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あったかもしれない,もう一つの世界線。「放課後ライトノベル」第106回は『STEINS;GATE 比翼連理のアンダーリン』でキャッキャウフフな夏を満喫?
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印刷2012/08/25 10:00

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あったかもしれない,もう一つの世界線。「放課後ライトノベル」第106回は『STEINS;GATE 比翼連理のアンダーリン』でキャッキャウフフな夏を満喫?



 コミケもオリンピックも終わり,もう夏のイベントは完全に終わった! 夏なんてもう用無しだ! さあ地球よ,いくらでも涼しくなってくれ! と叫んではみたものの,依然として残暑が厳しい。「絶対,暑さなんかに負けたりしない!」と毅然とした態度を取っていたはずが,「やっぱり暑さには勝てなかったよ……」といつの間にかクーラーを入れてガリガリくんを食べつつ甲子園を眺めていたら「あっ,もう夕方だ!」という日々が続いている。

 しかし,そんな時期だからこそ夏ならではの楽しみを見つけて,暑さに負けず時間を有効に使っていきたい。そこで考えたのが,今回の「放課後ライトノベル」で夏が舞台の作品を楽しむというもの。現実の季節と作中の季節を一致させることで,登場人物とのシンクロ率が30%(当社比)ぐらいアップした気分になれるはず!

 とはいえ,そんな都合よく夏が舞台の小説なんて出てるだろうか? と思っていたら,ちょうど『STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート‐ 比翼連理のアンダーリン』の第3巻が発売されているじゃないか。夏の秋葉原を舞台に,ヒロインたちとプールに行ったり,デートしたりと楽しいイベント尽くめで,うんざりする暑さを忘れさせてくれる一作だ。それに加えて,こちらの背筋が寒くなるような展開もあったりして……?

画像集#001のサムネイル/あったかもしれない,もう一つの世界線。「放課後ライトノベル」第106回は『STEINS;GATE 比翼連理のアンダーリン』でキャッキャウフフな夏を満喫?
『STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート‐ 比翼連理のアンダーリン(3)』

著者:海羽超史郎
イラストレーター:huke/池田靖宏
原作:5pb.×ニトロプラス
出版社/レーベル:富士見書房/富士見ドラゴンブック
価格:735円(税込)
ISBN:978-4-82-914684-2

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●ただのノベライズではない,新たなる世界線の物語!


 紹介に入る前に,まずは元となった「STEINS;GATE」PC / X360 / PS3 / PSP / iPhone / iPad)についてのおさらいをしておこう。同作はもともと,2009年にXbox 360向けに発売されたノベルゲーム。主人公は自称狂気のマッドサイエンティスト・鳳凰院凶真(ほうおういんきょうま)こと,岡部倫太郎(おかべりんたろう)。どう見ても厨二病です,本当にありがとうございました。

 その彼と友人たちによって結成された「未来ガジェット研究所」では,日夜発明品と称した数々のガラクタが生み出されていた。だが,ある日彼らは過去に電子メールを送れる「電話レンジ(仮)」という正真正銘の大発明をしてしまう。この過去に送れるメール――「Dメール」によって,彼らは歴史改変のトラブルを引き起こし,そのことがきっかけで謎の組織に命を狙われることになる。果たして岡部は仲間を救うことができるのか!? 詳しくは「こちら」のレビュー記事を参照してほしい。

 この「STEINS;GATE」のスピンオフ作品として発売されたのが,今回紹介する小説の原作となった「STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん」X360 / PS3 / PSP)。オリジナルでは物語の展開上,血生臭い描写も多々あったが,こちらにはそんなものはない。可愛らしいヒロインたち(男含む)と,ダダ甘でキャッキャウフフな日常を思う存分満喫できる。
 当然,それに準拠した小説版も,胸焼けするぐらい甘ったるい日常を楽しめるはず……とwktkしてページを開いたら冒頭から拷問されてる! なんかいつもどおりに血生臭いし,いつも以上に一部登場人物がおっかないんですけど!


●運命を変えるためのタイムリープ。しかし,あるはずの物がそこに無く……


 夏休み中,いつものように未来ガジェット研究所に集まるラボメンの面々。しかし,その日はいつもと様子が違った。

1. ラボメンがいつの間にか2人増えている。
2. ラボメンが岡部の記憶にない発明を勝手に完成させている。
3. 電気代の請求額が6桁で,マジ資金難。

 どうやら,岡部がDメールの実験を行ったことで,過去の一部が改変されたうえに,実験の乱発で電気代も跳ね上がってしまったらしい。とりあえず当座の電気料金を稼ぐため,皆で動画投稿コンテストで賞金を狙おう! メイド喫茶でバイトしよう! 雑誌の記事を書くため心霊スポットに出かけよう! とラボメン一同,さまざまな手段に打って出る。

 ここまでの展開は,原作の「比翼恋理のだーりん」と大体一緒なのだが,そんなのほほんとした空気をぶち壊すのが,未来ガジェット研究所が入居しているビルの大家の娘である天王寺綯(てんのうじなえ)。ちなみに彼女は,「ROBOTICS;NOTES」X360 / PS3)では大人になった姿で登場する。
 その彼女が,ところどころで岡部に対する殺意をチラつかせ,作品に不穏な空気を漂わせる。さらに幕間に挟まれる未来世界の描写では,成長した彼女と未来の岡部の対立が書かれており,ある意味,本作の影の主役と言ってもいいだろう。

 そうした危険な徴候から逃れるため,牧瀬紅莉栖(まきせくりす)の発明である「タイムリープマシン」によって,岡部は何度も過去の時間に戻る。だが,これまでとは異なり,今回は過去に戻るたびにそれまでの記憶も一緒にリセットされてしまう。「STEINS;GATE」では「別の世界線の記憶」という武器を活かして不利な状況を覆してきた岡部だが,これではまったくの無力。
 その一方で,紅莉栖を始めとする一部のラボメンには,なぜか未来の記憶が残っている。しかも彼らの岡部を見る目が,何だかとっても冷たい。ほかの登場人物は状況を理解しているのに,岡部と読者だけが置いてきぼりという,何とももどかしい展開が続くのだ。

 岡部に記憶が無く,ほかのメンバーに記憶があるという「STEINS;GATE」とは真逆のこの状況。果たして,その原因は何なのか? 岡部は綯ちゃんの魔の手から逃げられるのか? ほかのラボメンは何を企んでいるのか? 多くの謎と不安を孕みながら,物語は最終巻となる3巻へと続いていく。


●作者の技巧が冴え渡る,極上のアレンジを堪能せよ


 さて,そんな気になる3巻の表紙に描かれているのは,フェイリス。帯には「フェイリスのスク水が世界を救う!?」などと書かれているが,まったくそんな話ではなかった。ていうか,フェイリスあんまり出番なかったし……。

 その代わり,3巻ではヒロインの一人,椎名(しいな)まゆりに焦点を当て,原作どおりにイチャラブな展開が披露される。そんな甘い展開と並行して作者が書こうとするのは,タイムリープの恐ろしさだ。かつての失敗を過去に戻ってやり直す。誰もが一度は夢見たことがあるはずだ。しかし,作中のタイムリープがもたらすものは,未来から訪れる殺意に,何度やり直しても運命を覆せない永遠の絶望である。

 作者はこれら2つの異なる要素を組み合わせてストーリーを展開させつつ,1,2巻の伏線を回収していき,混迷する物語をここしかないという結末へ落とし込んでみせる。ただ,終盤の展開がやや説明不足で,気を抜いて読んでいると話についていけなくなるので,できれば腰を据えてじっくり取り掛かりたい。

 原作「比翼恋理のだーりん」はヒロインごとにルートが分岐する,典型的なギャルゲーの構造で作られている。本来ならば一本道の小説の形にするだけでも困難なはずだ。しかし,作者はゲームに登場するおいしいエピソードを物語全体に散りばめながらも,そこに独自のアイデアや物語を牽引する興味深い謎をいくつも加えて,ただのノベライズで終わらない,まったく別の新しい物語に仕立て上げた。

 「STEINS;GATE」を題材に独自の世界線を描き出した,海羽超史郎。これを読んでしまうと,やはり今度はノベライズではない完全新作が読みたくなってしまう。最後に作者のオリジナル作品が書かれたのは今から10年以上前。そろそろ期待してもいいと思うのだが,いかがだろうか?

■世界線を越えて広がる「STEINS;GATE」関連作品

『STEINS;GATE 蝶翼のダイバージェンス:Reverse』(著者:三輪清宗,イラスト:坂井久太,原作:5pb.×ニトロプラス/角川スニーカー文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
画像集#002のサムネイル/あったかもしれない,もう一つの世界線。「放課後ライトノベル」第106回は『STEINS;GATE 比翼連理のアンダーリン』でキャッキャウフフな夏を満喫?
 作者の海羽超史郎は,前作「STEINS;GATE」のノベライズも担当しており,同じく富士見ドラゴンブックから『STEINS;GATE‐シュタインズゲート‐ 円環連鎖のウロボロス』を発表している。こちらは原作どおりに話を進めながらも,ところどころにオリジナルの要素を投入し,原作をプレイした読者も退屈させない仕組みになっている。このオリジナル要素は今回紹介した『比翼連理のアンダーリン』にも関わってくるので,この作品をより楽しむために,原作をプレイしたという人もぜひ目を通してほしい。
 「STEINS;GATE」のノベライズとしては,ほかにも三輪清宗が手がける『STEINS;GATE 蝶翼のダイバージェンス:Reverse』がある。こちらは,アニメ版の物語をヒロイン達の視点から描いた独自の構成になっている。1〜3巻はメインヒロインである紅莉栖が視点人物となっているが,4,5巻では,ほかのヒロインにもスポットが当てられている。原作とは違った角度から物語を眺めたい人にオススメだ。
 さらに2012年11月には,5pb.から完全新作『STEINS;GATE 閉時曲線のエピグラフ』が発売予定。原作では語られなかった,紅莉栖が亡くなった後の世界を描くようだ。
 また小説に限らず,ドラマCDやコミックなど「STEINS;GATE」の関連作品は数多い。これだけさまざまな形で作品が展開されるのは,原作の人気が高いのももちろんだが,別世界の存在をファンにも納得させる「世界線」というアイデアによるところが大きいのだろう。現在は劇場版アニメも制作中であり,「STEINS;GATE」の世界の広がりは,今後もまだまだ収まりそうにない。

■■柿崎憲(ライター/ダル萌え)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。友人と秋葉原に行くたびに,「ラジオ会館がなくなってる! ここはどこの世界線なんだ……」と呟く遊びをしていたが,何度もやったせいで今では誰も突っ込んでくれなくなったと寂しそうに語る柿崎氏。それならタイムリープして,もう一度やり直せばいいんじゃないかな。
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