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Access Accepted第783回:大鉈が振るわれたActivision Blizzard,ゲーム業界でリストラが続く
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印刷2024/02/05 08:00

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Access Accepted第783回:大鉈が振るわれたActivision Blizzard,ゲーム業界でリストラが続く

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 Microsoftのゲーム部門で,1900人にもおよぶ大型のリストラが行われ,多くの従業員が解雇されたActivision Blizzard。Blizzard Entertainmentの新社長に,ジョハンナ・フェイリース氏が就任し,難しい局面の舵取りを迫られていくことになる。2023年後半あたりから,ゲーム業界におけるリストラの話題が急激に増えてきているのも気になるところだ。


1900人ものリストラを行い新体制へ


 2024年1月25日,Microsoftのゲーム部門において,Activision Blizzard,ZeniMax Media,そしてXbox部門の2万2000人のうちの8%にあたる,1900人にもおよぶリストラが行われた。その多くは,Activision Blizzardの従業員だという。
 そんななか,Blizzard Entertainmentの新社長に,ジョハンナ・フェイリース(Johanna Faries)氏が就任することが,同社公式ブログにてアナウンスされた(関連記事)。2024年2月5日(アメリカ時間)からカリフォルニア州アーバイン市にあるBlizzard Entertainment本社に赴き,難しい局面の舵取りを迫られていくことになる。

2月8日に設立33周年を迎えるBlizzard Entertainmentの,5代目の社長となったジョハンナ・フェイリース氏
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 フェイリース氏は,もともとナショナル・フットボール・リーグ(NFL)でマーケティングやチケット販売戦略などを指揮し,その後2018年にActivision Blizzardに加わっている。最近では「コール オブ デューティ」フランチャイズのゼネラルマネージャーとして活動していた。そんな経緯からも,「オーバーウォッチ」「StarCraft」などのeスポーツ分野にも強い数々のライブサービスを展開するBlizzard Entertainmentの統括には適任の人物と言えそうだ。

 Blizzard Entertainmentの全職員に向けたメッセージをそのまま公開したという公式ブログの中でフェイリース氏は,「私は,独自で特別なものであるBlizzardのゲームと開発者の皆さんに対して細心の注意と配慮を払いながら,その繁栄を支援するためにできる限り全力を尽くします。私は,現在および将来のプレイヤーコミュニティにサービスを提供し,ゲーム制作に対するBlizzardのアプローチの特徴である偉大さ,洗練さ,創造性の熟練に対する共通の情熱をさらに増幅させられると楽観的に思っています」と話し,リストラにより多くの仲間を失うことになったBlizzard Entertainmentを奮起させている。


難しい局面を支えたイバラ氏に加えて,アドハム氏も退社


 1月25日にBlizzard Entertainmentを去ったメンバーの中には,4代目の社長職にあったマイク・イバラ(Mike Ybarra)氏も含まれている。2019年11月にBlizzard Entertainmentに入社したイバラ氏は,2021年7月に同社内部で発覚した数々のセクハラや労使問題の責任を負う形で退任した前任者を引き継ぐ形で,同8月に社長として就任して難しい2年半を率いてきた。

Blizzard Entertainmentを2年半ほど率いたマイク・イバラ氏(右)。2023年11月に開催されたBlizzCon 2023では,昨年末に「Microsoft Gaming部門CEO」という新しい肩書になったフィル・スペンサー(Phil Spencer)氏と共に壇上に立っていた
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 イバラ氏に加えて,Blizzard Entertainmentに残っていた創業メンバーであるアレン・アドハム(Allen Adham)氏も同日で辞任している。アドハム氏については,2021年2月に4Gamerで行った独占インタビューでくわしくまとめているが,大学で知り合ったマイケル・モーハイム(Michael Morhaime)氏,フランク・ピアース(Frank Pearce)氏とともに,1991年に同社の前身であるSilicon & Synapseを起業した初代社長だ。2004年の「World of Warcraft」のローンチを目前にして,家族との時間を優先する形で退職してしまった。
 アドハム氏は,2016年にBlizzard Entertainmentに復帰しており,上記のインタビューでは「Blizzardを辞めたのは人生最大の過ちだった」とも話していたほどで,彼が再びBlizzard Entertainmentから去ってしまうことを,残念に思うファンもいることだろう。

GDC 2023では,「開発者会議でトークセッションするのは初めて」と話していた,Blizzard Entertainment創業者の1人であるアラン・アドハム氏
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 今回のリストラで解雇された多くの従業員は「余剰人員」とされている。Blizzard Entertainmentの多くのタイトルが成熟したライブサービス化していくなかで,コロナ禍のリモートワークが常態化するなど人員整理が必要だったことは想像できる。

 また,海外メディアのBloombergによると,久々の新IPとして6年もの期間をかけて開発が進められていたという,サバイバルMMOの開発を中止してしまったという。
 このプロジェクトについては,4Gamerの過去記事でも紹介しているように,ファンタジーとサイバーワールドが同居しているような,メタバース的な作風であったと思われる。「Odyssey」というコードネームで,そのプロトタイプや企画は高評価を得ていたとのことだが,開発中止により,今後のライブサービスにおける成長要素となる新作の1つが,失われてしまった。
 フェイリース氏の就任,そしてMicrosoftの計画が,Blizzard Entertainmentをどのような新しい方向へ育んでいくのか,今後も大きく注目したい。

Odysseyというコードネームで呼ばれていた,Blizzard Entertainmentの未発表タイトルも開発中止になったという。同社にとっては久々の新規IPになると思われただけに,もったいない話ではある
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リストラが続くゲーム業界


 当連載の「第776回:ゲーム業界にも冬が到来か。欧米メーカーで相次ぐ解雇の波」で紹介したように,現在の欧米ゲーム業界にはリストラの猛吹雪が吹き荒れている。
 また,「トゥームレイダー」シリーズや「Marvel's Guardians of the Galaxy」で知られる,現在はEmbracer Group傘下のEidos Montrealが,全従業員の20%におよぶ100人ほどの解雇をアナウンスしたことは,別記事でも伝えたとおりだ(関連記事)。

 10年ほどの間の急激な拡張により,一時はヨーロッパ第2位のパブリッシャへと成長をしたEmbracer Groupが経営危機に陥り,2023年後半からリストラによるグループの改革を進めている。Eidos Montrealに限らず,同社傘下のデベロッパはSlipgate Ironworks,Lost Boys Interactive,Black Forest Games,Nimble Giant Entertainmentなどが人員削減やスタジオ閉鎖などをしている。
 また,1月8日にはUnity Technologiesが1800人にもおよぶ解雇を行っているほか,同10日にはAmazon傘下のTwitch Interactiveが500人,そして翌11日にはDiscordが170人の従業員をリストラするなど,ゲーム業界に関連するテクノロジー企業でも大きな鉈が振るわれている。海外メディアのKotakuによると,2024年が始まったこの1か月だけですでに6100人を超えるゲーム開発者やビジネス関係者が解雇されているという。これは,GameBeatの記事と照らし合わせると,2023年度の9か月間で公式にアナウンスされていた解雇者総数に匹敵する。

Blizzard Entertainmentを中心とするXboxのゲーム開発部門からは1900人もの従業員が解雇されたが,それを受け入れるだけの求人が現在のゲーム業界にあるのだろうか
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 心配なのは,これだけの解雇者が出て,彼らをすべて吸収できるだけの就職先が,今のゲーム業界にあるのかということである。イバラ氏は,退職が発表された直後にアップデートした自身のXにて,「コネクションや照会の必要など,もし何か私が協力できることがあればDMしてください。(中略)……私は今日のニュースがどれほど挑戦的なことなのかを理解しており,常にあなたたちのために時間を作っておきます。私の心はあなたたちと共にあります」という切実なメッセージを発信している。
 解雇された開発者たちが,自分たちのクリエイティビティをさらに発揮できるような,新しい環境を見つけ出すことを願ってやまない。

近年のゲーム開発者会議では,求職者の参加も増えている。GDCの運営者であるInformaTechが公開した業界白書「2024 State of the Game Industry」によると,56%の業界関係者が自分が解雇される可能性があると心配しているという
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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