企画記事
「ドラゴンクエストVII Reimagined」から見えるドラクエリメイクの進化とRPGのストーリーテリング
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ドラゴンクエストI・IIをプレイしていて思った事として「歩いて敵と戦っているうちにレベルが上がる」ってシステムそのものに問題を感じる時代になっている、ということだった。
— 岩崎啓眞@スマホゲーム屋+α (@snapwith) November 21, 2025
岩崎氏といえば,小は「ハイパーカジュアル」ゲームから,大はAAA級RPGまで,さまざまなゲーム開発やプロジェクト管理などに関わり,今でもゲームプログラマとして活躍しているベテラン開発者である。その投稿なだけに,非常に興味をそそられた。
そこで岩崎氏に,ドラクエ1&2で感じた問題点と,ドラゴンクエストのリメイク作品から見えてくる進化,そしてRPGとストーリーテリングについて,対談形式で聞いてみることとした。
対談の相手は,フリージャーナリストの西田宗千佳(にしだ むねちか)氏にお願いした。世界を飛び回り,ITに関して多方面から取材,記事執筆している西田氏だが,「そんな時間がどこにあるの?」と聞きたいくらい,いろいろなゲームをプレイしているゲーマーでもある。
![]() 岩崎啓眞。1963年生まれ。1980年代末から今日まで,ゲーム開発と運営に関わり続けているゲーム開発者。代表作は「イースI・II」「天外魔境II 卍MARU」「リンダキューブ」「MY LITTLE PONY」「ぼくのレストラン 3DX」など。「本当にためになる ゲームの歴史」(ぱる出版),同人誌の「イース通史」シリーズや「ハドソン伝説」シリーズなど著書も多数。Xアカウントは@snapwith |
![]() 西田宗千佳。1971年生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは,パソコン・デジタルAV・家電,そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。近著に「ディープフェイク」(丸善出版,3月末発売),「生成AIの核心」(NHK出版新書),「メタバース×ビジネス革命」(SBクリエイティブ)など。Xアカウントは@mnishi41 |
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お二方の対談から,ドラクエリメイクといわゆる「JRPG」の何が見えてくるのだろうか。
※ 収録は2026年2月に実施
●目次
ドラクエのサイクルを捨てたドラクエ7 Reimagined
4Gamer:
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そのポストのあとにも,追記のポストがあったり,西田さんとのポストのやりとりもあったりと,興味深く拝見してました。
多分,岩崎さんの意識としては,以前からおありだったんじゃないかと思うんですが,具体的にプロの視点から見て,本作のどういう体験から「もうそろそろちょっと問題かな」と思ったのか,そこをお聞きしたいのです。
岩崎啓眞氏(以下,岩崎氏):
これ実は,ドラクエ1&2だけではなく,ドラクエ7 Reimaginedでも,まったく同じ問題を抱えてはいるんです,正確にいうなら。
歩いてどこかに行って,行った先で何かをするという構造ってあるじゃないですか。あれは,ゲーム的な話をすると,旅のエミレーションであり,リソース管理※だったわけなんですよ。
※ ここでいうリソースとは,HPやMP,回復アイテムなど
ところが,リソース管理の部分がほぼなくなってしまったドラクエ1&2でも,歩いてバトルをして,経験値だけを上げなくちゃいけないっていうシステムになっている。
4Gamer:
実際にプレイしたときも,「これレベル上がるとHPとMP回復できるから※,あんまりリソースを気にしなくていいし,宿止まらなくていいしで,楽は楽だな」と思ったものです。
※ オプション設定で有効にする必要がある
岩崎氏:
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ロードムービー型のゲームで,どこまでか歩いていかなくちゃいけないっていうときに,歩いていく途中に障害(※敵との戦闘)があると。それでリソースが足りなくなったら,宿屋まで戻って回復して,そうすると強くなって最後にとにかくたどり着くっていう形での,旅のエミュレーションみたいなものが行われたわけです。
ところが,それがとにかく今では……,今どきのユーザーがプレイしてくれないからだと思うんですけど,たとえば基本的には,塔に着いたら,そこへ「ルーラ」できるようになっちゃう。どこかへ行くと,そこにルーラできるようになると。
そうなると,そもそものプレイが変質しちゃって,「一度でも塔まで着けばそれでいい」になっちゃうんですよね。
西田宗千佳氏(以下,西田氏):
そうですね。
岩崎氏:
実際,移動がとにかくファストラベルの世界でめちゃくちゃ便利になっちゃうと,プレイとしては旅っていう感覚が,事実上壊滅してるなと。
西田氏:
それって結局,ドラゴンクエストというか,コンピューターRPGってのがどういう風にできたかっていう歴史と変遷を考えると,実は分かりやすいと僕は思っています。
一番最初に,テーブルトークRPGであるとか,シミュレーションゲームがあったときにも,ロードムービー性は存在した。けれども,そこに一定の道を歩いて,その道中で戦うことによって障害をクリアして,目的地に行ったときにリソースが足りなかったら戻る,っていう仕組みはないわけですよね。
岩崎氏:
うん,ないですね。
西田氏:
たとえばダンジョンがあったとしたら,それはダンジョンの中を楽しむもの。ダンジョンの外だとしたら,一番分かりやすいのは「インディ・ジョーンズ」の映画の中で,マップのA地点からB地点へと赤い線が引かれるでしょう。本質的には,RPGとか冒険物の移動の描き方ってあれなんですよね。
でも,ゲームとして作るとき,とくにRPGの初期においては,繰り返しやらせることと,リソース管理をゲームとして遊ばせるっていうことを考えたときに,マップの中の移動というポイントトゥポイントだけでは,ゲームを遊ぶ時間や楽しみを見出しづらいっていう傾向があった。
リソースを消費する行動,要は戦闘ですよね。それを積み重ねていって,自分が弱かったならば,一度戻るっていう「成長を楽しませるモデル」になったわけです。
で,これを一番分かりやすい形で,日本で構築したのがドラゴンクエストであると。それにより,ドラゴンクエストっていうのはひとつのジャンルとなった。日本の中で,RPGのひとつの形になったと思っているんです。
それ以降,我々が思ってるRPG的なもの,1990年代的にいうとカタカナの「ロープレ」的なものっていうのは,ファンタジーアニメも含めて,すべてドラゴンクエストの,いわゆる移動する中でリソースが減っていって,足りなかったら,もう一度鍛え直して戻るっていうゲームシステムに,実は紐づいてるんですね。
ところが,それから時間が経ってみると,「あれはゲームのものだよね」っていうのがいろんな形で分かってきた。とくに海外においては,ドラゴンクエストのゲームモデルっていうものが,物語世界の基本ではないので,他の形がたくさん入ってくるじゃないですか。
そうすると,「別に,この形じゃなくても話ってできるよね」っていうことで,リソース管理の仕方も,途中のロードムービーの描き方ってのも変わってくるわけですね。
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でもその間を,どうつなぐかであるとか,どうリソース管理するであるとか。ある戦いのときに,どこまで自分が強くなっているべきかみたいなこととか,それをどうクリアするかっていうのは,実は一本には決まってないわけですよね。それによって自由度を保っているわけです。
一方で,ドラゴンクエストのシステムっていうのは,そういう結節の中で自由度を上げるっていう仕組みではなくて,全体の流れの中で,どういう風なブレをユーザー体験として楽しむか,という構造になってるので,本質的にやっぱり違ってる。
それはいい悪いじゃなく違うもので,ただ,その違うものを,多くの人が楽をしたいっていう今のトレンドの中に詰め込んだとき,「あれっ?」ていうシーンがやっぱり出てきてしまう。
岩崎氏:
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マップを歩くシステムはUltima由来だけども,ドラクエのゲームサイクル自体は,「Wizardry」なんですよ。
Wizardryの街が移動していくゲームだと思えばいい。だから,「ギルガメシュの酒場」がそこらじゅうにあって,酒場の間を移動していくゲーム。その構造なんですよね。
西田氏:
面クリア型のゲームに,実は構造が近いんですよね。
岩崎氏:
近いです。
で,そういう構造を持っているゲームと,今のたとえばオープンワールド的な仕組みとの相性の悪さっていうのを,僕はすごく感じてしまう。
正確にいうなら,「昔のドラクエのシステムと,今のゲームは相性が悪い」というのが,正しい表現ですね。
西田氏:
ドラクエというシステムが面白くないとか,魅力がないって話じゃないと思うんです。そうじゃなくて,ものすごく人にストレスを感じさせないタイプの遊びかたが基本になった今のシステムとは,相性が悪い。
岩崎氏:
それでね,僕がびっくりしたのが,ドラクエ7 Reimaginedなんです。
びっくりしたのが,まずシンボルエンカウントにしたわけですよ(※洋上のみランダムエンカウント)。シンボルエンカウントにしてあるから,めんどくさかったら,もう戦闘を全部回避できる(笑)。
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ある程度強くなると,今度はシンボルの敵を叩くだけで,もう一瞬でフィールド上のバトルは終わるという。なんていうのかな,ドラクエのサイクルを捨てたドラクエになってたんですよね。
西田氏:
そう,僕自身も感じたのが,これはドラクエを究極的に楽にすることによって,最後まで勢いで遊ばせるゲームだなということ。それはそれで正しい。
とくに(オリジナルの)ドラクエ7って,パートの塊,ある人が「YouTube ショートやTikTokみたい」っていってたんですけど,昔の「PlayStation」のディスクでプレイさせるので,短いストーリーがたくさん集まっていた。それが最終的にひとつの塊になっている,っていうゲームだと思うのですね。
これをどうやって,今のストレスなく遊ばせようかって考えたときに,勢いで押し流す。どこまで行っても止まらない形にするっていうのは正しくて,それゆえに,ドラクエ7 Reimaginedは,ものすごく良くできてると思うんですよ。
岩崎氏:
ドラクエ7 Reimaginedでびっくりしたのは,ドラクエが元々持っているサイクルっていうのを捨ててしまって,どちらかというと,今のオープンワールドRPGとかに近い構造にしちゃったと。
オープンワールドというのは,どういう構造になってるのか。めっちゃ簡単にいうと,オープンワールドは,どこでも移動することは基本的に許されます。ただし,移動する先にたとえばダンジョンとかがあって,ダンジョンにはちゃんと難易度がある。ダンジョン内に入ったら,それなりに難しいのとかやばい敵がいたりすると。
だから,移動するのは自由だけれども,攻略する順番は,実は制約されている,そういうゲームがまず多い。
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基本的にオープンワールドっていうのは,思想的には自由にどこでも移動できるけども,そこにあるダンジョンだったり倉庫であったり,何だったりしますけども,そこにある倉庫に入ることには,そこには難易度がありますよと。
そういう,ゲームでブロックする,シナリオ進行をブロックしていく構造になってる。
それで,ドラクエ7 Reimaginedは,まさにそれになっていたから,「嘘やろ,このゲーム!」って驚いたという(笑)。
西田氏:
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これは,結果的になのかもしれないけれど,ドラクエ7 Reimaginedを作るときに,そのショートストーリーの構造体というのが,今いうところのオープンワールドのクエストの集合体に近い構造を持っていた。
さらに,クエストとクエストの間がギャップがない。
これもちょっと感じたのですけど,石板を集めると地図が開いて,あるクエストが始まって,次のマップやらに進んだときに,難易度の差っていうのが全然急峻じゃないんですよね。ほぼほぼつながってる。
あれは,始めたが最後,時間があるんだったらセーブしなくていいってところもあって,どんどんつなげて遊んじゃう。
岩崎氏:
いやあ,(プレイし始めると)溶けますね時間。びっくりした。
西田氏:
そうそう。これは非常によくできた構造で,今の忙しい人に,しかもこれまでにドラクエ7やったことがあるかもしれない人に,「ドラクエ7 Reimaginedっていうのは,今こういうゲームですよ」って楽しませようと思うと,あの構造しかない。非常によくできた仕組みだろうなと思いました。
ランダムエンカウントは,なぜシステム的に厳しいのか
西田氏:
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でも,手触りでいうと,昔のドラクエ7であるとか,今までのドラクエとは違う。ドラクエ1&2とも,ドラクエ3 HD-2D(ドラゴンクエストIII そして伝説へ…(HD-2D版))とも違う。
岩崎氏:
うん,違いますね。びっくりするぐらい違っている。感心しましたよ。
とにかくそれで(ドラクエ7 Reimaginedを)普通に遊ぶと,これが結構またよくできてるのが,道中とかは,ほとんどリソース管理いらないんだけど,要所要所に置いてある強い敵だけは,本当に強いんですよ。
昨日も(強敵に)2人ぶっ殺されて,ギリギリで切り抜けて「マジかこのゲーム!」と(笑)。
西田氏:
それはやっぱり,ドラゴンクエストっていうものが,強いボスであるとか,何かに勝てなくて,悔しくて乗り越えるときの気持ちよさみたいなものが,ひとつの快感生理の中にあるからだと思うんですよね。
これってドラクエ1&2の,とくに1がそう。強い敵がいて,普通に「たたかう」連打では勝てないっていう構造を,ちゃんと作っている。
これに慣れてないと,「今回は,なんかめちゃめちゃ難しくて分からない!」って言われちゃう。
だけどあれは,今までプレイしてきた人が,今までのままじゃ突破できないけれど,ちょっときちんと工夫したり,育てたりするとこのハードルをちゃんと超えられるっていう作りになっている。
実は「ドラゴンクエストの本質って,そこなのかな」と,ドラクエ1&2とドラクエ7 Reimaginedをプレイして思ったんですよね。
岩崎氏:
うんうん。
西田氏:
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よくその当時に言われたのが,「日本のゲームなんてツアー旅行みたいなもんで,誰でもついてけば終わるじゃん」みたいな言い方をされたわけですよ。
でも冷静に考えると,ツアー旅行で何が悪いのと。
ツアー旅行の中で,きちんと狙ったところに歯応えがあって,その歯応えを超えたときに明確な快感があるって,これはゲームとして非常に優れた作りだなって思えるようになった。
むしろオープンワールドタイプの多くのゲームの欠点は,その歯応えがみんな適当なんですよ(笑)。
確かに歯応えはあるんだけど,ちょっと噛んだら終わりみたいなのがたくさん並んでて,要はメリハリがないので,「これいつ止めるのかな」みたいな感じになっちゃう。
そのメリハリを,多くの場合にはストーリーの中での難所で作ってるっていうのが,実情だと思うんですね。
ドラクエの場合にも,もちろんストーリーの中で難所にそれを作ってるんだけど,戦闘でちゃんとそれを作ってる。ただ,死ぬほど何回も繰り返せば,経験値が増えてレベルが上がることによって,その難度を頭を使わなくてもクリアできる。
頭を使えばもっとクリアできるけども,頭を使わなくてもクリアできるようになってるっていうのは,ドラゴンクエストがずっと持ってた特性であるし,その特性が今もちゃんと生きてるんだろうなっていうのを,ドラクエ1&2とドラクエ7 Reimaginedをやり直して,改めて思ったことですね。
4Gamer:
岩崎さんが,著書(※「Re:ゼロから始まるゲームシナリオ」)で書かれている「成長メカニクスの利点」ってやつですよね。
岩崎氏:
ですね。ただ,ドラクエ1&2は,僕はとくに1は評価が高いのですけど,反面,とにかくそのパズル要素がきつすぎてね(苦笑)。
西田氏:
決まった戦い方を強いられる感じはあります。
岩崎氏:
ええ,「これは,こうやらないと勝てないわけだ」っていうのがね。
4Gamer:
プレイしてびっくりしました。「え,こんなところで死ぬ?」とか,「なんか雑魚に普通にやられたんだけど?」というのは,確かにありました。
岩崎氏:
そういう問題が,ちょっとドラクエ1&2の,とくに1にはキツくあって。
ドラクエ3 HD-2Dで,僕は問題だと思った要素が,ドラクエ1&2では違う形に修正されていた。そのときにプレイをしながら,「このランダムランダムエンカウントっていうのは,もうシステム的には結構厳しいな」と思ったんですね。
ランダムエンカウントっていうものが,なぜシステム的に厳しいのか。「歩いていくときに,ランダムに敵と合うってのはなぜなんですか?」ていう質問をすると,結局のところ,リソースを削るための用意なのですね,あれは。
西田氏:
時間あたりで,どれだけプレイヤーの持っているリソースを削って,次にリソースを再構築する時間を使わせるかっていうことですね。
岩崎氏:
だから,ランダムエンカウントっていうのは……,僕はあれを(ゲーム制作時に)使ったことがあるから逆に分かるんだけども,町から町までの距離がこれだけありますと,その間にバトルが何回ある。
バトルを平均何回やると,このレベルのキャラクターはここでHPがなくなってリソースがなくなるので,戻らざるを得ないと。で,それで戻って回復して,もう1回来ると途中でレベル上がる。レベル上がると,回復して次のところまで行ける。
ついでに,レベルが1段上がると,強くなってレベル補正がこれぐらい効くから,ダメージもこれぐらいになって……という,そういうシステムなんです。
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岩崎氏:
ランダムというと,よく分からないように思えるけれど,要はランダムエンカウントってのは,一定回数以上を敵と戦闘してもらう,強制的に戦闘してもらうためのシステムなんですよ。
ところが,ドラクエ1&2で問題だなと思ったのは,まさにそれです。
新しいドラクエリメイクでは,事実上リソース管理がいらない。その状態でありながら,ランダムエンカウントによってリソースを削ることの意味のなさ。
ドラクエ3 HD-2Dは,さらにそれがちょっとひどかったんですけども,ドラクエ1&2をプレイしながら,ランダムエンカウント自体がもう古いな。古いというか馴染んでいない,今欲しいゲームと。
しかも,ドラクエ1&2のどちらでも,ランダムエンカウントで出てくる敵の組み合わせによってはとんでもないヤツがいて,なすすべもなくさっくり死んだりすると(笑)。
これはちょっと,やっぱいろいろいただけねえなと。
西田氏:
これは僕の考えですけど,ゲームの仕組みの中のひとつに,自分が行く先が見えてるか見えてないか,という問題があると思うんです。
で,ランダムエンカウントって,自分が行くところが見えてないゲームと,非常に相性がいいんですよ。未知の敵が突然現れてくるっていうシチュエーションに,とても合っている。
ところが,今のオープンワールドのシステムって,自分が行くところって大体見えてるんですよ。そうすると,その間に出てくるランダムエンカウントの敵っていうのは,場合によっては本当に,単なる障害になるわけですよ。未知性もなくなる。
さらに,ランダムエンカウトを繰り返してレベルアップするっていう仕組みは,毎回同じところで敵が出て戦っていると,レベル上げをするときには本当に作業になるわけですよ。だから,Wizardryにおいて玄室※のドアを開けるっていうのは,作業化するわけですね。
※Wizardryにおいて,迷宮内にあってドアで区切られた部屋のこと。部屋に入ると,ほぼ確実に敵と遭遇して戦闘になる
岩崎氏:
作業化しますね(笑)。
西田氏:
必ずそこに敵がいるのでね。でもランダムエンカウトで何が出てくるか分からない,どこで会うのか分からないっていうのは,人間に対してドキドキを与えるので,あれはゲームシステムとして成立するわけですよ。
ところがそうではなく,どこに行くかが大体分かっていて,どういうところに行くので,ゲーム内にどういう障害があるかっていうのを分かってる仕組み。いうなれば,早く回転していくゲームの仕組みにおいて,ランダムエンカウントで自分が分からない状態があるっていうことは,(プレイヤーにとっては)決して良くない。
不快感が先に立つようになってしまう,面倒くさく感じちゃうっていうところがあるんだろうなと思うんですよね。
これが,本当に先の未知性が高いゲームだったら,(ランダムエンカウトでも)合うんだろうと思います。でも,もはや今のゲームシステムはそう作られていないし,ユーザーもそれを望んでいるわけではない。
岩崎氏:
望んでませんね。
西田氏:
なので,ちょっとそこは合わないんじゃないのかなと。
だから,ドラクエ7 Reimaginedは止めどきがないっていうのも,結局はそういうランダム性がないからだと思っているんですよね。
全部,プレイヤーの選択に依存している。出てくるモンスターの数ぐらいが違うぐらいで,あとはそんなにランダム性ないじゃないですか。そうすると,自分の意思に応じて,どこまで進むかとかどう倒すかを決められるから,今のゲームにはそっちのほうが合ってるということだと思います。
岩崎氏:
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だから,ボスのすぐ横で,女神の像でフル回復が基本になってるという。
西田氏:
ゲームって昔は,ある意味,マゾじゃないとできないものだったと思うんですね。言葉が正しいかどうか分からないですが。苦しさっていうのが楽しみにつながってた。それが30年,40年経つうちに,そればかりを求める人ではなくなった。
だから,苦しさを与えるゲームって,明確に苦しさを与えるためのゲームなんですよ(笑)。いわゆるソウル系は,完全にそうなってるわけじゃないですか。でもあれは,見えているところにランダム性は,どこにもないですよね。だからこそ,あの苦しさを耐えられるわけです。
今,ゲームに求められるものとして,苦しさを与えるものであれば,明確にランダム性がないものだし,逆に苦しさを与えないものだとするならば,ランダム性を与えられても仕方ないし,むしろあってはいけない。
岩崎氏:
できるだけなくしたほうがいいですね。
だからそういう意味で,本当に(ドラクエ1&2を)プレイしていて一番思ったのは,ランダムエンカウントによってリソースを削減して,それによってゲームのサイクルを回していく,(目的地に)なかなか行けないようにするというシステム自体がもう……。
そのシステムで行けるようにしてしまったゲームなので,破綻してるな,と思ったわけです。
西田氏:
多分,ダンジョンゲームで先が見えないっていうもので,ランダム性を出すんだったらありなんだと思うんですよ。ローグライクゲームで,その先が毎回見えないとか,与えられるリソースがはっきりしないみたいなゲームっていうのはランダム性でもいい。
岩崎氏:
ランダムの塊ですからね,ローグライクは。
西田氏:
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では若い層は,これをどういう風に捉えているのかっていうのは,非常に興味があるとこなんですよね。
岩崎氏:
だからドラクエ7 Reimaginedは,今まで僕の見たあらゆるドラクエリメイクの中で,疑いもなく最高の出来ですね。びっくりする出来でしたからね。
HD-2Dにおける大きな問題点
岩崎氏:
もうひとつ,ドラゴンクエストのHD-2Dリメイクにおける非常に大きな問題点というのは,「何のためにドット絵使っているんですか」という点です。
背景リッチな3Dにしてドット絵にしてます。僕は技術的な癖もあって「ビルボード」と言いますが,そのビルボードを立てますと。別に,それ自体は悪いと思いません。
でも,これらの作品では,背景の絵とビルボードはマッチしてませんよね,っていうところから話が始まってしまう。
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ところが,ドラゴンクエストのHD-2Dリメイクは,それが全然マッチしていないんですよね。
西田氏:
ダンジョンの構成が,今までと基本は同じなんですよね。そうするとどうなるかというと,今までは,上から俯瞰で見ていたので,どの道を通るかっていうことを,ゲームの中の謎解きに入れられた。ところがHD-2Dになって,斜めから見る背景とビルボードになった瞬間に,見えない場所ができるわけですよね。
たとえば,見えない場所があることをゲームメカニクスに生かしてるならいいんだけど,そうじゃなくて単に見えないから,分かりづらいだけなんですよ。
4Gamer:
目的地が見えなくても,マップ画面を開けば見えちゃいますから,なおさらですね。
西田氏:
そう。で,それがドラクエ7 Reimaginedになってどうなったかというと,画面を回せるし,回せなかったとしても,どうせ見えるからっていうことで,それをメカニクスには使わない。
岩崎氏:
ちょっと角度は変えて回せて,ダンジョンでもある程度動かせるんですね。
西田氏:
あれによって,要は,そういうある種のユーザーが感じる理不尽さっていうのがなくなる。
結局,作る側の事情で生まれてくる理不尽さって,わりとユーザーは明確に感じちゃうので,それがHD-2Dを使ったドラクエ1&2やドラクエ3 HD-2Dの課題かな,とは思いました。
ダンジョンの構造とかを全部変えて,ビルボードでのシステムに合わせた街とかマップ構造にしてしまえば,おそらくそんなに,そこまで不満も感じなかったし,「これはこういう風にリメイクしたんだね」と感じたと思うんですけど,それがちょっと中途半端だった。意外と,そのまんまで。
たとえば,とくに3がそうですけど,そのままマップを使ってビルボードを立てているので,これは違うなと思ったんですよね。
岩崎氏:
あともうひとつ,僕がHD-2Dに対してはっきり持っていながら,うまく言語化ができなくてずっとモヤモヤしたことがありました。
それがドラクエ7 Reimaginedをプレイしたときに,こういうことだったんだって自分で理解したのは,HD-2Dは,結局のところビルボードを立てて俯瞰の斜め見下ろし角度でマップを見るというゲームにしてしまったがゆえに,非常に大きな問題が発生している。
それは何かというと,カメラアングルを捨てちゃったんですよね。
だから,あらゆるイベントが,同じ角度の同じ俯瞰の同じアングルで進行するじゃないですか。これが辛い。何が辛いかというと,結果的に,イベントが今風にならないんですよね。と言って昔風でもないっていう。
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西田氏:
昔でいえば,FF7(ファイナルファンタジー VII)は,ビルボードで背景固定でアングル固定なんだけど,シーンによって角度が変わったから,それに合わせてメカニクスを作れたわけじゃないですか。でも,HD-2Dってある一方向なんですよね,全部。
岩崎氏:
そのために,ものすごくゲームにというか,イベントにすごい制約ができている。
その制約が,またこれがよろしくないのは,たとえばドラクエ3の有名な「幽霊船のイベント」とかにしても,(ドラクエ3 HD-2Dでは)結局のところ,マップの上でこうやって終わりかい! っていう。
その問題点が,ドラクエ7 Reimaginedをやった途端に,パッと言葉になった(笑)。
ドラクエ7 Reimaginedは,フルポリゴンで作ってもう完全に3Dのモデリングにした。結果的に何が起こったのかというと,イベントのカメラの角度が自由なんですよね,当たり前なんだけど。
いくつかは(角度が)固定されてるんですけど,とにかく要所要所のここ一番では,ちゃんと角度をつけてコントロールして見せ方も変わる。キャラもアップにもロングにもなるし,とにかく見せ方も変わると。そういう違いがあるんだっていうのに気付きました。
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西田氏:
おそらくなんですけど,ドラクエ1&2やドラクエ3 HD-2Dに関しても,初期の段階で,ここはこう変えましょうって決めとけばできたはずなんです。
HD-2Dであったとしても,じゃあシーンごとにちょっと変えましょうとか,イベントのときは俯瞰にしましょうとか決められたはずなんだけど,憶測を含むのですが,(開発を)スタートしてしまったがゆえに,作ってる最中に変えられなかったんだと思うんですね。
「もうここまで作ちゃったから,こういう風に作っていくしかない」っていう前提になったのではないか。ドラクエ3 HD-2Dには,非常にそれを強く感じるんですよ。
岩崎氏:
開発が難航したという話は,漏れ聞こえていますね。
西田氏:
時間がなかったんだろうな,とは感じます。一方でドラクエ1&2は,今どきのゲームとして面白くしようと,工夫した跡が見えるんですよ,明確に。
岩崎氏:
分かる。
西田氏:
ドラクエ3 HD-2Dがこうだったから,ドラクエ1&2はこうしたいっていう強い意思が感じられる。ドラクエ3 HD-2Dは,もうスケジュールが決まっているから,ここにとりあえず合わせようぜっていう何かを感じるんですよね。
岩崎氏:
うん。バランスに関しては,そういう雑さはありますよ。
西田氏:
バランスの雑さはそうですね。それに対して,ドラクエ1&2,とくに1のバランスが全員に良かったかっていうと,それはどうだろうなと思いますけれども。
「面白くしよう。1のシンプルさは,このまんまじゃダメだから面白くしよう」っていう,ゲームを作ってる人たちの強い意思をすごく感じます。
岩崎氏:
分かります分かります。ただ,それのおかげで,とくに○○○○はどう見ても無能だろって(笑)。だってローラ姫がそうだって分かってんだったら,もうちょっと早く手を打とうよと。挙げ具の果てにさらわれたじゃねえだろ!ってね(笑)。
西田氏:
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その矛盾の発生が,結局ゲームシステムと物語を語るということに対して,非常に大きな制約になってるというのは,まさに押井 守さんが,この「注文の多い傭兵たち」の元になった連載コラムを書いたときと(※1990〜1992年),何も変わっていないですね。
これだけゲームに使えるリソース※が多くなっても,人間にコントロールできてゲームの中でコントロールできる範囲っていうのは,そこまででかくなってない。結局,矛盾は抱えたままですよね。
※ ここでいうリソースとは,CPUやGPUの演算能力や,メモリやストレージの容量といったソフトウェアが使える計算資源の意味
岩崎氏:
いや,本当に。でもね,押井さんのこの本は,僕がゲームを作っていく中での,ある種の非常にインパクトのある内容だったんですよね。
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西田氏:
そうですね。
岩崎氏:
ドラクエ3は,なんだかよく分からない少年が,なんだかよく分からないけど旅に出たお父さんを追っかけていったら,そのお父さんは,途中で死んでましたっていうね。
西田氏:
ドラクエ3に関しては,僕は,結局どういうゲームだったかと結論するならば,場面があるゲームなんですよ。ストーリーがあるのではなくて,場面があるゲームなんですね。
それがドラクエ4は,章立てができることによって,ストーリーがあるゲームなった。
岩崎氏:
ドラクエ4と3の違いというのを,先ほどの幽霊船のイベントを例に挙げますと,幽霊船の話というのはストーリーではなくて,エピソードである。そのエピソードが,あちこちにごちゃごちゃある。
エピソードをとにかく追っかけていくと,最終的にボスに行きついて,そこからとにかくそれを倒すと,最終的に下へと落ちて,さらに大魔王を倒して終わりっていう,そういう話になっている。
だから,あくまでもエピソードの羅列なのであって,ストーリーがあるわけじゃなかった。
それがドラクエ4で,初めてストーリーになるんですよね。全体を通したストーリーとしてでき上がる。最初から最後まで,ちゃんと種も仕かけも全部あって,それが好きか嫌いかはあるけれど,それが一番最後にちゃんとラスボスで終わる。
西田氏:
あんまり指摘されないんですけど,ドラクエ4,5,6って,実は(当時の)ファイナルファンタジーシリーズに似ているんですよね。
岩崎氏:
はい,似てますね。
西田氏:
あの当時のゲームにおいて,ストーリー主導に指向しようとすると,どうしても似てくる。でも,ゲームとしての手触りがFFとドラクエでは違うから,ドラクエとFFは違うねって話。
でもストーリーを指向するって意味合いにおいては,実は類似性が非常にある。
4Gamer:
当時のゲーム機のリソースできるドラマを,RPGというお皿の上で展開しようとすると,ああするのが最適解になるということですね。
西田氏:
また当然のことながら,PlayStationになったドラクエ7から後では,目指してる方向が全然違い,リソースも違うから変わってくわけです。だけどドラクエ4,5,6については,ドラクエとFFはとても似ている。
岩崎氏:
似てますね,確かに。FFは,FF2(ファイナルファンタジーII)から本格的にストーリーが入り出すわけですけれども,その影響をドラクエも強く受けてるな,と思うときはあるんですよね。
西田氏:
そのこと自体は,確か堀井さんも折りに触れてインタビューなんかで,「影響は受けてる」って話はしています。要は,彼らも意識したうえで,今求められるものは何かっていうことで,作っていたんだと思うんですよね。
それと,(メディアによる)ネタバレに(パブリッシャが)強く反応するようになったのも,ドラクエ4からなんですよね。
ドラクエ3のときには,敵を掲載しちゃって怒られるぐらいはあったけど。どういうストーリーであるとか,どういう流れであるかみたいなことをゲーム雑誌とかに対して(記事として掲載することを)コントロールをしていたのって,僕はドラクエ4からのように記憶しているですよね。
岩崎氏:
ドラクエ3のときまでは,そこらへんは曖昧だったと思います。コントロールしないと,ドラクエ4はネタバレしますから。
西田氏:
そうですよね。あれはやっぱり,章での展開で何が起きるかっていうことが面白かったし,章の間で何が起きるかとか,一番最後の展開とかが,ある種ドキドキの要素だったからですよね。
岩崎氏:
ドラクエ4は,ドラクエの中で,僕がプロとして一番研究したゲームなんですよ。なぜかというと,あのとき天外2(天外魔境II 卍MARU)を作ってたので。
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※ 「桃太郎電鉄」シリーズや「天外魔境」シリーズ,「俺の屍を越えてゆけ」シリーズなどを手がけたゲームデザイナー。天外2ではディレクターを担当した
たとえば,多分初めてだと思うんですけども,いわゆる負け確定バトルを初めてやったのが,FF2だったと思うんです,おそらくですけどね。これを,ドラクエはずっとやらなかったんですよね。
ところが,ドラクエ4のあの姉妹で,初めてそれをやるじゃないですか。あのときに僕らの間では,「これはありなのか,なしなのか」っていうことを,すごい議論しました。
僕と桝田さんは,そのときに結論として「これはなしだ」っていうのになりました。なぜかというと,(プレイヤーに)リソースを使わせた挙げ句に,とくに回復アイテムとか,そういうものを消耗した挙げ句に負けるという形になる,それを強制させるのは,あまりちょっといただけないよっていう話になった。
それでとにかく,じゃあこの強制負けはなくそうと,強制負けをするんだったら,もう行ったらいきなり負ける。
西田氏:
戦った結果負けるではなくて,それはイベントとして負けると。
4Gamer:
逆に考えると,FF2では,初めての強制負けがまだゲームの冒頭だから,何も持ってないし失うものがないから許される。ドラクエ4は,章単位で区切るから,ここで負けても次の第5章に進めるので実害はない,というわけですね。
岩崎氏:
ただ,あれでもやっぱりドラクエでは,実はかなり問題になっていました。なんで問題になったのかというと,今までルールとしてなかったじゃないですか。多分,当時の開発スタッフの想定外だったと思うんですけども,負けるとプレイヤーがリセットするんですよ。
西田氏:
ああ,なるほど……。
岩崎氏:
負けるとリソースがもったいないじゃないですか。だから,負けるとリセットする人は結構いて,それによって進まない,倒せないっていう文句がかなり来たという話を,当時は……「マル勝ファミコン」※か,マル勝編集部で聞いてました。
それもあって,桝田さんにその話を伝えて,「これはちょっとやめたほうがいいよね」っていう話になったんですよ。
※ 角川書店が発行していた1986年創刊のゲーム雑誌
西田氏:
リセットはしませんでしたが,「えっ? ドラクエでこれありなんだ」みたいなのは,確かにあった記憶があります。
それよりはだいぶ後ですが,それこそFF7での,エアリスが生きてるかどうかみたいな話を含めて,ゲームの展開によって取り返しがつかないというか,破壊的な変化が起きるっていうことを厭う,もしくはそれが回避できるんじゃないかって思う文化って,その頃から存在してたわけですね。
でも,実際はストーリーものなんだから,そういうこともあるに決まっている。だけども,それが許容されるまでって,相当やっぱり時間が必要だった。ゲームってこういうもんだって思い込みがあったので。
岩崎氏:
あれはだから,僕らが一番研究したドラクエだったんで,少なくとも僕らはやらないほうがいいよね,っていう話になったんですよね。
ドラクエ1&2の戦闘はカードゲーム的
西田氏:
そういう意味で,ひとつおうかがいしたいのが,ゲームを作るときに同心円上に敵が配列しちゃう問題です。
結局,RPGってロードムービーだから,遠くへ行けば行くほど,話が進んで難しくなるっていう構造があるわけです。でも,これって非常に不自然で,遠くに行った中で話が進むときに,これはどういう序列になるのみたいな問題が存在する。このジレンマと,ありとあらゆるRPGは戦ってるわけですよね。
旅立ちの街から難しいってのはありえなくて,旅立ちの街から,必ずボスは遠いところにいる。ドラクエ1は近くに見えますが,絶対そのままでは行けないから,あれは直線距離にすると遠いっていう構造がある。
で,この構造を,天外2もそうだし,ありとあらゆる形でゲームは避けようとしてきたわけですよね。そう思わせないようにするっていう仕組みをどうするかという話を,当時の開発チームの間でしてたことあります?
僕は,そこがゲームのシステムの中ですごく興味深いところだと思ってて。現実にはそんなありえないわけです。遠くに行くほど強いって。
岩崎氏:
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天外2の前には,僕らもそれなりに理屈は立てていた。天外2の場合には,(敵対勢力である)「根の一族」も力を取り戻して,とにかく今は侵略を一生懸命やっているという状態だから,後ろのほうのやつが強くなるんだよと。
そういう設定的には,僕らはそういうふうに考えていた。そうなんだけど,やっぱりその設定って必ず使えるもんじゃない。1回限りしか使えないアイデアなんですよね,極論すると。
だからその問題というのは,旅立ちの街から先に進んでいくタイプのRPGで,しかもランダムエンカウントである限り,実は避けられない。
その反面,すごい矛盾があるのが,たとえばオープンワールド系ゲームのひとつの頂点だと僕が思っているブレスオブザワイルド(ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド)なんかになると,なんてこともなく走っていたら,突然山道に「ライネル」(※シリーズ伝統の強敵)がいて,いきなり死ぬという現象が起こるんですよね(笑)。
西田氏:
今のRTAが成立する理由は,実はそこにもあると思うんです。一方で,その矛盾っていうのと,必ずゲームは戦わなきゃいけない。
さらに言えば,今のオープンワールドゲームだと,場合によっては,最初は弱いけど,自分のレベルに合わせてありとあらゆる世界の敵が,なぜか強くなっていくっていう構造もあったりする。
あれは確かに,ゲームの面白さを常に一定に保つけど,一方でいつまで立っても辛いので,「俺TUEEE」にならないっていう欠点が存在するわけですよね。
岩崎氏:
なりますねえ。
西田氏:
RPGには,それが存在するわけじゃないですか。強くなったときに蹴散らせる快感っていうのが。ドラクエが好きな人であればあるほど,実はこれに魅力を感じてる部分って多々あると思うんですよ。
岩崎氏:
ありますね。僕の知り合いのライターなんですけども,趣味で遊ぶゲームは全部,たとえば旅立ちの街から出たところで,最大レベルまで上げちゃうってヤツがいましてね。
彼なんかは,あらゆる敵をね,もうひねり潰していくのが最高に楽しいんだってわけですよ(笑)。
西田氏:
結局,上限レベルになってありとあらゆるボスまで含めた敵をなぎ倒せるっていうのが,ゲームの快感,快楽であるっていう人は確かにいて,それはそのとおりでもあるんですよ,実際。
4Gamer:
僕,わりとそうかも(笑)。いまだに「Starfield」やってるのは,あまり頭を使いたくないときに,めっちゃ強い武器で敵をなぎ倒すのが楽しいってのはあります。
それ以上に,宇宙船を自作するのも楽しんでますが。
西田氏:
そうか,押井さんが「Fallout 4」をずっと8年間やり続けてるのも,同じところはあるのかもしれないな。
自分の中で,それを一番最初に感じたのが,高校の頃にWizardryをやってる友達が,「レベル400になっても,毎日レベルをいくつずつ上げてる」みたいな話をしていて,「はぁ?」って思ったんですよ。そこまで行くと,どんな敵も強くないから面白くないだろうと思うんだけど,「この無双っぷりがいい。でも首切られたら死ぬだろう?」って。
で,これは確かにそうだなと。
ゲームしてる人のいろんな話を聞いていくと,僕はわりと加減して,快適なところでやめるのが好きなんですよ。ところが中には,「俺TUEEE」っていうのが,ゲームの中のひとつの快感原則である人が,多々いるんだなと思います。
ドラゴンクエストは,実にその生理に合ってる。多分,ほかのゲームよりも,「俺TUEEE」をやったときの快楽とかのバランスがいいゲームなんだと思います。
岩崎氏:
とくにドラクエ7 Reimaginedはすごいですね,そこも。めちゃくちゃ気持ちいい。
西田氏:
そうか。僕まだ,いいとこ10時間ぐらいしかプレイできていないんで,そこまでの感覚はないですけど,でもそうかもしれないな。確かに。
岩崎氏:
僕は,実はゲーマーとしては完全に逆の人で,弱いところが面白いんですよ。
西田氏:
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そういう意味では,自分もRPGをたくさんプレイしているんですけど,冷静に考えると,レベル上げを楽しんだことが実はあんまりない。
まさにドラクエ1&2で1をプレイしたときに,「あっ! これカードゲームだ」って思ったんですよ。
RPGの手触りよりも,カードゲームで「次に何のカードを切るか」っていう感覚にすごく近かったんですね,ゲームのメカニクスが。
実はここ10年ぐらいやってたゲームで,自分が好きだったゲームは,そういうゲームばっかりなのかなっていう気はしたんですよね。
4Gamer:
それは具体的には?
西田氏:
たとえば,「次にどの手を切るか」というときに,もちろんバリエーションはあるんですけど,相手に対してメタを張るってよくあるじゃないですか。そのメタを張ることに対してちゃんと自覚的であるというのは,わりとカードゲームのロジックなんですよね。
RPGのロジックって,必ずしもメタを張るロジックではなく,「力 is パワー」みたいなところがあるので,それでカバーできる。しかし,とくに今回のドラクエ1の場合,最善手で進めようと思うと,ちゃんと相手が何をやってくるかってのを読んで,メタを張っていくのがベストなプレイになるんですよね。
それって,カードゲームにおけるコンピューターのプレイに似てる。人間相手だと,手の読みかたが難しくなってくるので,実はメタを張りづらいのですが,カードゲーム的な戦い方だとそうなるなと。
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岩崎氏:
はい,強いゲームでしたね。
西田氏:
アクションで連打して倒したかというとそうではなくて,この敵はこのメタだなっていうのを,結局探してた気がしてるんですよね。
岩崎氏:
まあ,指輪いっぱいつけると,全部終わりますけどね(笑)。
西田氏:
バルダーズ・ゲート3もそうですよね。もともとの「Dungeons
それはゲーマーがよくやるパターンで,特別なプレイであるわけじゃないと思ってるんですけど,そういう要素が最近のゲームでは,レベル上げを強制しないって意味合いも含めて,多くなっている。
とくに,RTAとかのとの相性もいいので,実は多分,今のゲームには向いているんじゃないかと。
ビルドゥングスロマンが好まれてきたJRPG
岩崎氏:
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この「注文の多い傭兵たち」でも書かれていることで,そのとおりなんですが,目標に対してレベル上げをして,時間をかけて育てなくちゃいけない。そうすれば目標が手に入る。これは,簡単にいうと,ストーリーの展開を遅延しているということになるんです。
ストーリーの展開を遅延するというのは,やっぱりかったるいじゃないですか。ドラクエというゲームは,そこをとにかくうまくごまかしてきたんだけど,そこがごまかせなくなったなっていうのが,僕が(ドラクエ1&2で)古いって思った理由だったんですよね。
というか,ランダムエンカウントが古いってのは,結局そこにつながっている。
なぜ,ドラクエ7 Reimaginedでは,その問題をあんまり感じられないか。それは,さっき言ったとおり,シンボルエンカウントにしてとにかく先に進んでいける。そうすると,ストーリー展開に対する制約が,ボスに勝てない以外ないんですよ,簡単にいえば。
僕は,ゲームデザインするうえでよくいうんですが,バトルというのを極論すると,自分のリソースが尽きるまでに相手のリソースを消去するゲームであると。
そのときに致命的なリソースは,基本的にはHPであると。パーティーの誰かのHPが0になると,基本的にすごく不利になる。そのために,HPが0にならないように攻撃よりも回復量を常に維持して,ある程度HPを維持する。そのために,リソースを使ってHPを維持するゲームだと。
そのリソースを使ってHPを維持するときに,「必要なリソースって何なんですか?」と言われたら、一番重要なリソースは,ドラクエにおいてはMPになる。
ところがドラクエ3 HD-2Dで大きな問題になったのは,そのリソース自体が大きいから,結局のところ「リソース管理って意味ねえじゃん」ということでした。
そこでどうしたのかというと,1ターン3回行動を当たり前のゲームにしちゃったというね(笑)。
西田氏:
はいはいはいはい。
岩崎氏:
初めてやったときに僕があきれたのが,「フバーハ」して「いてつくはどう」して,さらにぶん殴ってくるっていうね(笑)。
これはなんていうかな……,ある意味でゲームデザイナーの敗北だと思ったのが,リソースを管理するゲームであることを,これは捨てちゃってるじゃんということでした。
それでドラクエ1&2はどうするのかなと思ったら,バトルがパズルゲームになっていたという。
だから僕は,逆にドラクエ1&2は納得したんですよ,なるほどとね。
でもそうすると,今度は戦闘でパズルゲームをやるってなると,レベルってわりと邪魔じゃない? という。
4Gamer:
苦労してレベルをあげた意味を,やっててそんなに感じなかったですね。
岩崎氏:
(ドラクエは)そういう問題をずっとはらんでいるゲームで,だからランダムエンカウントでプレイを遅滞させて,リソース管理をしてというのは,あのタイプのゲームでは通用しないというか,今の時代には合っていないんだなって思ったのが,冒頭で出た僕の発言の理由なんですね。
だから僕は,こういうゲームをプレイすると,「自分だったらどうするのか」ってことを,すごく考えちゃうんですよ。ただ,わりとドラクエというゲームは,自分だったらどうするの答えが非常に出しにくいゲームでね。
西田氏:
そうだと思います。ひとつポイントなのは,堀井さんが作るストーリーっていうのは,基本的に少年漫画のビルドゥングスロマン※であること。それでビルドゥングスロマンを作るにあたっては,経験値っていう考え方は極めて相性がいい。
※ ここでは登場人物が成長していく物語の意味
岩崎氏:
うんうん。
西田氏:
本当なら,経験値は存在しなくて,それはイベントでも何でもいいし,階段上に上がっていくのでもいいんだけど,プレイヤーとしては,頑張ったぶんだけ上がっていくほうが,相性はいいわけです。
なので,あのストーリーとこのシステムっていうのを,ある時点から堀井さんは,非常に明確かつ自覚的に,少年漫画的に両方をセットにして組み立ててきたと思います。
岩崎氏:
そうですね。それはドラクエ2からですね。やはりドラクエ1は,すごく習作的な作品で,でもまあ僕は大好きだったんですけども。
だからドラクエ1は,RPGとして見たときに,当時の海外のRPGや国内のPC RPGの影響がすごく強い。主人公は,
- 風来坊である
- 若者,とはいっても年齢的には20代後半ぐらい?
というぐらいのキャラクターでやっていました。
それがドラクエ2になると,もういきなり王子様じゃないですか。非常に明解に,とにかくその目的も決められていて,「お前はロトの子孫なんだから,あのハーゴンとかいうのを,いてこましてこいや」っていう,めっちゃ分かりやすい構造になってる。
西田氏:
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だから(海外のゲームでは),やっぱりある程度年齢が上になってしまうとか,子供だったら子供のままで成長しないか,そのどちらかなんですよね。
日本では,「週刊少年ジャンプ」+ファミコンっていう文化があったからのことで,もうそれは明確に,いわゆる「JRPG」と呼ばれるものの特徴だと思います。
それは産業的な特徴でもあるし,コンテンツ的な特徴でもある。
で,それが今もやっぱり成立していて,だからこそ今の若い子には合わないと言われる部分もあるし,逆にそれで育ってきた30〜40〜50代に合うっていう話もあるしっていうことではあると思いますね。
岩崎氏:
まあ,RPGは(作るのが)難しいですよ,本当に。今は,RPG自体が難しいと僕は思っているので。
西田氏:
できることが増えるゲームと,成長性があるゲームって,実はイコールじゃないと思ってんいるですね。たとえば,いわゆる「スキルツリー」(※またはスキルパネル)が開いていくゲームは,成長してるんじゃなく,できることが増えている。
できることが増えるゲームは,非常に今日性が高いけれど,単純に強くなるゲームは今日性が強いかっていうと,そうでもないよなっていうのは思うんです。
岩崎氏:
ですね。(成長性があるゲームの)今日性が強いかと言われると,そんなことは正直全然ないっていうのが,自分が思うことかな。
自分が実際遊んでいるゲーム,僕がよく遊ぶゲームのことを考えると……,僕はとくにローグライクが大好きなので,ローグライクとツインスティックシューターが大好きな人だから,たとえば「Dead Cells」であったり「Slay the Spire」であったりとか,ほかにもデッキビルダー系とか,短い時間でビルドしていくゲームが面白いという方向性は,自分の中に意識としてある。
同じ理由で,RPG的なゲームは……,あまり印象として楽しまない感じになってる。
西田氏:
オープンワールドでRPG的って言われるものでも,レベルが上がることよりも,やっぱりスキルツリーが開いてできることが広がっていくタイプのゲームのほうが,やってる印象は強いですね。
4Gamer:
最近のRPGでは,レベル上げがあくまでもスキルツリーを上げるためのリソースを得る手段になっていることがあり,それってレベルである必要ないよね,と思うことはあります。
最近ですとStarfieldもそうですし,「ドラゴンエイジ:ヴェイルの守護者」もそうで,「これ,レベルである意味ないよな」と。
西田氏:
そうそう。レベルがスキルツリーを開くためのトークンにしかなっていない。
あれが多分,海外のシステムのある意味,今のところの限界というか,ハードルなんだと思うんですよね。
レベルっていうシステムがある一方で,ゲーマーに好まれるのは,スキルツリーが広がってやることが次第に広がっていって,習熟曲線を上げていく形でゲームの楽しさが拡大していくっていうタイプじゃないですか。
これが今は,トークンとしてのレベルとスキルツリーを開くっていう要素のアンバランスさとして出てきている。
一方で日本は,スキルツリーが開くっていうタイプのゲームがあんまり得意じゃない。自動的にスキルが追加されていくゲームのほうが好まれているじゃないですか。
たとえばリメイク版のドラクエも,レベルが上がると自分でスキルツリーを開いたりすることなく技が増えてくる。
本質的にいえば,できることが広がっていくっていう意味では同じなんですけど,能動的に自分がやることを選んで広げていくのではなくて,自動的に広がる。そのうえで,何か別のことをやりたいと思ったら,いわゆる転職をする。
この構造の違いは,ちょっと面白いなと思います。
岩崎氏:
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西田氏:
そう。海外的なゲームを孫引きしたというか,習って作られてるゲームは,スキルツリーを開いてくタイプなんですけど,そこにオリジナリティがあって日本的かっていうとそうでもない。
岩崎氏:
最近,スキルツリーのあるゲームをやったな,と思ってずっと考えて出てきた。「ドンキーコング バナンザ」だ。
西田氏:
そうだ。確かにそのとおりです。いや,何が面白いって,ここで言ってるゲームが,ほとんどアクションゲームだってことなんですよ。
別にアクションと非アクション,いわゆるコマンド選択のどっちがいいとか,どっちが古いって話じゃないと僕は思ってて,単純にそれは選択だけの話なんですけど。
一方で,それで分けるものは何かっていうと,スキルツリーの広がりかただとか,レベルアップしたときに,何がそのキャラクターに対する可能性として広がるかみたいな,選択の仕方が違うっていうのはあるんじゃないのかなと。
いわゆるコマンド選択型だと,スキルツリーでどんどん開いてくタイプは,今のところそんなに多くはないと思っています。
アクション型のほうが,スキルツリーが開いてくタイプと相性がいい部分があるのかなと思ってますけど。
岩崎氏:
まあそうは言ってもね……,僕が死ぬほどやってしまう,ついやってしまうゼルダは,スキルツリーが1mmもないゲームなんで(笑)。
西田氏:
あれは結局,元々の一番最初からゼルダがメカニクスとして,実は全部フルオープンになってるタイプのゲームで,そのうえでやられにくいとか,敵が強いとかっていう形でリソースバランスを取っているからですよね。
岩崎氏:
うん,工夫の限りを尽くすというゲームですからね。
西田氏:
そうすると,まさに弱い状態でもボスを倒すこと可能っていう元々のメカニクスであり,それはそれで,なんというかゼルダの美しさ,だとは思うんですよ。
岩崎氏:
だから本当に,そういう難しさがRPGにはある。とくにJRPGの中のゲームのサイクルで,(目的地まで)行けなくなって戻ってとやっていくうちに,レベルが上がって次の目的地に着きますっていうタイプのゲームというのは,今はかなり難しいよね,というのが,僕が思ってることですね。
メインストーリーが面白いゲームが抱える矛盾
西田氏:
今,ちょっと適当に思いついたことなんですが,ストーリーの仕組みとして,「西遊記」タイプっていうのが存在しますよね。最終目的地があって,その最終目的地に向けてロードムービーをする。
岩崎氏:
行った先々でトラブルがあるというやつですね。
西田氏:
「ONE PIECE」もそうだし,「宇宙戦艦ヤマト」もそうだし。基本的に少年漫画って,その仕組みが多いわけです。なぜなら,順番に見ていくとストーリーが開いてくからって,いうことだと思うんです。
では,今のゲームシステムにおいて,それがいいのかっていうと,そうしたシステムのものは減っている。JRPGであったとしても,西遊記タイプの最終的にあるところに行きつくと解決が見い出せる,っていうタイプのストーリーを組み立てるクリエイターは,減ってるのかなと思っています。
HD-2Dを最初に導入したオクトパストラベラーにしても,西遊記タイプではないですよね。
岩崎氏:
西遊記タイプというか,ロードムービー的な構成で今でもやっているゲームというと,「ペルソナ」シリーズですね。
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龍が如くの7と8は,コマンドRPGですしね。
西田氏:
龍が如くの7と8が基本的にRPGなのって,もちろん開発陣は自覚的にやってることでもありますけど,あれは章立てによって完全に行き着くところが決まっている。
行き着くところっていうのも,そこで何かが解決するっていうのはわりと初期に示されてるんだけど,その示されているものに対して,主人公たちが突っ込んでいくっていうタイプのゲームである。
それはやっぱり,明示的,自覚的にJRPGのお約束を踏んだうえで,あのテイストで作ってるってことだと思いますね。
岩崎氏:
ただ,ゲームとしていうと,龍が如くの7と8は,いわゆる同心円型にはなっていないんですよ。
西田氏:
章で区切っているから,同心円型にしなくてもいいってことですね。(前の章に)戻らなくていいので。
岩崎氏:
それはあると思います。戻る必要はないゲームにしてありますからね。
西田氏:
戻る必要があると,同心円型にしなきゃいけない部分もあるし,同心円型にした結果によって,矛盾が発生するっていう部分もあるんで。
岩崎氏:
あとはペルソナ。ペルソナもやはり,ストーリーが進行していくに従ってダンジョンが変わっていく構造です。前のダンジョンには基本的には戻りませんから,同心円型ではないですよねっていう。
西田氏:
そうすると,シンプルな同心円型のRPGって,本当に減ってるんですね考えてみると。リメイクは,もちろんみんなそうですけど。
4Gamer:
インディーゲームくらいにしか,残ってないんじゃないですか。
岩崎氏:
今,同心円型のRPG……。リメイクを別にすると自分の記憶では……,ここしばらくはひとつもないですね,本当に。
西田氏:
やはり,初期に分かりやすい矛盾として,ゲームメカニクスの矛盾として成立したので,ドラクエもそうですけど。章立てにして,ある部分から戻ることを前提としなくすることによって,同心円型の課題を解決する。
そうすると,マップのリソースも再活用できるわけじゃないですか。そこが多分でかいんだと思うんですよね。同心円型でずっと続けていくと,無限に広くするか,複雑な構造にしていくしかないので。
こう章を立てて区切ってあげることによって,ある章から先は戻れないようにすることで,同じマップ上であったとしても,違う展開を作れる。ちゃんとリソースを余裕有効活用できるっていう判断は,あったんだと思うんですよ。
岩崎氏:
うん。何にしても同心円型は,今では確かにほぼないですね。
だからそういう意味では,ドラクエ型のゲームサイクルというもの自体が,リソース管理とストーリー進行とレベルシステムを結びつけていたゲームの構造自体が,古いんじゃなくて,今のゲームと合わなくなっている
何らかの形で,また復活させる手があるのかもしれないんだけど,少なくとも現時点では,僕はよく分からないな。
西田氏:
ドラクエのシステムが古びたというか,無価値っていうとそれは全然違うと思うんですよ。これはこういうものなんで。
ただ,たとえばドラクエ3 HD-2Dとまったく同じ構造のRPGをゼロから,たとえば「ドラクエゼロ」とか「ドラクエほにゃらら」みたいな外伝を作って,消費者に提供したとする。それは一定数は売れるだろうけど,モダンなゲームとして新しいファンをたくさん獲得できるかというと,これはちょっと難しいだろうと思うんですね。
そうすると,今のファンにちゃんと合っていて,JRPGの構造を持った新しいゲームを作るにはどうしたらいいのか。ドラクエ的にいえば,確かにドラクエ7 Reimaginedのやり方がひとつだし,FF的にいえば,確かにFF16のやり方なんだろうなと。
岩崎氏:
そうですね。FFでもFF15(FINAL FANTASY XV)は,違う問題がすごく発生したんで。
僕は,FF15が結構好きなんですけど……。僕がずっと持っている,オープンワールドというかゲームにおける自由さと,ストーリーのその矛盾の問題にたどり着いてしまった,その問題の極限形ですね,FF15って。
「親父が大変なことに!」とか言いながら……。
西田氏:
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岩崎氏:
そうそう。車乗ってバーベキューして,あっちこっち行って始まって,また飯食って写真撮ってやってる。「お前,親父が大変なんじゃないんかい」っていう(笑)。
西田氏:
それがFF16になると,ものすごい強制性を持ってくるわけですよ。ああいうストーリーで,大変だ! 世界を救うにはとか,友達を救うにはみたいなことになると,ああならざるを得ない。
岩崎氏:
ならざるを得ないですね。その問題っていうのは,オープンワールドには常にあると僕は思っていて。たとえばスパイダーマン(Marvel's Spider-Manシリーズなら,「親愛なるあなたの隣人」であるスパイダーマンだからギリギリ許されるのかもしれないけど,話をほったらかしにして,そこらへんにいる街のギャングをボコボコしているというね(笑)。
西田氏:
スパイダーマンにおいては完全にそうで,「お前,お母さん大変なことになってるだろう」と思いつつ,隣にいる普通のギャングをボコボコにしてる(笑)。
そこでおじさんのクエストやってる暇あるのかよ? みたいなことになるんだけどでも,あれはああいうゲームだからっていうね。
海外のオープンワールドのRPGでもアクションゲームでもそうなんですけど,めちゃめちゃストーリーがよくできていて,それぞれものすごくちゃんと考えて作られている。
だけど,やらなきゃいけないことっていうのを一定数以上に広げなければいけないっていうタスクがある以上,「なんで俺はこれをしてるんだろう?」っていうものが増えちゃう傾向にはある。
結局,ストーリーって気持ちのままにまっすぐ行ってしまうと,それは気持ちいいんだけど,ゲームとしてはそうではない。ストーリーが広がったところで実はできることも広がってるので,それをどうやってカバーするかで,それをやんなきゃいけないって問題が発生するわけですよね。
で,そこを無視できるほど我々は強くない(笑)。
岩崎氏:
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西田氏:
ああ,そうですね。スタートはわりと遅い。
岩崎氏:
だから途中までは,わりとちんたらちんたら遊んでて,適当に神室町をうろついて遊んでる。
ところが,2作目のLOST JUDGMENT(LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶)になると,もうキャラクターは最初から全員顔見知りの連中で,それが顔見知りのことをやるわけですよ。
そうするとストーリーが一気に進行してるわけなんですが,そのメインストーリーがめちゃくちゃ面白い!
西田氏:
そのとおりですね。
岩崎氏:
そうすると何が起こるのかというとですね……,死ぬほど用意されているキムタク先生のダンスチームとか学校の話,これを何ひとつやらないままゲームが終わるという(笑)。
ほとんどシナリオやらないまま,サブシナリオが山のように用意されているものをほとんどやらないまま,ゲームは終わるんですよ。「面白かった! いや待て。でも何もやってないぞ俺?」って。
西田氏:
メインストーリーで本当に真ん中しか遊んでいないみたいな。ジャッジアイズシリーズと龍が如く 7,8は,その印象は確かに強いですよ。
岩崎氏:
ものすごくメインストーリーが面白くて,ストーリーを追っかけていくとすぐ終わっちゃうんですよ,ゲームが。「メインゲームを追っかけるに決まってるじゃん!」って追っかけてくと,一気に走っていくから終わっちゃう。
西田氏:
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RPGに関していうと,さっきも名を挙げたバルダーズ・ゲート 3もそうですが,ぶっちゃけ真ん中のストーリーは覚えてなくて,エピソードしか覚えてないみたいな感じ。
そこが面白い,やめられないとまらないメインストーリーのゲームって,実はゲームとしては,ものすごく矛盾を払んでるんだなっていうのは,今お話をうかがって思いました。
映画って,最後までのストーリーがいかに面白いか。ぶっちゃけ枝葉がたくさんあっても,それはそれって話じゃないですか? でもゲームって枝葉も含めてゲームなんだけど,ど真ん中のストーリーがあまりにも特殊であまりにも面白すぎるって,それはそれでひとつの魅力でもあるし欠点でもあるんだなと。
岩崎氏:
本当にそれはそう思いますよ。LOST JUDGMENTを,最初のうちはちんたら遊んでたんだけども,中盤あたりから設定が見えてきて,こうストーリーが見えてくると猛烈に面白くなるんですよ。
それが最後まで続くんだけれども,もう一気にそこまでバーってやっちゃって,「面白かった! ちょっと待って,でもなんか俺見てないもんたくさんあるぞ」となる。
西田氏:
確かに,LOST JUDGMENTと龍の7,8はそうですよね。半分ぐらいまでは普通にプレイしてるんだけど,そこから世界の組み立てが見えるとあまりにも面白くて,2日ぐらいでバババババって終わっちゃうっていう。
あれはまさに龍が如くチームのすごさだとは思うんだけど,一方であれは自覚的にやってますよね。「これだとサブゲームやってもらえないけど,しょうがないか」みたいな。
岩崎氏:
うん,僕はそう思いますね。あれは途中でやめるのはなかなか難しい,ってぐらい面白いので。
終わったあとには,街の中をうろうろできるモードが開放されるから,あれでサブゲームをやればいいんですけど,この街の中をうろうろできるモードっていうのが,これ本当に難しくてね……。
すごくよくできているし,ものすごく街としてよくできて,魅力的にできているにも関わらず,街の中できることってね,あんまり僕やらないんですよね。
まあ本当に,ストーリーの面白さってものすごい矛盾があって,結局ドラクエでもFFでも,横道っていうのはあるべきなのか,ないべきなのか,やっぱり思うんですよね,プレイしていて。
西田氏:
FF7のリメイクシリーズがそうで,横道はたくさんあるんだけど,そもそもの真ん中が面白いわけです。そうすると,これはどういうバランスで考えてるのかなっていうのは,プレイしてるときに思ったんですよね。
岩崎氏:
分かる分かる。すごい分かる。オープンワールドをプレイすればプレイするほどに。
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JRPGを決定づけた堀井雄二という天才
岩崎氏:
最終的にここから先は,さらにもう面倒くさい話になってきて,ゲームの中でお話を語るってのはどういうことなのか,ということに結局は結びついく。
はるか昔に,多摩 豊※さんとすごい議論をした時代がありました。
※ ゲームデザイナーで評論家,翻訳家,編集者。1980年代から90年代にかけて,とくに海外のシミュレーションゲームやテーブルトークRPGを日本に紹介する取り組みで功績を残した。1997年没。
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こういう議論が当時あって,僕も多摩さんも,最終的にはゲームであると結論づけました。
なぜかというと,ゲームというのは選択である,能動的にインタラクティブにプレイヤーが選択をできることが,ゲームの絶対的な条件だと思う。選択なきものはゲームではない。だから,この映画はゲームになったといえるんじゃないのかと。
そこで議論は終わったんですけども,今ではこれに対して,もっと面倒くさい話ができるんですよ。なぜかというと,最後で2つに分かれるということは,ストーリーとしては,2つのどちらの伏線も引いていることになるんですよね。
では,2つのどちらかを選ぶという構造になっているそのストーリーは,どっちか片方は,イマイチのできになるんですよ。
西田氏:
はいはいはい。
岩崎氏:
僕が,これをものすごく強く意識したのは,世の中のほとんど人は見てないと思うんだけど,「フランダースの犬」の実写映画って知ってます?
西田氏:
見たことはありますけど,それがこの話のどこにつながるのかは,分からないです。
岩崎氏:
フランダースの犬の実写版っていうのは,日本版はネロが死ぬ。
西田氏:
うん。
岩崎氏:
アメリカ版はネロが死なない。
4Gamer:
ああ,聞いたことあります。
岩崎氏:
最後の場面に至るまで,編集は同じなんですよ。そうすると何が起こるのかというと,もうどこの誰がどう見ても,一発逆転でネロはハッピーエンドで終わるというはずのストーリーなのに,日本版では突然ネロが死ぬわけ。
西田氏:
僕は日本版しか見たことないので,「なんじゃこれ?」と思いました。
岩崎氏:
なんじゃこれと思うでしょ。もう明らかにネロが助かる展開なのに,突然,彼の前にルーベンスの幻が現れるんですよ。「お前は今から天国に行く」「分かった」みたいな話があって,すっぱり死んで終わり。ポカンですよ。
取ってつけたようなエンディングを回避しようとすると,死ぬのか生きるのか分からない話になってくわけじゃないですか。そうなると,それを見たときに,お話の強度が落ちていくっていう問題があるんだってことに,気がついたんですね。
そのときに,僕は押井さんの本にまた戻ったんですよ。押井さんが言ってることの意味が,ものすごく理解できた。お話というのは,最初から最後まで自律的に展開されるものだから,極論するならエンディングというのは事実上ひとつしかないし,オープニングもひとつしかない。
西田氏:
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あれはどういうゲームかっていうと,(分岐の)ツリーを書いていくと,実は1本なんですよね。
1本なんだけど,間を埋めていくことによって,埋まってないものを埋めていくっていう行為がゲームになっている。だけれども,ストーリーを引っ張っていくっていうことに関しては,1本しかない。
だから,あれは見事なストーリーなんだけど,ゲームのメカニクスは,ストーリーを分岐していくとこにはないんですよ。
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岩崎氏:
分かる分かる。
西田氏:
(街には)分岐して,バラバラになったものがまとまっていくっていうダイナミクスはあるんだけど,全員のストーリーがパラレルに走ってるから,終わらないんですよ。
結果,この終わらないっていう街の構造自体が,ゲームとして面白いけど,ストーリーとしては実はまとまってない。だから,ストーリーとしてはまとまっている428のほうが面白い。
それはディレクターのイシイジロウさんが,明確に意識して作ってるんですよね。
すなわち,いわゆるビジュアルノベルというチュンソフトが作ったシステムの中で,どう分岐するか。本質的にはパズルなんだけれども,パズルの中に存在しているストーリーをどう定義するかっていうものを,そもそもの構造で決めてるんですね。
その結果として,「ゲームとして街が面白かった」っていう人がいる一方で,「ストーリーとしては428のほうが絶対面白かった」って人もいて,これは両立するんですね。
逆にいうと,一度ああいう収束していくタイプのシナリオを作っちゃうと,次はそのダイナミズムがあまりにも面白いので,もう1回やろうとしても,そう簡単に作れるものじゃない。だから,今作ってる続編(※シブヤスクランブルストーリーズ)って,ものすごく頑張ると思う。
もしくは,パラグラフとパズル形態のシナリオっていうのを新しく考えるかの,どっちかだと思うんですけど
岩崎氏:
うんうん。
西田氏:
だから,ゲームにおけるシナリオって,実は体験だからシンプルでもいいと思ってるんですよ。
ドラクエ3のシナリオって,シナリオとしては非常にシンプルで,さっき言ったようにシーンの構造体なんだけど,我々はそこに感動とか体験ってのを感じてるわけじゃないですか。
それは,自分がRPGとして,ゲームの展開どおり順番に遊んでるからなんですね。それと映画って,やっぱ違うと思うんですよ。
そうすると,今の海外のゲームで,ものすごく凝ったシナリオがあるゲームであったとしても,実はそのシナリオを覚えてなかったりとか,そのシナリオよりも端の要素を覚えてたりするっていうのは,ゲームという体験だからだと思っています。それは決して欠点ではなくて,そういう構造なので。
そこにおいて,ものすごく濃い真ん中のストレートなものを作ろうとすると,龍が如くシリーズみたいなパターンになる。それは失敗ではなくて,無駄が存在するのを前提として,力技でまっすぐ行くっていう方式しかない。
ドラクエ7 Reimaginedも,僕はそっち方向だと思ってます。
そのやり方をするか,もしくは無駄がないようにメインのシナリオはそんなに凝ったものじゃないけど,体験が凝ったものにするかで,ゲームとしてはこの二方向しかないのかな,っていう気はしてるんですけどね。
4Gamer:
アメリカのゲームなんかは,後者の方っていうイメージですね。
西田氏:
そう思いますね。それはやっぱり,ゲームという体験っていうのは,こういうものだろうって,ある種のコンセンサスがあるから。
一方,日本はJRPGっていうストーリードリブンなゲームの伝統がある。それを両方やりましょうっていうことになってるからなんじゃないのかな,とは思うんです。
岩崎氏:
僕は,「日本のゲームは,なぜストーリードリブンになったんですか」って聞かれたら,それは「堀井雄二という天才がいたからだ」と。
西田氏:
まったくそのとおりです。
岩崎氏:
そして,「なんで,ストーリードリブンに堀井さんはしたんですか」と聞かれたら,「それは堀井さんが,ストーリーを語りたい人だからです」っていう答えになる。
西田氏:
もともと漫画家になりたい人で,週刊少年ジャンプにいて,ストーリーが生まれてくる場にいた人だから,それはそうならざる得ない。
岩崎氏:
堀井さんのゲームの歴史を見ると,もう完全にそれじゃないですか。「ポートピア連続殺人事件」があって,「オホーツクに消ゆ」があって,「軽井沢誘拐案内」があって,ドラクエがあると。もう一直線にストーリーなわけで,ストーリーの語り方が変わってるだけ。
語り方のほうを,ゲームの形に応じて調整しているだけで,お話を語りたい人が,箱としてRPGを選んだという話なんです。極論するとね。
キャラクターガチャというビジネスモデルを支えるストーリー
西田氏:
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4Gamer:
「チェインクロニクル」型ですかね。
岩崎氏:
そう,チェインクロニクル型って言ったほうがいいですね。チェインクロニクルが発明した形式です。
ただFGOは,チェインクロニクル型に加えて,MMORPGであったようなある種のお祭り,要はシナリオがちゃんと進行していって,エンディングができることにより,そのときのお祭り感があるっていう構造を作ったところが,古くて新しい表現なんですね。
たとえば「ファイナルファンタジーXI」とかで,拡張パックの「ジラートの幻影」が実装されたときにも,みんな夢中になってプレイするようなことがあった。それが,もっと同期した形で,お祭りとして見えるようになった。
そのFGOの成功があったのですが,僕は,「あれはコピーできない」と思ったんですね。奈須きのこさんという人がいるからできるんだと思ってたら,なんと「ブルーアーカイブ」がコピーしたいう。
「あっ,これってうまくやればコピーできるんだ」っていう(笑)。
西田氏:
リソースのかけかたは,あれだけ違って,ゲームの手触りもあれだけ違うんだけど,ストーリードリブンってところは見事にコピーしている。確かにそれは,そのとおりですね。
これはちょっと別の話ですが,今のスマホのゲームスタイルとして,たとえばガンダムで言ったらU.C. ENGAGE(機動戦士ガンダムU.C. ENGAGE)とか,いろんなタイプのストーリーを1個1個埋めていって,実際にはいろんなものを明らかにしていくっていうタイプのゲーム性がある。
では,そのドライビングフォースは何かっていうと,ストーリードリブンだというのは,ひとつの形にはなったと思うんですよね。
それはチェインクロニクルから生まれて,FGOになってという風に考えられるのか,それともそのひとつの必然として,スマホではあの方式っていうふうになったのかは,ちょっと僕には分析が足りないんで分からないところなんですが。
それはある意味,コンソール(家庭用ゲーム機)でゲームをプレイしている人や,PCゲームをメインに遊んでいる人からは見えない,ひとつの……RPGタイプのゲームとストーリーの意味を語るうえにおいては,とても重要なファクターなんじゃないかなっていう気がするんです。
岩崎氏:
チェインクロニクルを作った人に直接聞かなきゃ分からないことですけれども,あれは基本的には,キャラクターガチャを成立させるというアイデアである。
[CEDEC 2016]作品の価値を摩耗させないためにーー「チェンクロ」の事例を交えて“運用で摩耗しない”基礎設計手法が紹介されたセッションをレポート
CEDEC 2016で,「チェインクロニクル」の総合ディレクターを務めるセガ・インタラクティブの松永 純氏が講演を行った。本稿では,「スマホゲームにおけるゲーム性と物語性の“運用で摩耗しない”基礎設計手法 〜チェインクロニクル3年の運用と開発の事例を交えて〜」と題されたセッションの模様をレポートしよう。
ビジネスモデルとして,キャラクターガチャってのは圧倒的に強い。ところが,スマホゲームの運営をいろいろやるに従って分かったのが,装備がガチャから出るっていう仕組み,初期はそれが多かったわけなんですけど,これ売れないんですよ。
西田氏:
うんうん。
岩崎氏:
装備ガチャって,基本的に売れない。それがちゃんと売れてる特殊な例はありますけども,基本的には装備ガチャって売れないんですね。もうキャラクターガチャが圧倒的に強い。
ところがキャラクターガチャって,いっぱいキャラクターが出るのを成立させるためには,どうすればいいのかという問題があって。
一番初期の「神撃のバハムート」とかの,いわゆる「ソーシャルカードゲーム」というのが登場した時代には,キャラクター性ってのはとても低くてフレーバーしか存在しなかった。フレーバーテキストがあって,それを使い捨てしていく世界だったんですね。
ところが,これをとにかく作るのにコストがかかるようになった。
チェインクロニクルのヒットで開発者が考えたのは,やはりキャラクターを売りたい。なおかつ,それなりにリッチにならざるを得ないとなったときに,そのキャラクターにストーリーをつけるという案を,誰かが思いついたんでしょうね。
西田氏:
面白いのが,今,ゲーム関係のシナリオを書く仕事をしている人の大半が,スマホゲームのガチャに紐づいたストーリーシステムの,ストーリーラインを書いてるんですよね。
岩崎氏:
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だからそういう風にして,ビジネスモデルとしてキャラクターガチャを成り立たせるためには,ストーリーが出てくることになる。
「闇鍋」って僕らはよく言いますけど,キャラクターとほかの何かが混ざってる,まあ基本的に評判悪いんですけど(笑)。闇鍋ガチャがあっても,そこでキャラクターが出てくるというのはすごく大事。
そうすると,キャラクターにストーリーをつけなくちゃいけない。キャラクターのストーリーがある構造によって,そのキャラクターも立つし,売上も上がるという構造ができたので,スマートフォンのゲームはそういう作りになったんですね。
西田氏:
ちょっと話を戻すと,結果として,ゲームとストーリーを考えたときに,ゲームプレイを消費するゲームと,ゲームタイムを消費するゲームがあって,いわゆるスマホゲームの場合,ゲームプレイではなくて,ゲームタイムを消費するゲームだと,僕は思ってるんですね。
そうすると,その中にメカニクスとして一番時間を使ってるものは何かっていうと,通常のゲームプレイもあるけれど,実はガチャに使ってる時間が長い。
そのガチャに,魅力を持たせるものは何かというと,キャラクターであり,キャラクターの魅力とは何かというと,ストーリーだよねと。
これは,いわゆるゲームプレイを消費する種類のゲームとは,また違うものとして存在していて,それもまた,ゲームとストーリーのあり方だと思うんですよ。
岩崎氏:
そういうことですね,本当に。キャラクターを束ねた形でメインストーリーが出てきて,そうするとメインストーリーの中に,そのキャラクターが出てくるじゃないですか。そうすると持ってないと欲しくなるんですよね。
そういう構造が,今はスマートフォンゲームでは回るようになっている。ただ,これがコンソールではうまくいくか分からない,と思ってた。
西田氏:
コンソールにおいても,スマートフォンと同じF2Pタイプで,キャラクターを消費するゲームっていうのが増えてきているから,そこの境い目ってのは減ってはきてると思うんです。
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前半に話していたように,ある程度買い切りで,ゲームとゲームメカニクスとストーリーっていうのは必ずしも一致しないけれど,体験があるっていうタイプのゲームと,ストーリーを消費するためのキャラクターであり,キャラクターを消費するためのガチャという構造を持ってるゲームが,コンソールでは両方存在していて,若い層であればあるほど,両方矛盾なく遊べているのかなっていう気もするんですよね。
岩崎氏:
僕はそこは,矛盾なく食べてますね(笑)。気にならないというか,もう気にしてもしょうがないっていう。
西田氏:
そこが多分,ドラクエの話だけをしてると,スマホのほうで起きているゲームとストーリーの現象を見失う可能性がある。逆に,「ドラクエなんておじさんのゲームで古いんでしょ」っていってると,体験とくっついたタイプのゲームのストーリー体験の面白さっていうのを,見失う可能性がある。
だからこれは,「両方できるほうが人生としては豊かである」っていう結論になると思うんですよね(笑)。
岩崎氏:
3つめもあるんですけどね。ストーリーが,基本的にゲームプレイを邪魔しないように作ってあるゲーム。
分かりやすい言い方をすると,ゼルダですよ。ブレスオブザワイルドはまさにそれ。
僕はこれを,よく「ストーリーにおける銀の弾丸」だっていうんですけど,「環境ストーリーテリング」ですね。
昔にあったこと,なにか事件が昔あって,それを世界を探索していくことで,だんだん分かってくるようになるっていうあの構造は,ゲームプレイを邪魔しないストーリーという意味で,そのまま特殊なひとつの解として存在する。
西田氏:
いわゆるストーリーを形づくるフレーバーが,ゲーム世界に対してばらまかれていて,それ自身ひとつひとつはナラティブでしかない。だけど,ユーザーが自由な道筋で辿っていくと,あれはこういうストーリーなんだ,こういう目的なんだと,見えてくるってタイプですよね。
岩崎氏:
そういうタイプのゲームというのは,作るのは難しい。それをブレスオブザワイルドは,途方もなく教科書的な実装で完成していて,ちょっと感動しましたね。あまりのすごさに。
西田氏:
MMORPGでやってるストーリータイプって,そっちのほうが多いんですよね。
岩崎氏:
MMOはそっちのほうが多いですね。
西田氏:
コアストーリーを1本作っていうタイプより……まあ日本はわりとそうしがちか。FF11もFF14もそうかな。
海外のMMORPGってどっちかっていうと,フレーバータイプの,MOでも「Diablo」シリーズとかがそうですけど,敵はいるけどボス以外の部分はわりとフレーバーで,環境的に街を回っていくと,「こうこうで,こういうことが起きてんだな」みたいな実装になっている。それで,シーズンが変わるとそのフレバーが変わるっていう。
岩崎氏:
なんとなく,そこを掴めるみたいな構造になってるゲームがね。
これはやはり,(日本では)堀井さんの存在が大きいと思うんですけどね。
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今でいうオープンワールドの構造を,Ultima IVは完全に持っている。
西田氏:
そういう意味では,我々はロー・アダムズ氏※の手の平の上にいるっていう(笑)。
※ Roe R. Adams 3世。1970年代末から1990年代にかけて活躍した米国のゲームデザイナー。Ultima IVや「Wizardry IV: The Return of Werdna」のシナリオ開発とレベルデザインを担当し,現在に至るまでゲームの仕組みに大きな影響を与えた。
岩崎氏:
そういうことになりますよ。でも,Ultima IVを彼が作ったあとに,そこにストーリーを乗っけたのが堀井さん。
一方,ストーリーではなくマップをとにかく広げて,マップの上にクエストがばらまかれていく形になっていったのが,海外のRPGだと僕は思っています。
だから,どっちもつながっているんだけど,そのときにストーリーをロードノベルとして語るためのリソース管理の部分というのが,今はちょっと辛いよね,っていうのが,僕が11月に喋った内容ということになりますね。
JRPGに触れていない人にこそプレイしてほしいドラクエ7 Reimagined
岩崎氏:
話を戻すと,僕は,ドラクエ3 HD-2Dは,かなり問題あるなと思ったんだけども,ドラクエ1&2は,プレイしてて出来がいいと思ったわけなんですよ。
ただ,このドラクエ1は,僕の好きだったドラクエ1ではない(笑)。
西田氏:
それは,習作性がまずないですよね。
岩崎氏:
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だから,めっちゃよくできてるけども,僕の好きだったドラゴンクエスト1ではない(笑)。
西田氏:
映画とかをリメイクしたときに,きれいになって素晴らしい作品になってるんだけど,「俺が好きだった映画じゃねえな」っていう。
岩崎氏:
そうそうそうそう(笑)。それはそれですごいんですけどね。
そういう意味で,ドラクエ3 HD-2Dよりは,ドラクエ1&2のほうがよくできたゲームになってるなと思いつつ,そうであるゆえに,ランダムエンカウント問題とカメラアングルの問題っていうのは,やっぱり逆に引っかかったんですね。
でもドラクエ1&2は,本当にいいゲームでしたよ。これはよくできてると思います。
ただ,ドラクエ1のバトルの難しさは,もうちょっと考えてほしかった。ほぼパズルゲームになっちゃってるから。
西田氏:
あれは幅がなさすぎるなと思ってます。ほぼほぼ最適解が決まっちゃうところがあるかな。
4Gamer:
戦闘中に,ノーペナルティで装備を交換できるところが,そういうふうに遊んでねっていうことなんだなと。もとはシンプルだったドラクエ1で,それをやらされるっていうのは,正直ちょっと面倒くさく感じました。
西田氏:
明らかにデッキゲームみたいになってますよね。
思想は分かるんですけどね。複数キャラクターによる組み合わせと同時攻撃っていうのが存在しないわけだから,キャラクターが1人の場合は,ある種の詰め将棋的に,3ターン後に何が起きるかっていう判断をしなきゃいけないとああなるっていうのは,理解できます。
岩崎氏:
装備を変えて,こうしてああすると,敵はこうしてくるから,これを防御するためにこうするだろうって。でもこれさ……マクロ用意しておいてくれないかなと(笑)。
西田氏:
カードゲーム好きだと,ああいうのは嫌いじゃないので,私はニコニコしてプレイしましたけど。
岩崎氏:
そういう意味でも,本当にドラクエ1&2はよくできてます。
西田氏:
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岩崎氏:
7はやってほしいな……。ドラクエ1&2はまだしも,ドラクエ7 Reimaginedは本当にすごいんで。びっくりするくらい展開が早い。
西田氏:
あのサラっと具合を,ちゃんと若いゲーマーが食いついて,体験してくれればいいなと思います。
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- 関連タイトル:
ドラゴンクエストVII Reimagined
- 関連タイトル:
ドラゴンクエストI&II
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- Nintendo Switch 2:ドラゴンクエストVII Reimagined
- RPG
- CERO B:12歳以上対象
- スクウェア・エニックス
- ドラゴンクエスト
- ファンタジー
- プレイ人数:1人
- 企画記事
- 編集部:小西利明
- ライター:西田宗千佳
- カメラマン:佐々木秀二
- OTHERS
- Nintendo Switch 2:ドラゴンクエストI&II
- アートディンク
- ライター:岩崎啓眞
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