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健康のために「DQウォーク」が“処方”される未来? 柴 貴正氏も登壇した,第5回デジタルヘルス学会学術大会を一部レポート
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印刷2022/01/20 14:35

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健康のために「DQウォーク」が“処方”される未来? 柴 貴正氏も登壇した,第5回デジタルヘルス学会学術大会を一部レポート

 2021年12月20日から26日まで,デジタルヘルスケア分野の講演「第5回デジタルヘルス学会学術大会」がオンライン開催されていた。

 そこにゲーム分野から,スクウェア・エニックスのスマホゲーム「ドラゴンクエストウォーク」iOS / Android。以下,DQウォーク)のプロデューサーを務める,柴 貴正氏がゲスト登壇していた。

 柴氏が招かれたのは,12月23日開催のクリエイティブ分科会。主題は「DQウォークがドラクエ世代を歩く世代に変えた?」というものだ。

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 当日はDQウォークの遊びをとおし,中高年の人がどれほど歩くようになったのか,歩くことによる健康促進とは,医療と結び付けたアプリ利用の有効性など,ゲームと健康の親和性が議題に挙げられた。

 本稿では柴氏と,排便を通じて医学知識を得られるとした斬新なアプリ「うんコレ」(参考記事)をリリースした日本うんこ学会の会長である,石井洋介氏とのトークセッションの模様をお伝えしていく。

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歩かせるではなく“歩きたくなる”
「DQウォーク」はその理由を作った


 4Gamer読者への説明は不要だろうが,発売35周年を迎えた「ドラゴンクエスト」は,幅広い年齢層に愛されているRPGシリーズだ。

 そのうち,位置情報(GPS)を利用してプレイヤーが実際に歩くことでゲームを進める,新たな遊び方のDQウォークが提供されている。

 そして今回,デジタルヘルスの最前線の講演に,ゲームプロデューサーである柴氏が呼ばれた背景には,このDQウォークが中高年齢のプレイヤー層にも支持されているところにあった。
 つまるところ,彼らの健康維持に一役買い,「ゲームで歩くことでより健康的に過ごす人が増えている?」という議題が生まれたわけだ。

 まさに,デジタル方面から見たゲームと健康の関係性である。

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 最初に柴氏から語られたのは,DQウォークの制作の経緯であった。

 当初は斬新だった「スマートフォンで本格的なゲームが遊べる」ことも,スマホゲームのリッチ化に伴い,当たり前に受け入れられてしまう時代に突入していたころ,位置情報を使った“あのタイトル”が登場し,すぐさまDQウォークの企画に踏み出したという。
 また自身の年齢を鑑みての“健康”に対する意識もあったそうな。

 開発裏話としては,シリーズ生みの親である堀井雄二氏と「ドラゴンクエストとして位置情報ゲームを出すなら“ゲーム”として遊べるものにしたい」と話しがあったという。
 そうしてゲームとしての面白さを生むための試行錯誤からはじまり,位置情報ゲームに対する世間の反応への配慮や,安全にプレイしてもらえる機能の実装,さらに企画に対する社内からの懸念など,開発時はさまざまな苦労がのしかかったと語る柴氏。

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 当時,しっかりと遊ばせることを重要視した位置情報ゲームとしては,“どれくらい歩かせるか”に悩んだ。というのも,ゲームは多くの人に遊んでほしいが,すべての人が同等に歩けるわけではないためだ。

 そのような葛藤もあり,開発当初はさほど歩かなくてもいいシステムで構築したが,最近になって歩く強度(重要性)を上げはじめた。
 これは実際にゲームを運営するなかで,多くのプレイヤーが「歩くこと自体を楽しんでいる」と判明したためだという。

 その結果,近々のDQウォークでは仲間モンスターを導入し,プレイヤーが歩くほどにモンスターを育てられるなど,歩くことでのゲーム的なお得要素を増やした。さらに健康管理でおなじみ,タニタ監修のライフログ機能「あるくんですW」も搭載し,プレイヤーの身体データを入力すると,歩数に応じたオススメの食事メニューを表示できるようにもした。

 このように,本作は歩くことが楽しみになる機能を充実させている。

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 続けて柴氏から,DQウォークのプレイヤー層について説明された。

 プレイヤー層の性別は男性が多いものの,ほかのシリーズ作品と比べて女性プレイヤーの割合がやや高いようだ。
 年齢層は20代から40代を中心に,幅広い層が遊んでいるという。

 また意外なことに,1日の平均歩数が最も多いのは40代であり,彼らは毎日8000歩程度は歩いているとのこと。それに比べて20代は7000歩程度だとし,若い世代ほど歩数少なめな傾向にあると分析されている。

 さらに,ライフログ機能「あるくんですW」に情報を入力している20代から40代のうち,1割〜2割は毎日1万歩以上も歩いているデータが記録されており,SNS上でも「体重が落ちた」「健康診断の結果がよくなった」など,DQウォークによる健康への影響も散見されている。
 ちなみに,DQウォークにおける全プレイヤーのこれまで総歩数を数えると,なんと7.9兆歩にも及ぶんだとか。

 これら本作のプレイ結果は,石井氏ら医療関係者にとっては驚くべき記録だったという。彼らが医者として診察する対象の多くは「歩かなかった結果,病院にやってきた人」が大半なために,40代以上の人たちが日々1万歩近くも歩いていることに強い関心を示していた。

 というのも,石井氏ら側の視点では「歩くのは嫌だろうが,健康のために歩かせたい」という意識が先行し,医者として“歩かせたい”とは考えても,DQウォークが目指したような“歩くこと自体を楽しませる”ということは意識できていなかったらしい。
 石井氏はこの点を「ゲームならではの発想だ」と称賛していた。

 対する柴氏は歩くことに関して,ゲームプロデューサーとして「ゲームは面白くなきゃダメ」という想いがあり,“歩きたくなる理由”を作ることをとくに意識したそうだ。


ゲームを通じて,無自覚に健康になれる将来


 ここで石井氏より,医療現場では昔から議題に挙げられてきたという“行動変容ステージングモデルとゲームとの関連性”が紹介された。

 それによると,人はなにかの行動を起こすまでにいくつかの段階を踏まなければならず,また段階ごとに壁があるとされている。
 例えば,健康に無関心な人に関心を持たせる,準備させる,実行させる,さらに継続させるなどだ。この一連の流れを進める際の一つ一つに壁があり,それらにいかに対処するのかを常に考えてきたという。

 一般人側からすれば,病院に行っておきたいけどなんとなく行く気にならず,よし行こうと思ってもお休みを調整しないといけないし,そこから定期的に通うのも……など,おっくうのメカニクスと同様だろうか?
 興味が先行しないぶん,三日坊主よりもタチが悪いのは確かだ。

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 入院や外来受診では手に負えず,意識もされにくい生活習慣病については,医療方面でどう手助けできるのかが大きな課題とされてきた。
 「それをすれば健康になる」と認知させるまではできても,その人に実際に行動してもらうのは非常に難しいようだ。おそらく石井氏らは我々が想像するよりも,そういった壁を何度も味わってきたに違いない。

 そのための「どうすれば人の行動を変えられるか」を議題としたとき,近年ではゲームで補える可能性が考えられるようになってきた。
 極論で言えば,「DQウォークのような歩くゲームを楽しく遊ばせて,自然と問題を解消させればよいのでは?」というわけだ。

 対象者に段階を踏んで行動してもらうのが理想としつつ,無関心のままでも健康行動だけしてくれればいいと考えるこの方法。
 その人が健康に無関心でも,歩いてもらうのが難しくても,より興味を持ちやすいことで自然と歩いてもらえれば課題解決につながる。

 ある意味,野菜嫌いな子どもに,刻み野菜がたっぷり入ったハンバーグを味わわせるといった論法に近いが,今回のようにゲームに置き換えた場合の効果のほどは,我々こそ実感しやすいのかもしれない。

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 実際データとして,歩く人ほど健康的でいられる1万歩神話や,1日の歩数量が多いほど死亡リスクが低下することも判明しているという。

 逆に,普段から運動習慣が身についていない人ほど,将来的な要介護リスクも高まるといったデータがあるようだ。

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 次に,対象者のモチベーションの話が挙げられた。

 石井氏によれば,当初は健康のために運動をしていた人でも,どこかのタイミングで飽きて,運動をやめてしまうケースがあるという。
 ゆえに,位置情報ゲームでも同じような人はいるはずだとし,最初はアイテムなどのゲーム内インセンティブを目的として歩いていた人を,どうすれば歩くこと自体が楽しく思えるような方向に持っていけるか。意識の変容をどう起こさせたのかについて,柴氏に意見が求められた。

 それに対し柴氏は,そこが運営型のゲームの強みだと返す。
 ゲームの運営をとおし,歩く動機を継続的に次々と提供できることが,飽きさせずに歩いてもらえる要因につながるという。根本となる運営面のアイデアにせよ,柴氏自身も歩くのが好きだからこそ,歩く楽しさについては開発チームといつも意見を出し合ってきたようだ。

 ただし,ゲームとして「歩くことを重要視しすぎない」ようにも気にかけた。手指の操作で完結しない以上,人によって歩ける距離や移動できる場所に差異があるため,どこか特定の場所まで歩いて得られる物はあくまで“誉れ”。ゲーム的な強弱などに関わる要素を極力排除して,その人の名声や称号の範疇に収めるのをこだわりとしてきたらしい。
 このあたり,我々も「一番歩いたプレイヤーに最強武器プレゼント」などと言われたら反感や不公平を抱くだろうから,よく分かる。

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 医療現場では,健康状況の悪い人が歩く習慣を得てから一気に改善された症例もあるという。そういった医療データとDQウォークのゲームデータを連動させて,なにかしらの健康的なアクションを起こす未来もあり得るのではないかと,石井氏は本セッションでの展望を述べた。

 当然,両機関の個人情報の取り扱いが関わることでハードルは高いものの,医療側からの関心もさらに高まれば,DQウォークを遊んでいる人とそうでない人の健康データを並べる研究なども考えられていく。
 柴氏も「ユーザーデータの提供はお客様の同意が必要なこともあり,今すぐにはできないが,それ以外でも医療側の監修をとおした機能をゲームに実装したい」といった可能性については,意欲を見せた。

 医療側の要望を取り入れたゲームやデバイスの誕生。医療監修のもとのゲーム作りなど,互いの強みを生かしたモノ作りの可能性は,両者とも前向きであるようだ。そして締めくくりに石井氏は,将来的に患者に対して“DQウォークを処方”する日が来るかもしれないと抱負を語った。

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