんですけどね。

4Gamer:
 半年以上情報がなかったので,もしかするとDHARMAPOINTブランドは終わってしまうんじゃないかと,正直,思っていました。

神尾氏:
 Twitterでは「オワコン」と言われていましたからね。

梅村氏:
 私も「もはやこれまでか……」と思っていました。最後に,公式サイトで「DHARMAPOINTに停戦命令が下りました」と記事を書いておしまいかなと。

4Gamer:
 今は公式サイトの更新も再開されているようで,ホっとしています。
 ところで,既存製品のサポートってどういった形で行われるのでしょうか? クラストさんとシグマA・P・Oシステム販売さんのどちらに連絡すればいいのか,ユーザー側は迷ってしまうと思うのですが。

神尾氏:
 実は,今までの店頭在庫はシグマさんのほうで引き上げていて,クラストの名前が入ったパッケージをあらためて店頭に出しています。
 万が一シグマさんのシールが貼られてるものをご購入いただいたとしても,シグマさんのほうでもサポートは行われるので,シールにある問い合わせ先へ連絡していただいて問題はありません。

4Gamer:
 クラストさんとシグマさんの両方で対応の形を取っている,ということですか。

神尾氏:
 ええ,使ってる方に迷惑かかるのが一番よくないことだと思いますから。

4Gamer:
 現在店頭に並んでいるものではなく,以前購入して今でも使っている製品の場合は,シグマさんに連絡すべきですか?

神尾氏:
 どちらに連絡してもサポートは受けられますが,以前シグマさんに一度対応してもらったという場合は,シグマさんにお願いしたほうがスムーズに進むとは思います。

4Gamer:
 分かりました。店頭といえば,今まで発売されたDHARMAPOINTの製品は,今後も変わらず販売されるのでしょうか。

DHARMA SPEEDMASTER DRY
画像集#006のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
神尾氏:
 基本的に販売を継続する方向ではいますが,部材が調達できなくなってしまった製品と,もともと販売終了させようと思っていた製品があって,それらはなくなります。具体的には,「DHARMA TACTICAL MOUSE OPTICAL(DRTCM02)」(光学式マウス)と「TACTICAL THROAT MICROPHONE(DRMC01P)」(声帯の振動を拾うマイク),「DRGCR」(マウスに貼るシール),それとフッ素コート剤(「DHARMA SPEEDMASTER DRY」)ですね。

梅村氏:
 フッ素コート剤はやりすぎましたねえ(笑)。

4Gamer:
 フッ素コート剤は,使ってる人達の評価は高かったですよね。

梅村氏:
 あれは,もともと工業用にあるものをベースとして,ゲーマー向けに配合を変えてもらったりして完成させた製品なんですよ。残念ながら,あまり普及しませんでしたが……。

4Gamer:
 販売終了となる製品は,今後要望があれば再販されたりはしますか?

梅村氏:
 要望があればしたいですね。シグマ時代に販売完了した「DHARMA TACTICAL KEYBOARD(DRTCKB91UBK)」も,けっこう要望があるので,できればそちらも再販したいです。

4Gamer:
 DRTCKB91UBKは要望がありそうですね。荷重30gでテンキーレス仕様の「Realforce」ベースのキーボードは,ほかに存在しませんから。ともあれ,基本的には事業移管によって既存ユーザーが困るようなことはなさそうなので,安心しました。


製品の開発コンセプトはそのままに海外進出を予定


4Gamer:
 譲渡の経緯などをお話いただいたところで,次は新生DHARMAPOINTについて聞かせてください。
 まず,クラストに譲渡されたことで,DHARMAPOINTのコンセプトに変化はあるのでしょうか。これまでは,「日本人が日本人向けに作るブランド」として展開されてきたと思うのですが。

梅村氏:
 基本的なやり方は変わりません。やっている仕事も,クラストにきて大きく変化したわけではないですから。

画像集#007のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
笹田氏:
 変化があるとすれば,今後は国内だけでなく,海外にも展開してもらうというところですね。

4Gamer:
 それは大きな変化ですね。まずはどこの国で出す予定ですか? マウスが割と小さめで軽量ですし,台湾や中国あたりに需要がありそうな気はします。

笹田氏:
 最初は,年内を目標に北米で展開します。

4Gamer:
 アジア圏ではないのですか。意外ですね。

笹田氏:
 もちろん,アジア市場からも出してみないかという話はいただいていますし,展開する予定ではいます。北米からの展開になるのは,流通業者とのやりとりの流れでそうなっただけで,たまたまです。事業を買い取るという話をしたところ,製品をテストしてもらえることになり,その結果,高い評価を得られたので。だったら北米で展開しようと,とんとん拍子に話が進みました。

4Gamer:
 そういえば,DHARMAPOINTの公式ページは,自動翻訳でいろいろな言語で表示できるようになっていますよね。あれは,海外展開への布石だったりしますか?

神尾氏:
 あれは,海外からのアクセスが意外とあったので,とりあえず設置してみたものです。ただ,もともとDHARMAPOINT自体,海外でも展開してみたいと思って立ち上げたブランドだったりします。「ダーマ」って変な名前になったのも,英語じゃないものにしよう,と思って名付けたからですし。

4Gamer:
 そうだったのですか。4GamerのDHARMAPOINT製品レビューにも,海外からのアクセスはちらほらありますね。英語圏だけではなく,ロシアとかスペインからもけっこう来ます。

梅村氏:
 公式サイトは北米が一番多くて,次いで韓国,その次に台湾と中国,そして次にドバイですね。

4Gamer:
 ドバイ! どうしてまたピンポイントでドバイから……。

画像集#008のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
梅村氏:
 以前,「DHARMA TACTICAL MOUSE(DRTCM15)」を出したときに,ドバイ大学のゲームクラブから問い合わせがあったんですよ。「このマウスについて知りたいから,送ってほしい」って。どうやら,彼らは日本語を翻訳して仕様を確認したうえで連絡してきたみたいなんです。それで,何度かメールでやりとりした後に1台送ってみたら,レビューを書いてくれました(笑)。

4Gamer:
 ドバイからのアクセスは,その人達の影響かもしれませんね。マウスのマニアはどこにでもいるもんです(笑)。

笹田氏:
 需要次第ですけど,いずれはいろいろな国に進出できるかもしれません。

4Gamer:
 ただ,海外へ展開していくにあたって,海外向けを意識した製品になってしまわないか,という心配はあります。日本の市場では,小さめのマウスを使いたいというニーズがある一方で,海外は大きめな製品が主流ですよね。キーボードにしても,日本はテンキーレスの需要がありますけど,海外はテンキーがないとダメみたいな市場だったりしますから。

梅村氏:
 今までは「小さくて軽量だけど,破壊力バツグン」みたいな製品を目指してきましたが,今後もそれは変わりません。海外に合わせて基本的な精神を変えてしまうと,何をしているのか分からなくなってしまいますので。

笹田氏:
 今の製品を実際に北米で試してもらっても,いい評価をもらえていますからね。海外向けを意識しすぎる必要はないと思いますよ。

梅村氏:
 「光らせてくれ」とか,「錘(おもり)を足したい」といった要望はありますけどね。

4Gamer:
 北米市場は,なぜか光るのと錘入れられるのが好きですよね。今のところ,DHARMAPOINTの製品が光って重くなる予定はないんですか?

梅村氏:
 「いい光らせ方があれば,光らせていいかも?」くらいです。錘を入れる予定はないですね。

4Gamer:
 そのあたりの仕様も,海外向けになったりはしないということですね。
 ところで,今後の展開を考えると,「どういった層に向けてこれから製品を作っていくのか」も気になってきます。今まで割と,FPS向けのデバイスを展開してきたように見えますが,DRTCM15では「MMORPGで11ボタン使えます!」ということをウリにしていたりしますよね。

神尾氏:
 うーん,我々は,その売り文句に違和感はないのですが。

4Gamer:
 あれ,そうですか?

画像集#020のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
神尾氏:
 もともとFPSだけにターゲットを絞っていたわけではないんです。
 古い話になりますけど,実はブランドを立ち上げて第1弾製品を出したとき,いろいろなゲーム会社さんにコンタクトを取っていたのですが,どこからも相手にしてもらえなかった。そんな中,GameHiさん――今のゲームヤロウさんですね――のマーケティング担当の方と偶然知り合って,「サドンアタック」をローンチするから,一緒にキャンペーンをやろうということになったんですね。

4Gamer:
 なるほど。DHARMAPOINTの立ち上げには,サドンアタックのヒットも大きく関わっていたのですね。

神尾氏:
 ええ,サドンアタックのおかげで,ほかのFPS系のパブリッシャーさんにも興味を持ってもらえるようになりました。そこからの流れでFPS向けに見えるようになっただけで,「FPSに特化しよう」とは思っていなかったんですよ。

4Gamer:
 ということは,もしかすると今後は,MMORPGと組んで展開する製品も出てきたりするわけですか。

神尾氏:
 MMORPGは,最近になっていわゆる“ノンタゲ系”が増えてきていますし,ゲーマー向けのマウスやキーボードをアピールしていけば,使っていただけるんじゃないかとは思っています。
 多ボタンマウスの場合,FPSよりもむしろMMORPGのほうが便利に使えたりしますし,いろいろと展開していきたいですね。


新製品はヘッドセットとマウスパッド


4Gamer:
 さて,事業譲渡と今後の展開をお聞かせいただいたところで,できれば,気になる新製品の情報も知りたいところです。

梅村氏:
 実はこの場に持ってきていて,箱の中で出してもらえるのを待っているところです。

4Gamer:
 それはぜひ見せてください!

笹田氏:
 僕もまだ実物を見ていないので,楽しみですよ。

梅村氏:
 それでは,見せてしまいましょうか。まずは,こちらです(箱の中からヘッドセットを取り出す)。

画像集#009のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー

4Gamer:
 おお,小さいですね。ワイヤレスヘッドセットですか?

梅村氏:
 そうです。軽量でコンパクトという,これまでのDHARMAPOINTらしいコンセプトのヘッドセットですね。ワイヤレスヘッドセットは,バッテリーが必要なので大きく,かつ重くなりがちですが,そこをなんとかしてみました。僕はテストですでに使っていますけど,非常に便利ですよ。付けっぱなしでビールを取りに行けるんですから(笑)。

型番は「DRTCHD12RF」のようだ
画像集#010のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
4Gamer:
 分かります,ワイヤレスは一度使うとやめられなくなりますよね。外見からすると「DHARMA TACTICAL HEADSET(DRTCHD12BK)」の派生型でしょうか。

梅村氏:
 ええ,形状はDRTCHD12BKとほとんど変わっていません。ただ,マイク周りの仕様を変えたり,コントローラには“いつもの”とは違ったものを使ったりと,ワイヤレスにした以外にもいろいろと手を加えてはいます。

4Gamer:
 コントローラが異なるんですか。ちなみにバッテリーは,専用のものを内蔵するタイプですか?

梅村氏:
 いえ,エンクロージャ部に単4型充電池2本が入ります。充電は別途USBケーブルで行って,電池によりますが,8時間から10時間は連続動作するはずです。

画像集#011のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー 画像集#012のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー

画像集#013のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
4Gamer:
 駆動時間は必要十分,といったところですね。電池込みの重量も,なかなか軽い(※その場で重量計を用いて計測したところ,215gだった)。ワイヤレスのまともなヘッドフォンには,マイクがついていないことが多いので,これは珍しい存在になるかもしれません。

梅村氏:
 ただ,価格はちょっと高くなってしまいそうです。1万円は超えないようにしたいのですが。

4Gamer:
 発売はいつ頃を予定しているのでしょう。

神尾氏:
 いちおう,11月を目指しています。

4Gamer:
 つまり,そこで新生DHARMAPOINTがいよいよ動き出すというわけですね。

梅村氏:
 そうですね。
 おそらくヘッドセットより前になると思いますが,11月にはマウスパッドも2種類出す予定ですよ。1つめはこちらです(と,サーフェスが銀色の,一見布製っぽいマウスパッドを取り出す)。

銀色のマウスパッド。サイズやサーフェスの若干違うサンプルがいくつかあった
画像集#014のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー

4Gamer:
 んん? 布製のように見えますが,サーフェスが明らかに布ではありませんね。ものすごくツルツルしています。

梅村氏:
 実は素材に,再帰性反射を利用したシリコンを使っています。

4Gamer:
 再帰性反射……ですか。

梅村氏:
 光を乱反射せず,そのままの光の当たった方向に跳ね返す素材ですね。道路標識やプロジェクタのスクリーン,最近では光学迷彩の実験などでも使われています。これをマウスパッドに使うと,高いトラッキング精度と滑りのよさが得られるんですよ。

裏面はラバーグリップになっていた
画像集#015のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
4Gamer:
 (実際にマウスパッド上でマウスを動かしてみて)おお,本当に滑り出しがスムーズですね。個人的な感覚では,プラスチック製マウスパッドより滑って,「Airpad」より止まる気がします。

梅村氏:
 その滑りのよさは,使ってみれば誰でも分かるレベルだと思いますよ。

4Gamer:
 この滑りは面白いですね。しかし,変わった素材なだけに,センサーの相性問題が起こりそうな気もします。

梅村氏:
 そうですね,一部のマウスでは動かないので,そのあたりは発売前にしっかり告知する予定です。

4Gamer:
 珍しい素材を使っているので,価格の予想がつかないのですが,いくらぐらいになる予定なのでしょう?

梅村氏:
 うーん,横幅35cmで4000円切るぐらいを目指しているのですが……高いでしょうか?

4Gamer:
 そのサイズで4000円なら,プラスチック製マウスパッドと同じか,少し安いぐらいです。布製に比べれば高いかもしれませんが,ゲーマー向けマウスパッドの価格としては,それほど高価というわけではない気がします。

梅村氏:
 ちなみに,コストパフォーマンス重視の方向けには,布製マウスパッドも用意しています(と,別のマウスパッドを取り出す)。

既存製品で大きいと言われていたロゴを小さくデザインしたとのこと。こういった自己主張はあってもいい気はするが……
画像集#016のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー

4Gamer:
 こちらは,割とオーソドックスな布製マウスパッドに見えますね。

梅村氏:
 見た目は普通ですが,粗めのPET樹脂(ポリエチレンテレフタラート)を使っていまして,サーフェスに凹凸があります。それによってマウスとの接地面積を減らしているので,従来の布製マウスパッドよりもなめらかな滑りになっています。

4Gamer:
 布製にしては,マウスを置いたときの沈み込みが少ないようにも感じられますね。

端はサイドステッチ仕様になっていた
画像集#017のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
梅村氏:
 そうですね,少し硬めに作ってあります。あとは,DHARMAPOINT製のマウスパッドでは初めてサイドステッチを採用してあって,ほつれを防止しているのも特徴です。

4Gamer:
 横幅は25cmぐらいありますね。発売されるサイズはこれ1種類のみですか?

梅村氏:
 もうひとつ,35cmぐらいのサイズのものを出そうかと思っています。
 正直なことを言ってしまうと,今まで我々はマウスパッドの開発をサボっていた部分があると思っています。これからは力を入れていきたいですね。

4Gamer:
 11月の発売を楽しみにしています。


笹田氏の要望による新キーボードも計画中


笹田氏:
 ところで,僕の要望したキーボードはいつ出る予定なん?

4Gamer:
 キーボードも開発中なんですか?

梅村氏:
 発売されるかどうかはまだ分かりませんが,開発はしていて,仕様はだいたいできています。

4Gamer:
 なんと。それはぜひ詳細をお聞かせください。

笹田氏:
 僕が作ってもらいたいのは,すべてのキーマッピングを,ハードウェアで入れ替えられるキーボードなのです。

4Gamer:
 また面白そうなものが。

梅村氏:
 キーマッピングの入れ替えができると,日本語キーボードと英語キーボードのどちらであっても,すぐに作れます。[Windows]キーのロック機能も搭載する必要がなくなりますね。ほかのキーにしてしまえばいいですから。

4Gamer:
 ゲームプレイ中に[半角/全角]キーを間違えて押してしまうことなども,ほかのキーにすれば防げますね。

笹田氏:
 「これ1台あればOK!」といえる,すべてのキーをコントロールできるキーボードが欲しいんですよね。

梅村氏:
 ただ,開発費がものすごく高くなってしまうんですよ。キーボードは新規の金型で,すべてのキーが割り当て可能で,かつゲーム用なのでNキーロールオーバーにして,拡張キーやマクロ機能も搭載する。さらに,暗いところでも見えるように,キートップが光るようにして……などとやろうとすれば,もう“ハネ満”完成です。

4Gamer:
 まさに,搭載できる機能はすべて搭載したキーボードという雰囲気ですね。ものすごく夢は膨らむのですが,実現はできそうなんですか?

梅村氏:
 実現させたいですね。このキーボードさえ出来れば,「もうキーボードは作れなくてもいいや」と思っているぐらいです。基礎研究は終わっているので,問題は開発費だけですね。

画像集#018のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー
笹田氏:
 ええー……。最悪,ポケットマネーで出すよ。

梅村氏:
 ありがとうございます! よろしくお願いします!(笑)。

4Gamer:
 いいんですか。そのまま掲載してしまいますよ(笑)。

笹田氏:
 大丈夫です! 入れ替えは絶対に便利だと思いますよ。個人的に,キートップは光らせなくてもいいと思いますけど。どうせなら,キートップがデジタル化されていて,表示が変更したキーに合わせて変わるっていうのはどう?

4Gamer:
 それはとんでもない価格になってしまいそうなので,キートップを付け替えられるぐらいのほうが買う側としては嬉しいです……。
 ちなみに,発売するとしたら,キースイッチは何を使うつもりですか?

梅村氏:
 パンタグラフ(型メンブレン)ですね。

4Gamer:
 それはまた珍しい。Nキーロールオーバーのゲーマー向けパンタグラフキーボードなんて,見たことがありません。

梅村氏:
 ゲーマー向けキーボードで,よく「キーの反応速度がどうこう」という話がありますけど,結局,ストロークが長いとそのぶん入力が遅くなってしまうんですよね。

4Gamer:
 そうですね。さすがにRazerあたりは分かっていて,キートップの薄いキーボードを出していますが,ほかからストロークの短いキーボードはなかなか出ていません。ますます,そのキーボードの完成が楽しみになりました。

梅村氏:
 発売できるよう,頑張ります。それ以外にも,いろいろと今後の計画はしています。まだ「やりたい」と思っているだけで,実現できるかは別の話ですが。

笹田氏:
 計画があるのは聞いているんですけどね。でも僕は,キーボードにお金掛けたいね。まずはキーボードを作ってくれ,な!

梅村氏:
 それはもう,お望みのままに!

4Gamer:
 ははは(笑)。それにしても,着々と新製品の開発が進んでいるようで,安心しました。やはり,デバイスを作っている方の話は非常に興味深いですし,面白いです。

神尾氏:
 そう言ってもらえてなによりです。これからも「日本人による日本人のための製品」を作り続けていきますので,応援していただければと思います。

梅村氏:
 今後は,海外にも展開していきますし,もっともっと大きなブランドに育てていきたいですね。まずは,新生DHARMAPOINTの製品第1弾が出ることになる11月を楽しみにしていてください。

4Gamer:
 分かりました。本日はありがとうございました。

画像集#021のサムネイル/DHARMAPOINTはどこへ向かうのか。ブランドを引き受けたクラスト社長と製品開発担当にインタビュー

 長期にわたってまったく動きがなく,ブランドの存続すら不安に思われたDHARMAPOINTブランドだが,実は水面下で着々と新製品の開発を進めていたようだ。いずれの製品も,海外のゲーマー向け周辺機器ブランドでは見たことのないようなものばかりで,非常に興味深い。軽量なワイヤレスヘッドセットは,長時間のゲームプレイにおいてかなり快適そうだし,シリコン製マウスパッドも,見た目,使い心地ともに,かなりのインパクトがあるように見えた。

 まだ計画段階だという製品も,話を聞くにかなり期待できそうである。笹田氏イチオシのキーボードは,実現すれば「ゲーマー向けキーボードの決定版」になるといっても過言ではない可能性を秘めているように思えるので,ぜひとも製品化してもらいたいところだ。

 11月の新製品発売を皮切りとして,新たに動き出すDHARMAPOINT。今後も注目していきたい。

「DHARMAPOINT」公式サイト

  • 関連タイトル:

    DHARMAPOINT

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