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リマスター版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」インタビュー。普遍的な和の恐怖,自ら前へ進む体験と物語を両立したゲームならではの感覚を実現する
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印刷2021/10/09 00:00

インタビュー

リマスター版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」インタビュー。普遍的な和の恐怖,自ら前へ進む体験と物語を両立したゲームならではの感覚を実現する

画像集#001のサムネイル/リマスター版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」インタビュー。普遍的な和の恐怖,自ら前へ進む体験と物語を両立したゲームならではの感覚を実現する
 和風ホラーアドベンチャー「零」シリーズの最新作,「零 〜濡鴉ノ巫女〜」のリマスター版が,2021年10月28日に発売される。Nintendo SwitchPS4はパッケージとダウンロード版での展開となり,Steam / PS5 / Xbox Series X / Xbox Oneはダウンロード版のみのリリースとなる。

 本作は2014年に発売されたWii U用ソフト「零 〜濡鴉ノ巫女〜」のリマスター版だ。
 「零」シリーズは日本的な恐怖を追及し,あり得ないものを写すカメラ「射影機」で霊に対抗するという独特のシステムが高い評価を得ている。今回はシリーズの生みの親である菊地啓介氏に,リマスター版開発の経緯や新要素,そしてホラーゲームにかける思いなどを聞いた。

菊地啓介氏
画像集#010のサムネイル/リマスター版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」インタビュー。普遍的な和の恐怖,自ら前へ進む体験と物語を両立したゲームならではの感覚を実現する

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まず「零 〜濡鴉ノ巫女〜」がリマスターされることになった経緯を教えてください。

菊地啓介氏(以下,菊地氏):
 2001年に「零」シリーズを立ち上げて,今年で20周年を迎えることが,大きな理由です。Wii U版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」以降,タイトルをリリースしていませんでしたが,ファンやメディアの方からずっと「作品を待ち望んでいます」と熱い声援をいただいていました。
 そこで,節目となる20周年に,「零 〜濡鴉ノ巫女〜」をいろいろなプラットフォームで遊んでいただけるようにしようと数年前から企画を進めていました。

4Gamer:
 「零 〜濡鴉ノ巫女〜」のオリジナル版は,Wii U GamePadを「射影機」のように構えて遊ぶスタイルでしたが,今回のリマスター版ではどうなっているのでしょうか。

菊地氏:
 Switch版の携帯モードでは,Wii U GamePadと同様に,ゲーム機本体を射影機のように構えてプレイできます。
 もともとWii U GamePadを見た瞬間に射影機に見立てて遊びたいと思いましたが,さらに,私が頭の中で思い描いていた射影機の重さとWii U GamePadの重さが,ほぼ同じだと感じました。実際に射影機を構えるようにプレイしてもらえば,ゲームの世界に没入できるんじゃないかと。これは,「零 〜濡鴉ノ巫女〜」の前にリリースした「零 〜月蝕の仮面〜」の“体感する恐怖”というコンセプトを推し進めた,重要な要素でもありました。

画像集#002のサムネイル/リマスター版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」インタビュー。普遍的な和の恐怖,自ら前へ進む体験と物語を両立したゲームならではの感覚を実現する

 もちろん,コントローラを使った操作でもプレイ可能ですし,SwitchのJoy-Con,PS5のDualSenseやPS4のDUALSHOCK 4はジャイロ機能に対応していますので,コントローラを傾けることで射影機の狙いを定めることもできます。

4Gamer:
 リマスターの作業はスムーズに進んだのでしょうか。

菊地氏:
 グラフィックスに関しては苦労しましたね。リマスターなので,3Dモデルの作り直しこそなかったものの,ハードごとに発色の違いがあったり,特性があったりするんです。それを踏まえて暗い影や怨霊の表現,そしてオリジナル版のテーマでもあった水に濡れる表現をより美しくするためにいろいろと調整をしましたね。また,細かい点ではありますが,エフェクトやライティングといった部分もブラッシュアップしています。

4Gamer:
 Wii U単独から多機種へ展開されるうえでの苦労があったと。リマスター版においての追加要素を改めて聞かせてください。

菊地氏:
 「新コスチューム」「フォトモード」です。また「霊リストの機能拡張」「エンディング曲の選択アイテム機能」などもあります。それとは別にダウンロード版プレオーダー特典である「射影機の被り物」「魔女の帽子」を用意しました。

4Gamer:
 新コスチュームには,過去のキャラクターをモチーフにした衣装やトライアスロンのウェアなどさまざまなものがありますが,選定にあたってのコンセプトなどがあれば聞かせてください。

菊地氏:
 新コスチュームについては,主人公たちのキャラクター性やゲームシステムにマッチしたものを揃えました。
 例えば,放生 蓮の新コスチュームは結婚式で着るような「新郎の服」なんですが,これはゲームの中で起こるとある出来事に関連したものになっています。ほかにも,不来方 夕莉の趣味が自転車であることにちなんだ「トライウェア」,雛咲深羽が探す母・深紅が「零 〜刺青ノ聲〜」のころに着ていたコスチュームと同じデザインの「雛咲深紅の服(刺青)」などがあります。
 基本的に旧キャラクターのコスチュームは「Digital Deluxe Edition」専用の「零シリーズ20周年記念DLC」で用意させていただきました。

画像集#004のサムネイル/リマスター版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」インタビュー。普遍的な和の恐怖,自ら前へ進む体験と物語を両立したゲームならではの感覚を実現する

 ゲームシステム側からアプローチしたコスチュームは,夕莉の「水着(青)」,深羽の「水着(黄)」「水着(ピンク)」です。水着の上にTシャツを着ているんですが,これは本作の「夜泉濡(よみぬれ)」というシステムを引き立たせるためです。ご存じの通り夜泉濡は,水に濡れると怨霊に遭いやすくなったり,受けるダメージが上がってしまいますが,このコスチュームだと濡れたTシャツが身体に貼り付くため,夜泉濡の状態が引き立つというわけです。

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4Gamer:
 新要素のフォトモードは,主人公たちを自由に配置できるという一般的なシステムに加えて,霊も配置できるというユニークな要素もあると発表されています。

菊地氏:
 はい。「零」シリーズは,写真を撮影するというゲームだったので,相性がいいんじゃないかと思ったんです。
 あとは,「心霊レンズ」というフォトモード専用のレンズで撮影すると,配置していないはずの霊が写り込むことがあるという要素も入れています。写り込む霊は,撮影の時間帯や場所によって変わり,「またコイツかよ!」というくらいよく出てくる霊はもちろん,レアな霊が写ることもあります。どこかで見たことのある霊や,ファンの皆さんなら「ついにコイツが出たか!」と喜んでいただけるような霊も写るかもしれませんよ。

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4Gamer:
 意図的に心霊写真が作れるというのは,とても面白いですね。
 3つ目の新要素は「霊リストの機能拡張」ということですが,具体的には何が拡張されたのでしょう。

菊地氏:
 あたりに漂う「浮遊霊」や,残留思念による過去の姿「残影」も登録されるようになりました。コレクション要素を強調しすぎると,物語よりもこちらに気を取られてしまうのではないかとも思ったんですが,既にプレイされている方にも,もう一度楽しんでもらいたいということで実装しています。
 ただ,フォトモードの心霊レンズで写るかもしれない霊たちについては霊リストの対象外となっています。

4Gamer:
 エンディング曲の選択機能も,既にプレイした人向けの施策なのでしょうか。

菊地氏:
 はい。もともと「零 〜濡鴉ノ巫女〜」は,エンディングでかかる曲が変化する仕掛けでした。通常はAnJuさんの「HIGANBANA」が流れるんですが,2周目以降に特定条件を満たすと天野 月さんが歌う「鳥籠 -in this cage-」が流れていたんです。今回は1周目であっても「鳥籠の指輪」というアイテムをゲーム内ので入手して装備すれば,エンディング曲が「鳥籠 -in this cage-」になります。

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4Gamer:
 プレオーダー特典の「射影機の被り物」「魔女の帽子」については新コスチュームなのでしょうか。

菊地氏:
 はい。発売前日の2021年10月27日までにプレオーダーいただくと「射影機の被り物」「魔女の帽子」が特典として付属します。
 「射影機の被り物」は射影機を頭からすっぽり被るようなもので,ちょっとコミカルな感じです。「魔女の帽子」は,文字通り魔女が被るような可愛らしい帽子ですね。発売日がハロウィンに近いので,ちょっと仮装するような感じの,フォトモード映えするものがいいんじゃないかなということでこうしたセレクトになりました。

画像集#012のサムネイル/リマスター版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」インタビュー。普遍的な和の恐怖,自ら前へ進む体験と物語を両立したゲームならではの感覚を実現する 画像集#011のサムネイル/リマスター版「零 〜濡鴉ノ巫女〜」インタビュー。普遍的な和の恐怖,自ら前へ進む体験と物語を両立したゲームならではの感覚を実現する

4Gamer:
 フォトモードがはかどりそうですね。
 今回は7年ぶりの作品となるわけですが,リマスター版だけではなく,ファンとしては新作を期待する声も多いと思います。新作やこれまでの作品の更なるリマスターといった動きは予定されているのでしょうか。

菊地氏:
 ありがたいことに,そういった声はたくさんいただいていますが,残念ながら現時点では新作やさらなるリマスターについて何か動いているということはありません。
 ただ,私が想像していた以上にファンの皆さんから熱い声や思いをいただきましたので,次の機会がありましたら,何かご報告できるようにはしたいと個人としては思っています。ちなみにゲームではありませんが,海外での映画化プロジェクトが動いている状態です。

4Gamer:
 なるほど,まず今回のリマスター版をプレイしつつ,映画関連で何か動きがあることを期待します。
 少し話が変わりますが,菊地さんは昨今のホラーゲームというジャンルの現状をどう思っておられますか。画像加工技術の進歩に伴い心霊写真が陳腐化したり,ゲーム実況が盛んになったりと,ホラーを取り巻く状況も変わってきています。

菊地氏:
 そういった変化も個人的にはマイナスにはならないと思っています。ホラーへのニーズというのは普遍的なものであり,なくなることはないですし。作品が出やすい時期とそうでない時期という,周期があるのは間違いないですが,昨今ではインディーズゲームでもホラージャンルが盛んです。

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 ゲーム実況については,観賞するという新たな楽しみ方も生まれていて,こちらもマイナスではないと思っていますが,我々としては,やはり実際にプレイしていただきたいという思いもありますね。
 実際に自分で遊ぶということは“前に怖いものがあると知りながら,自分の足で前に進んでいく”という体験をするので,自分の中にある勇気や好奇心が試され,怖いもの見たさを満たせます。苦戦した後に,先へ進めた達成感がある。自分が行ったアクションに対して霊が反応する。こうした体験は,自分でプレイしないと得られないものですし,ホラーゲームならではの楽しさだと思います。

4Gamer:
 確かに,自分の手でホラーゲームをプレイすることは,ほかでは得られない体験がありますよね。
 初見プレイでは,プレイヤーはただただ怖がる側ですが,2度目のプレイではゲーム的に克服しているので,まったく体験が異なってくる。1周目の最初は怖がって歩みを進めるのも辛かったのに,2周目はどれだけ早くクリアできるかといったことや収集要素を意識するようになり,どんどん積極的に前へ出て行くような遊び方もありますし。

菊地氏:
 シリーズ1作目の「零 〜zero〜」は,まさにそうした部分を意識して作りましたね。1周目はとにかく怖がってもらうために余計なシステムを入れていませんが,2周目からは「霊リスト」を解禁することで,プレイヤーを“霊に追われる者から追う者にしよう”と考えたんです。最初は霊に出会って「怖い!」となっていたのが,2周目は「霊だ!撮影しなきゃ!」となりますし,そこに新たな楽しみ方が生まれます。

4Gamer:
 先ほどおっしゃられた,今回のリマスター版における「霊リストの機能拡張」にもつながる話ですね。

菊地氏:
 あと,「零」シリーズは毎回ホラーとしてのコンセプトを変えていますが,いずれも時代にとらわれない普遍的な怖さを目指しています。今回リマスターした「零 〜濡鴉ノ巫女〜」は7年前にリリースしたものですが,その怖さは時代性と関係なく通用するものだと思いますので,プレイした皆さんの感想を聞いてみたいですね。
 作品の内容は,自殺や人の死に対する考え方も問いかけるという重いテーマも扱っているのですが,プレイしていただいた方の心に何かを残せるものになっていると思います。

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4Gamer:
 普遍的な怖さを追求したからこそ,シリーズは20年間支持されてきたのだと思います。そろそろお時間も迫ってまいりましたので,最後に読者へメッセージをお願いします。

菊地氏:
 皆さんの熱い想いや声援のおかげで,シリーズを20年間続けることができ,大変ありがたく思っております。「零 〜濡鴉ノ巫女〜」への感想が,「零」シリーズの今後へとつながっていけば良いなと思います。
 自身でコントローラを握り,前へ進んで達成感を得るというのはホラーゲームならではの体験です。ストーリーに集中したいという方にはイージーモードも用意していますので,これまでシリーズをプレイされていなかった方も,ぜひ今回のリマスター版を手に取ってみてください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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