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亡霊の脳をマッサージしながら,生前の記憶をほぐしていく。脳型コントローラで遊ぶ学生作品「大脑按摩」が妙に忘れられない[CJ2026]
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印刷2026/08/02 12:49

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亡霊の脳をマッサージしながら,生前の記憶をほぐしていく。脳型コントローラで遊ぶ学生作品「大脑按摩」が妙に忘れられない[CJ2026]

 2026年7月31日から8月3日まで中国・上海で開催されている大型イベント「ChinaJoy 2026」には,中国の大学生開発チームによる作品を集めた展示エリア「Academic Game Show」が設けられている。

 中国各地の大学による個性豊かな作品が集まり,会場を訪れた来場者の目を引いていた。

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 そんな作品群のなかでも,ひと目で筆者の注意を引いたのが,「大脑按摩」(脳マッサージ)という何とも奇妙な作品だった。

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 何が奇妙なのかというと,本作では脳の形をした専用コントローラを使ってプレイするからだ。ブースの机の上には,シリコン製とはいえ妙に生々しい脳の形をしたコントローラが,さも当然のように置かれていた。これを見過ごせというほうが無理な話だ。

 細部まで妙にリアルなのには理由がある。本作の開発者によると,このコントローラは開発者本人の脳をもとに制作されたものだという。

 開発者は上海科技大学に通う大学2年生だ。本作のアイデアを思いつくと,大学の医学ラボへ赴いて自身の脳をMRIでスキャンし,3Dデータを取得した。そのデータをBlenderに取り込み,コントローラ用のモデルへと調整した。

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 その後,3Dプリンタで原型を出力し,シリコンで型取りすることで,柔らかい脳型コントローラを完成させた。内部にはESP32開発ボードと圧力センサーが搭載されており,Unityと接続することで,プレイヤーが押した部位と力の強さをゲーム内へ反映できる。

 つまり,プレイヤーが会場で揉んでいるのは,開発者本人の脳を再現したものということになる。こんな話が本当にあるのだから,学生作品の展示は侮れない。

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 ゲームの内容に話を戻そう。本作は約10週間という短期間で制作された作品で,「VA-11 Hall-A」の影響を受けて開発された,物語重視のアドベンチャーゲームだ。

 舞台となるのは,生と死のはざまに存在する「マッサージ店」。プレイヤーは店の見習いとなり,来店した亡霊にマッサージを施しながら,それぞれの身の上話を聞いていく。

本作の世界では,死を迎えると肉体は朽ちていくが,魂と記憶を蓄える脳は残り,そのままあの世へ向かう。そのため,登場人物はいずれも脳を頭に載せた姿で現れる
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 マッサージは,大きく3つの段階に分かれている。最初に行うのは,客が好む力加減を探ることだ。脳型コントローラに加えた力はそのままゲーム内へ反映され,画面左側のゲージが緑色の範囲に入ると,客にとって心地よい強さであることが分かる。

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 その力加減を保ちながら揉み続けると,客の気分が徐々に高まっていく。力が強すぎても弱すぎても効果は得られず,絶妙な力加減を維持することが重要になる。

傍から見ると少々いやらしい触り方に見えるかもしれないが,揉む部位と力加減の両方を正確に調整する必要がある。脳の取り扱いには意外と注意が必要だ
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 適切な力加減をつかんだあとは,客が求める部位をマッサージしていく。脳は左右と前・中央・後ろを組み合わせた6つの領域に分けられており,どこを揉むかによって異なる反応が起こる。同じ部位であっても,客によって得られる効果は変わるという。

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 さらに,指定された順番で各部位を刺激すると,客がその部位に応じた出来事について語り始める。こうして脳に残された記憶を少しずつ引き出し,その人物の生前に何が起きたのかを知っていくわけだ。

 最初の2段階を終えるころには,客がどのような人物なのかもある程度分かってくる。第3段階では,特定の部位を自由に刺激して記憶をさらに探り,最終的にはこのマッサージ店が担う本当の役割へと踏み込んでいく。

シリコン製とはいえ,妙に作り込まれた脳へ触れることには最初こそ抵抗があった。しばらく揉んでいると「やはりシリコンだな」という感覚に落ち着くのだが,何とも言えない触感は手に残り続けた
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 本作の世界では,死者は完全な記憶を持ったままあちら側へ渡ることができない。そのため,店では死者の人となりを知ったうえで,どの記憶を消すべきかをマッサージによって選び取る必要がある。

 どの記憶を残し,どの記憶を消すのか。その判断はすべてプレイヤーに委ねられており,選択によって異なる結果が生じる

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 ブースでプレイしたデモでは,凄腕の薬師だった女性が客として登場した。彼女は生前に不老不死の薬を完成させながら,最終的には死を受け入れた人物だ。

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 その後,彼女が生前に飼っていたと思われる犬も,別の客として店を訪れる。犬の記憶を引き出すと,薬師は完成させた不老不死の薬を,自分ではなく飼い犬に与えていたことが分かる。しかし犬のほうは,飼い主のいない現世に未練を抱いていないようで,薬師のあとを追うように死を選んだ。

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 最後には,それぞれどの記憶を消すかを選ばなければならない。物語上の結果を考えるだけでなく,現実における生や存在の意味まで,わずかながら考えさせられる場面だった。

客として登場する“キノコ人間”は,人類を救おうとして蛇にかまれ,命を落とした人物だ。同族から笑われたことをきっかけに人間の世界へ近づき,他者を助けることで自らの存在意義を見いだそうとしていた。最後には4つの記憶から2つを消さなければならず,彼にとって何が最も大切なのかを選ぶのは容易ではなかった
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 「大脑按摩」は,脳型コントローラという発想があまりにも破天荒で,学生作品ならではの大胆さがある。一方で,その奇抜さだけに頼ることなく,物語や世界観はしっかりと作り込まれている。

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 学生ならではの自由奔放な想像力に加え,思いついた企画を実際に遊べる形まで持っていく行動力も感じられた。会場で触れた特徴的な作品群のなかでも,とりわけ強い印象を残した一本だ。

 さまざまな事情を考えれば,この脳型コントローラがそのまま一般向けの商品として発売される可能性は低いだろう。しかし,本作で示された物語作りの力と発想の鋭さを見れば,開発者が今後どのような作品を生み出すのか,期待せずにはいられない。


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    展示会/見本市

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