S-GAMEが10月29日に発売する本作は,古代中国のダークな武侠世界とパンクファンタジーを融合した世界観“カンフーパンク”が売りとなる。ジャンルはいわゆるソウルライクだ。便利な言葉である。
今回は特番で判明した要素と,ここ数年のゲーム展示会で取材してきたレポート情報を踏まえて,本作の全体像を想像してみた。
世界観と物語
まずは前提だが,本作はS-GAMEのCEO兼プロデューサーやディレクターも務めるゲームクリエイター,Liang Qiwei(リャン・チーウェイ)氏が生んだゲーム「Rainblood」シリーズの最新作となる。
過去作はPC向けのRPGや2Dアクションで,2008年に「Rainblood: Town of Death」,2011年に「Rainblood 2: City of Flame」,2013年に「Rainblood Chronicles: Mirage」,2023年にはモバイルゲーム「Phantom Blade: Executioners」がリリースされた。
1作目は配信直後,2008年という時節に,わずか1日で10万ダウンロードを突破。最終的に400万DLに達する驚異的ヒットを飛ばしたという。
[インタビュー]「Phantom Blade Zero」の社長が語る,中国でわざわざコンソールゲームを作るということ―――夢がある人なら,延々とモバイルゲームを開発したいだなんて思わないでしょう
東京ゲームショウがまだ始まらない9月25日の夜,幕張のホテルにS-GAMEの社長がやってきた。「Phantom Blade Zero」を引っさげてやって来たわけだが,中国では「こだわりの開発者」として名高い人物だ。滅多にお目にかかれることはないので,これを機にいろいろ聞いてみよう。
とはいえ,同シリーズは日本で親しまれてきたとは言えないのが現状だ。本作については「シリーズ共通の世界観はあるが,そういうのを気にさせない作りで勝負しにきた新作」と見るべきだろう。
前作もモバイル相当の2Dゲームとあり,ここまで高品質なタイトルは初である。対象としてきた市場の違いも踏まえると,この業界でよく謳われる「シリーズを知らない人でも安心して楽しんでもらえます!」のなかでも,ほんとにシリーズを掘り返さないでよさそうな部類だ。
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舞台は古代中国の武林(※)と,錆びた工業化時代を組み合わせた世界「ファントムワールド」(Phantom World)。このテイストを,サイバーパンク的な意味合いでカンフーパンクと称している。
※中国の武侠小説や武術界で,流派や門派がいる社会や世界を指す用語。日本で例えるなら,歌舞伎の社会を指す「梨園」などだろうか
物語は,エリート暗殺者であった男「ソウル」が,組織に濡れ衣を着せられ,共闘してきた仲間たちに裏切られ,心臓を貫かれるところからはじまる。瀕死の状態を謎の治療師に救われたソウルは,66日しか持たぬ体を引きずり,血で血を洗う復讐劇に乗り出す。
特番の映像では,キレイな青年時代のソウルが,親しそうな美男子にどうこうされて「おのれぇ!」となるまでの断片が映されていた。男同士が陰謀と矜持でぶつかり合う,ドロッドロな体験が確約されている。
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戦闘と武器
バトルについては,2年前の東京ゲームショウと,1年前の中国ゲームショウで,個人的に「戦闘の方向性はSEKIROに近いが,遊び口やダメージバランスは黒神話:悟空に近い」と評していた。
それを踏まえて,昨年のTGSで別のライターが試遊したが,だいたい似た感想でリアクションしていたため,そうだと思ってほしい。息がつけないスピード感という意味では「Bloodborne」も挙げたくなるが。
なお,バトルの体験や所感はこれでもかと取材を続けてきたため割愛する。いずれかをサラッと見るだけで把握できるだろう。
カンフーパンクな世界とハイスピードな駆け引きが魅力の「Phantom Blade Zero」試遊。独自要素を打ち出した,これは“来る”かもと思わせる仕上がり
2025年9月25日から9月28日まで,幕張メッセにて開催されていた東京ゲームショウ2025。そのPlayStationブースに,3Dアクションゲーム「Phantom Blade Zero」が出展されていた。今回はチュートリアルを含めたステージと3体のボス戦を体験できたので,プレイフィールをお伝えしよう。
「Phantom Blade Zero」試遊版に新ボス現る。今年の会場入り口トップバッター作品らしく,連日大行列の人気っぷり[CJ2025]
中国のゲームショウ「ChinaJoy 2025」で,S-Gameは新作アクションゲーム「Phantom Blade Zero」の試遊を出展した。本作は“黒神話:悟空に続くか”とにわかに騒がれている作品で,とにもかくにも注目度が高かった。
「Phantom Blade Zero」をプレイ。暗殺者の復讐劇をスタイリッシュにまとめた注目のアクションゲームを解説[TGS2024]
東京ゲームショウ2024で,S-Gameは新作アクションゲーム「Phantom Blade Zero」の試遊を出展した。雰囲気はソウルライク。だけど遊び口は「黒神話:悟空」的な感じ。暗殺者の復讐劇をスタイリッシュにまとめた注目の1作だ。
カンフーパンクと呼ばれる「Phantom Blade Zero」は,アクションシーンが映画的でとにかく魅せる。独特な世界観が光る野心作
S-Gameが発売を予定している「Phantom Blade Zero」が,2024年6月8日から10日までロサンゼルスで開催されている「Summer Game Fest Play Days」にプレイアブル出展されている。実際に遊んできたので,その感想をお伝えする。
そのうえで特番での新情報だが,本作には30種を超える主武器と,25種の副武器「ファントムエッジ」が搭載されると明かされた。
刀剣だけでも特性が豊富で,雷や風を操る片手剣,手数の双剣や曲刀,遠距離攻撃の飛来剣,武人のエネルギー体を召喚して共闘するものも見られた。武器種も,大槌に偃月刀に弓に琵琶に手甲となんでもござれ。
どれも動作は派手だ。和風とも洋風とも異なる「まさに武侠感」なモーションも相まって,かさ増しのコンパチな雰囲気は薄い。
特番の映像はいいところだけを切り取った可能性もあるが,目にした範囲では,どれもスペシャルな伝説武器に設定されそうな動きである。
これらの武器を探索やボス討伐で手に入れ,さらにアクセサリー類と組み合わせることで,自分好みのビルドを構築できるという。
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特筆すべきは「武器の強化レベルは手軽にリセットできて,投じた素材をほかの武器に再投入できるシステム」だ。これにより,強化する武器やビルドを厳選する必要性が軽減,どころか皆無になっている。
ソウルをライクされた作品,もしくはライクした作品の大半は,武器やスキルの強化が不可逆であることが多い。それに伴う素材の兼ね合いで,自分が選んだ1本や2本で攻略を走りきる人も少なくないだろう。
そこをフォローしているタイトルもちゃんと思い浮かぶが,本作に関しては,同ジャンルが取りこぼしがちな「どの武器も気合を入れて作ったから,(周回じゃなくてワンゲームで)全部使ってね!」の精神をシステムに落とし込んだものといえる。
まあ,1本の愛刀だけで終始駆け抜けるゲーム体験もまた,思い出深いものとなるので良しあしはない。PBZはこうしたというだけだ。
※Phantom Blade Zeroが,PBZと略されるのか,ファンブレもしくはファンゼロなどと略されるのかは後年に委ねる
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難度と66日モード
特番内で言及されていたが,本作はオープンワールドではない。ないのだが,直線的なレール進行でもないという。
映像で見られた範囲でゲーム構造を想像すると,例えば「武侠の街」や「復讐の山」(いずれも仮称)などの選択マップが存在し,その一つ一つの広大なフィールドを探索・冒険するようであった。
これについては「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」で「黒神話:悟空」で「仁王3」で「モンスターハンターワイルズ」でと羅列しておけば,どれかで想起できるだろうか。ああいうやつだ。
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探索では武具などを探すだけでなく,助けを求める人との出会いからサイドクエストが発生。クリア後に新たな道が開けていくという。
また,各地に隠された秘密を解き明かすと,物語の発端となった出来事――ソウルがなぜ殺されたのかの真相に迫っていけるらしい。
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ゲームの難度は,PlayStation.Blogいわく「アクションゲームを初めて遊ぶ方から経験豊富な熟練者まで、好みに合わせて体験を調整できる複数の難易度を用意しています」とのこと。
物語を純粋に楽しみたい人は「ウェイフェアラー」モードを。より高度な敵AIと対峙したいなら「ヘルウォーカー」モードを。地獄を見たいなら「66日間」モードを選ぶといいという。
敵AIも,パターンに頼らず“プレイヤーの動作を見て反応”する行動ルーチンとのことで,イヤらしさは期待していい。
正直,本作のバトルはハイスピードだ。かつての試遊では「これアクション苦手な人にはできないね」と確信したほどだ。
ゆえに,上記がセールス文句で言っているのか,本気で信じているのかは,これら難度の調整次第……という期待の仕方で流すとする。
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興味深いのは66日間モードだ。これはソウルの寿命設定になぞらえて,ゲーム内時間で“66日”という枷を背負い,期間内で復讐を果たすことを強いられる。仕組みとしては「死んだら〇日経過します」といったもののようで,要は死亡回数制限に等しい。そこにプレイ時間も計上するタイムアタック要素もあるとすれば,走破希望者は笑顔になるだろう。
こういうのが大好きなゲーム実況者と視聴者はけっこう多いのだ。
そう考えると,今どきの高難度設定の提供は,該当プレイヤーの嗜好を刺激するだけにとどまらず,伝播の手段にもなっているといえる。
ドニー・イェン
本作ではカンフーの神髄を表現するためにと,クリエイティブコンサルタントとして,カンフー界の伝説的存在である香港の映画俳優・監督,ドニー・イェン氏が起用されている。
氏が携わった往年の名作は数えきれないほどあるが,近年では「イップ・マン」シリーズの名がとおりがいいだろうか。
ドニー氏はフェイシャルおよびモーションキャプチャを通じて,作中の人物「モー・ユアン」も演じている。
PS.Blogいわく「演技やクリエイティブ面での助言を通じて、カンフー映画の本質を皆さんの手元に届けることに貢献しました」「このことを長いあいだ皆さんにお伝えしたくて仕方がありませんでした」とのこと。
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感想
特番の最後には,Liang Qiwei氏が「Phantom Blade Zeroをよみがえらせることは,計り知れない大仕事でした。しかし,コミュニティの支援があったことで,私たちは望んでいたゲームを,思い通りに描くことができました」などとコメントしていた。
ゲームの完成度については,理想をなぞれたようである。
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今回の特番により,個人的には本作の全体像が見えてきた。
前提知識となるバトルについては,その流れや駆け引きを文章を尽くして伝えるよりも,映像でパッとつかんでもらうほうが早いとして。
本作の武器種は,30種超えの主武器と,25種のファントムエッジで構成される。この時点でアクションRPGとしての深さが垣間見える。
試遊で触れた,あるいは映像で見られた武器は,すべて固有モーションが際立っていた。ソウルライクでは,100種の武器を出して「一部モーションだけ変える」パターンや,5種程度に絞って「凝って作り込む」のパターンが定番だが,そこを本作は30種である。
なかには当然,一部モーションが共通の特性だけ違う武器も複数あるだろう。けれど,映像で見られるようなユニーク系の固有モーションが,それぞれ練り込まれているようなら,体験の質は間違いなく高まる。
そこに強化状態のリセット機能も加わることで,次々と乗り換えられるわけで。プレイヤーのストレスはないも同然だ。
マップ構造も十分なボリュームを予感させてくれるし,行き来が気軽そうなのも好感である(本当に気軽かは不明だ)。
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これらの土台に,特番で紹介された上記のボス「Flame,the Mask-Bound Lion Dance Grandmaster」(仮面に縛られし獅子舞の達人、フレイム)とのバトルもかけ合わせると,本作の目指すところが“最高品質の大作級3DアクションRPG”であることがあらためて想像できた。
もちろん,ショー向けの映像とあって見栄えする切り取り方はしただろう。実際のゲームデザインやメカニクスがいまいちかみ合っていない可能性だって,今はまだ考えておくべき。とくに難度については結局,「50時間やれば誰でも慣れますよ(ニコニコ)」な話かもしれない。
それでも,過去の試遊体験と今回の情報を照らし合わせると,本作は最高級な作り込みをもって「勝ちにきた」と言わざるを得ない。
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唯一の弱みは,武侠ものであることか。この題材は正直,中国以外では伝わりきらないことが多い。といっても昨今は後宮ものの支持が厚いし,最も分かりやすい反響としても,中国で爆発的に跳ねてから波及する「黒神話:悟空」パターンが容易に考えられる。
端的な話,私の所感では,本作は年末のアワードイベント「The Game Awards」でのエントリーが目に浮かぶのである。
なんて,数年見てきたタイトルとあって,ひいきがすぎた。個人的に下半期で期待しているゲームだって,ほかにいろいろとある。
けれど,Phantom Blade Zeroが業界で騒がれるのは,ほぼ間違いない。これくらいのリップサービスは問題ないだろう。そのうえで責任を私個人から媒体になすりつけておくなら,そうだな。
「俺じゃない。4GamerがPhantom Blade Zeroびいきなんだ」
という感じの印象で上書きしておけば,万事解決だ。
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