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[E3 2017]西川善司の3DGE:「グランツーリスモSPORT」のグラフィックスは10年後でも通用する!?
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印刷2017/06/16 16:59

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[E3 2017]西川善司の3DGE:「グランツーリスモSPORT」のグラフィックスは10年後でも通用する!?

 E3 2017会期中の北米時間6月13日と14日,ソニー・インタラクティブエンタテインメントブースにある「グランツーリスモSPORT」コーナーでは,ポリフォニー・デジタルの代表取締役である山内一典氏によるメディア向けのブリーフィングが,一般来場者も聞けるオープンな形式で行われた。レーシングゲームファンであれば,知らない人はいないであろう山内氏によるプレゼンテーションを直に見られるということで,来場者にも好評を博していたようだ。
 本稿では,山内氏によるプレゼンテーションから,同作における技術的なキーポイントを抜き出して説明しよう。

SIEブースのグランツーリスモSPORTコーナー(左)と,そこでプレゼンテーションを行う山内氏(右)
グランツーリスモSPORT


グランツーリスモSPORTにおける「HDRと広色域に対応」の意味は?


グランツーリスモSPORTは,PS4 Pro上で実現可能なグラフィクス要素を全部入れている
グランツーリスモSPORT
 グランツーリスモSPORTは,現時点でPlayStation 4(以下,PS4) Proが持つ能力を,最も活用したゲームタイトルといえよう。
 なにしろ,「チェッカーボードレンダリング」技法を使ったネイティブな4K解像度に近い4Kグラフィックス表示でありながら,フレームレートは60fpsを実現し,PlayStation VRにも対応するのに加えて,HDR(ハイダイナミックレンジ)や広色域表示も可能など,あらゆる技術的要素を盛り込んでいるのだ。

 「我々は4年前から,次世代における映像表現の基準は『HDRと広色域』であることを確信して,制作に取り組んできた。おそらく,ここまでのゲームグラフィックス表現に挑んでいるのはグランツーリスモSPORTだけだろう」と山内氏は述べる。ここは少し補足が必要かもしれない。

 混同して語られることもあるようだが,HDRと広色域は別物である。
 HDRとは,非常に暗い階調から非常に明るい階調まで表現できる映像技術のことだ。現在最も普及しているHDRの規格は,4K Blu-rayこと「Ultra HD Blu-ray」で採用され,市販の4Kテレビが対応する「HDR10」である。グランツーリスモSPORTは,このHDR10に対応した表示が可能で,多くの4KテレビにおいてHDR映像でのゲームをプレイできるのだ。

この画像は,HDR表示対応のフォトモードで撮影したサンプル画像である
グランツーリスモSPORT

 ちょっと小難しい話になるが,なるべく簡単に説明しよう。
 HDR10とは,2004年にPeter G.J. Barten氏が国際光工学会(The International Society for Optics and Photonics,SPIE)で発表した論文「Formula for the contrast sensitivity of the human eye」に基づいた変換関数を用いると,10bitの整数フォーマットでも,コントラスト比10000:1をウェーバー比1%で表現できることから決められたHDR表示の規格である。
 ここでいうウェーバー比とは,「物理量的な変化量と人間の感覚としての変化量の対比には一定の法則がある」という「ウェーバーの法則」から導かれる値のこと。「HDR10はウェーバー比1%の表現ができる」というのは,「HDR10は,人間の知覚において刺激の1%分にあたる変動を表現できる分解能を持つ」という意味になる。

 先述した変換関数とは,いわゆる階調圧縮に用いる「ガンマ関数」のようなもののこと。正確に記すと「Optical-Electro Transfer Function」(OETF,光電気伝達関数)となる。HDR10が採用するOETFは,米国の「Society of Motion Picture and Television Engineers」(SMPTE,映画テレビ技術者協会)が策定した「ST.2084」という規格だ。
 グランツーリスモSPORTは,このST.2084に対応して,内部的に最大1万nitのHDRレンダリングを行っているのである。

グランツーリスモSPORTは,内部的に1万nitのHDRレンダリングに対応している
グランツーリスモSPORT

最終的な映像出力は,出力先のテレビやディスプレイに合わせたトーンマッピング(階調補正)を行ってからとなる
グランツーリスモSPORT

 一方の広色域とは何か。
 映像において色を表現するために,「色空間」という規格が用いられる。これは,映像の規格が規定した「色の表現範囲」のことで,最も普及している規格が,PC用ディスプレイのニュースでもよく目にする「sRGB」だ。sRGBはテレビの色空間規格である「ITU-R BT.709」と同等の規格であり,テレビやディスプレイの色空間規格として広く採用されている。
 一方,人間の視覚メカニズムで視覚できる(≒知覚できる)色は,sRGBの色空間よりもはるかに広い。そこで4Kや8K映像の規格化にあたって,現実世界に存在する色のほぼすべてを記録したデータベース「SOCS」(Standard Object Color Spectra)をカバーできる色空間が求められた。これが「ITU-R BT.2020」(以下,BT.2020)の色空間である。
 なお,混同されやすいが,色域(Color Gamut)と色空間(Color Space)は異なるものである。色域は「表現できる色の範囲」を表す言葉で,色空間は色域の規格である。

グランツーリスモSPORT

 HDR10対応のゲームは,PCやPS4,Xbox Oneで徐々に増えつつある一方で,広色域に対応したゲームは,現状ではほとんど存在しない。対応していても,特定の表現に対してだけ対応する程度に留まる。たとえば「FINAL FANTASY XV」はHDR対応のタイトルだが,広色域への対応は一部のUI表現で使っているだけだ。
 しかしグランツーリスモSPORTは,テクスチャを始めとしたさまざまな色データを,自然界の色を99%再現できるというBT.2020色空間で扱う。正確を期するならば,「グランツーリスモSPORTの色表現は,sRGB色空間よりも広い色域をカバーするBT.2020色空間に対応した」というべきだろうか。

グランツーリスモSPORTは,さまざまな色データをBT.2020色空間で扱う
グランツーリスモSPORT

 なぜグランツーリスモSPORTでは,sRGB色空間よりも広いBT.2020色空間に対応したのか。山内氏の説明は明快だ。「たとえば,フェラーリの赤やマクラーレンのオレンジは,sRGBに収まらない。(中略)過去のグランツーリスモシリーズでは,sRGB色空間でそれっぽく見えるように調整していただけであった。いうなれば,我々が表現したかった色に,やっと映像規格のほうが追いついてくれた感覚だ」(山内氏)。つまり,現実にある車の色を表現する技術がようやく実現したので,それを使うのは必然というわけだ。

過去のグランツーリスモシリーズが収録していた車種の10%は,sRGB色空間では表現できない色を使っている。そのため,たとえば実際にはフェラーリの赤を正しく表現できず,それっぽく見えるように調整していた
グランツーリスモSPORT

 そこで,グランツーリスモSPORTの開発にあたり,開発チームは4年も前から,広色域に対応した素材の制作に取り組んでいたという。グランツーリスモSPORTでは,フェラーリの赤もマクラーレンのオレンジも,物理的に正しい色を計測したうえで,それをゲーム内のデータに反映しているのだ。
 言い方を変えれば,グランツーリスモSPORTの3Dグラフィックスは,sRGB色空間で撮影する一般的なビデオカメラやデジタルスチルカメラで撮影した実写映像よりも,正確な色を表現していると言えよう。


既存のテレビでは,グランツーリスモSPORTの映像を表現しきれない


 現在市場に出回っている4Kテレビの多くは,BT.2020色空間のカバー率が80%未満である。白色LEDベースのバックライトを採用した液晶テレビだと,高いものでも85%程度で,量子ドット技術を採用したものでも90%前後。安価な製品だとカバー率が70%以下というものさえある始末だ。

 色空間のカバー率だけでなく,4KテレビにおけるHDR対応も,実際は混沌としている。HDR10の規格は,ピーク輝度が1万nitまで表現できるのだが,実際のテレビやディスプレイは,これほど高い輝度を表示できないのだ。
 Dolby Laboratoriesが使っているマスターモニターでも,最高4000nit程度だし,直下型バックライトシステムを採用した民生用のハイエンドテレビでも1400nit程度なのである。エッジ型(サイドライト型)バックライトを採用する簡易的なHDR対応テレビだと,ピーク輝度で700nitくらい。機種によってはそれ以下のものもある。

 この実情を踏まえると,グランツーリスモSPORTのゲームグラフィックスは,カメラだけでなく現行のテレビをも上回っていると言えよう。グランツーリスモSPORTのレンダリングエンジンは,現実世界の色に極めて近い色を表現できるようになっているし,HDR表示も,HDR10規格を最大限使って表現できるように設計されている。しかし,グランツーリスモSPORTのゲームグラフィックスを完全に表示できるスペックを持つテレビがないのだ。

グランツーリスモSPORT

 そんな現実を踏まえたうえで,グランツーリスモSPORTのHDR表示は,ポリフォニー・デジタル側で実際にテレビを導入して調べた輝度特性を考慮して,テレビごとに表示モードを選択できるようになっているという。つまり,ピーク輝度700nitのテレビやピーク輝度1400nitのテレビのそれぞれに適したHDR表示ができるモードを用意する,といったイメージだ。

 一方,色表現はもっと状況が複雑で,厄介だという。山内氏によれば「グランツーリスモSPORT側のデータは正しいのに,4Kテレビで映すと,ちょっとニュアンスが異なる色になる」こともあったそうだ。具体的な説明はなかったのだが,おそらくはテレビ側がBT.2020色空間に対応してはいるものの,カバーしている色域の外にある色が,変な色にシフトしていたり,あるいはテレビ側の映像処理によって不自然に色が強調されてしまうケースだと思われる。
 こうした問題についても,納得できる色が出せるように対策を進めていく方針であると,山内氏は述べていた。

 いずれにしてもグランツーリスモSPORTは,将来,より広色域でHDR表示の能力も優れたテレビが登場してきた場合,ゲーム自体は発売時点の内容そのままでも,ビジュアル面でより優れた体験ができる可能性があると考えておけばいいだろう。


グランツーリスモSPORTの3DモデルはPlayStation 5世代にも通用する?


グランツーリスモSPORT
 グランツーリスモSPORTの表現は,HDR表示や広色域対応だけでなく,自動車の3Dモデルという点でも,極めて高いレベルにあるそうだ。山内氏は,「自動車メーカー側が保有するCADデータを除けば,現存する実車の3Dモデルでは最も正確であると自負する品質である」と自信を示していた。

 それに加えて山内氏は,「グランツーリスモSPORTの制作にあたっては,内装と外装のモデリングを,3年前から140台に対して行っている。これ(※3Dモデル)は,10年先でも輝き続けると自負している。グランツーリスモSPORTにおける自動車の3Dモデルは,現行のPS4に対してもオーバースペックと言えるくらいだ」と述べている。
 「10年先も輝き続ける」「PS4に対してオーバースペック」とはどういう意味だろうか。これは,1世代前のPS3用タイトルである「グランツーリスモ6」に,大きなヒントが隠されている。

 「グランツーリスモ5」以前は,自動車の3Dモデルを制作するときには,頂点数が固定の3Dモデルを制作していた。一般的なゲーム制作ではごく普通のやり方である。
 しかし,山内氏率いる開発チームは「ゲーム機がPS1から2,3へと進化するたびに,ポリゴン数を増やして,同じ自動車のモデルをモデリングすることがある。これは無駄な工程だ」と考えるようになったそうだ。だからといって,とてつもない多ポリゴンでモデリングをしたところで,それがゲームに反映されないのであれば,単に冗長なデータになってしまう。

 そこでグランツーリスモ6では,自動車の3Dモデルを作成するにあたって,「適応型テッセレーション」(Adaptive Tessellation)の仕組みを導入した(関連記事)。自動車の3Dモデルを,その形状を表現するのに必要十分な制御点(※頂点のようなもの)でデータ化するようにしたのだ。
 そしてゲーム中では,PlayStation 3のCPUである「Cell Broadband Engine」の演算ユニット「SPU」を使った適応型テッセレーションエンジンで,視点からの遠近や,ゲーム画面上に対するピクセル密度に応じて,臨機応変に最適なポリゴン数で描画する仕組みにした(関連記事)。

ポリフォニー・デジタルは,グランツーリスモ6で適応型テッセレーションの仕組みを導入した
グランツーリスモSPORT

「10年後でも通用する超高精細なモデル」
グランツーリスモSPORT
 グランツーリスモSPORTでは,グランツーリスモ6の考え方をさらに進化させて,より高精度な制御点ベースのモデリングを行ったという。将来のゲームでも利用できることを想定して作成した3Dモデルデータを使うことで,PS4世代のグランツーリスモSPORTでは,PS4に最適化した品質の自動車を描画でき,次世代のPlayStationプラットフォーム――さしずめPlayStation 5といったところか――では,同じモデルデータを使いながら,さらに高品位な映像を描画できるというわけである。

グランツーリスモSPORTの3Dモデルは,10年後でも通用する3Dモデルデータを目指した超高精細なものだ
グランツーリスモSPORT
グランツーリスモSPORT

 ちなみに筆者は,この3DモデルをPS4ではどのような実装で描画しているのかと山内氏に聞いてみたのだが,笑顔ではぐらかされてしまった。
 もし,グランツーリスモ6と同様に,グランツーリスモSPORTでもランタイムの適応型テッセレーションを行っているとすれば,グラフィックスパイプラインのテッセレーションステージでは必要なだけの性能を期待できないので,Compute Shaderベースで行っているはずだ。だとすれば,同一のモデルデータを使いながら,PS4 ProではPS4よりも高品質な自動車を描画できそうに思えるが,実際はどうなるのだろうか。
 HDR表示と広色域な色表現を実現し,さらに10年先でも通用するという3Dモデルを採用したグランツーリスモSPORTの発売は,2017年秋の予定だ。大いに期待したい。

VRモードのグランツーリスモSPORTを体験しようとする筆者に,「特別に,フォースフィードバックの強度を強くしましょう。ドライブアシストは全部カットでね」と山内氏(左)。怖々とプレイを始めたが,意外にも運転しやすくて驚いた(右)
グランツーリスモSPORT グランツーリスモSPORT

グランツーリスモSPORT 公式Webサイト

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    グランツーリスモSPORT

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