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  • SEGA
  • 発売日:2010/10/12
  • 価格:1500円(税込)
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[CEDEC 2011]「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4」の成功から探る,スマートフォン普及期の開発手法
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印刷2011/09/10 16:44

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[CEDEC 2011]「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4」の成功から探る,スマートフォン普及期の開発手法

画像集#001のサムネイル/[CEDEC 2011]「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4」の成功から探る,スマートフォン普及期の開発手法
 セガ 第二CS研究部 ゲームディレクターの長原俊之氏による「スマートフォン普及期を見据えた2010年代最新コンソールゲーム開発手法」と題したセッションが,CEDEC 2011の最終日となる9月8日に行われた。

 長原氏は自身の経歴を簡単に紹介したあと,代表作の1つである「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードI」PS3 / Wii / Xbox 360 / iPhone,以下,ソニック4)を例に挙げ,開発中のエピソードを交えた講演をスタートさせた。
 最初に長原氏は,ソニック4を「スマートフォンとデジタル配信時代を見据えた,ソニックシリーズ“初”のダウンロード専売タイトル」と紹介した。

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セガ 第二CS研究部 ゲームディレクター 長原俊之氏
 本作は,Xbox 360(XBLA),PS3(PSN),Wii(Wiiウェア),iPhone/iPod touch,Windows Phone 7を対象ハードとしており,6か国語対応で全世界一斉配信を実現したタイトルだ。また,海外のレビュースコア集計サイト「Metacritic」では,XBLA版が72点,PSN版(PS3)74点,Wiiウェア版が81点を記録するなど,なかなかの得点を記録している。

 ちなみにMetacriticとは,さまざまなゲーム雑誌やゲームサイトのレビュースコアを平均したのちに,補正をかけて独自の点数を出しているサイトだ。それを踏まえ,長原氏は「サイトや雑誌によって,数値にバラつきがある」と言いつつも,平均で70点前半というスコアは決して悪くなく,結果的に本作は“成功”しているタイトルだと語った。そして氏は,ソニックシリーズの強みを「欧米市場でいまだに根強い人気を持っている部分」であるとし,長いスパンで売れるタイトルだと強調した。

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iPad2とPlayStation Vitaのアーキテクチャはほとんど変わらない。すべてをシェーダーで描画する時代に


 続いてはトピックは,スマートフォンの存在を踏まえて開発された,ソニック4の開発背景に移る。

 ここで長原氏は,ハードについて触れ,「iPad2とPlayStation Vitaのアーキテクチャはほとんど変わらない」とコメント。続けて,「家庭用ゲーム機及び,現在市場に出ているWindows Phone7,Android端末,iOS端末のゲームは,すべてシェーダで描画する時代に突入している」と語った。

 これは,「ハードの境界線が完全に取り払われてしまった」ということ意味しており,長原氏は,スマートフォンやタブレット端末など,“日常”に存在するデバイスが登場したことによって,「現世代機水準のゲームを手軽に遊べる環境が形成された」と言う。
 「開発者にとってこの状況は願ったり叶ったり」と話す長原氏だが,しかしその一方で,解決しなければならない問題もある。それが以下の4つだ。

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・スマホアプリは単価が低い
・娯楽トレンドの変化 小さい/短い/易しい
・開発費高騰に伴う利益率の低下
・娯楽の多様化による国内市場の縮小

 こういった状況に対応するにはどうしたらいいのか,長原氏はその対応策を以下のように示した。

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・スマホアプリは単価が低い:配信本数でカバー
・娯楽トレンドの変化 小さい/短い/易しい:物量に頼らず,繰り返し遊べるスタイルへ
・開発費高騰に伴う利益率の低下:複数機種で配信,移植は安く仕上げる
・娯楽の多様化による国内市場の縮小:国外市場でも回収

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 とくにソニックは,世界で通用するフランチャイズなので,今後も積極的に推していきたいと話していた。そして,これらを踏まえたうえで出た結論が,「スマートフォンを含めたマルチハード開発」「全世界同時展開」「ダウンロード専売」であり,これらがチャンスロスを最小に抑えることに繋がる戦略なのだという。

 上記した方針にのっとって開発されたソニック4だが,どのように4機種同時発売を実現させたのだろうか。ここで長原氏は,コンソール開発者とモバイル開発者の違いを説明した。それによると,コンソール開発者は「いいものを作れば売れるんだ」という考えがあり,納期の優先度は下がってしまう傾向なのだとか。それに対してモバイル開発者は,コストとスピードを重視し,決められた予算の中でゲームを完成させ,アップデートで辻褄を合わせる傾向があるのだという。

 なお長原氏は,ソニック4開発時,プライオリティとしては納期が一番で,その範疇で品質にもギリギリまでこだわったと,開発時の気持ちを明かす。

 しかし現実として,プライオリティを付けたことで,その犠牲も生まれた。その一例が,開発納期を優先させたために,ゲームボリュームを抑えなければならなくなってしまったことだ。しかし,これは単価を抑えるという側面もあり,先にも述べた「短く手軽に遊べる」という昨今のゲームトレンドを取り入れることにも繋がったので,必ずしも問題というわけではない。

 ちなみにソニック4は,通常のアプリに比べるとかなり高額になっているそうで,これを挽回するには,マルチハード開発と移植作業を低予算で済まし,トータルの販売本数を増やすことでカバーするという戦略が必要になったそうだ。

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「小さな組織」を作り,プロデューサーやディレクターがチーム全体を見わたせる環境を構築


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 次のテーマは「効率的な開発環境」だ。最初に長原氏は,ソニック4のベースとなる開発ハードはPC版だということを紹介した。その開発工程は,まずPC版でゲームデザインを決め,自動的にほかハードに出力される流れを作ることで,「一つのハードでしかできない表現はなるべく避けた」と長原氏は語る。

 とはいえ,さすがにすべてを同時に進行させることはできない。iOS版は,インタフェースがタッチパネルであることと,グラフィックス処理の軽減対策がかなり必要だっため,コンソール3機種版に少し遅れる形で対応していたという。

 また長原氏によると,開発体制はスピード感をかなり重視して構築したそうで,プロデューサー,ディレクター,テクニカルディレクター,アートディレクターの4人による最小単位の運営チームにさまざまな作業を集約させたそうだ。あえて小さな組織にしたことによって,情報共有が円滑なり,判断/決定が速やかに行われ,結果としてうまくいったと長原氏は説明していた。

氏の提唱する「小さな組織」とはいかなるものなのか
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 ちなみに各クリエイターは,現世代コンソールのメイン級開発者であり,いわば少数精鋭で開発に挑んだことになる。経験豊富な開発者達を集めたことにより,壁にぶつかったときなどもスムーズに乗り越えられたそうだ。
 またローカライズは,プロデューサーやディレクターにすべての情報を集約させることで,精度の高いフィードバックが実現したという。


商品の誘導方法をしっかりと研究


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 さらに長原氏によると,iOS版では,「iOSならではのゲームデザイン的アプローチも進めた」とのこと。その一つが,メガドライブ版の「ソニック」を彷彿とさせるスペシャルステージの存在だ。ここでは,実際に端末を傾斜させることによって,画面を回転させられるといった,ジャイロセンサーに対応した操作ができるようになっている。
 またメガドライブ版「ソニック」では,画面中央からソニックが動かないが,「懐かしさ」を考慮して,ソニック4でも同じ仕様にしたという。結果,画面に表示されるコントローラ部分に指を置いても,常にソニックが見える位置にいるため,ゲーム性の確保に繋がったと開発時のエピソードを話していた。そして最後に長原氏は,今後の展望として以下の三つを挙げた。

・本格的なシェーダ表現
・ダウンロード販売,如何にお客様に商品を買ってもらえるか? 誘導の方法
・さらなるマルチハード展開

 「XBLAだったら,どうやったら体験版から製品版を買ってもらえるか」や「どうやって自社製のアバターを買ってもらえるか」など,購入の誘導方法をしっかり研究し,次回作でそれを活かしたいと目標を語っていた。そして,マルチハード展開についても,今よりさらに推し進めていく考えだとアピールして,セッションを締めくくった。

「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードI」公式サイト

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