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「GeForce GTX 1080」レビュー。Pascal世代最初のGeForceは,GTX 980と同等の消費電力で,GTX 980 SLIと同等の性能を発揮する
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印刷2016/05/17 22:00

レビュー

Pascal世代最初のGeForce,見どころは絶対性能と消費電力対性能比

GeForce GTX 1080
(GeForce GTX 1080 Founders Edition)

Text by 宮崎真一


GTX 1080のFounders Edition
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 北米時間2016年5月6日,NVIDIAはデスクトップ向けGPUの新製品「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)と,その下位モデル「GeForce GTX 1070」(以下,GTX 1070)を発表した。

 GTX 1080とGTX 1070はいずれもNVIDIAの新世代GPUアーキテクチャ「Pascal」(パスカル)を採用。製品型番が示すとおり,「GeForce GTX 980」「GeForce GTX 970」を置き換える製品だ。

 GTX 1080の北米市場におけるメーカー想定売価が599ドル(税別)のところ,NVIDIAは,従来よりもリッチな設計だというリファレンスカードを「Founders Edition」として同699ドルで販売することを予告済みだが,今回4Gamerでは,このFounders Editionの貸し出しをNVIDIAから受けることができたので,その実力に迫ってみよう。Pascalアーキテクチャを採用する最初のGeForceは,新世代を感じられるものに仕上がっているだろうか。

入手したGTX 1080 Founders Editionはこんな感じの製品ボックスに入っていた
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GTX 980と似たGPU構成ながら,かなりの高クロックで動作するGTX 1080


GTX 1080 GPU。ダイ上の刻印は「GP104-400-A1」だった。デジタルノギスによる実測のダイサイズは16.53(W)×19.59(D)mmだったが,公式には72億トランジスタを集積して約314mm2なので,両辺とも実測値より若干短いものと思われる
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 GTX 1080が採用するアーキテクチャや機能の詳細は,西川善司氏による解説記事を参照してもらいたいと思うが,簡単に概要をまとめておくと,GTX 1080は,Pascalアーキテクチャに基づき,TSMCの16nm FinFETプロセス技術を用いて製造されるGPUコア「GP104」を採用するプロセッサだ。

 128基のCUDA Coreとスケジューラやロード/ストアユニット,超越関数ユニット(以下,SFU),L1キャッシュ,テクスチャユニット,そしてジオメトリエンジン「PolyMoprh Engine」を組み合わせて,演算ユニットたる「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を構成するところ,そして,複数のSMを束ねて,そこにラスタライザたる「Raster Engine」を与えて1つのミニGPUコア「Graphics Processing Cluster」(以下,GPC)とするところまでは,第2世代Maxwellアーキテクチャと同じ(※正確を期せば,PolyMorph Engineは世代の刷新が入っている)。GPCの数が4基なのも変わらない。

 ただし,置き換え対象となるGTX 980の「GM204」コアだと,GPCを構成するSMの数は4基なのに対し,GP104では5基となっている。そのため,シェーダプロセッサの総数は,GM204の2048基(32×4×4×4)から,2560基(32×4×5×4)へと増量を果たした。

GP104(左)とGM204(右)のブロック図。並べると,GPCあたりのSM数以外は極めてよく似ているのが分かる
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GP104の概要
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 「GM200」コアを採用する,第2世代Maxwellのトップエンドモデル「GeForce GTX TITAN X」(以下,GTX TITAN X)だと3072基なので,けっこう少ないと思うかもしれない。ではどうやってNVIDIAはGP104で性能を確保しようとしたかというと,第2世代Maxwell比でGPUコアの動作クロックを大幅に引き上げたのだ。
 GTX 1080のリファレンスだとベース1.607GHz,ブースト1.733GHz。これにより,前世代のGPUを圧倒する3D性能が得られるというのが,NVIDIAの言い分である。

GTX 1080 Founders Editionが搭載するのは,Micron Technology製のGDDR5Xチップだった。型番は「6HA77 Z9TXT」。8枚で容量8GBを実現する
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 メモリコントローラは64bitのものが4基なので,メモリインタフェースはGM204と変わらず256bitとなる。しかし,グラフィックスメモリとして世界で初めてGDDR5Xを採用している点は大きなトピックだ。
 GDDR5Xの詳細は大原雄介氏による解説記事を参照してほしいが,簡単にいえば,データ転送レートがGDDR5比で2倍になった規格である。

Pascal世代ではメモリバスの利用量を大幅に削減できたという
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 GTX 1080では実クロック1.25GHzのGDDR5Xメモリチップを搭載するため,データ転送レートは10Gbps(=動作クロック10GHz相当)となり,メモリバス帯域幅は320GB/sと,GM204で抱えていたメモリバス帯域幅の狭さという弱点をカバーすることができている。
 それでもGTX TITAN Xの384bitメモリバスで336GB/sというスペックには届かないが,NVIDIAは,「新しいメモリ圧縮手法の採用により,グラフィックスメモリの利用効率はGP104でGM204の約1.2倍に達する」としているので,実効性能としては前世代のトップエンドを超えるということなのだろう。

NVIDIAコントロールパネルから「システム情報」を開いたところ
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 そんなGTX 1080の主なスペックを,GTX TITAN XおよびGTX 980,そして競合のトップエンドモデルとなる「Radeon R9 Fury X」(以下,R9 Fury X)と比較したものが表1となる。
 なお,後述するテスト環境と,MSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.2.0)を使ってテスト中の動作クロックを確認したところ,GTX 1080の動作クロックは1809MHzまで上がるのを確認できた。

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Founders Editionは特別版か,“ただの”リファレンスカードなのか


GTX 1080 Founders EditionとGTX 980リファレンスカードの比較。カード長,外観とも大きな違いはない
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 といったところを踏まえ,GTX 1080 Founders Editionを見ていこう。
 カード長は実測約267mm(※突起部除く)。GTX 980のリファレンスカードは同268mmなので,「カード長は同じ」と言ってしまって差し支えない。
 GPUクーラーは2スロット&外排気仕様。ポリゴンをイメージした(?)三角形状の凹凸が付いており,GPU型番の彫り込み部分がメッキ加工されているという違いはあるものの,銀と黒を基調にしたデザインは,これまでのNVIDIA製リファレンスデザインを踏襲している印象だ。言い換えると,「Founders Editionとしての特別感」はない。

GTX 1080 Founders Editionを別の角度から。基板は背面も補強板兼放熱板で覆われている
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GPUクーラーの表面にはポリゴン的な凹凸がある(左)。GTX 1080の彫り込み部は銀メッキ入り(右)
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カード背面で後方側の補強板兼放熱板を外したところ
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 カードの背面側をよく見ると,中央部分で2つに分かれているのが確認できるが,NVIDIAは,2本のPCI Express x16スロットが詰まった環境でSLI構成をとるときにエアフローを改善すべく,後ろ側だけ取り外せるようにした構造だと説明している。GTX 980のリファレンスカードでは補強板兼放熱板の一部を取り外せるようになっていたのだが(関連記事),それがカードのほぼ半分にまで広がったのは興味深い。

 カード背面に補強板兼放熱板を持たないGTX TITAN Xのリリース時,NVIDIAは「背面側の放熱板はないほうがエアフロー的には効率がいい」と述べていたので(関連記事),エアフロー重視で外せるようにするくらいなら,初めから付けなければいいのではないかという気がしないでもないが,いずれにせよここは,GTX 1080 Founders Editionの特徴ということになりそうだ。

 補助電源コネクタはリファレンスどおり8ピン×1で,当然のことながら,6ピン電源ケーブルを差しても動作しなかった。
 より高速で動作するというSLIブリッジコネクタ「SLI HB Bridge」に対応するインタフェース部は,従来型のSLIブリッジコネクタとの互換性があることもあり,見た目には何も変わっていない。

8ピン補助電源コネクタ(左)とSLIエッジコネクタ(右)
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On Semiconductor製のDual MOSFET「4C85N」
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 GPUクーラーを取り外して基板を確認すると,カードの長さに対して,ずいぶんと余裕を感じる。カード後方の電源部を見ると,電源部のドライバICが小さくなっていたりして,部材の小型化が進んでいる気配を感じ取れるので,このあたりが理由だろう。

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カード背面側の補強板兼放熱板を取り外したところ。基板前方側を覆う金属板には熱伝導シートが貼られ,確かに放熱板として機能するよう設計してあるのが分かる
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GPUクーラー本体を取り外したところ。カード後方はほぼ電源部だが,意外に余裕があるのが見て取れるだろう。部材の小型化が奏功している印象だ

GTX 1080 Founders Editionの電源部。「R22」「R33」と書いてあるコイルの数と種類に注目すると,5+1フェーズ構成であることが分かる
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 また,注目したいのは,電源のフェーズ数が,GTX 980リファレンスカードの4+1からGTX 1080 Founders Editionで5+1になっている点だ。

 またNVIDIAは電源部について,「キャパシタ(=コンデンサ)を追加して,電力供給ラインのインピーダンスを下げ,それにより電源効率をざっくり6%改善し,かつ,電流の変動に伴う電圧変動をGTX 980の209mVから120mVに下げてオーバークロック性能を向上させた」と述べている。そこで電源部を見てみると,GPU用電源フェーズでは,「470」という刻印のあるコンデンサをコイルあたり2個用意し,さらにメモリ用電源フェーズでは「330」刻印入りのコンデンサを4個並列で使って,それぞれ確かにインピーダンスを下げようとしている気配が感じられた。

GPU用電源フェーズにある「470」刻印のコンデンサ(左)と,メモリ用電源フェーズにある「330」刻印入りコンデンサ
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 GTX TITAN XやGTX 980のリファレンスデザインでは,コイルとコンデンサの数に相関関係がなかった(ように見えた)。GTX 1080では,このあたりの並列化によってインピーダンスを下げ,GPUに流れる電流量が激しく変動しても一定の電圧を保つようにし,ひいてはブーストクロックやオーバークロック時の安定性を確保しているということなのではなかろうか。

過去記事より,GTX TITAN X(左)とGTX 980(右)の,それぞれリファレンスデザインにおける電源部
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デジタルPWMコントローラと思われるチップ「μP9511P」は,カード背面にあった
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 難しいのは,この改善がFounders Editionとして相応しい,もっと言うと,北米市場におけるメーカー想定売価比でプラス100ドルの根拠となり得るかという部分の判断である。見た目では分かりにくいだけに,Founders Editionを“ただの”リファレンスデザインと見なす人も多いだろう。そこを納得させられるだけの何かをNVIDIAがきちんとエンドユーザーに提示できるかどうかは,Founders Editionに対する最終的な評価を大きく分けるのではないかと思われる。


GTX TITAN X,GTX 980,R9 Fury X,そしてGTX 980の2-way SLIと比較。DX12テストも実施


外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b×1,Dual-Link DVI-D×1
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 テストのセットアップに入ろう。
 比較対象としては,直接の置き換え対象であるGTX 980と,第2世代MaxwellのトップエンドであるGTX TITAN X,そして競合のシングルGPUトップエンドであるR9 Fury Xを用意。さらに,NVIDIAは発表時点でGTX 1080について「GTX 980の2-way SLIよりも性能が高い」と謳っていることから,GTX 980の2-way SLI構成(以下,GTX 980 SLI)も比較対象として追加することにした。今回用意できたのは,幸いにもすべてリファレンスカードとなる。

 テストに用いるグラフィックスドライバは,GeForce用が,NVIDIAから全世界のレビュワーに配布された「GeForce 368.13 Driver」。一方のR9 Fury Xでは,テスト開始時点の最新版となる「Radeon Software Crimson Editon 16.5.2 Hotfix」を用いる。
 そのほかテスト環境は表2のとおりだ。

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 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0準拠。ただ,西川氏の解説記事にもあるとおり,Pascal世代では,Maxwell世代のGPUが抱えていた「DirectX 12のAsynchronous Compute(Async Compute)を活用できない」問題が解決したとされているので,それを確認すべく,「Ashes of the Singularity」(以下,AotS)もテストに追加した。
 また,VR(Virtual Reality)周りでも改善があるとNVIDIAが主張していることから,今回は「SteamVR Performance Test」も実行したいと思う。

 AotSのテストでは,ゲームに用意されたベンチマークモードを利用する。グラフィックス設定は「Standard」「Extreme」の2つを選択しているが,両プリセットの詳細は,以前実施したAotSのテスト記事を参照してほしい。

 SteamVR Performance Testは,Valveの「Apertureロボット修理 VRデモ」を使って,視覚忠実度がどのくらいかを見るものだ。本テストのみはグラフではなく,スクリーンショットで比較することになる。

 解像度はGTX 1080がハイエンド市場向けということもあり,3840×2160ドットと,16:9アスペクトで一段下となる2560×1440ドットを採用した。
 なお,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除する目的で,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化していることを,あらかじめお断りしておきたい。


GTX TITAN Xを大きく上回り,GTX 980 SLIと同等以上に立ち回るGTX 1080


 順にテスト結果を見ていこう。
 グラフ1は「3DMark」(Version 2.0.2067)の総合スコアをまとめたものだ。GTX 1080はいきなりGTX 980 SLIの91〜95%というところに留まり,やや不安を感じさせるものとなった。ただ,対GTX TITAN Xでは122〜123%程度,対GTX 980では161〜162%程度,対R9 Fury Xでは127〜130%程度と,従来世代のシングルGPUを圧倒する成績を残しているのは確かだ。

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 次にグラフ2,3は「Far Cry Primal」の結果となるが,ここでは3DMarkとは打って変わって,テストした全条件でGTX 1080のスコアがGTX 980 SLIのそれを上回った。描画負荷が高まるに連れてスコア差を詰められるものの,それでも2〜11%程度高いというのは立派である。
 NVIDIAの言う「GTX 980 SLIより速い」というのは,少なくとも条件付きならば正しいことが実証されたわけだ。

 対シングルGPUだと,「最高設定」でGTX TITAN Xに約31%,GTX 980に67〜75%程度高いスコアを叩き出しているのが目を引く。HBMメモリの採用によって高解像度設定に強くなっているR9 Fury Xに対しても,ギャップは約35%ある。

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 「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)のスコアをまとめたものがグラフ4,5である。
 ゲーム側がまだマルチGPU環境をサポートしていないため,GTX 980 SLIがGTX 980と同じスコアに留まるのは仕様ということで,ここではシングルGPU同士の比較を行うことになるが,GTX 1080と従来製品とのスコア差はさらに開いた。
 ここでも注目したいのはより描画負荷の高い「High」条件で,GTX TITAN Xに39〜40%程度,GTX 980に86〜90%程度,そしてR9 Fury Xに対しては約53%というスコア差を付けているのは圧巻と言うしかない。計算上のメモリバス帯域幅でGTX TITAN XやR9 Fury Xを下回るGTX 1080が,より高負荷な条件でスコア差を広げているわけで,NVIDIAの主張するメモリ周りの最適化効果をここに感じられよう。

 残念ながら,そんなGTX 1080をもってしても,レギュレーション18.0で合格ラインとする平均55fpsには解像度2560×1440ドットでも届いていないのだが,今回用意したテスト対象の中で唯一,なんとかプレイできるレベルのフレームレートを確保できているとも言える。

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 「Tom Clancy’s The Division」(以下,The Division)のテスト結果がグラフ6,7だが,一言でまとめると,その傾向は,3DMarkとFar Cry Primelの中間といったところだ。
 GTX 1080のスコアはGTX 980 SLIと互角で,GTX TITAN Xに対しては16〜23%程度,GTX 980に対しては51〜54%程度高い結果となった。

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 グラフ8,9は「Fallout 4」の結果だが,GTX 1080とGTX 980 SLIの力関係はおおむねFar Cry Primalを踏襲する印象を受ける。
 むしろここで注目したいのは実フレームレートで,3840×2160ドット条件において,レギュレーション18.0がひとまずの合格点とする平均60fpsをGTX 1080が超えてきた意義は大きい。GTX 1080は,ウルトラ設定の4K解像度でFallout 4をマトモにプレイできる史上初のシングルGPUと述べてよさそうだ。

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 「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果がグラフ10,11である。
 「標準品質(デスクトップPC)」の2560×1440ドットでは相対的なCPUボトルネックが生じ,スコアの頭打ちが確認されるため,それ以外のテスト条件でスコアを比較したいと思うが,GTX 1080は,標準品質の3840×2160ドットでGTX 980 SLIの約106%,「最高品質」の2条件では98〜99%程度というスコアになった。要するに「勝ったり負けたり」というわけだが,トータルで見れば互角というのが評価としても妥当だろう。

 対シングルGPUでは,GTX TITAN Xの129〜135%程度,GTX 980の172〜178%程度,R9 Fury Xの142〜154%程度と,ここでも圧倒している。今回も例によって,下のグラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのスコアを示すようにしてあるが,従来世代のトップエンドモデルが平均30fps台に留まる3840×2160ドットの最高品質で,GTX 1080が平均50fps超を叩き出しているのはなかなか感慨深い。

グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 グラフ12,13は「Project CARS」の結果となるが,本テストではGTX 1080がGTX 980 SLIに対して互角以上に立ち回っている。体感レベルでは互角だろうが,インパクトのある結果なのは確かだ。
 また,Project CARSではRadeonのスコアが現状,今ひとつ振るわないのだが,そんなR9 Fury Xに対して高負荷設定の3840×2160ドットでGTX 1080がダブルスコアを示しているのはインパクトがある。

グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 DirectX 12のテストとなるAotSの結果がグラフ14,15だ。
 以前実施したAotSのテストでは,「Async Compute問題」を抱える第2世代MaxwellのGeForceシリーズが芳しくない結果に終わっていた。それは,今回のテスト結果でGTX TITAN XがR9 Fury Xの後塵を拝していることからも窺える。

 ではGTX 1080はどうかだが,GP104でNVIDIAは,グラフィックス描画のスレッドとGPGPUスレッドの発行を並列に仕掛けた場合,その実行スレッドの切り換えを100μs未満で行えるようにすることで問題への対処を行っており(関連記事),その効果はGTX 1080がR9 Fury Xに対して10〜17%程度のスコア差を付けていることから確認できよう。
 かねてからの予告どおり,NVIDIAはPascal世代で「Async Compute問題」に対して一定の解決を見たと判断してよさそうだ。もっとも冷静にスコアを見てみると,R9 Fury Xに対してはもう少しスコア差を付けてほしかったというか,GPUのポテンシャルだけで押し切った印象もあり,次世代Radeonが出てきたとき,どういう結果を生むのかはちょっと興味深いが。

グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 最後はSteamVR Performance Testだが,下に示したスクリーンショットのとおり,Valveの示す指標の最上位「レディ」に,テスト対象はすべて入った。だが,細かく見てみると,最上段のバーを右に振り切ったのはGTX 1080とGTX TITAN X,そしてR9 Fury X。そのうえで「忠実度」がビクともせず上に貼り付いたのがGTX 1080とGTX TITAN Xだった。そこで「平均忠実度」を見ると,GTX 1080は11で,GTX TITAN Xの10.7を上回る,という結果である。
 今回のテスト対象では90fps割れのフレームはゼロなので,現状のVRコンテンツをプレイするにあたって優劣を語るのはあまり意味がなさそうだが,あえていえば,GTX 1080のスコアが最も高いということになる。

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SteamVR Performance Test実行結果。上段左から順にGTX 1080,GTX 980 SLI,GTX TITAN Xで,下段左からGTX 980,R9 Fury Xとなる
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消費電力はGTX 980+α。絶対性能を考えると衝撃的


 GTX 1080のTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は180Wであり,置き換え対象となるGTX 980の165Wより若干高いものの,GTX TITAN Xの250Wと比べるとかなり低い。このあたりは待望の16nm FinFETプロセス技術の恩恵といえそうだが,実際の消費電力はどうか。例によって,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を使い,システム全体の消費電力を比較してみよう。
 テストにあたっては,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値が記録された時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果がグラフ16だが,端的に述べて衝撃的なものになっている。アイドル時の消費電力はGTX 1080が若干低めだが,何よりも注目しなければならないのは3Dアプリケーション実行時だろう。TDPからイメージされる以上に,GTX 1080とGTX 980の消費電力差は小さい。そして,性能的にほぼ互角のGTX 980 SLIと比べると(SLIが有効に機能していないARKを除いて)消費電力は126〜190W低く,GTX TITAN Xより50〜78W低く,R9 Fury Xより69〜129W低い。
 新世代プロセス技術採用製品の一発めなので,評価しづらいのは確かだが,従来世代と比べて圧倒的に消費電力が下がっているのは間違いないところだ。
 ちなみに,NVIDIAが推奨する電源ユニット容量は500W以上で,これはGTX 980と同じ。GTX 980搭載のゲームPCを使っている人なら,そのままGTX 1080へ乗り換えられるだろう。

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 最後に「GPU-Z」(Version 0.8.8)を用いて,GPUの温度も確認しておきたい。
 ここでは,温度24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。その結果がグラフ17だ。

 GPUごとに温度センサーの位置も温度の制御法もGPUクーラーも異なるため,横並びの比較に意味はないと断ってから続けるが,そのスコアはリファレンスカードらしいものといったところ。NVIDIAのリファレンスカードは高負荷時のGPU温度をおおむね80℃台前半で抑えようとする傾向があるが,GTX 1080 Founders Editionもその例に漏れない。
 なお,高負荷時におけるR9 Fury XのGPU温度が群を抜いて低いのは,同製品のみ標準で簡易液冷クーラーを搭載するためである。

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 さて,GTX 1080のGPUクーラーの動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,「静音性にとても優れる」とは言えない。ただ,うるさいほどではなく,ざっくりまとめるなら,GTX 980リファレンスカードのそれと大差ない印象である。


性能はもちろんのこと,消費電力対性能比が非常に魅力的。懸案は国内価格だけか


CUDA SDKに付属する「devicequerydrv.exe」の実行結果
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 以上,GTX 1080を見てきた。
 NVIDIAの言う「GTX 980 SLIより速い」というのは「特定のゲームタイトルで」という但し書きが付く印象であるものの,シングルGPUでGTX 980 SLIと同等の性能というのは,「速い」と結論づけてしまってまったく問題ないだろう。第2世代MaxwellのトップエンドGPUであるGTX TITAN Xを子供扱いしている点も見事で,少なくとも,4Kまでの解像度でゲームをプレイするなら,GTX 1080の「256bitメモリインタフェース」はまったくボトルネックにならない。
 ただ性能を引き上げただけでなく,メモリ周りやAsync Compute周りといった前世代の弱点を確実に潰してきた点も,高く評価したいところだ。

 また,「GTX TITAN Xより速いと言ってもだいたい20〜40%でしょ?」という声に対するカウンターとなる,圧倒的に低い消費電力も目を引く。このスコアから計算できる消費電力対性能比を見ると,GTX TITAN X(や,今回は時間の都合でテストしていないが,「GeForce GTX 980 Ti」)のユーザーもくらっとくるのではなかろうか。

 GTX 1080の性能と消費電力は,新世代の幕開けに相応しいものだと言えるだろう。

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 さて,そんなGTX 1080 Founders Editionの販売解禁は,北米時間2016年5月27日となっている。深夜販売イベントが行われない前提で話をするなら,国内で店頭に並ぶのは日本時間28日朝となるはずだ。
 GeForce新製品の場合,最終の国内店頭価格は,販売開始の数日前まで調整が続くことが多い。果たして税別699ドルが日本円で税込いくらになるのか,日本市場特有の価格設定事情を理解しつつ,注目して待ちたいところだ。

NVIDIAのGTX 1080製品情報ページ

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