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海外での発売が6月5日に決定した「Vampyr」,最新プレイアブルデモによるインプレッションを,開発者インタビューと共に掲載
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印刷2018/02/22 00:00

プレイレポート

海外での発売が6月5日に決定した「Vampyr」,最新プレイアブルデモによるインプレッションを,開発者インタビューと共に掲載

 パリで開催されたFocus Home Interactiveの自社イベントで「Vampyr」PC/PlayStation 4/Xbox One)の序盤2時間をプレイする機会を得たので,その内容をお伝えしたい。

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「Vampyr」公式サイト


 「ライフ イズ ストレンジ」のヒットで,フランス国内でも知名度を上げつつあるDONTNOD Entertainmentだが,社内には2つの開発チームを抱えており,2018年6月5日の発売が正式発表されたばかりの新作「Vampyr」を開発するのは,カプコンから海外向けにリリースされた「Remember Me」(2013年)を担当したチームだという。

 これまで何度かお伝えしたように,本作の舞台となるのは,全世界で5000万〜1億人の命を奪ったというスペイン風邪の猛威が吹き荒れる第一次世界大戦末期のロンドン。戦争から戻った元軍医の主人公ジョナサン・リードが吸血鬼になり,なぜ自分がそうなってしまったのかを突き止めるために活動を開始するという物語だ。

 本作に登場する吸血鬼は,十字架に反応し銀製の武器に弱いなどとったオーソドックスなルールを踏襲しており,日光を浴びると肌が焼けるため,夜のみ行動する。また,誘われない限り他人の部屋や家には入れないというところもお約束どおりだが,例外的に,生き血を吸われた人はそのまま死んでしまう。そのため,映画などであるように,仲間を増やしたり同じ人間から何度も血を吸うことはできないのだ。

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 ジョナサンは,人の命を救う医者でありながら,人の命を奪うことで特殊な能力を発揮できるという皮肉な状況に陥っており,このアンビバレンス(両面価値)な環境は,ヴァンパイアハンターや後述する下等種の吸血鬼と戦うだけではなかなか経験値を得られないのに,吸血では大量に手に入り,新しい技に費やすことができるといったゲームシステムでも強調されている。

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 イベントでメディア向けに公開されたプレイアブルデモは,ゲームの最初から開始し,制限時間の2時間プレイするというもの。以下,日本のメディアとしてはたぶん初となるインプレッションをお伝えしよう。


「Vampyr」のファーストインプレッション


 残念ながら,現段階で詳しい説明は禁じられているが,セル画風のグラフィックスで進行する「Vampyr」の導入部分は,ジョナサンが首から血を流した瀕死の状態で目を覚ましたところで始まる。多くの死体と共に埋葬されかかっていることに気づいた彼は,そこから抜け出そうとして,途中で彼の人生を大きく変えてしまうような出来事に遭遇する。

 やがて,「Priwen」を自称するヴァンパイアハンターと思われるグループから追いかけられたジョナサンは廃墟となった民家にたどり着く。そこには日記が残されており,ベッキーという名前の妻が発熱し,次第に怒りっぽくなり,やがて夫と思われる日記の筆者に飛びついてきたことが記されていた。

 そうこうするうちに,ジョナサンに気づいたヴァンパイアハンターが家のドアをこじ開けようとしてくるので,ジョナサンは鉈を武器に戦いながら,最初に覚醒する能力である「ワープ」を使って逃げることになる。
 このあたりは彼の持つ能力のチュートリアルになっていて,基本的に,画面に指示されるとおりに進んでいくだけで大丈夫だ。やがて,吸血されて息絶えたばかりの死体を発見したジョナサンは,「Sense」(血の匂いや血痕が鮮明に表示される)という能力を使って血の跡をたどり,ロンドンの一角にあるノースバンクという地域にやってくる。

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 ノースバンクは,ロンドンを東西に走るテムズ川沿いにある倉庫が建ち並ぶ労働者地区で,人影もまばらな運河のそばに,居酒屋のターコイス・タートルがひっそりと建っている。
 ロンドンの夜は,伝染病の蔓延と毎晩のように起こる殺人事件のために,人の気配が消えている。無愛想に見える店主のトムだが,少しでも生き残った人の心のよりどころになればと店を閉めずにいるという心優しい人物。トムのほか,従業員の女性サブリナと飲んだくれのダイソンがおり,ジョナサンは彼らに話を聞くことになる。


人物像が深く描かれた,60人あまりのキャラクター


 「Vampyr」の会話は,表示される候補から選んでいくというおなじみのシステムで,進行中のクエストに直接関係あるものだけでなく,街の様子や世間話などが含まれている。基本的にはすべてを聞いてみるのが良いようだが,中には鍵マーク付きでロックされている会話もあり,これらは,サブクエストを達成したり,ほかのキャラクターからヒントをもらったりして,アンロックされる。

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 例を挙げれば,ジョナサンが追っている人物について,トムは最初,客のプライバシーを守るという立場から何も話したがらない。しかし,ダイソンとの会話で,どうやらウィリアム・ビショップという人物であることが分かり,サブリナからは,ウィリアムとトムが旧知の仲であることを教えてもらう。
 この情報をもとに再びトムに話しかけると,ウィリアムは船頭として真面目に働いてきたが,最近はイライラして暴力的になったので,もう店には来ないでくれと訴え,彼は家に帰ったと教えてくれるようになる。さらにトムは,今夜来た客はウィリアムだけでなく,紳士風の人物も来て,今も二階の部屋にいると語ってくれる。

 「Vampyr」をプレイするうえで,ちょくちょくお世話になりそうなのがNPCの相関図だ。ロンドンには異なる性格の4つの地区(District)があり,それぞれの地区に吸血できる16人ほどのキャラクターが存在する。彼らには,夫婦や親子だったり,トムとサブリナのように同じ職場の人間だったりといった人間関係があり,全員がゲームの謎を解き明かして行くための手がかりを持っている。つまり,彼らの血を吸って殺してしまうと,ゲームの展開に影響を与えることになるのだ。

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 以前から説明されていたことだが,例えばトムの血を吸って命を奪えば,この居酒屋は閉店し,周辺は,より危険な地域になってしまう。居酒屋で得られるはずの情報も失われてしまうだろう。
 相関図には,それぞれのキャラクターの健康値などと共に,(詳しい内容は分からないものの)クエストを進めていくうえでのヒントを持っていることが表示される。


物語のカギを握っていそうな謎の女性が出現


 トムに教えてもらった二階の部屋に行くと,男女が話している声がドア越しに聞こえてきたが,気配を気づかれてしまう。そこで中に入ると,黒い服を着た,どこか陰のある美女(明らかに吸血鬼だ)がジョナサンを一瞥して窓から出て行くところだった。残された初老の男はエドガー・スワンジー博士だと自己紹介し,自分はロンドンの闇に潜む吸血鬼を研究する組織「Brotherhood of Saint Paul」のメンバーで,ジョナサンを救える数少ない仲間であると告げる。

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 博士はさらに,ウィリアムという男はおそらくスカルという下等吸血鬼に変身しつつあり,ロンドンの住民に危険が迫っていると言う。ジョナサンが潜んだ民家の日記にも狂暴になった女性の話が書かれていたが,同じ吸血鬼でありながら,なぜジョナサンや立ち去った女性は人間らしさを残しているのに,スカルのような獰猛な吸血鬼になってしまう場合もあるのか。このあたりは本作の物語における重要なポイントになりそうだ。

 居酒屋を出て波止場に向かうと,そこには血を吸われて小舟の中で絶命している人がおり,どうやら襲われたばかりだ。能力を使うと,倉庫の中が怪しいことが分かるが,うまくないことに,ヴァンパイアハンター達が手に武器を持ち,倉庫を巡回している。

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 倉庫はいくつかあり,それぞれに2〜3人のヴァンパイアハンターが歩き回っているので,プレイヤーは暗がりから彼らの移動経路をよく確認し,誰から襲うのが有効なのかを考える必要がある。武器としては,右手の鉈と民家で見つけたピストルがあるが,試遊は難度が低く設定されていたためか,鉈を4〜5発ヒットさせることで敵を倒すことができた。
 また,吸血行為である「Embrace」(以下,エンブレイス)とは異なる,「Bite」(噛み付き)の能力を使えば,相手を倒しつつ,ヘルスの一部を回復できることも分かった。

 やがて,ジョナサンはアジトとなるアパートへたどり着く。アジトは1つだけではないようで,実を言うとノースバンクに入ったばかりのとき,居酒屋の手前にもあったのを確認している。
 さて,アジトではクラフティングや経験値を使ってスキルの振り分けなどが行えるほか,セーブポイントでもある。太陽光が苦手なことから昼間は(イベント以外では)行動しないため,ベッドに横たわってセーブするとジョナサンは就寝し,翌日の夜に目を覚ますという形になっているようだ。
 就寝中にマップのブラッシュアップが行われ,画面には進めているクエストの内容と共にジョナサンの心境などが綴られる。


事情を知っていそうなウィリアムを追い詰める


 ジョナサンのスキルにはアクティブとパッシブの2種類があり,アクティブは「Defense」(防御),「Aggressive」(攻撃),「Tactical」(戦術),「Ultimate」(究極)などの戦闘で発動する攻撃技がある。一方のパッシブには,「Body」(肉体),「Blood」(血),「Bite」(噛み付き),「Science」(科学)のカテゴリーがあって,発動の必要はなく,常時効果を及ぼす。
 筆者が選んだアクティブスキルは,2本の触手が放たれて敵の体を突き刺すAggressiveの「Claw」と,地面から針を何本も突き出させるエリア攻撃「Shadow Mist」だ。筆者としては,プレイタイムが短いので,少しでも戦闘を楽しみたかったのだ。

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 また,アジトのワークベンチの前に立てばクラフティングが可能で,薬品,武器,そして食料という3つのカテゴリーに分かれたウィンドウが表示される。ここでポーションを生成したり,武器をアップグレードしたりできるようだったが,今回のプレイではそれほどアイテムを拾い集められなかったので,具体的にどのようにアイテムを制作していくのかは,後日改めて紹介することになると思う。

 セーブを終えて外に出ると,血の匂いが強くなってきた。行き着いた倉庫の中は肉片が散乱する陰惨な場所で,運河に続くドックの傍らではウィリアム・ビショップと思われる人物が,男性の生き血を吸おうとしている。ウィリアムはすでに人間ではなくなり,体中から鉱物のようなものが突き出た異様な姿に変貌している。

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 被害にあっている男性の名はショーン・ハンプトンで,物語の重要なキャラクターであることは,以前に行われたイベントでも紹介されていた。ハンプトンは少し血を吸われたのか放心状態で,仕事を邪魔されたウィリアムはプレイヤーに襲いかかってくる。
 スカルとの戦いはこれが初めてになるが,筆者は一度キルされてセーブポイントのアジトからリプレイした,というぐらい強力で,武器を4〜5回ヒットさせては噛み付いてヘルスを戻し,それを何度も繰り返して,ようやく倒せた。


拠点となる病院で,いよいよ吸血活動に挑戦


 ウィリアムを倒すと,ボートで追ってきたスワンジー博士に呼び止められる。そして,倉庫に落ちているお金やアイテムを探したあと,博士と一緒にボートに乗り込んだ。
 ここでようやくジョナサンの来歴が博士によって語られるが,それによると,ジョナサンは若いながらも輸血の権威で,学会ではよく知られた人物だった。そして,軍医として自ら出征したことから英雄視されているという。また,スワンジー博士は物資の少ない中でペンブローク病院を切り盛りしており,ジョナサンに,非常勤医師として病院で働き,それを隠れ蓑にしつつ,吸血鬼を追っていくようにと提案する。かくしてジョナサンは,スワンジー博士とともに病院に向かう。

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 病院ではドロシー・クレーンという看護師長を紹介され,キャラクター相関図のアップデートが行われた。つまり,彼女も60人ほどいるという主要キャラクターの1人であること(つまり,吸血の対象でもある)わけだ。ここで,ようやくゲームのチュートリアル部分が終わり,これ以降,ジョナサンは自由に移動できるようになる。

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 病院を出て運河のそばを歩いていると,強盗に襲われている男を見つけた。ジョナサンが近付くと強盗は逃げ出し,助けた男から救ってくれたことを感謝される。驚いたことに,ここで「エンブレイスしますか?」というメッセージが表示された。上記のように,エンブレイスとは吸血のことだ。

 この男,クレイ・フォックスをエンブレイスすると1300XPが獲得でき,さらに吸血のしやすさを表現する「Mesmerize Level」(メスメライズレベル)は1とのこと。このレベルは,低いほど成功率が上昇する。
 筆者は,これまで敵と戦うだけでは得られないほどの経験値量に,目先の利益を優先させて,ためらいなくエンブレイスを決断。彼を暗がりに連れ込んだ。ゲームでのキルはこれが初めてではないとはいえ,よく考えると,病院に医者として雇われていきなり人の命を奪ってしまうのは気が引ける話だ。あくまで理性を失わず医者として生きるか,有利にゲームを進めるために経験値を優先するか,プレイはそうした決断の繰り返しになっていくようだ。

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 とりあえず精力をつけた筆者のジョナサンは,スペイン風邪の患者が無数に横たわる,まるで野戦病院のようになった病院の前庭で医療活動を続ける。途中,医師や看護師が物資も人材も少ない中,いかに懸命に人命救助にあたっているのかという会話を聞いたり,意識を取り戻したショーン・ハンプトンに出会ったりしたあと,院長室で待ち構えるスワンジー博士のもとに向かい,病院内に自分の部屋を割り当てられた。
 自分の部屋には,アジトと同じようなワークベンチやベッドなどがあり,ここを本拠地として活動していくことになるようだ。次いで,新たなエリアとなる「ホワイトチャペル」に向かうというクエストを受けたが,名残惜しくも今回のプレイはここでタイムアップになってしまった。


「Vampyr」の開発者インタビュー
DONTNOD Entertainmentらしいストーリーの面白さと世界観の表現に期待


 冒頭にも書いたように,本作を開発するのはDONTNOD Entertainmentで,「ライフ イズ ストレンジ」とは異なる開発チームが担当するが,それでもストーリーを重視する同社のカルチャーのようなものが今回のデモから感じられた。登場人物は60人ほどと,すごく多いというわけでもないが,各キャラクターに異なるストーリーやクエストが用意されているので,プレイヤーは彼らをよく調べて,エンブレイスするのに適した人物であるかとか,そもそもエンブレイスする必要があるのかといったことを考えなければならない。

 誰の血も吸わずにゲームを進める「縛りプレイ」もできるとのことだが,利用できるスキルに制限が出るなど,かなりチャレンジングなものになるようだ。

 さて,今回のイベントではDONTNOD Entertainmentで過去5年近くにわたって「Vampyr」の開発に携わってきたナラティブディレクターのステファン・ボーヴェルジェール(Stephane Beauverger)氏と,アートディレクターのグレゴリー・スーチュ(Gregory Szucs)氏に話を聞くことができた。最後に,その模様をお届けしよう。

DONTNOD Entertainmentのナラティブディレクター,ステファン・ボーヴェルジェール氏(左)と,アートディテクターのグレゴリー・スーチュ氏(右)
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4Gamer
 今回,「Vampyr」の導入部分をみっちりとプレイさせてもらい,ゲーム世界の雰囲気が暗いというか絶望的というか,とても重い雰囲気を感じました。

Stephane Beauverger氏(以下,Beauverger氏)
 ありがとうございます(笑)。まさに,そうした光や希望のない暗い世界を描き上げたかったのです。終わりの感じられない第一次世界大戦と,それを追うかのように人々の命を奪い続けるスペイン風邪,さらに,人の命を救うことが生き甲斐だった主人公ジョナサン・リードが,血を吸って人を殺すことで生きていかなければならない「のどの渇き」との葛藤。暗い世情とモンスターもののストーリー展開,そして古典小説「ドラキュラ」が描くゴシック的世界観を融合させて,ゲームで表現したいと思っていました。すべてのキャラクターが問題を抱えており,明日自分がどうなるかわからないような世界なのです。

4Gamer
 このゲームに希望の光はあるのですか。

Beauverger氏
 もちろん。でも,“絶望的”と感じてくれたことには非常に満足しています。このゲームは暗いゲームなのです。

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4Gamer
 主人公はどのような人物なのでしょうか。

Beauverger氏
 ジョナサン・リードは,若い科学者としての能力を開花させ,新しい輸血手法を開発して多くの人の命を救った医師です。第一次世界大戦にも従軍してその能力を惜しみなく発揮したのですが,イギリスに帰ってきたときに何かが起こり,彼は望まないままに吸血鬼になったのです。本作は,誰が何のために自分を吸血鬼にしたのかを探っていくというストーリーになっています。

4Gamer
 ビジュアルアート面で影響を受けたものはありますか。

Gregory Szucs氏(以下,Szucs氏)
 大きなインスピレーションを受けたのは,イギリスの画家のフィル・ヘイルですね。現代画家なのですが印象派のような比喩的な芸術でもあり,光やポストプロセッシングをうまく使って独特の雰囲気を出しています。彼の肖像画にある,周囲の空気が非常に圧縮されたような,独特の暗さをゲームで表現したいと思いました。

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4Gamer
 「Vampyr」の世界は確かにゴシック調ですが,デモでは製鉄工場のような場所など,インダストリアルな雰囲気もありました。

Beauverger氏
 そうです。インダストリアルと言われましたが,当時の世界は急速に変化しており,科学的な進歩やダーウィンの進化論など,旧来の宗教観と対立する知見が広まったことで,それまでの世界で普通だったオカルティズムが否定され始めていました。医学も現代化が進んでいました。そういった社会的な背景の下で医者が吸血鬼になってしまうというのは,パーフェクトなセッティングだと考えたわけです。このゲームは,そうした社会情勢を織り込んだ物語を描いています。

4Gamer
 ゲームの序盤,ジョナサンは遺体の中に埋もれている状態で目を覚ましますが,あれはどういう状況だったのですか。

Szucs氏
 ロンドンは第一次世界大戦の被害を直接的には受けていませんが,スペイン風邪による死者が多く,多くの人が出征して人手も足りなかったことから,遺体は合同墓地へまとめて埋めていました。

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4Gamer
 つまりジョナサンはスペイン風邪による死者と間違われていたということになりますが,吸血鬼伝説とスペイン風邪はどのように結びついているのでしょうか。

Beauverger氏
 それもゲームを続けていくにしたがって解き明かされるのですが,今回「Vampyr」の序盤をプレイして,そういう疑問を抱いたのですか?

4Gamer
 ええ。本当はもっとゆっくり散策して,日記などもじっくり読んでみたいなと思ったのですが,2時間という制約だったのでとにかく前に進みました。ペンブローク病院まで到達したのですが,ようやくゲームが本編に入ったという感じですか。

Beauverger氏
 そうですね。だいたいペンブローク病院までをチュートリアルとして想定しています。それまでは一本道に進んでいきますが,ペンブローク病院からのクエストは比較的に自由になりますからね。ところで,今回のデモで最初にエンブレイスできるキャラクターはどうしました?

4Gamer
 強盗に襲われていたクレイ・フォックスのことですか。もちろん,エンブレイスさせてもらいました。

Beauverger氏
 そうですか(笑)。

4Gamer
 なんとなくエンブレイスのチュートリアルかと思いましたし,1300XPという経験値は魅力的でした。なにか,都合が悪かったんですか。

Beauverger氏
 いえ,まあ,ゲームデザインとしてはプレイヤーにはじっくり考えてほしいのです。調べればクレイの妻は他界しており,1人息子が残されていることが分かります。父親がいなくなれば息子は孤児になり,それによってゲーム世界の関係性が変化します。エンブレイスの判断は,十分に考えなければならないのです。

4Gamer
 なるほど。ところでエンブレイスで得られる経験値というのは,若さで決まるのでしょうか。それとも,キャラクターの重要度などですか。

Beauverger氏
 いえ,どれだけ健康であるかということです。若くても病気の人とか,アルコールに依存している人は,血液の質が悪いと想定してもらえればいいかなと。また,特定のキャラクターの調査を終え,吸血してもメインクエストに支障はないと判断しても,そのキャラクターが病気だということもあるでしょう。その場合,ジョナサンが薬を服用させて治療し,健康を回復させてからエンブレイスするといった方法も取れます。

4Gamer
 うわっ,それはまたなんと邪悪な! 吸血によって相手は死んでしまうわけですが,ジョナサンは生き残ります。その一方,ウィリアムはスカルという下等な吸血鬼になっていました。この差はなんなのでしょう。

Beauverger氏
 さあ,なんなんでしょうね(笑)。そのあたりもゲームで探ってもらいたいのですが,ちょっとお話しすれば,ジョナサンは何者かによって吸血鬼として選ばれたのです。ウィリアムのようなスカルは,理性を失ったグールのような存在ですね。

画像集 No.021のサムネイル画像 / 海外での発売が6月5日に決定した「Vampyr」,最新プレイアブルデモによるインプレッションを,開発者インタビューと共に掲載

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4Gamer
 さらに上のランクの吸血鬼がいるということですか。

Szucs氏
 ジョナサンのような,人間性を持った吸血鬼はEkon(イーコン)と呼ばれる吸血鬼界のエリートであると考えてください。スカルは光を嫌って下水道などに生息しており,イーコンにとって望ましくない存在であるのです。また,Volkod(ヴォルコッド)という,スカルの力強さとイーコンの人間性を備えたものもいて,彼らは長らく「Werewolf」(ウェアウルフ)という呼称で呼ばれてきました。さらにもう1種類,吸血鬼なのに吸血鬼を嫌っているNemrod(ネムロッド)という勢力もいますが,このあたりはストーリーが進行していくとだんだんに分かってきます。

4Gamer
 序盤の2時間では分からないような物語がゲームに潜んでいるようで,楽しみです。

Beauverger氏
 ペングローブ病院までのチュートリアル部分で2時間,全体をしっかりプレイするには30時間くらいかかると想定しています。少し開発時間が延びたぶん,皆さんにたっぷり楽しんでもらえる作品に仕上げられるはずです。

4Gamer
 本日はありがとうございました。ゾンビブームのあとに「ヴァンパイアブーム」が来ることを期待しています。
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