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水口哲也氏が「Child of Eden」で形にしたかったもの,そしてゲームを取り巻く環境が変化していく中で考えていること
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印刷2011/11/26 00:00

インタビュー

水口哲也氏が「Child of Eden」で形にしたかったもの,そしてゲームを取り巻く環境が変化していく中で考えていること

ゲームを取り巻く環境が変化しても

重視していきたいのは「人間」


4Gamer:
 ソーシャルゲーム関連というわけではないんですが,最近ゲーミフィケーションという言葉も使われるようになってきています。それについてはどうお考えでしょうか。

水口氏:
 それも時代かなぁ,という気がします。すごくいいタイミングで都合のいい言葉が出てきたなぁという印象もありますし。

4Gamer:
 そういう言葉が出てきたことで,人の嗜好も動いているでしょうし,新たなビジネスも生まれているでしょうし。

水口氏:
 大学なんかでそういう研究が活発化してきたっていうのは大きいですね。ゲーミフィケーションという言葉が生まれたことによって,どうやったら社会や学習に対するモチベーションを高められるのか,あるいはゲームの良いところを生活に応用できないかっていう考えが,どんどん掘り下げられていくのは歓迎すべきことだと思います。

4Gamer:
 ゲームというものが,ただ消費されていく娯楽ではなくなってきているのかな,という変化はなんとなく感じますね。

水口氏:
 水とか空気みたいに,当たり前のものになりつつあるのかもしれないですよ。

4Gamer:
 ミネラルウォーターがいいという人もいれば,水道水でも十分だという人もいる……という具合に,選択肢が増えてきているのがゲームを取り巻く現状なのかもしれませんね。

水口氏:
 ええ。でも,まだ始まったばかりですからね。
 例えば,マイレージを溜める行為がだんだん面白くなってきているとすれば,そこにはゲーミフィケーションの発想が取り入れられているのかもしれないですし,自然とそこに行き着いているのかもしれないですし。
 気付かないうちに,世の中が少しずつ面白くなっていた……と気付くタイミングが,いつかやってくるのかもしれないですね。その頃にはゲーミフィケーションなんていう言葉を出すまでもなく,「当たり前のことじゃん?」となっているかもしれない。

4Gamer:
 分かりやすいところでいうと,「クラウド」という言葉も,そのうちそうなるんだろうなぁという気がします。
 つまり,ゲームのプラットフォームだけでなく,ゲームを取り巻く環境そのものが大きな変革期にあるように思うんですが,そういう時代にものを作るうえで,重視していることはありますか?

水口氏:
 うーん……。やっぱり,人間かな。人間が,僕らが何を求めているか? やっぱりそれしかないという気はします。
 それと当然,誰に向けてものを作るかというのも大きいです。同じ人間でも70億人もいて,それぞれ好きなもの,気持ちいいと感じるものは違うんですよ。その中のどんな人に向けて作るかは,大事なことだと思いますしね。そうやって考えていくと,今後は今まで自分が向かい合ってこなかったようなターゲットに向けて,何かを作ることもやってみたいですし。

4Gamer:
 もの作りに対するスタンスも,クリエイターによってそれぞれ異なると思うんです。例えば,自分のインスピレーションだけを頼りにそれを磨き上げていくタイプであったり,求められているものを追求していくタイプであったり。
 そういう分類をしていくと,水口さんは「どんな人間に向けて作るか」を大事にしながらも,ご自身の中にある核の部分をかなり重視しているように感じるのですが……違います?(笑)

水口氏:
 まったく間違ってないですね(笑)。広く「人間」と言いつつも,最初の基準となる1人目って,やっぱり自分です。自分が分からないと足も動き出さないですし,プロジェクトとして複数の人間が協力することになった場合,意図を説明することもできないですから。
 脳にデバイスを直接接続すると,自分が考えていることや好きなものが出力されるという状態になれば,ちょっと変わってくるのかもしれないですけど(笑)。


4Gamer:
 確かに(笑)。でもそういうのにも憧れますけどね。説明するのが面倒で,ビジョンだけとっとと共有したいみたいな。

水口氏:
 でももう,それに近い状態になりつつありませんか?
 例えばGoogleで,パッと言葉を入力すると候補がずらっと出てきたり,画像検索に至ってはもう写真を撮りに行く必要がないぐらいの量が出てくるわけですから。

4Gamer:
 ああ,そうか。当たり前のことになってますけど,こちらが全部の言葉を入力する前に検索候補が出てくるのなんか,集合知に常時接続しているような状態と言えるかも知れないですし。

水口氏:
 ……でも,ニューヨークの記事や写真を見て,そこに行ったつもりになって会話をすることはできても,本当に行ったことのある人とそうでない人って,やっぱり何かが違いますよね。

4Gamer:
 実際に触れてみるとその場にしかない空気感であったり,ノイズのようなものも豊富にあって,それら全部ひっくるめて「その場」は出来上がっているんですよね。
 情報として得られるものは,さまざまなものが絡み合って成立しているうちの,ほんのいくつかの側面でしかなくて。

水口氏:
 ええ。体験の有無というのは非常に大きな要素で,情報が溢れてきているからこそ,体験的なものを求める傾向も大きくなっていくと思うんです。自分もあの体験をしてみたい! みたいに。

4Gamer:
 近年,音楽フェスが増えている背景にも,そういう欲求の高まりみたいなものがあるのかもしれません。


日本のゲーム業界の開発力が下がったと言われるのは

一時期,クリエイティブに傾きすぎたから


4Gamer:
 ちょっと話題を変えます。
 水口さんは頻繁に海外に行かれていますよね。日本と海外の違いというのは,山ほどあるとは思うんですが,ここ最近で,とくに大きく違うと感じたことって,何かありますか?

水口氏:
 違うこと……確かにありすぎですね(笑)。
 ただ最近,日本が特殊なのかな……,という気はしています。善し悪しなんですけど,日本は全体的に純粋培養な感じがしますね。例えば携帯電話にしても,ガラパゴスだなんだ言われてきましたし。
 でも,それも海外の人から見ると「携帯電話でバスに乗れるなんてすごい!」とか「地震が起きる前に警告音が鳴るなんてすごい!」とか,そういう評価もあるんです。

4Gamer:
 実はスマートフォン登場以前から,日本のフィーチャーフォンは世界的に見ても類い希な進化を遂げていたんですよね。

水口氏:
 ええ。そう考えると携帯電話に限らず,日本から生まれたサービスが海外で評価されているケースって,けっこうあるんですよね。
 もちろん逆もあります。それこそゲームはちょっと前まで日本のお家芸みたいに思われていましたけど,任天堂以前にATARIがあって,もともとアメリカで生まれたものです。どの分野も,その時代ごとにリードしている国や企業は常に変わっているんですよね。

4Gamer:
 主役が常に入れ替わっているというか。

水口氏:
 世界中を回って見ていると,そういうのは凄く感じますよね。
 例えば,今は各国共にネット……ソフトウェアの世界に向かっているんですけど,日本はこれが弱いですよね。世界的に見て,日本はソフトウェア後進国になってしまった気がします。ソフトウェアエンジニアが弱いというか。その系統のビジョナリストもいませんし。

4Gamer:
 確かにそうかもしれません。

水口氏:
 例えばGoogleもAmazonもMicrosoftもFacebookもTwitterもアメリカの会社なんですよね。日本ではそういうアメリカで生まれたものに乗っかっている感じになっています。広い意味でのインフラやプラットフォームを作る力が弱くなった感じがするんです。
 インフラを作るのは下手だけど,その上を走る車を作るのはうまいみたいなところは昔からあるので,日本の性格的なものなのかもしれないですけど。

4Gamer:
 ゲーム業界に限っても,海外と比較すると開発力が弱くなっているという話はよく聞きます。

水口氏:
 ゲームの場合,今から10年ぐらい前だと思うんですけど,ゲーム産業の調子が良かったときに,「ゲーム性」とか「ジャンル」とか「新規性」とか,そういうクリエイティブに傾きすぎたと思うんです,きっと。
 そうやって「日本のゲームは凄いぞ」ってやっていた時期,北米や欧州ではサイエンスに振って,次の新しい仕組みを作り始めていたんです。例えば,「Unity」というゲームエンジンもそういう流れで出てきたものですし。
 なんか……サイエンスするということを,日本は忘れちゃった気がするんですよね。

4Gamer:
 ここにきて,日本と海外のゲーム産業において,基礎研究やエンジンの差というものが取りざたされがちなのは,そういうことなんでしょうか。

水口氏:
 だと思いますよ。本当は日本でも,エンジニアが思いきりエンジンを作って,各社がそれを活用して改良していきつつ,クリエイティブはクリエイティブに集中するといった形で,効率的に分散することも出来たはずなんですけど。国内のゲームメーカーの開発力が落ちたと言われてしまうのは,そういう会社を超えた,業界内で相互的な絡みをやってこなかったからじゃないかという気がします。

4Gamer:
 任天堂がずっとおもちゃの延長線上にあるゲームというようなもの作りをしてきたのに対し,PlayStation時代にはクリエイティブな創作物としての側面が注目されるようになっていましたよね。それは悪いことではなく,それ故に生まれてきた新しいものも数多くあったと思うんですが。

水口氏:
 そうですね。でもそのあたりも結局,その時代をリードしていた企業の文化による差みたいなものかもしれません。
 Microsoftはソフトウェアオリエンテッドの会社ですし,ソニーはオーディオビジュアルの強い会社,任天堂は玩具的な良さがある,みたいな。

4Gamer:
 要するに,企業文化みたいなものが,どの時代にマッチするか? というところですよね。
 例えばユーザーインタフェース一つをとってみても,さまざまな思想であり文化的なバックボーンが大きく影響していますよね。それによって見せ方が変わったりとか。ただ,そういうものがゲームに取り込まれたとき,面白さに繋がるかとか,快適であるかというのは,また別の問題なのかなという気がしています。

水口氏:
 それは大いにありますね。

4Gamer:
 Child of EdenをKinectで遊んでみたとき,やることが単純というか,操作において難しいことを何一つさせない潔さに驚きました。むしろ,10年前のRezからゲームシステムとしては大きく変わっていないのに,より感覚的な操作が可能になっているとすら感じました。
 これはこれで,水口さんなりの意図であったり,そう意図するまでの背景であったりが込められているものですよね?

水口氏:
 複雑なことが嫌いなんです(笑)。
 どっかでアーケードゲームのような作り方をしていると思います。それに,画面にいろいろな情報を表示させて言葉で説明することを極力しないで,世界中のどんな国の人でも遊べるようなものを突き詰めたいという思いはずっと持っています。

4Gamer:
 それを突き詰めているからこそ,音楽,映像,シンプルな操作というものが浮かび上がってくると。

水口氏:
 そうそうそうそう。


PlayStation Vita「LUMINES Electronic Symphony」は

「Child of Eden」以上に手軽で気持ち良い作品に


4Gamer:
 ただ一方では,ゲームにおけるインタフェースのアプローチとしては,あえて複雑なものを用意して,それに慣れていくこと自体を,ゲームの楽しさとして提供しているケースもありますよね。

水口氏:
 そういうのも嫌いじゃないですよ。でも,自分では作らないだろうなぁ……。
 僕にとって,操作を覚えること自体にあまり意味はなくて,インタラクティブの向こう側で何を感じるか? というところを早く伝えたいんですよ。

4Gamer:
 と言いますと?

水口氏:
 Child of Edenであれば,いろいろなアーカイブがあって,アーカイブ一つ一つに何となく伝えたいメッセージが入っています。そのメッセージは,やり込めばやり込むほど何となく分かっていくっていう形にしてあるんですけど,そこになるべく早く到達させたくて。
 そのためには,入り口をなるべくシンプルにする必要があるんですよね。そこまで行き着いてくれないと,たぶん遊んだ人の中で消化不良が起きてしまって,評価云々以前のところで終わっちゃうと思うんですよ。

4Gamer:
 なるほど。例えば武器が12種類あって,それぞれ操作方法が違いますとなったら,それはそれで面白いんですけど,使いこなすための努力が必要になりますよね。この敵にはあの武器が有効だから,あの武器の練習をしておかなきゃ,みたいに。

水口氏:
 そう。まずそこに頭を持って行かれちゃいますよね。人間って,ロジカルなことを考えすぎていると,感覚的,生理的に気持ち良くはならないですから。そこのバランスでは,まず感覚や本能に訴えるものを重視したいんです。

4Gamer:
 ロジカルな整合性を理解していく喜びよりも,感覚的なものを志向しているというわけですね。

水口氏:
 少なくともChild of Edenは,そうです。
 音楽って,ロジカルなものが主じゃないですからね。メジャーなコードを聴くと楽しい気持ちになって,マイナーなコードを聴くと悲しい気持ちになりますよね。今ここで皆でドラムを叩き始めるとすると,誰かのビートにシンクロしてグルーヴ感が高まっていって,誰が誰にフォローしているかも分からなくなります。じゃあ,グルーヴって何だろう? その気持ち良さって何だろう? とかね。
 でもそれを一つ一つ解析していくと,プロセスは絶対にあるんですよ。短いスパンでコール&レスポンスみたいなものをもの凄い回数でやっているわけで,そのときには脳も凄く動いてますよね。

4Gamer:
 それが気持ち良さに繋がるということかもしれません。
 ただ,そういった感覚的なものでも,ゲームとして組み上げていくときにはロジカルである必要がありますよね。

水口氏:
 そうですね。感覚的なものをとても大事に作ってはいるんですけど,実際に作るにあたって設計図を描くには,一度ロジカルなものに落とし込まなくてはいけません。その作業って,ビルの設計図を描くようなもので,何処にどれぐらいの太さの柱があって,だから窓はこれぐらいの大きさにして……でもやっぱり窓をもう少し大きくするためには,柱の配置を変更するところから仕様や設計を変えなきゃくて……ということの繰り返しなんですよ。
 でもプログラム自体がロジカルなものなので,そこをきっちりイメージできないとプログラマーの手は動かなくなってしまいますから。

4Gamer:
 そうやってロジカルに設計図を描いていくとき,感覚的なものが抜け落ちてしまうことはないんですか?

水口氏:
 んー,僕の場合はないです。というのも,設計図に沿ってプログラマーが作っているものに対して,僕は感覚的な注文ばかりつけるという人間なので。でもそうしないと,どんどん感覚的,感情的な部分がなくなってしまいますからね。
 ……スタッフは大変だと思います(笑)。

4Gamer:
 実際,出来上がったものを見ると,ちゃんと感覚的に気持ちの良いものになっていますから,スタッフの皆さんも,苦労しただけの達成感はあるんじゃないでしょうか(笑)。

水口氏:
 そうですね。一人一人の満足度は高いんじゃないかと思います。やってやったぜ,ぐらいの感じで。
 結局,こういう仕事って一つの革命的な何かですべてが劇的に変わることなんて滅多に無くて,一つ一つの積み重ねなんですよね。実は最近,ゲームを作るのがしんどいなぁって思ったりもするんですよ。やっぱり3年もかけて作っていくとなると,日々少しずつ塵が積もっていきながら,やがて山になるという感じですから,大変なんですよね(笑)。
 だから今後は,3か月ぐらいで作れるものに切り替えていきたいな,なんて。

4Gamer:
 3か月というと,ソーシャルゲームの入り口の部分ぐらいですよね(笑)。

水口氏:
 あとはアップデートを延々やっていくというのも長く続くと,それはそれでしんどいことになるんじゃないかっていう(笑)。

4Gamer:
 でもきっと,また長い年月をかけてものを作っていくわけですよね?

水口氏:
 まあ,そうかもしれませんね。でも今は,キューエンタテインメントって,僕だけじゃなくていろんな人間がいますから。外国人率も高いし,若い才能も育ってきていると思います。
 それに,僕がChild of Edenをやっている間に,次の仕込みはしていました。PlayStation Vita用の「LUMINES Electronic Symphony」も,着々と準備されています。

Child of Eden

4Gamer:
 実は凄く楽しみにしているんです。

水口氏:
 これが結構いい出来なんですよ。LUMINESは一度グローバルにセールス的な成功をしていますが,最初のPSP版LUMINESと比べて表現力も上がっていたり,新しい機能も付いていたりで,かなり気持ちの良いものになっています。

4Gamer:
 そこでもやっぱり,気持ち良さを重視しているんですね。

水口氏:
 Child of Edenよりもっと手軽に気持ち良さを味わえるようになっていますね。体全体を使う必要はないですし,ヘッドフォンさえすればいつでもどこでも遊べますし。寝ながらだってね(笑)。本当にいいですよ。パズルゲーム好き,音楽好きにはたまらないと思います。


4Gamer:
 期待しています! 今日はありがとうございました。


 音楽と映像を融合させた表現と一言でいっても,その手法はさまざまである。しかし水口氏の作品の場合,そこに常に何かしらの“新しい体験”が組み込まれていること,そしてリプレイアビリティが高いことといった共通点がある。もちろんChild of Edenも同様だ。では何故,水口氏がそういうゲームを作り続けてきたのか。その一つの回答を,今回のインタビューで聞くことができたように思う。

 「最近,ゲームを作るのがしんどいなぁって思ったり」と冗談っぽく語る水口氏ではあるが,きっとまだまだ我々に新しい体験を味わわせてくれることだろう。
 ひとまずはChild of Edenを遊びながらPlayStation Vita用「LUMINES Electronic Symphony」の発売を楽しみにしつつ,水口氏の次の作品に期待したい。

「Child of Eden」公式サイト


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