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[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦
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印刷2012/03/08 16:53

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[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦

David Cage氏
画像集#007のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦
 もしかしたら新作に関する新情報があるのではないか,と噂されていたDavid Cage氏のレクチャーが,現地時間の2012年3月7日,サンフランシスコで開催中のGame Developers Conference 2012で行われた。Cage氏がCEOを務めるフランスのデベロッパ,Quantic Dreamは,PlayStation 3向けのアドベンチャー「Heavy Rain」(邦題,HEAVY RAIN -心の軋むとき-)のヒットで,日本でもよく知られるようになった。
 1999年に発売された「Omikron: The Nomad Soul」以来,10年以上の社歴を持っているが,その間「Fahrenheit」(2005年)とHeavy Rainを発表しただけという(筆者も今調べて気づいたが),非常に寡作なメーカーだ。
 それだけに,同社の新作に期待がかかるところだが,結論から言うと,そういった情報はなし。その点は残念だが,予定どおりのレクチャーが行われ,とても面白い技術デモが公開された。

 レクチャーのタイトルは「Technologies to Support Emotion」で,“How Virtual Actions and Performance Capture can trigger emotion in Games”という長いサブタイトルがついている。つまり,モーションキャプチャ技術によって,プレイヤーの情感に訴えるゲームを作るにはどうするか,という感じだ。

画像集#008のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦

 キャラクターに人間らしい芝居をさせるためにモーションキャプチャ技術を利用するのは,すでにCGアニメやゲームにおいて一般的になっている。最近の主流は「Full Performance Capture」で,これは,芝居をするアクターの動きと表情,そしてセリフを一度に取り込むという手法だ。映画「アバター」や,CGアニメ「タンタンの冒険」などで使われており,俳優の感情表現まで再現できる,非常にクオリティの高い手法だ。
 とはいえ,問題もある。当然ながら動かしたいキャラクターと俳優の顔は異なるわけで,アクターの表情は参照に使われるだけだ。そして,なにより非常に高価な手法であり,映画などに比べて低予算の場合が多いゲームでは使いづらいとCage氏は言う。

画像集#002のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦

 そこで,多くの場合は「Split Performance Capture」という方法が使われる。これは,セリフ,動き,そして表情を別々に収録するやり方で,Heavy Rainもそれを使って制作されている。
 ちなみに,Quantic Dreamの処女作となるOmikronでは,アニメーターがキーフレームを作成し,その間を自動的につないでいくという,原始的だが非常に安価な方法が採られていた。所定の場所にくるとキューが出て,キャラクターがしゃべり出すのだ。また,Fahrenheitではもう少し複雑な方法になっており,あらかじめ作られた「歩く」「話す」といった動きを,適切なタイミングで組み合わせていくものになっているという。

画像集#003のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦

 こうした手法を採ってきたCage氏らだが,今回のデモを制作するに当たって,初めてFull Performance Captureに挑戦することにしたのだという。同社はすでに,モーションキャプチャ専用のスタジオを設立しており,準備は整っている。また,独自開発されていたPlayStation 3向けのゲームエンジン最新版も完成し,Full Performance Captureの使用方法や,制作手順を学ぶには最適の機会だと考えたのだ。
 これがうまくいけば,その技術を次回作に使う予定だが,制作されたプロトタイプは次回作とは無関係であるとCage氏は念を押した。

画像集#006のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦

 ともあれ,公開されたのは「KARA」と題されたムービーだが,これはPlayStation 3でリアルタイム処理された映像をそのままキャプチャしたものとのこと。今回公開されたデモは1年前に制作されたもので,このときに使われたエンジンは現在も開発が進められており,バージョンアップが行われているという。

 内容は,未来の工場で作られた女性ロボットが人間らしい意識を持ち,それを危惧した制作者が彼女を分解しようとするが……というもの。欧米のサイトなどではすでに公開されているので,興味のある人は見てほしいが,肌の質感や表情,動きなど,驚くほどリアルになっている。
 嬉しいお知らせとしては,この技術デモは期日は未発表ながら,いずれ無料配信される予定とのこと。

画像集#012のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦
画像集#013のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦

 Quantic Dreamは,このKARA制作に当たって,モーションキャプチャスタジオにあった28台のカメラを,65台に増やしたという。マーカーは体に90個,そして表情のキャプチャのために別に90個が用意され,録音も同時にできるようにスタジオが改装された。モデルとなったのはアメリカ人女性だが,途中,KARAがドイツ語,フランス語をしゃべるシーン,そして日本語で童謡「さくら さくら」を歌うシーンでは,それぞれ別のモデルが使われて,正確なリップシンクが追求されているという。

画像集#009のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦
3Dモデル
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実際のモデル
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収録シーン
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 Cage氏は,ゲームは現在,娯楽の本当のメインストリームにはなっておらず,まだまだ進んでいく必要があると述べる。同氏は続けて,ゲームは現在,大きく三つのカテゴリに分けられ,それは「カジュアル」「ファミリー」,そして「ハードコア」であるとする。
 しかし,Cage氏らQuantic Dreamは,第四の道があると確信しており,それこそが大人向けのゲームだ。「Adult Game」をそのままアダルトゲームと訳すと,日本では違う意味になってしまうが,Cage氏の言うのは,大人の鑑賞に堪え,人の心に訴え,多少なりともメッセージ性を持ったゲームのこと。今回KARAは,そういったゲーム制作に向けた挑戦であり,ゲームがメインストリームの仲間入りを果たすための試みでもあるというわけだ。

画像集#004のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦

 ただ,Full Performance Captureによってバーチャルな俳優がリアルな演技をした場合,どうしても“Uncanny Valley”,つまり「不気味の谷」現象はついて回り,大作映画などでもそれは見られるとCage氏は言う。これについての処方箋は今のところないが,努力をずっと続けていれば,いずれ谷から出る道は見つかるはずだと語った。

 新作についての情報は何もなかったが,それ以上に多くの情報が得られたレクチャーで,会場の拍手もひときわ大きかったように思える。

画像集#005のサムネイル/[GDC 2012]「Heavy Rain」のDavid Cage氏が講演。バーチャルな俳優がリアルな芝居をする,大人の鑑賞に堪えるゲーム作りへの挑戦
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