インタビュー
[インタビュー]日本で配信したい「Crystal of Atlan」。マジックパンクMMORPGの真意は“この世界に反抗してぶっ壊す”
ゲームブランドNuverseを閉鎖し,ByteDanceがビデオゲーム市場から撤退するとの報道。「MARVEL SNAP」は公式Xでサービスの継続を表明
ロイターは2023年11月27日,ByteDanceがゲームブランドNuverse(朝夕光年)を閉鎖し,主流のビデオゲーム市場から完全撤退すると報じた。関係筋によると,リリース前のゲームは12月までに業務を停止し,リリース済みのゲームは撤退する方法を模索するという。
韓国・釜山で開催されたG-STAR 2023で,Nuverseの新作MMORPG「Crystal of Atlan(アトランのクリスタル)」(PC / iOS / Android)に関して,本作プロジェクトチーム関係者にインタビューした。
本作は,魔法と機械の世界“マジックパンク”を舞台とするオープンワールドRPGだ。高品質なアニメ調グラフィックスと,操作性に優れたアクション要素が魅力で,中国では7月に配信されている。
なお,現地のタイトル表記は「晶核」であり,4Gamerでは同じG-STARでの試遊のほか,夏のChinaJoy 2023でも注目していた。
[G-STAR 2023]「Crystal of Atlan」をプレイしてきた。魔法と機械の“マジックパンク”を舞台に,ダメージ&コンボが画面を覆い尽くす
G-STAR 2023に,NuverseのMMORPG「Crystal of Atlan」のプレイアブルが出展されていた。本作は,今年7月に中国で配信された新作タイトルで,魔法と科学の世界“マジックパンク”と,アクション重視の操作性がウリとなる。
今回話を聞いたのは,プロジェクトチーム関係者のXue Lan(薛岚)氏だ。現地ではXue Lan氏→中韓翻訳者→韓日翻訳者→4Gamer(もしくは逆順)という多関節なインタビュー進行となり,いろいろと言葉のロスが発生してしまっているかもしれない。
そのうえで,短い時間ながら中国での反響などを聞いてきた。
マジックパンクの「パンク」の意味
4Gamer:
7月にサービスを開始した,中国版の反響はいかがですか。
Xue Lan氏(以下,Xue氏):
中国App Storeでは配信直後から売り上げトップ3に食い込むなど,開発中に期待していた以上の反応をいただけております。
4Gamer:
どのような部分が人気なのでしょう。
Xue氏:
世界観を“マジックパンク”と定義し,アクション性を高めたMMORPGと組み合わせたことが,人気の要因と考えています。それと配信前に大規模なプロモーションも打ったのもあると思います(笑)。
中国版では最近,新キャラクターの提供を開始しましたが,配信から約4か月経った今も売り上げが上がっており,とても好調です。
4Gamer:
マジックパンクとはどんな世界ですか。
Xue氏:
魔法と機械が共存する世界です。中国ゲーム市場ではそもそも,こうした設定・ビジュアル性を強く押し出した作品があまり存在していなかったので,そこがうまくフックになった気がします。
ちなみに,マジックパンクの「パンク」には,プレイヤーが“この世界に反抗して破壊していく”といったストーリー性も込めています。
4Gamer:
名実ともにパンキッシュなんですね。
Xue氏:
この物語構造もまた開発陣が練ってきたものなので,今後の配信地域のプレイヤーの皆さんにもぜひ楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
キャラクターデザインにもこだわりを感じますね。
Xue氏:
見た目や設定に関しては,マジックパンクの哲学からブレないようデザインしました。キャラクターごとの個性も,魔法系や機械系,遠近もさまざまな4つのクラスと組み合わせて追求しています。
クラスに関してはゲーム進行に応じて「転職」も可能で,派生の先々のグラフィックスもキャラごとに用意しました。
4Gamer:
本作はG-Starに出展された,イコール韓国配信は確定だろうと考えてお聞きしますが,来場者たちの反響はどうでしたか。
Xue氏:
多くの方々に楽しんでいただけました。ブースにはプレイアブルを出展しましたが,平均20分以上も遊んでいただけております。
それと韓国配信に向けてのコミュニティ作りも開始しましたが,期待してくださる方々の人数もまた想定以上でした。
総じて,G-STARへの出展はいい成果につながったと思います。
4Gamer:
韓国市場ではどのようにアピールしていくのでしょう。
Xue氏:
出展の成果はこれからモニタリングしていく状況ではありますが,世界観の独自性を追求した反面,システムなどの一つひとつを取ってみると「ほかのタイトルとの類似性」がいくつか指摘されています。
それもゲーム業界では良くも悪くもかと思いますので,MMORPGやアクション性,マジックパンクなど,どこがどう反応を得られたかを分析し,これからのアピールポイントを決めていくつもりです。
4Gamer:
中国と韓国のMMORPG市場だと,違いはあるんですかね。
Xue氏:
韓国ゲーム市場はまず,中国と比べてユーザーの性別が整っています。それに韓国のMMORPG市場はやはり歴史が長いので,年齢層が幅広く,全体の属性としても同ジャンルへの親しみが強いです。
有償サービスの利用率も,中国市場と比べて多いとされますし。
4Gamer:
その点,本作の有償サービスはいかがでしょう。
Xue氏:
ジャンル的に収集型RPG(※)ではなく,ゲームデザインも「これと決めたキャラクターを育てていく」作りですので,基本無料のゲームプレイだけでも不自由のない作りにしました。
有料要素に関しては,キャラの衣装,ペットの育成,それと装備アイテム関連があり,組み合わせなどで効果も変わります。
またゲーム内には「トレード」機能を実装していて,そこで武具の強化素材を取引できます。これら育成面を有償でサポートする形ですが,単にパラメータを重ねるPay to Winにはしていません。
※日本における「100体〜1000体のキャラクターを(ガチャで集めて)愛そう」といったソーシャルゲーム型のRPGのことを(とくに中国や韓国では)“収集型RPG”とカテゴライズしていることが多い
4Gamer:
アクション性へのこだわりもけっこう強いようですね。
Xue氏:
アクション性を生かしていることは間違いではありませんが,基本的にMMORPGとARPGを合わせたものを目指してきました。そのためRPGのキモである,育成による攻略にも力を入れています。
それに日本のゲームユーザーさんにはプレーンなMMORPGが大衆的に楽しまれているようではないため,アクション性をうまく取り入れて,日本の方々にも親しみやすくしたいと考えたのもあります。
4Gamer:
となると,日本配信を前向きに捉えても?
Xue氏:
はい。韓国,日本に加え,他地域でのグローバル配信も検討中です。
4Gamer:
海外展開は,ローカライズが済んだら配信か,中国版のフィードバックを反映したら配信か。大まかな進路はどちらでしょう。
Xue氏:
ローカライズへの注力はもちろんですが,フィードバックという観点だと悩んでいます。というのも,中国版に届いた中国プレイヤーからの意見を反映してグローバルローンチに役立てるというのが,地域特性も踏まえたとき,正しい方法とはあまり思えないからです。
そのため対象地域での心構えとしては,中国版のサービス状況より,各地域でのテストプレイでの反応を重要視するつもりです。
4Gamer:
テストプレイの提供も期待できるんですね。
Xue氏:
期待していてください。とくに日本市場は世界的に見てもユーザー属性が豊かで,これまでも会社としてとくに注力してきました。
2024年の展開には,必ず含めたいと考えています。
4Gamer:
それでは,日本サービスに向けた意気込みをお願いします。
Xue氏:
日本ではまだ公式情報の発信体制が整っていないなか,すでにご興味を持ってくださっている皆さま,本当にありがとうございます。今後,日本でもたくさんの発表をしていきますので,ぜひ注目してください。