本稿では,プロデューサーの門脇章人氏とディレクターの二瓶 賢氏に,実在の名所をゲームに登場させる際の苦労や,武蔵や巌流といったキャラクター作りなど,本作の制作秘話を聞いた合同インタビューの模様をお届けする。
今回の合同インタビューに先立ち,本作をこれまでの試遊版や体験版よりも先までプレイする機会を得た。正式な許可を得て再現された安井金比羅宮をはじめとする京都の名所や,そこに潜む「羅掌願」などの幻魔との戦いについては,ツアーレポートおよびプレイレポートで紹介しているので,あわせて参照してほしい。
「鬼武者 Way of the Sword」最新ビルドを体験。何度でも挑みたくなる羅掌願戦や,実在の京都を再現したワイドリニアなフィールドが魅力
「鬼武者 Way of the Sword」のメディア向けプレビューイベントが開催された。今回はPS5版でのボス戦と,Switch2版のモーションコントロール対応トレーニングモード「鍛錬の間」を体験。中でもボス「羅掌願」は,多彩な攻撃と明確な攻略法によって,プレイヤー自身の上達を実感できる,何度でも挑みたくなる強敵となっていた。
「鬼武者 Way of the Sword」メディアツアーで見えた,音作りと京都再現へのこだわり。清水寺や六道珍皇寺など,ゲームに登場する名所を巡る
カプコンの新作アクション「鬼武者 Way of the Sword」が2026年9月4日に発売される。これに先駆けてカプコンによるメディアツアーが実施され,楽曲や効果音制作の現場,そしてゲームの舞台となる京都の名所を巡ってきた。
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京都の伝承を取り入れた世界観と,武蔵・巌流のキャラクター作り
――よろしくお願いします。 実在する縁切り縁結びの神社・安井金比羅宮で,幻魔「羅掌願」が悪さをするエピソードが印象的でした。「足が痛い」と訴える人に「足がなければ痛みもなくなる」と足を切り落としたり,「三味線のおけいこが辛い」という人には「指がなければけいこをしなくてよくなる」と指を奪ったりと,願いを曲解してかなえてしまうのが恐ろしかったです。こうした描写については,安井金比羅宮側にも了承を得ているのでしょうか。
二瓶 賢氏(以下,二瓶氏):
もちろん,安井金比羅宮さんには事前に許可をいただいています。
門脇章人氏(以下,門脇氏):
もともと安井金比羅宮さんには,「縁切り縁結びの願いを少し違った方向で成就させる」という伝承が数多くあります。例えば,「嫌いな上司と縁を切りたい」と願うと,その上司が事故で亡くなってしまう,といった話ですね。
二瓶氏:
そうした成就は,実は幻魔の仕業なのではないかという発想から,ゲームに取り入れました。もちろん,現実の安井金比羅宮さんは縁切り縁結びの神社ですので,悪いことばかりが起こるわけではありません。
門脇氏:
安井金比羅宮さんにはゲームにご理解のある方がいらっしゃいましたので,我々の提案に難色を示されることはありませんでした。
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――改めてプレイしてみて,佐々木巌流に“毒のある色気”を感じました。主人公である宮本武蔵とは,どのように対比させていったのでしょうか。
二瓶氏:
武蔵と巌流は,明確に差別化したいと考えていて,イメージカラーも青と赤に分けています。武蔵については,宮本武蔵という人物に伝えられている野蛮さや,時代劇的な荒々しさ,そして“山猿感”をキーワードにしています。
一方の巌流は,修行をしなくても強くなれる天才肌で,常に余裕があり,妖艶さや色気が漂う人物として描いています。モーションアクターさんのオーディションでも,妖艶な雰囲気を持った男性アクターの方がおられて,「この人だ!」とすぐに決まりました。
開発チーム内でも女性スタッフからの人気が高く,発売後は巌流を好きになってくださる方がもっと増えてくれるのではないかと期待しています。
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――声優陣はどのように決めたのでしょうか。
二瓶氏:
巌流については,狂気やサイコパス的な演技を得意とされている方ということで,岡本信彦さんにお願いしました。
収録では,アニメ的な芝居にするのか,映画的な演技に寄せるのかを最初に話し合いました。そのうえで細かく調整を重ね,アニメ調になり過ぎず,映画のようなリアルな狂気を感じさせる演技を目指しています。武蔵についても弊社から指名させていただきました。
――狂気的な演技を得意とされる方は多いと思いますが,その中で岡本さんにお願いした理由を教えてください。
二瓶氏:
“狂っているだけではない”という対比を表現したかったからですね。ただの人間だった巌流が,「鬼の篭手」を授かったことで狂気へと堕ちていく。その変化が重要なんです。
狂気だけでなく,平常時の自然な芝居もでき,その落差をしっかり表現できる幅広い演技力を持った方ということで,岡本さんにお願いしました。
――近年のカプコンの和風タイトルといえば「祇(くにつがみ):Path of the Goddess」が思い浮かびます。同作の開発で得られたノウハウを,「鬼武者 Way of the Sword」に生かすような取り組みはあったのでしょうか。
二瓶氏:
どちらも和をモチーフにした作品ではありますが,開発部署も異なりますし,別々のラインで進めていたため,制作物を共有するような交流は基本的にありませんでした。
――今回プレイした範囲のカットシーンでは,武蔵の表情が非常に豊かで,人間味を感じました。武蔵は三船敏郎さんをフェイスモデルとしていますが,大物俳優をモデルにしたことで,特に表情の作り込みを意識した部分はあったのでしょうか。
二瓶氏:
武蔵は野蛮さや無頼漢的な側面を持つ人物です。嫌なことには嫌な顔をするような人間臭さがあり,「天下無双になるためなら何でもやる」という人物として描きたかったので,自然と表情も豊かになりました。
技術的な面では,芝居そのものは制作初期から大きく変えていません。その一方で,感情がより伝わるように,表情の分かりやすさや,眉間のしわの動き,鼻のふくらみ,頬のしわといった細かな表現はブラッシュアップを重ねていきました。
もちろん,武蔵に限らず,主要キャラクターはみんな表情にこだわって制作しています。
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――武蔵と巌流はアクションや立ち居振る舞いも対照的ですが,どのような点を意識して差別化していったのでしょうか。
二瓶氏:
武蔵はプレイヤーが操作するキャラクターなので,遊びやすさも考え,奇をてらった動きはあえて取り入れませんでした。“達人らしさ”を意識しつつ,刀を振り終えたあとの所作や納刀の仕方で,武蔵らしい野蛮さを表現しています。
一方の巌流はプレイヤーが操作するキャラクターではありません。そのため,まずは彼の性格から考え,相手をだまして笑うようなフェイントを織り交ぜながら,バトルデザインを組み立てていきました。
――体験版の配信後はさまざまなデータを収集されたと思いますが,地域ごとに反応の違いはありましたか。
門脇氏:
相手の攻撃を引きつけてから斬りつける「一閃」については,日本のユーザーさんの成功率が比較的高かった印象です。最後までクリアされた方の割合も,日本が高かったように感じています。
二瓶氏:
難度については,「簡単だ」という声と「難しい」という声が半々くらいでした。
門脇氏:
その反応を見る限り,我々が目指したちょうどいいバランスに仕上がっているのではないかと思います。実際,「簡単なゲームです」とも「高難度のゲームです」とも打ち出してはいません。
難度も,手応えを重視した「剣戟」と,物語を重視した「活劇」の2種類を用意していますが,「剣戟」を選ばれた方のほうが多かったですね。全体としては,いい着地点になったという感触があります。
――カプコンのアクションゲームは,やられモーションの豊富さも魅力の一つです。今回も武蔵が壁に叩きつけられたり,「首灯り」に頭から飲み込まれたりと,印象的なやられモーションが数多くありました。こうしたアイデアは,どのように生まれるのでしょうか。
二瓶氏:
カプコンで育ってきたからこそ,自然と身に付いた感覚なのかもしれません。リアクションはアクションゲームの手応えや爽快感につながる部分なので,本作でもやられモーションは充実させたいという思いがありました。
そのため,武蔵にしても幻魔にしても,攻撃の強さだけでなく,右から受けたのか左から受けたのか,斬り上げられたのか斬り下げられたのかなど,細かくバリエーションを用意し,気持ちのいいリアクションになるよう計算しています。
敵のやられ方についても,「どうすれば面白く見えるか」をチーム全員で考えました。例えば,回転しながら襲ってくる幻魔の「棘丸」は,受け流したあとに壁へ突き刺さってもがくので,そのまま真っ二つにできます。
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――幻魔の中で,お二人が特に気に入っているものはありますか。
門脇氏:
ゲームの全貌をまだお見せできていないので,今はお話しできませんね(笑)。ただ,強敵については,「何度も戦いたい」「繰り返し挑戦したい」と思っていただける存在であることが重要だと考えていますので,特に力を入れて作っています。
二瓶氏:
お話しできる範囲でいうと,巌流には一番時間をかけていますね。複数回戦うことを想定して作っていますし,まだ皆さんにお見せしていない変化も残しています。今後どのように変わっていくのか,楽しみにしていただければと思います。
――巌流は物語にどのような影響を及ぼすのでしょうか。こちらも,まだお話しできない内容でしょうか。
門脇氏:
そうですね。ただ,不思議なことに,「武蔵の鬼の篭手には女性がいるのに,巌流の鬼の篭手には誰もいないのはなぜですか」と聞かれたことは,一度もないんですよ。これは一つのヒントになります。
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――武蔵と巌流の因縁を描くうえで,特に意識したことはありますか。
二瓶氏:
個人的に好きな映画「クローズZERO」の,“主人公たちが悪っぽくて格好いい”という雰囲気は,かなり影響を受けています。
武蔵と巌流はもちろん,まだ公開していないボスについても,正統派ヤンキーやインテリヤクザ,極道のような空気感を少し取り入れています。
――カットシーンでのキャラクター同士の掛け合いも印象的でした。武蔵と巌流はもちろん,鬼の篭手に宿る静御前が「篭手女」と呼ばれた際,きっぱりと不快感を示して言い返す場面など,思わず笑ってしまうシーンも多かったです。
二瓶氏:
掛け合いは,制作するうえで特に大切にしているポイントです。真面目一辺倒の冒険活劇にはしたくありませんでしたし,人間同士がぶつかり合う様子もしっかり描きたいと考えていました。
そのため今回は,幻魔たちも皆しゃべるようにしています。会話を交わしながら剣戟を繰り広げることで,プレイヤーのテンションも自然と上がると思うんです。
これは僕のわがままでもあるのですが,多言語展開するタイトルなので,セリフ量が非常に多くなってしまい,現場には苦労をかけてしまいました。
実在の京都をゲームへ落とし込み,「受け流し」で本作ならではの手応えを生み出す
――今回は京都がワイドリニアなフィールドとして描かれていますが,ロケーション同士の距離感も現実を反映しているのでしょうか。また,架空のマップを作る場合と,実在の場所をモデルにする場合では,どちらが大変でしたか。
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二瓶氏:
楽なのは,やはり架空のマップですね。とはいえ,実在する場所をゲームに落とし込むからこその迫力や没入感がありますし,苦労してでも挑戦してよかったと思っています。
当初は京都の街をほぼ原寸でマップ化していたのですが,歩く距離が長すぎてしまいました。そこで全体を半分ほどのスケールにしてみたところ,建物まで小さくなってしまい,迫力が失われてしまったんです。
そのため,建物はほぼ実寸の印象を保ちながら,プレイヤーが歩く距離だけを短くするよう調整しています。このバランスを詰めるためには,実際に何度もプレイして確認する必要があり,かなり苦労しました。
名所を登場させるうえでは,意図的にアレンジした部分もあります。例えば,建仁寺の法堂には,天井に「双龍図」という2匹の龍が描かれています。ただ,これは2002年に完成したもので,本作の舞台である江戸時代初期にはまだ存在していません。
それでもゲームにはあえて登場させました。プレイヤーが現地を訪れたとき,「ゲームで見た景色がそのままある」と感動していただきたかったからです。
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――「鬼武者」シリーズの完全新作としては久々の作品になります。開発を進める中で,「これはいける」と確信したブレイクスルーのような瞬間はありましたか。
門脇氏:
アクション面では,「一閃」と「魂吸収」は,「鬼武者」シリーズとして欠かせない要素という前提で開発を進めていました。
一方で,本作ならではのブレイクスルーになったのは,「受け流し」が加わったことですね。気持ちよさもありますし,本作ならではの独自性も生まれました。「受け流し」だけでも十分に勝負できるくらい魅力的な要素になったと感じています。
私自身,どちらかというとカジュアルゲーマーなのですが,自分でも気持ちいいと感じられる手触りになりました。その感覚を,ぜひ皆さんにも味わっていただきたいですね。
――それは,開発がどのくらい進んだ段階だったのでしょうか。
門脇氏:
開発中盤のことでしたね。プロジェクトが始まって2年くらいは,アクションの手触りや難度の落としどころを探り続けていました。
そんな中で,受け流しと,成功すると刀の威力が上がる「気焔状態」という要素が加わり,「これはキャッチーで気持ちいい」と感じられたんです。
さらに,自分のようなカジュアルゲーマーでも出せる「崩し一閃」(敵の「力動ゲージ」をゼロにした際に繰り出せる強力な攻撃。一閃より入力タイミングがシビアでない)がありますし,一閃や魂吸収といったシリーズおなじみの要素も揃っています。
そこで初めて,「これは勝負できる」と思えました。
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――以前のインタビューでは,武蔵を主人公に選んだ理由の一つとして,海外での知名度を挙げられていました。実際に海外のプレイヤーからの反応はいかがでしたか。
門脇氏:
武蔵を主人公にしたのは正解だったと思います。久しぶりのシリーズ新作ということもあり,ほぼ新規IPに近い形で勝負する作品になります。その中で,知名度の高い武蔵や,海外にも多くのファンを持つ三船敏郎さんという,広く知られた存在を打ち出せたのは大きかったですね。
ただ,武蔵を主人公にした理由そのものが知名度だけだったわけではありません。フィクションの世界にはさまざまな宮本武蔵がいますが,カプコンならではの武蔵には,もっと強い個性が欲しかったんです。そこで,野性味あふれる三船さんをフェイスモデルに起用しました。
発表後の反応を見ると,三船さんは海外でも本当に人気があるんだと,改めて実感しましたね。
――三船さんサイドの反応はいかがでしたか。
門脇氏:
フェイシャルを制作するにあたっては,映像をすべてご覧いただき,何度も監修していただきました。その結果,気に入っていただけたようです。
――京都の伝承や文化を数多く取り入れていますが,海外を含め,こうした要素への反応はいかがでしたか。
門脇氏:
二瓶から京都の伝承を取り入れたいという提案を受け,調べてきた内容を聞いたとき,「たとえ海外では伝承そのものが知られていなくても,十分に面白さとして伝わる」と感じ,すぐに採用を決めました。
ゲームを遊んだ方が実際に京都を訪れ,「鬼武者で遊んだ京都だ!」と追体験していただくきっかけになればうれしいですね。
――ゲームをより楽しむために,見ておいてほしい三船さんの出演作はありますか。
二瓶氏:
僕としては「椿三十郎」ですね。見ていただければ,三船さんの剣さばきや立ち居振る舞いの格好よさを感じていただけると思います。
三船さんのファンに喜んでいただけそうな要素は,ゲームの序盤1時間くらいにも結構盛り込んでいますので,ぜひ楽しみにしていただきたいです。ただ,ゲーム自体は特定の作品を真似して作っているわけではありません。
門脇氏:
剣術ものではありませんが,「羅生門」の主人公には,宮本武蔵にも通じるワイルドさがあると思います。ゲームを遊んだあとに見ていただくのも面白いかもしれませんね。
――ありがとうございました。
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