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東京ゲームショウ2026の松竹ゲームズブースで本作を試遊するとともに,開発チームに話を聞く機会を得た。ゲームの内容と,原作の世界をゲームとして表現するためのこだわりを紹介しよう。
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ムーミン谷を歩き回り,気になるものを調べて物語を進めよう。試遊レポート&インタビュー
ムーミン谷は,突然の大洪水に見舞われた。ムーミン一家がたどり着いたのは,水の上を漂う大きな建物。そこは,衣装や台本,そして舞台ならではの「魔法」が詰まった不思議な劇場だった。
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本作では,トーベ・ヤンソンによる名作「ムーミン谷の夏まつり」の物語をたどりながら,作中に登場するキャラクターとなってムーミン谷への帰り道を探す冒険を楽しめる。
TGSの試遊版では,ムーミントロールやリトルミイを操作し,昔ながらのポイント&クリックアドベンチャーの形式で進む物語を,その一部だけ体験できた。
プレイヤーはキャラクターを切り替えながら動かし,画面内の気になる場所やオブジェクトをクリックして調べていく。そこでアイテムを手に入れ,必要としているキャラクターに渡したり,別の場所で使ったりすることで,物語が先へと進んでいく。
操作はシンプルだが,あちこちに目を向けながら,自分の手で少しずつ物語を進めていく楽しさがある。
画面を眺めているだけでも楽しいのが本作の魅力だ。
柔らかな色彩と手描きのタッチで表現された世界は,ムーミンの原作イラストがそのまま動き出したような雰囲気を持っている。キャラクターたちの動きも細かく描かれており,歩き回ったり,何かに触れたりといった何気ないアクションやしぐさが滑らかに描かれている。
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こうしたビジュアルは,どのように作られたのだろうか。試遊後のインタビューでは,原作の世界をゲームに落とし込むためのさまざまな試行錯誤を聞くことができた。
開発チームによると,企画の初期段階では「ムーミン谷の彗星」を題材にする案があったという。トーベ・ヤンソンの原作イラストに忠実な表現を目指し,白黒のグラフィックスでゲームを作ってみたそうだ。
しかし,実際に動かしてみると,想像していた以上に暗く,沈んだ雰囲気になってしまった。
そこで,物語に不穏さを感じさせる部分はありつつも,より色鮮やかで楽しい世界を表現できる「ムーミン谷の夏まつり」へと題材を変更。現在のアートスタイルへとつながっていったそうだ。
開発チームが作りたかったのは,子どものころにムーミンの本を読んで育った人たちが,改めてその世界に触れたときにも,美しいと感じられるようなゲームだった。その思いが,本作のビジュアルを形作っているわけだ。
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ムーミンという世界的に知られた作品をゲーム化するうえでは,原作の権利元とのやり取りも欠かせない。
その辺りについて聞くと,ゲーム化の契約自体は比較的スムーズで,どちらかといえば制作が始まってからのほうが大変だったようだ。
たとえば,ビジュアルやキャラクターの表現については,細かな部分まで監修が行われたという。ときには開発側が原作の該当ページを示し,ゲーム内の描写について説明することもあったそうだ。
印象深かったのが,ムーミンの指の本数についての話。当初はアニメーション制作の負担を軽減するため,見せ方を工夫し,見える指は4本にしていたという。ところが,監修の過程で「ムーミンの指は5本でなければならない」と指摘を受け,すでに制作していたアニメーションを作り直すことになったそうだ。
では,開発チームはこうした監修を苦労話として語ったかというと,そうではない。原作の物語やアートスタイルに忠実な作品を作るため,こうした指摘をもらえたことや,多くの協力を得られたことにも触れ,感謝を述べていた。
なお,本作では2Dアーティストと2Dアニメーターがそれぞれ4人ほど参加し,アート制作に力を注いできたという。
開発チームが強調していたのは,アートやアニメーションを自分たちの手で描いているということだった。実は,ゲームの映像を公開した際,ユーザーから「AIで作ったの?」と聞かれてがっかりしたこともあったそうだ。
原作を大切にしながら,一枚一枚の絵を描き,アニメーションにしていく。そうした手間をかけているからこそ,生成AIによる制作を疑われたことは残念だったのだろう。
今回の試遊で目にしたムーミンたちの生き生きとした動きや,柔らかなタッチで描かれた背景。その裏にある開発者たちの仕事を知ると,もう一度ゲームの画面をじっくり眺めてみたくなる。
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本作をポイント&クリックアドベンチャーとして制作した理由についても聞いてみた。
このジャンルを選んだのは,開発スタジオ共同創設者のアイデアだったという。同氏は,ポイント&クリックアドベンチャーが盛んだった時代にゲームを遊んで育った世代であり,その体験を現代のゲームとして再び形にしたいという思いがあったそうだ。
ただし,単に昔のアドベンチャーゲームを再現しようとしているわけではない。開発チームが目指したのは,ムーミンの物語を,ゲームという媒体を通じて体験できる作品だった。
ゲームの進行は比較的一本道で,難しい謎解きに多くの時間を費やすような作りにはしていないという。開発チームは本作について,小説を読む体験に近い部分もあると話していた。
とはいえ,単にテキストを読み進めるだけではない。プレイヤー自身がキャラクターを動かし,周囲を探索し,アイテムを使って出来事に関わっていく。そうすることで,ムーミンたちと一緒に物語を進めているような体験を生み出そうとしているのだ。
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こうした方向性は,子どもから大人まで,幅広いプレイヤーに楽しんでもらいたいという考えにもつながっている。
試遊でも,操作やゲームの基本的な仕組みは分かりやすく,複雑なルールを覚える必要はなかった。気になる場所を調べ,登場キャラクターたちと関わりながら少しずつ先へ進んでいく。そのシンプルな遊びが,それこそ本を読み進めるように,ムーミンの世界を自分のペースで楽しむことにつながっていると感じた。
白黒の試作から色鮮やかなアートへの方向転換,細かな監修を受けた原作再現,そして手描きのアニメーション。完成した画面を眺めているだけでは分からない,さまざまな試行錯誤が本作には詰まっている。原作を知っている人も,初めてムーミンの世界に触れる人も,ゲームを通じてこの不思議な物語を楽しんでみてはいかがだろうか。
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