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[GDC 2013]Blizzard EntertainmentのCGシネマティックス制作における妥協なきプロセス
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印刷2013/03/30 14:23

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[GDC 2013]Blizzard EntertainmentのCGシネマティックス制作における妥協なきプロセス

Brian Kindregan氏はリードライターという肩書だが,ストーリーボードの作成では,CGチームとも綿密に連携する
画像集#002のサムネイル/[GDC 2013]Blizzard EntertainmentのCGシネマティックス制作における妥協なきプロセス
 GDC 2013において,Blizzard EntertainmentのリードライターであるBrian Kindregan(ブライアン・キンドレガン)氏によるセッション,「How Hard Could It Be? The Story of a Cinematic」(こんなの簡単でしょう? シネマティックス開発物語)が,2013年3月28日(現地時間)に開催された。

 このセッションは,「StarCraft II: Heart of the Swarm」PC / Mac)を題材に,CGシネマティックス(いわゆるイベントムービー)の制作プロセスを紹介するという内容だ。同作になぜムービーが必要なのかや,こだわりのポイントがどこにあるかなどが、実例とともに紹介された。

 まずKindregan氏は,なぜBlizzardがプロモーションムービーや,ゲーム中のイベントムービーなどにこだわるかについて語った。
 Blizzardが開発するストラテジーゲームやアクションRPGタイトルでは,得てしてプレイヤーキャラクター/ユニットのサイズが小さいことが多いため,ゲーム中ではその表情まで読み取れない。ゲームをプレイするだけでは,ゲームのキャラクターを身近に感じることが難しいのである。

 また,「Starcraft」シリーズのプレイヤーの中には,シングルキャンペーンなど見向きもせずに,マルチプレイモードに飛び込んでしまう人が少なからずいる。そのため,ゲーム起動時のロード中に流れる(つまり,多くのプレイヤーが試聴するであろう)オープニングムービーでプレイヤーの気を惹きつけ,シングルキャンペーンをプレイしてもらう導線を作っておかないといけないわけだ。
 Kindregan氏はその導線の作り方として,見ていて楽しいアクションシーンだけでなく,プレイヤーに疑問を持たせるような意外性を持たせていると話していた。

画像集#006のサムネイル/[GDC 2013]Blizzard EntertainmentのCGシネマティックス制作における妥協なきプロセス

 「Heart of the Swarm」のオープニングムービーは,人間達がザーグの大群と戦っているシーンで始まるのだが,ザーグの大群を率いているのは,「刃の女王」の姿をしたサラ・ケリガンだったという展開になる。
 サラは前作のエンディングで,ジム・レイナーに助けられて人間に戻ったはずなのに,なぜ――と誰もが思うところで,実はそれがケリガンが見ている夢だった,というシーンで締めくくられている。迫力ある戦闘シーンだけでなく,刃の女王の姿をしたケリガンを出すことで,先にKindregan氏が述べた意外性というエッセンスを加えているわけだ。
 なお,YouTubeでは公式の「Heart of the Swarm」のオープニングムービーが公開されている。実際のムービーを見て,その“意外性”を確認してほしい。


 次にKindregan氏は,「Heart of the Swarm」のキャンペーンモード冒頭に挿入される「Hopes and Fears」というムービーを例に,導入シーンで優先させるべき要素として,以下の3つを挙げた。

  1. 前作からのストーリーの継承
  2. 主人公がレイナーからケリガンに変わる“パワーシフト”
  3. その後のキャンペーンに続くテーマのセットアップ

 Blizzardでは,こういったテーマとなるものを「Defensive Center」(守備的中核)と呼び,デザインチームや脚本チームを交えて,ムービーを作る前に必ずまとめておくのだという。
 そして,デッサン画を1秒につき1フレーム程度にまとめて「アニマテック」という簡易版ムービーを作り,ストーリー,カメラワーク,ドラマ性,ペースなどのチェックを行うというプロセスを踏むとのこと。

画像集#004のサムネイル/[GDC 2013]Blizzard EntertainmentのCGシネマティックス制作における妥協なきプロセス

 さらにKindregan氏は,ムービー制作での苦労を,要素ごとに実際のエピソードを交えながら解説した。

 1.のストーリーの継承において,Kindregan氏は設定にとらわれ過ぎてしまったことを苦労した点として挙げた。
 当初,Kindregan氏は「ストーリーの継承」を,「レイナーは,ケリガンを見捨てたことを後悔し,アルコール依存症になっている」というオリジナルの設定から,「ウイスキーのボトルから離れるレイナー」をムービーに入れることで,表現しようとしていた。
 しかし,ストーリーボードでさまざまなパターンをいくら試しても,ムービーは間延びしたものになってしまう。Kindregan氏を含むメンバーのほとんどが,ペースの悪さに違和感を持ちながらも,誰もがどこが悪いのかを指摘できなかったという。
 このポイントでもっとも重要だと考えていたシーンが,実はムービー全体としてみると不要なものだったと気づくには,相当の時間がかかったとのこと。
 Kindregan氏は,妙な違和感を持ったときは「何かがおかしい」ときであり,すべての要素を疑って,少しでも早く検証して対策すべきだと勧めた。

「Hopes and Fears」ではカットされることになった,レイナーのアル中解脱のシーンを表現したアニマテック
画像集#001のサムネイル/[GDC 2013]Blizzard EntertainmentのCGシネマティックス制作における妥協なきプロセス

 2.のパワーシフトが,制作チームが最も苦労した点で,アニマテックは段階を経て7つも制作されるほど試行錯誤が繰り返され,満足できるものになるまで半年もかかったそうだ。
 それがどのような形に仕上がったかについては,件のムービーのタイトル「Hopes and Fears」が端的に示している。
 ムービーシーンは,前作の主人公だったレイナーの登場から始まり,本作の主人公となるケリガンにォーカスしたところでムービーは終わる。レイナーを「希望」,ケリガンを「怖れ」のメタファーとして,主人公の移行を表現しているのである。

画像集#003のサムネイル/[GDC 2013]Blizzard EntertainmentのCGシネマティックス制作における妥協なきプロセス

 3.のセットアップは,ケリガンを実験台に閉じ込める“ジュニア”ことヴァレリアン・メンスクの登場で,ケリガンがメンスクに憎悪を燃やし始めるきっかけを暗示させている。
 ただし,「Hopes and Fears」の中核はレイナーとケリガンの物語であり,ヴァレリアンに多くのカットやセリフを割くべきではない。実際,3分半ほどのムービーで,ヴァレリアンに与えられているのは,「Good Morning,Commander」(おはよう,司令官殿)という,レイナーに対する一言だけだ。
 Kindregan氏によれば,ヴァレリアン役の声優の演技力と表現力によって,その一言の中にさまざまな意味合いが含まれたことで,見事なセットアップとなったのだという。
 Kindregan氏は,「ゲームにおける声優たちのパワーを見くびってはいけない。彼らの演技が多くの問題を解決してくれる」と補足した。

 最後にKindregan氏は,「アクションもなく,ゲーマーたちが長く語り継ぐようなムービーではないけれど,我々にとっては傑作の1つだ」と述べ,今回の講演を締めくくった。

画像集#005のサムネイル/[GDC 2013]Blizzard EntertainmentのCGシネマティックス制作における妥協なきプロセス

「StarCraft II: Heart of the Swarm」公式サイト(英語)

Game Developers Conference公式サイト(英語)

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