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「ミステリーの歩き方」シリーズは,触れた品物から過去を垣間見る「過去視」の能力を持つ赤沢独歩や“ミステリーサラブレッド”の異名を持つ南条有栖らミステリー研究会の面々が過去に起きたさまざまな事件の真相に迫っていくアドベンチャーゲームだ。全三部作でリリースされる予定で,2024年12月には第1作が発売されている。
シリーズのディレクターでありシナリオを担当したのは,赤川次郎氏を原作に迎えたサウンドノベル「魔女たちの眠り」「夜想曲」のほか,「ワールドエンド・シンドローム」「レッド・シーズ・プロファイル(デッドリー・プリモニション)」など,さまざまなアドベンチャーゲームを作り続けてきたトイボックスの金沢十三男氏だ。
今回は発売直前のタイミングで金沢氏にインタビューをする機会を得たので,シリーズのこだわりや現代におけるミステリーアドベンチャーの作り方などを聞いた。
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アドベンチャーゲームの現状認識からスタートした「ミステリーの歩き方」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは「ミステリーの歩き方」シリーズが制作に至った経緯を教えてください。
金沢十三男氏(以下,金沢氏):
何年か前にイマジニアさんの内部で企画コンペがあり,ここに代表取締役社長兼CEOの澄岡和憲さんが提出された企画が「ミステリーの歩き方」シリーズの始まりだったと伺っています。
その後トイボックスが開発として携わることになったのですが,最初に持ち込まれた澄岡さんの企画は,犯人が捕まるところまでのプロットも含めた結構な量のものでした。
4Gamer:
澄岡さんの企画がそのままゲーム化されることになったのでしょうか。
金沢氏:
いえ,澄岡さんからは「自分の書いたものが残っていなくても構わない」というお話がありましたので,大きく変わっています。大学生が主人公であること,妹がいること,一部登場人物の名前,作中に登場する昔ながらのお店「喫茶ホノルル」等はそのままです。
企画を詰めていく中で,3部作にという案が出てきて,タイトルごとに舞台となる町を変えるという“町も主人公にするゲーム”のアイデアを組み合わせて現在の形になりました。
4Gamer:
いろいろな部分が大きく違っていたわけですか。
金沢氏:
物語は東京だけで完結してましたし,主人公が所属する「ミステリー研究会」はこちらが追加したものです。団体を作ると,そこに多様な人が集まる理由ができて,物語が加速度的に進みますし,物事が分かりやすくなります。「ワールドエンド・シンドローム」にも「ミステリー研究会」,「7'scarlet」には「奥音里禁忌倶楽部」など,僕の手掛ける作品には何らかの団体が出てくるんです。
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4Gamer:
こうして「ミステリーの歩き方」シリーズの骨子が固まり,制作が始まったと。まず初めに行ったことは何だったのでしょうか。
金沢氏:
イマジニアさんにアドベンチャーというジャンルのゲーム市場の説明から始めた記憶があります。商品として作る以上,まずはビジネスの現実的な視点のすり合わせから始めたんです。
そのために「アドベンチャーゲームとは何ぞや」という10ページくらいの書類を作っています。
4Gamer:
書類にはどんなことが書いてあったのでしょうか。
金沢氏:
アドベンチャーゲームにもさまざまな作り方があることや,ジャンルが勃興して一回死んだ後にビジュアルノベルとして現在に至った歴史といった基本部分に加え,どのくらい予算をかけると,プレイフィールやリッチさが変わるか,ブレイクスルーできる可能性や目算などをまとめました。
4Gamer:
以前金沢さんはオープンワールドの「レッド・シーズ・プロファイル」を手掛けておられますが,かなりの売り上げだったと伺っています。この作品も広義ではアドベンチャーゲームだと思いますが,違いは何でしょうか。
金沢氏:
あれはフル3Dのオープンワールドですし,海外市場を狙ったものなので,コンセプトがまったく異なります。澄岡さんの企画はもっとクラシカルな構成だったので,市場が異なるということは最初にお伝えしました。
4Gamer:
テキストアドベンチャーといえば,ファミリーコンピュータ時代に家庭用ゲーム機でのブームがあり,金沢さんはスーパーファミコンやPlayStationで作家の赤川次郎氏の小説を原作とした「魔女たちの眠り」「夜想曲」を制作されています。
金沢氏:
ファミコン時代のアドベンチャーゲームは“1回遊んだら終わり”という捉えられ方をユーザーがし始めて,徐々に作られなくなっていった経緯があります。
これを覆したのが「サウンドノベル」を掲げた「弟切草」で,分岐の多さでリプレイ性を高めていました。実は「魔女たちの眠り」を作る際,チュンソフトさんに伺って当時の経営者の方々に「僕もサウンドノベルを作りたいんです」とお願いしにいったんですよ。
4Gamer:
え,そうなんですか。
金沢氏:
チュンソフトさんからは本当に気持ちよく快諾をいただけました。詳しくはお伝えできませんが,業界を一緒に盛り上げようという姿勢を感じ取れて,本当に感謝しています。だから赤川シリーズはちゃんと「サウンドノベル」を謳っているんです。帰り際に「こういうのって皆さん,わざわざ訪ねて来ないのに」と言われた記憶があります。
4Gamer:
確かにあまり聞かないですよね(笑)。そうして作られた「夜想曲」についても売り上げは限定的なものだったのでしょうか。
金沢氏:
おかげさまで「魔女たちの眠り」がヒットしたので,2作目の「夜想曲」では予算も増え,作り込みの強化ができました。そのころから宣伝も任せてもらい,思い切った広告ビジュアルなどができて,「魔女たちの眠り」を超えるヒットになりました。
そして現在はその流れを汲んだビジュアルノベルがメインストリームです。シナリオを重視するタイトルが多いジャンルで,自分たちの作る作品がどういう戦い方をしていくのか。同じ視点でいてもらうために,アドベンチャーゲームの現状をイマジニアさんと共有させていただきました。
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4Gamer:
金沢さんの場合はこれまでにアドベンチャーゲームを手掛けられた経験があるのに加え,企画自体が澄岡さんから出てきたものなので,ちゃんと物事を俯瞰することができたわけですね。アドベンチャーゲームとビジュアルノベルの違いについて,金沢さんはどう考えておられますか。
金沢氏:
ビジュアルノベルが好きな方々は物語の展開やキャラクターの面白さを追っていて,インタラクティブなストーリーを楽しんでいる,という気がします。
4Gamer:
確かに,アドベンチャーゲームは自分自身がインタラクティブに謎を解くことが重要だけれど,ビジュアルノベルはより物語に重点が置かれていると感じます。
金沢氏:
実は僕は物語よりもガッツリとアドベンチャーゲームのシステムを作りたい人間なんです。
例えば「ワールドエンド・シンドローム」では,町にある十数か所のスポットを午前・午後・夜と自由に移動させ,自分がどこに行くかが選択肢となって町のキャラクターたちの行動が変わるというシステムを作りました。そこには意図と仕掛けがあり,最後まで行くと納得していただけるようになっています。
「ミステリーの歩き方」では,一見「ワールドエンド・シンドローム」に似ていながらも,主人公をもう少し俯瞰で扱っていたり,地の文をなくして会話だけで進めていたりと,より客観的なドラマ性を重視しつつ,過去視でアドベンチャーする,という特徴を意識して作りました。
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物語の中には伏線だらけ。最終作はどっぷりと暗い雰囲気に?
4Gamer:
ここからは「ミステリーの歩き方」シリーズのお話を聞ければと思います。なぜ「ミステリーの歩き方」というタイトルにされたのでしょう。
金沢氏:
町をもうひとつの主人公にしようと思ったからです。「ミステリーの歩き方」の「鳴美沢」,「ミステリーの歩き方2」の「鎌藏」……と旅をし,そこに住んでいるかのように生活しながら、町を歩き回って謎を解く。そういう意味を込めてこのタイトルを考えました。
4Gamer:
第2作からサブタイトルが付きましたが,第1作はサブタイトルがなかったので,余計にスッキリした印象を受けます。
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金沢氏:
これについてはいろいろ議論したのですが,最終的に僕の希望を通していただけて,サブタイトルなしになりました。僕はビクターなどの会社員時代から新規IPの1作目にサブタイトルをつけるのが好きではなかったんですよね。
4Gamer:
説明っぽくなりすぎるということでしょうか。
金沢氏:
そうです。いいタイトルを付けられなかった言い訳に見えるというか。ただ,現代の作品においてはタイトル名が長くなるのは仕方のない面もあるのだと思います。娯楽の選択肢が多いので,タイトル名そのもので中身が分からないと,目に留めてもらえない。そうした時代的な理由もあるのかなと。
4Gamer:
そうした流れに反して「ミステリーの歩き方」というシンプルな名前が逆に印象的なのかもしれません。ゲーム内容も名前に違わず,いろいろな伏線や仕掛けが施されていました。
金沢氏:
今作「人魚伝説殺人事件」は,冒頭から伏線だらけにはしようと思っていました。プレイしながら「自然な違和感」を感じさせるようなものを至るところに散りばめています。
予想が当たっていても外れていてもそれはどっちでもよくて,いろいろな兆しを感じつつ遊んだ方が楽しいですし,万が一伏線に気づいていただけなくてもそれはそれでいいと思っています。プレイヤーの皆さんが半分くらい気づいて下さるくらいで構わないかなと。
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4Gamer:
伏線は前作でも随所に盛り込まれていましたね。あと前作をプレイして印象的だったのが,ミステリー研究会の面々がとにかく明るいということでした。第1作では,とても過去の殺人事件を追っているとは思えないくらい軽いノリのやり取りを繰り広げていましたが,この辺りは意図的なのでしょうか。
金沢氏:
意図的にそう心掛けました。というのも「ミステリーの歩き方」は2作目,3作目と進むにつれてどんどん物語が辛くなっていく予定なんですよね。特に3作目はどっぷりと闇に入るプロットなので,そうしたときに1作目を思い出して「あのころは,あんなに楽しかったのに……」と感じてほしいんです。
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4Gamer:
シリーズの前半と後半で意図的にギャップを生むような作りにしていると。
金沢氏:
ミステリー研究会のメンバーにはそれぞれに抱えているものがあり,それがシリーズを追うにつれて明かされていきます。今作では各話の最初にミス研メンバーのモノローグが差し込まれているのですが,そこでは皆,素の自分を出しているんです。そこにヒントが隠されていたりもします。
4Gamer:
主人公の独歩は過去視という“特定のアイテムに触れると,そのアイテムにまつわる過去が見える”能力を持っています。澄岡さんが企画された初期段階では,過去視の要素が存在していなかったそうですが,どういった理由で取り入れたのでしょう。
金沢氏:
ミステリーの中にSF(すこし・ふしぎ)の要素がほしいと思って取り入れました。これは僕自身の趣味嗜好で,今までに手がけてきたタイトルにも同じことが言えます。
過去視をドット絵で表現しようと思ったのもこのときで,いわゆるサイコメトリー的な能力を表現するうえで“周囲がぼけて見える”といった演出が必要だと思いました。過去を曖昧に見せるという意味ではグラフィックスは,ドット絵が効果的だと思いましたし,システムは過去に飛ぶという点とリンクさせて,昔ながらのコマンド式アドベンチャーになったんです。
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4Gamer:
ドット絵で表現されていることにより“過去の人物の顔がくっきり見えない”という表現もより自然になっていると思いました。ゲームらしさもあるし,ユニークな能力描写だなと。
金沢氏:
ただ,ドット絵での表現は思った以上に苦労しました。まず、もうドット絵師がいない。「ファミコンレベルのドット絵」とお願いして描いてもらっても,なんというか,細かいんですよ。確かにドット絵ではあるけれど,解像度が高いというか,見えすぎというか。
4Gamer:
過去のドット絵とは異なる手法による現代のドット絵だったと。
金沢氏:
僕はファミコンみたいな,線画に色をつける感じのドット絵をイメージしていたんですが,あがってきたものを見るときれいすぎる。もちろん「こんな感じでやってほしい」とサンプルも共有したのですが,スタッフたちはファミコン世代ではないので,多分ピンと来ないのかなと。
4Gamer:
最初はスタッフとの認識の違いを埋める作業だったんですか。
金沢氏:
はい。空などはきれいなグラデーションがついたものを描いてくるので,「グラデーションは要らない」と言うと,「それだとベタっとした絵になります」と。「いやいや,ベタっとしてていいの!」と(笑)。そんなやりとりで気づいたのが「いいドット絵」のモデルケースが違うんだなと。
4Gamer:
ドット絵とピクセルアートは,傍目で見ると同じものに感じられるかもしれないけれど,まったくの別物であるわけですね。
金沢氏:
グラフィックスの修正作業は,上がってきたドット絵のレイヤーをどんどん消していく形で進めていってました。あと,高解像度のピクセルアートはジャケットやゲーム誌に載せるときに縮小するので,きれいになりすぎてしまい,インパクトが薄まるという問題もありました。
前作のパッケージも,最初は現代風のイラストがグラデーションでドット絵になるきれいなものを考えていたのですが,パッケージサイズになるとあまりインパクトがなくて。なので,ドット絵は背景とし,その上にコマンドウィンドウをあしらった現在の形となりました。
4Gamer:
色合いは1980年代のホビーパソコン,BASICのLINE文で線を引き,PAINT文で色を塗っていた時代の雰囲気が再現されていると思います。ただ当時を忠実に再現しているというよりは,現代的なアレンジも加わっている印象です。
金沢氏:
そこはスタッフの意見も取り入れていった結果の絵作りになっています。僕個人のこだわりを出し過ぎてもただの懐古趣味になり,独りよがりになってしまいますし。今は「きれいなドット絵風」というのが多いですよね。現代の人たちが遊んで,ドット絵であることを素直に感じられることが一番大切だと思っていますので。
4Gamer:
1話ごとにオープニングとエンディングがあり,区切りが分かりやすいと感じました。また,全体の達成度がパーセンテージで表現されているなど,あとどのくらいでラストになるのかも分かるようになっています。これは,忙しい現代に配慮されたのか,それともTVドラマ的な雰囲気を作りたかったのかどちらでしょう。
金沢氏:
両方ですね。オープニングとエンディングがあるのはドラマ的な手法をやりたかったのもありますけど、区切りを作ることで全体の達成度が見られるようになり,今自分はどのくらいの地点にいるのかをプレイヤーに知らせたかったんです。
本でミステリーを読むときって,残りのページ数で自分が物語の序盤にいるのか後半にいるのかが分かりますよね。「ミステリーの歩き方」は基本的に10話の構成にして,達成度も見られるようにすることで,本のような感覚を持たせているんです。まあ,それ以降も話数が増えたり,隠しシナリオが出てきたりして,こっちもそれを裏切ろうとするんですけど。
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アドベンチャーゲームを作るうえで最も大切なのはシステム
4Gamer:
お話を聞いていると,金沢さんの中に明確な方向性があり,それに沿って物事を決められている印象を受けます。第1作はシステムがかなりライトだったので,現代のアドベンチャーゲームとして遊びやすさを重視したのだと思っていました。
金沢氏:
複雑なことをやろうとすると「難しすぎる」と言われて,大体スタッフに止められるんですよ(笑)。僕自身はアドベンチャーゲームで最も大切なのは,ストーリー以上にシステムだと思っています。ここに回帰しないと遊びとしての提案は物語だけになってしまって,それなら映画や小説と同列になってしまう。ゲームはコントローラを握ってもらって,そこで遊びを提供するものなので、予算やスケジュールを加味しながら「ミステリーの歩き方2」ではいろいろなものに挑戦しているんです。
4Gamer:
前作からシステム面として挑戦した点とはどこでしょうか。
金沢氏:
前作では「過去視パートをもっと遊びたかった」「簡単だった」という声を多くいただいたので,過去視と町歩きの要素を強化しました。例えば,「ミステリーの歩き方2」では,連続して過去視をするようなシーンもありますし,過去視では,東西南北の方角を指定して移動する,昔懐かしいアドベンチャーゲームのテイストを取り入れています。30年前のヱノ島を自由に移動できるんです。
また作中に,「海への扉」というゲームのカギとなる80年代のヒット曲が登場するのですが,それを「東京キュートキュート」さんというアイドルグループに協力してもらって,オリジナル曲をまるまるフルサイズで収録しています。そういう普通なら面倒くさくてやらないこともあえてやってみたりしています。
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4Gamer:
前作では町歩きのパートを無料で追加配信されていましたが,そこにこだわる理由を聞かせてください。
金沢氏:
アドベンチャーゲームは町をもうひとつの主人公にした方が楽しいと思っているからです。僕の作品では「7'scarlet」では奥音里,「ミステリーの歩き方」では鳴美沢,「ミステリーの歩き方2」には鎌蔵という町が出てきて、それぞれが異なる特徴をもってプレイヤーに活動の場として提示されるというわけです。
4Gamer:
個人的には町をうろつく感じが「同級生」など1990年代のアドベンチャーゲーム的に感じられました。
金沢氏:
場所を移動するたびに時間が進む,という点では共通点は多いかもしれないです。
今作のヱノ島の過去視では,登場人物のザッピングによってスタート地点が毎回変わるといった仕掛けや時間制限の要素があります。ただ,時間切れになったとしてもペナルティなくやり直せますし,すでに選んだ選択肢の色が変わって一目で分かるといったヒントシステムも用意しています。このアイデアは僕ではなく,企画から出てきました。
この辺は開発スタッフの意見を取り入れながら難度調整を進めています。そうしないとどうしても僕が小難しくしてしまうみたいです(笑)。
4Gamer:
途中脱落については,前作の時点でかなり気を使われている印象があります。
金沢氏:
現代人は,スマホのおかげで大人も子供も忙しいですから,じっくりゆっくり謎に対峙するのは「タイパ」が非常に悪いんです。
昔のアドベンチャーゲームは,行き詰まると打破するために時間がかかるものでした。1つのシーンから3日進めないなんてこともざらにありましたからね。いろいろコマンドを試してもダメ。学校に行ってもゲームのことばかり考えていて,閃いたら急いで家に帰って試す……という感じでした。でも,今はそういう遊び方をする人はいませんから。
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4Gamer:
遊びのスパンが現代よりもずっとずっと長かった時代ですね。
金沢氏:
アドベンチャーゲームは難度調整がなく,行き詰まったらイージーモードにする,なんてことができません。だから,作ったものをなんとか食べきっていただかないといけないんです。
だからといって簡単にすると,難しいものを求める人にとっては歯応えがないものになる。こうした情勢なので,評価はどうしても物語の良しあしになりがちです。アドベンチャーゲームにとって難しい時代になったな,とは思います。
ただ,ここ10年ほどはミステリーブームが来ていて,普通の恋愛ドラマにもミステリー要素が入っています。皆さんが潜在的にミステリーを求めているんじゃないかとは思います。
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4Gamer:
いろいろなエンタメに考える要素が増えていますよね。先の評価が物語の良しあしになるという話と合わせて,ナラティブ重視のビジュアルノベルは時代にマッチしていると感じられます。
金沢氏:
ただ,ビジュアルノベルとアドベンチャーゲームは違うんです。ビジュアルノベルは物語ですが,アドベンチャーゲームを作るゲームクリエイターはシステムを考えるものであり,物語はどちらかというと後回しだと思っています。
だから,ビジュアルノベルでなくアドベンチャーゲームを作るのであれば,物語をシステムに落とし込む必要があります。システムに合わせてシナリオを用意するんです。でも,アドベンチャーゲームのシナリオを書ける人って本当にいないんですよ。
4Gamer:
小説とアドベンチャーゲームのシナリオの書き方はどう違うんですか。
金沢氏:
物語=遊びにはならないという点が大きな違いです。プレイヤーにコントローラを握っていただいている以上,ボタンを押して進めてもらうのが我々の仕事です。そのためには物語とシステムを両立させないといけません。そうでなければ,詩は書けるけれど,曲をどうでもよく思っている音楽家みたいになってしまう。それでは,音楽である必要すらないんです。
4Gamer:
ちなみに金沢さんが「ミステリーの歩き方」のシナリオを書くときに重視しているポイントは何でしょうか。
金沢氏:
ミステリーで一番重視しているのは,犯人の動機です。僕はいろいろなミステリーを読みますが,一番好きな作家はアガサ・クリスティなんです。彼女が書いた作品は,とにかく犯人の動機がしっかりしている。そこを描くから人間に深みが出ますし,名言も多い。
いろいろと趣向を凝らしたミステリー小説を読んでも,最後はクリスティに戻ってきてしまうくらい,僕の中では一番面白いミステリー作家として今も君臨しています。
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4Gamer:
「ミステリーの歩き方2」でも犯人の動機には注目したいと思います。さて,2作目が出る直前で気が早いですが,3作目についてもどういった作品になるのか話せる範囲で聞かせてください。
金沢氏:
新しい町での新しい事件と,それと並行してシリーズを通して追いかけていたミステリー研究会のメンバーそれぞれの話が完結する予定です。
ですが,残っている伏線を書き出していったら,次回作で全部描き切れるかどうかという量になっているので,どう作ろうかと頭を悩ませている段階です。
4Gamer:
主人公が過去視の能力を持った理由は明かされるのでしょうか。
金沢氏:
一応明かそうとは思っていますね。ただ「過去視とは何なのか」という謎は解き明かすべきかどうかは迷っています。
4Gamer:
それはなぜでしょうか。
金沢氏:
世の中って本来,分からないことばかりだと思うからです。僕は人生最大のミステリーって「自分の存在」だと思っているのですが,それっていくら考えても答えが出ないことです。
分からないけれど,何か分かったふりして一生を終えていく。解けない謎がある方がミステリーとして正しいのかもと思ってしまうんです……こんなことばかりを考える人間なので,どこかに未知なるものを入れておかないと気が済まないのかもしれませんね(笑)。
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4Gamer:
完結編のリリースも期待しています。では,最後に読者へメッセージをお願いできますか。
金沢氏:
僕だけではなく,開発チームのみんなやイマジニアさんのスタッフそれぞれが,人生のコストを削ってお届けしているので,作品から何かひとつ,皆さんの心に持って帰っていただけるものがあれば嬉しいです。
3部構成とはいえ,1作1作で完結するように作っていますので,1作目の「ミステリーの歩き方」をプレイされていなくても大丈夫ですし,デジタル書籍の小説版もあります。プレイ動画とか入口はどこからでもいいので,ぜひ,新しい世界を体験しに鎌蔵の町に遊びに来てください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。



















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