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薄型のゲームノートPCを実現する「Max-Q」は2018年モデルでどこまで進化したか。MSIのGTX 1070搭載機で確かめてみた
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印刷2018/09/18 13:00

テストレポート

薄型のゲームノートPCを実現する「Max-Q」は2018年モデルでどこまで進化したか。MSIのGTX 1070搭載機で確かめてみた

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 ゲーマー向けノートPCにおいて,最も重要視されるのが価格と性能であるのは疑いないが,薄さや軽さへの需要も高い。そしてそれを受け,ミドルクラス以上のGeForceを薄型ノートPCに搭載する技術としてNVIDIAが開発したのが「Max-Q Design」(関連記事,以下 Max-Q)であるというのは,読者もよく知っていることだろう。

 Max-Qの詳細については,2017年5月の発表後に西川善司氏による解説記事と,NVIDIAへの質疑応答をまとめた補足記事を掲載しているので,本稿で改めて説明することはしないが,基本的には,ノートPCメーカーとNVIDIAが協力して,消費電力と発熱を最小限にしながら,GPUから最大の性能を引き出すポイントを求めるものとなっている。なので,ノートPC筐体のハードウェア設計最適化が進めば,同じGPUを搭載していても,より高い性能を期待できるはずだ。

 というわけで今回は,2018年モデルのゲーマー向けノートPCで,Max-Qがどれだけの性能を発揮できるのかというテストを行ってみたい。テスト対象となるのは,NVIDIAから貸し出しを受けたMSI製のゲーマー向け薄型ノートPC「GS65 Stealth Thin 8RF-037US」(以下,GS65 Stealth Thin)で,本製品が搭載するGPUは「GeForce GTX 1070 with Max-Q Design」(以下,GTX 1070 Max-Q)だ。
 GS65 Stealth Thinという2018年モデルの薄型ノートPC,そしてそれが搭載するGTX 1070 Max-Qは,デスクトップPC向け「GeForce GTX 1070」(以下,GTX 1070)比でどれだけの性能を発揮できるだろうか。テストにより明らかにしてみたい。

GS65 Stealth Thin 8RF-037US
メーカー:MSI
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GTX 1070 Max-QはノートPC向けGTX 1070の低クロック版


NVIDIAコントロールパネルで,GTX 1070 Max-Qのシステム情報を確認したところ。GPU名は「GeForce GTX 1070 with Max-Q Design」となっている
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 まずは,GTX 1070 Max-Qの仕様を押さえておこう。
 GTX 1070 Max-Qは,ノートPC向けGeForce GTX 1070をベースとしたMax-Q対応版のGPUだ。演算ユニットとなる「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を16基,シェーダプロセッサであるCUDA Coreは2048基を備え,5基のSMごとに1基のラスタライザ「Raster Engine」を組み合せた「Graphics Processing Cluster」(以下,GPC)を構成するといった仕様は,ノートPC向けGeForce GTX 1070と同じである。
 その一方,デスクトップPC向けGTX 1070は,SM数が15基,CUDA Core数は1920基であり,同じGTX 1070とは言っても,スペックが異なっている点は注意してほしい。

 さて,GTX 1070 Max-Qで重要なのが,動作クロックである。ノートPC向けGTX 1070の場合,ベースクロックが1442MHzで,ブーストクロックは1645MHzだ。一方でGTX 1070 Max-Qでは,ターゲットとするTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)に合わせて多少の幅があるものの,ベースクロックは1101〜1215MHzで,ブーストクロックは1265〜1379MHzと,かなり低い値になっている。
 大雑把に言ってしまうと,GTX 1070 Max-Qは動作クロックを抑えることで,消費電力の低減を図ったGPUという捉え方で間違いない。

 ちなみに,TechPowerUpのGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 2.10.0)で,テスト中におけるGTX 1070 Max-Qの動作クロックを追ったところ,1544MHzまで上がっていることを確認した。

 そんな,GTX 1070 Max-Qの主なスペックを,ノートPC向けおよびデスクトップPC向けGTX 1070,加えてデスクトップPC向けの「GeForce GTX 1060 6GB」(以下,GTX 1060 6GB)と合わせてまとめたものが表1となる。GTX 1070 Max-QとノートPC向けGTX 1070とでは,動作クロックとTDPが異なるだけというのが分かる。

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GTX 1070 Max-Q+i7-8750H搭載で,18mmを切る厚さのGS65 Stealth Thin


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 テストに用いるGS65 Stealth Thinについても説明しておこう。先に断っておくと,今回のテストに用いたのは,北米市場向け仕様のモデル――製品名の末尾にある型番が「8RF-037US」――である。国内向けには,同名で異なる型番(8RF-00xJP)の製品が販売中であるが,スペック面ではほぼ同じ――無線LAN機能が異なる程度――なので,国内モデルであっても,ベンチマークテストにおける性能は変わらないと見なしていいだろう。

 GS65 Stealth Thinは,GPUにGTX 1070 Max-Q,CPUには6コア12スレッド対応の「Core i7-8750H」(以下,i7-8750H)を採用するノートPCだ。
 MSIが「Cooler Boost Trinity」と呼ぶ,4本のヒートパイプと3基の空冷ファンを組合わせた冷却システムを採用することで,高性能なGPUとCPUを採用しながら筐体の厚みは実測値で約18mm,公称本体重量は約1.88kgという薄型で軽量なボディを実現したのが大きな特徴である。

ディスプレイを閉じたGS65 Stealth Thinを正面から見たところ。厚さは17.9mmしかない
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ディスプレイを開いた状態を右側面から。ディスプレイを除いた筐体の厚さは実測で13mmほどだ
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 筐体をじっくり見まわすと,エアフローを確保するために,筐体の天面や底面,左右側面に大きな開口部を設けているのが目につく。これくらい冷却能力を重視しないと,動作クロックが低めのMax-Q対応GPUであっても,消費電力と発熱,処理能力のバランスを取ることはできないのだろう。

キーボードとディスプレイの間にあるメッシュ部分は吸気孔となっている(左)。側面にある排気孔からは,内部の銅製ヒートシンクが確認できる(右)
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底面の奥側にも大きな吸気孔があり,メッシュ越しにCPUとGPUの位置が確認できる。おそらく中央に配置されているのがGPUで,その右に見えるのがCPUだろう
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 ノングレア仕様で15.6インチサイズ液晶パネルは,解像度1920×1080ドットで,垂直リフレッシュレート最大144Hzをサポートしている点が大きなトピックである。ただし,NVIDIA独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」には対応していない。
 SteelSeries製キーボードを採用しているのも特徴の1つで,プリインストールされているSteelSeriesの統合設定ソフト「Engine 3」で,キーごとにLEDイルミネーションの光り方を制御できる「Per-Key RGB」にも対応している。

キーボードはSteelSeries製。左写真では単色だが,キーごとにLEDイルミネーションの色は変更できる。右写真はEngine 3でキーごとに色を変えた例。左から赤,緑,青,黄,水,紫,白の順だが,全体的にやや赤みが強いようだ
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右側面に電源コネクタがあるので,右に置いたマウスを操作するとき邪魔になりがち
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 GS65 Stealth Thinを試用してみたところ,2つの点が気になった。1つは一般的にマウスを置くであろう筐体の右側に,電源コネクタを備えていることだ。ケーブルの先端がL字になっているので極端な突出はしないとはいえ,電源ケーブルがマウス操作の邪魔になりがちで,この配置は正直,理解に苦しむ。
 また,キーボードのレイアウトにも難があり,ほかのキーとの同時押しとなる[Fn]キーが,キーボード右側に配置されている点も使いにくい。今回評価したのは英語配列モデルだが,日本語配列モデルでも[Fn]キーの配置は変わらないので,使いにくさも同様だろう。

キーボード右手前に[Fn]キーを配置しているのもイマイチ使いにくい(左)。右写真は日本語配列モデルのキーボードだが,[Fn]キーの配置は変わらない。そのうえ,[Space]キーの左右に[無変換][変換]キーが密着していたり,[Enter]キーの左に[]]キーが密着していたりと,コストダウンのためにボディ天板パネルを共通化したしわ寄せが如実に表れている
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Dynaudioブランドの名を冠するステレオスピーカーは,本体底面の前側に付いている
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 そのほかに,Dynaudioとの提携により開発したステレオスピーカーの搭載や,ヘッドフォン出力端子にESS Technology製のD/AコンバータESS SABREシリーズを採用するといったサウンド面の仕様も特徴とのこと。既存のMSI製ゲーマー向けノートPC同様に,Nahimic製のサウンドプロセッサソフトウェア「Nahimic 3」を採用している点もポイントだ。

GS65 Stealth Thinの左側面。RJ-45(1000BASE-T),USB 3.1 Gen.2 Type-A×2,3.5mmミニピン×2が並んでいる
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右側面には,USB 3.1 Gen.2 Type-AとThunderbolt 3,Mini DisplayPort出力,HDMI Type-A出力,電源コネクタを装備
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 評価に試用したGS65 Stealth Thinのスペックを以下にまとめておこう。

●入手したGS65 Stealth Thinの主なスペック
  • CPU:Core i7-8750H(6C12T,定格2.2GHz,最大4.1GHz,共有L3キャッシュ容量9MB,TDP 45W,cTDP:35W)
  • チップセット:Intel HM370
  • メインメモリ:PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×2
  • グラフィックス:GeForce GTX 1070 with Max-Q Design(グラフィックスメモリ容量8GB)
  • ストレージ:SSD(容量512GB,M.2/PCI Express x4接続)
  • ディスプレイ:15.6インチIPS液晶,解像度1920×1080ドット,ノングレア(非光沢),垂直144Hz対応
  • 無線LAN:IEEE 802.11ac+Bluetooth 5.0(Intel「Wireless-AC 9560」)
  • 有線LAN:1000BASE-T(Rivet Networks「Killer E2500」)
  • 外部インタフェース:Mini DisplayPort×1,HDMI 2.0 Type A×1,RJ-45×1,Thunderbolt 3×1,USB 3.1 Gen.1 Type-A×3,3極3.5mmミニピン(※マイク用)×1,3極3.5mmミニピン(※ヘッドフォン用)×1
  • スピーカー:内蔵2chステレオ
  • マイク:未公開
  • インカメラ:720p
  • バッテリー容量:82Wh,5280mAh
  • ACアダプター:出力180W(19.5V,9.23A)
  • 公称本体サイズ:約357.7(W)×247.7(D)×17.9(H)mm
  • 公称本体重量:約1.88kg
  • OS:64bit版Windows 10 Home


性能比較の対象にデスクトップPC向けGTX 1070&GTX 1060 6GBを用意


 それではいよいよテストへと話を進めていくわけだが,今回はGS65 Stealth Thinの比較対象として,デスクトップPC用のGTX 1070とGTX 1060 6GBを用意することにした。ゲーマーにとって気になるのは,デスクトップPC向けGPUと比べて,GTX 1070 Max-Qの性能はどのあたりに位置付けられるのかであろうと判断したわけである。
 グラフィックスドライバには,テスト時点で最新版であった「GeForce 398.82 Driver」を利用した。

 一方,CPUのほうは,GS65 Stealth Thinの「Core i7-8750H」とまったく同じ性能のデスクトップPC向けCPUはないので,性能面で近くなるように,評価用機材には6コア12スレッド対応の「Core i7-8700T」(以下,i7-8700T)を用意した。
 比較対象のデスクトップPCの環境は表2のとおり。

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Shift機能は,CPUやGPUの使用率を確認できる設定ソフトのDragon Center 2.0にある「システムチューナー」タブで設定可能だ
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 Windows 10の電源プランは,GS65 Stealth Thinと比較対象のデスクトップPCともに「高パフォーマンス」で統一した。
 また,GS65 Stealth Thinは,MSI製の設定ソフト「Dragon Center 2.0」により,CPUやGPUの性能と冷却機構の動作を「Turbo」「Sport」「Comfort」「ECO」「Power options」の5段階で設定できる「Shift」機能を備えているので,テストでは最も高い性能が発揮できるよう,「Turbo」を選択している。

 テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション22.0に準拠。解像度は,GS65 Stealth Thinのパネル解像度である1920×1080ドットと,そのひとつ下となる1600×900ドットの2つを選択した。なお,1280×720ドットは,ゲームプレイにおいてあまり現実的ではないと判断し,今回のテストでは省略している。


GTX 1070 Max-Qの性能はGTX 1070の2割減

GTX 1060 6GBは10%ほど上回る


 実際のテストに入ろう。以下では,文中とグラフともに,比較対象のデスクトップPCを「GTX 1070」および「GTX 1060 6GB」と表記することをお断りしておく。
 まずは「3DMark」(Version 2.5.5029)の結果から見ていこう。
 グラフ1は「Fire Strike」における総合スコアをまとめたもの。GS65 Stealth Thinは,同じ型番ではあるもののGTX 1070と比べて81〜82%程度となった。その一方で,GTX 1060 6GBには10〜13%程度の差を付けており,下位モデルよりは高い性能が見込めそうだ。

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 続いてグラフ2は,Fire Strikeにおける「Graphics score」をまとめたものだが,やはりGS65 Stealth Thinのスコアは,GTX 1070の約82%に留まった。一方で,GTX 1060 6GB比では11〜14%程度上回っており,総合スコアの傾向を踏襲していると言えよう。

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 CPUテストとなる「Physics score」(グラフ3)では,GS65 Stealth Thinが大きく落ち込む結果となった。これは,CPUのi7-8750Hとi7-8700Tの性能差によるものだが,過去にテストしたノートPCでの経験から言うと,GS65 Stealth Thinのスコアは少し低い。
 それがGS65 Stealth Thinの仕様に起因する問題なのかどうか,判断がつき兼ねるが,今回のテストではi7-8750Hの性能をフルに発揮できていない傾向が,続くテストでも影響を与えることになるので覚えておいてほしい。

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 続くグラフ4は,CPU性能とGPU性能の両方を見る「Combined score」の結果だ。ここでのGS65 Stealth Thinは,GTX 1070とGTX 1060 6GBのほぼ中間といったスコアを記録した。CPU性能で劣るGS65 Stealth Thinだが,GPUにも負荷がかかる状況では,GTX 1070には太刀打ちできないものの,GTX 1060 6GBに対しては優位に立つ傾向にありそうだ。

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 続いては,3DMarkのDirectX 12テストである「Time Spy」の結果を見ていこう。
 グラフ5は,Time Spyにおける総合スコアを,グラフ6はグラフィックス性能を示す「Graphics score」を,グラフ7はCPU性能を示す「CPU score」をそれぞれまとめたものとなる。

 Time Spyでは,Fire StrikeよりもCPU性能が総合スコアに影響を及ぼす傾向があるため,GS65 Stealth Thinは,GTX 1070比で約81%,GTX 1060 6GBを7〜8%程度上回るだけだ。
 しかし,Graphics scoreになると,GS65 Stealth ThinはGTX 1070比で約83%に留まるが,GTX 1060 6GB比では13〜14%程度まで差を広げて,Fire StrikeのGraphics scoreと似た傾向になった。一方,CPU scoreでは,こちらでもi7-8750Hが十分な性能を発揮できていないためか,GTX 1060 6GB比で69〜72%程度と振るわない結果に終わる。

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 こうした傾向を踏まえたうえで,実際のゲーム性能を確認していく。
 まずは「Far Cry 5」の結果をグラフ8,9にまとめてみた。GS65 Stealth Thinの平均フレームレートをGTX 1070と比較すると,1920×1080ドットでは約93%となるが,相対的に負荷が軽いはずの1600×900ドットでは,約85%しかない。
 高解像度になるほど,相対的にGS65 Stealth Thinのスコアが高くなるのはGTX 1060 6GBとの比較でも同様で,1920×1080ドットでは約8%上回るのに対して,1600×900ドットでは約93%と逆に下回ってしまう。この現象は,解像度の低い1600×900ドットのほうが,1920×1080ドットよりもCPUの影響が大きくなり,GS65 Stealth Thinのスコアが上がりにくいためではないだろうか。
 GTX 1060 6GBに及ばないこともあるというのは,少し気になるところだが,どちらの解像度でも快適さの目安である平均60fpsはクリアしているので,プレイに問題はないはずだ。

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 CPUの影響が少なくないのは,「Overwatch」(グラフ10,11)でも同じだ。
 OverwatchにおけるGS65 Stealth Thinの平均フレームレートは,かろうじてGTX 1060 6GBを上回っているものの,その差は1〜5%程度しかない。GTX 1070比になると,80〜82%程度に留まる。
 ただ,GS65 Stealth Thinの最小フレームレートは144fpsを超えているので,十分快適にプレイできるのは言うまでもない。

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 グラフ12,13にまとめた「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)でも,低解像度時におけるGS65 Stealth Thinの平均フレームレートが振るわない傾向は続いている。
 GS65 Stealth Thinは,1920×1080ドットでこそGTX 1060 6GBを約3%上回るのだが,1600×900ドットでは約98%と,後塵を拝してしまう。Far Cry 5と似た傾向だ。なお,GTX 1070比では79〜82%程度と,こちらはOverwatchと似た傾向にある。
 ハイクラスのグラフィックスカードにおける目安となる平均100fpsを,ぎりぎりではあるが1920×1080ドットでも超えているので,合格ラインをクリアできる性能があるのは間違いない。

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 一方で,GS65 Stealth Thinのスコアが振るわないのが,グラフ14,15の「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)だ。Shadow of WarにおけるGS65 Stealth Thinは,1920×1080ドットの平均フレームレートでもGTX 1060 6GBの約85%と差を付けられてしまった。ただ,プレイアブルの目安である最小フレームレート30fpsはクリアしている。

 スコアが振るわない原因だが,GS65 Stealth Thinの最小フレームレートはGTX 1060 6GBのそれと大きな差がないので,CPUの性能差によるものとは言い難い。明確にこれという原因はつかめなかったが,TDPという枠を決め,それに合わせて動作クロックを調整するMax-Q Designが,Shadow of Warとあまり相性がよくない可能性があるのではなかろうか。

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 気を取り直して,「Fortnite」の結果をまとめたグラフ16,17を見ていこう。
 GS65 Stealth Thinの平均フレームレートは,GTX1070比で82〜83%程度,GTX 1060 6GB比では5〜7%程度となった。3DMark Fire StrikeのGraphics scoreなどと似た傾向だが,GTX 1060 6GBとの差は小さい。快適さの目安となる平均70fpsはクリアしているので,プレイに問題はないだろう。

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 「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の結果は,まず総合スコア(グラフ18)から見ていく。
 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチは,CPU性能の影響が強めに出る傾向があるため,1920×1080ドットでは,GTX 1070比で約82%,GTX 1060 6GBとはかろうじて肩を並べる程度だ。1600×900ドットに至っては,GTX 1070比で約88%とあまり変わらないものの,GTX 1060 6GB比では約93%と逆転されており,GS65 Stealth Thinのスコアは伸び悩んでいる。
 ベンチマークレギュレーションで目安としたスコア8500は大きく上回っているので,プレイの快適さに不満を感じることはないだろう。

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 グラフ19,20は,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均および最小フレームレートをまとめたものだ。
 平均フレームレートは,GTX 1070比で84〜85%程度。GTX 1060 6GB比では1600×900ドットで約97%と下回り,1920×1080ドットでは約4%と上回っている。傾向としては総合スコアを踏襲しているといえよう。一方,最小フレームレートはCPU性能への依存が高いため,どちらの解像度でも,GS65 Stealth ThinはGTX 1060 6GBに及ばない。

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 Fortniteと同じ傾向となったのが「Project CARS 2」(グラフ21,22)である。GS65 Stealth ThinとGTX 1060 6GBとの平均フレームレートにおける差は5〜11%で,1920×1080ドットのほうが大きな差を付けている。これは,CPUの影響が弱まるためと捉えるのが妥当だろう。一方,GTX 1070比では82〜86%程度と,ほかのテストとも似た結果になった。
 どの解像度でも,プレイアブルの目安である平均50fpsは超えているものの,ハイエンド環境における目安の平均60fpsを,1920×1080ドットでは下回ってしまったので,実際にプレイするときには,グラフィックス設定を若干を落としたほうが良さそうである。

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Max-Qらしく消費電力はかなり低く,動作音も控えめ


 GS65 Stealth Thinの消費電力も確認しておきたい。
 ノートPCに内蔵されたGPU単体の消費電力を測ることは難しいため,今回はログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較することにした。
 テストでは,ノートPCにおけるゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないように設定したうえで,電源プラン設定を「バランス」に戻し,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時としている。
 なお,GS65 Stealth Thinはバッテリーは100%になるまで充電したうえで,ACアダプターを接続したままテストをすることで,充放電による電力消費が起きないようにしている。

 計測結果はグラフ23にまとめたとおり。各アプリケーション実行時におけるGS65 Stealth Thinの消費電力は,160〜170W程度といったところ。この値は,GTX 1070から64〜93W程度,GTX 1060 6GBに対しても38〜76W程度低いものだ。
 アイドル時の消費電力も,GS65 Stealth Thinは21Wと,ノートPCらしい低低消費電力と言えよう。液晶パネルという電力を食う部品を備えながら,低い消費電力を実現したのは,GS65 Stealth Thinの面目躍如といったところか。

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温度測定中のGS65 Stealth Thin
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 GPUの温度も確認してみた。今回は,3DMarkのTime Spyを30分間連続実行した時点を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU情報取得ツール「GPU-Z」(Version 2.10.0)で温度を取得している。ただ,GS65 Stealth Thinはアイドル時の温度を取得できなかった。GPUに負荷がほとんどかからない状態では,温度の値がGPUから返ってこないようだ。
 なお,比較対象のデスクトップPCは,室温約24℃の部屋で,ケースに組み込まない,いわゆるバラック状態で机に置いて計測している。GS65 Stealth Thinも同じ机上に置いて計測した。

 計測結果をまとめたのがグラフ24となる。GS65 Stealth Thinの高負荷時におけるGPU温度は82℃に達し,GTX 1070とほとんど同レベルまで発熱しているわけだ。

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 さて,ここで気になるのは,冷却が十分で温度上昇を82℃に抑えこんだのか,それとも冷却が不足して82℃まで上がってしまったのかである。そこで,Time Spyを50分間連続実行し続けた状態のGS65 Stealth Thinを,Android用赤外線カメラ「FLIR ONE Pro」で計測してみよう。
 結果は,GPU付近の天板と左右の排気孔付近は46℃を超える熱を持っているものの,キーボード面は最も温度の高い部分でも44℃台,全体的には40℃前後といったところか。この程度であれば,キーボードに触れると熱を持っているのは感じるが,ゲームプレイ時にはありえないくらいの長時間,同じキーに触れ続けでもしない限り,熱いと感じるほどではないだろう。

FLIR ONE Proで撮影したテスト中のGS65 Stealth Thin
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 排熱部や筐体表面の温度を見る限り,GS65 Stealth ThinのCooler Boost Trinityは,GTX 1070 Max-Qを十分に冷却できているように見受けられる。GS65 Stealth Thinの冷却性能が極めて優秀という可能性はあるが,熱設計では大きなハンデとなる薄型筐体で,GTX 1070 Max-Qがデスクトップ向けGTX 1070とあまり変わらない温度で収まっているのは,GPUの発熱自体もそれほど高くなく,それゆえに薄型ノートPCの冷却機構でも温度上昇を押さえ込めると考えてよさそうだ。

 最後にGS65 Stealth Thinの動作音も確認しておこう。
 今回は,ノートPCに正対する形で30cm離した地点にカメラを置き,アイドル状態で約1分間放置したうえで,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチを約4分間実行したときの様子を,合計約5分のビデオにまとめてみた。
 最初の1分間は,負荷がかかっていないため,ファンの動作音はかなり静かだ。ベンチマークを実行すると,ファンの回転数が上昇して動作音も大きくなっているが,2分め以降は音量も安定して,極端に騒々しくなることはない。これだけの性能を有する製品としては,比較的静かな音量に抑えられている。Max-Qにより,静音性も向上していると言ってよいだろう。



コンセプト自体は市場に即したMax-Q Design。ただし型番どおりの性能は依然として期待できない


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 比較対象とはCPUが異なるという事情もあり,純然たるGPU性能だけの比較は行えなかったものの,それでもGS65 Stealth Thinが搭載するGTX 1070 Max-Qの性能が,デスクトップPC向けGTX 1070のそれにまったく届いていないことは明らかだ。
 ノートPC向けのGeForce GTX 10シリーズが登場したとき,NVIDIAは「デスクトップPC向けGPUとほぼ同等の性能を発揮できる」とアピールし,実際に,ノートPCの設計次第ではそれを実現できているのだが(関連記事),ことMax-Qにおいては,2018年を迎えても残念ながら性能面での大きな進歩は実現できていないようである。

 スリムでコンパクトなゲーマー向けノートPCを実現するというMax-Qのコンセプト自体は,市場のニーズに即した適切なコンセプトだと思う。実際に消費電力が低く,動作音を抑えられているのもMax-Qがもたらすメリットだ。しかし,Max-Q搭載ノートPCの性能がこれでは,「ノートPC向けGPUは,同型番のデスクトップPC向けGPUと比べて性能が劣る」というかつての“定説”が復活してしまう懸念すらある。
 NVIDIAはいま一度,通常版のノートPC向けGPUとMax-Q版GPUとの違いについて,ゲーマーをはじめとする一般消費者へきちんと説明する必要があるのではないだろうか。

NVIDIAのMax-Q解説ページ

MSIのゲーマー向けノートPC製品情報ページ

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