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[CEDEC 2012]携帯電話の普及率は232.1%,“廃ゲーマー”も実は多い!? 中東の印象がガラリと変わる「中東ゲーム市場とヨルダンのゲーム産業」
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印刷2012/08/22 17:49

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[CEDEC 2012]携帯電話の普及率は232.1%,“廃ゲーマー”も実は多い!? 中東の印象がガラリと変わる「中東ゲーム市場とヨルダンのゲーム産業」

 CEDEC 2012の2日目となる2012年8月21日,「中東ゲーム市場とヨルダンのゲーム産業」と題したショートセッションが開催された。スピーカーはメディアクリエイトのアシスタントアナリストである佐藤 翔氏。アメリカはサンダーバード国際経営大学院で学んでいた氏は,2011年にヨルダンのゲーム業界団体であるJordan Gaming Taskforceで,ヨルダンのゲーム産業が域外進出するための調査と講演を行っており,今回の講演はそのときの経験を踏まえたものとなっている。

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メディアクリエイト 佐藤 翔氏


携帯電話の普及率:232.1%


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 佐藤氏は,まずアラブ諸国の基礎的なデータを提示した。
 データによると,アラブ諸国の人口は総計で3.6億人,人口増加率は平均して2.5%となっている。人口増加率の世界平均は1.1%,日本は0.3%であることから,2.5%という数字がいかに大きなものかが理解できる(ちなみにアラブ首長国連邦に至っては4.9%)。
 また30歳以下の人口比率がいずれの国においても高く,概ね50%〜70%,平均で55%を占める。日本の30歳以下人口がだいたい30%,人口構成が若いと言われるインドですら48%であることから,アラブ諸国の「若さ」が見て取れる。
 言語的にはもちろんアラビア語が主流だが,歴史的背景からか,英語が通じることも多い。佐藤氏は「感覚的に言えば,フランスやドイツといったヨーロッパの非英語圏よりも英語が通じる確率が高い」と語っていた。

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 アラブ圏の消費者動向の特徴として,佐藤氏は「お喋りが大好きで,新しいものが好き」と述べる。よく「日本人は黙りがち,アメリカ人はよく喋る」と言われるが,アメリカでは「アメリカを標準として,アラブ人がよく喋り,日本人が黙りがち」と言われているらしい。
 これを反映してか,アラブの消費者はコミュニケーションツールの優先順位が高い。日本であればいわゆる「三種の神器」(時代によって異なるが,いずれも家電)が優先される傾向にあるが,アラブ社会では携帯電話の優先度が極めて高いようだ。
 このことは,世界の携帯電話普及率上位5位のうち4位が中東諸国で占められるというデータにも象徴されている。アラブ首長国連邦における携帯電話の普及率は232.1%,これはつまり全国民をならして1人あたり2.3台の携帯電話を持っているということだ。佐藤氏はこれについて「タクシーに乗ると,運転手が片手で複数の携帯電話をとっかえひっかえして喋りながら運転している」と語っている。

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 スマートフォンの普及率も驚異的で,アラブ首長国連邦が61%,サウジアラビアが60%など,普及率でいえば中東は世界最高の地域である。またモロッコからイラクまでのスマートフォンユーザー2600人を対象として行った調査では,スマートフォンを2台持っているユーザーの比率は28%,これは湾岸諸国になると34%に上昇し,3台以上持っているというユーザーも全地域において7%近く存在する。
 「スマートフォンが急速に普及している」と言われる日本における普及率が20%であることを鑑みると,この数字がいかに大きなものかが分かる。またアラブ諸国で「スマートフォン所持台数調査」のようなリサーチが行われているということ自体も,重要なポイントといえるだろう。

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 またSNSの利用も活発で,アラブ全体でのFacebook加入者は4300万人,この数字は急速に増加している。
 消費動向としては,とくに湾岸諸国においては可処分所得が高く,貯蓄率が低い。つまり,「たくさん稼ぎ,たくさん使う」傾向がある。また消費の中心地としては「ショッピングモール」が重要視されており,ドバイには世界最大のショッピングモールが存在する(現在,それよりもさらに大きなモールを建築中)。



アラブの“ゲーム廃人”


 ゲーム市場としてのアラブ諸国も,拡大を続けている。
 アラブのゲーム市場は,オンラインゲーム,ソーシャルゲーム,コンシューマゲームなど,すべてをひっくるめて2011年段階で10億ドル前後。まだ小さめだが,これは年10%以上の速度で成長している。なかでもモバイルゲームとソーシャルゲームの成長が著しく,2011年時点で4.5億ドル程度の規模を有する。
 人気ゲームの傾向は欧米圏とさほど大きな違いはなく,「Angry Birds」や「Farmville」「Cityville」といったゲームが安定した人気を誇る。となると気になるのはローカライズだが,スマートフォンアプリのダウンロード数では英語版アプリが全体の62%と,「英語版をそのまま遊ぶ」傾向が強い。

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 もっとも,Facebookアプリにおけるアラビア語アプリのMAU(Monthly Active Users)は2011年の段階で239万に到達しており,アラビア語アプリを好む傾向は根強い。

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 オンラインゲームの市場規模はアラブ全体で1億ドル程度,映画が禁止されていたり男女交際が抑制されていたりするなど娯楽が乏しいことから,ヘビーなオンラインゲームプレイヤーが多いという。ブラウザゲーム「Travian」はアラブ圏でも大きな人気があり,全世界のTravianプレイヤーの27%がアラブ諸国で占められているというデータもある。
 実際,例えばサウジアラビアではいわゆる「オンラインゲーム廃人」の比率が非常に高く,サウジの“平均的な”オンラインゲームプレイヤーは週5日,1日5時間近くログインしているという。平均でこれなのだから,廃人は推して知るべしというところであろうか。
 コンシューマゲームもスポーツ,レース,アクションを中心に人気はあるが,PlayStation 3以外のハード・ソフトでは海賊版が横行しており,収益化には大きな問題があるという。現地の新聞によれば,流通するコンシューマゲーム300万本のうち1万本しか正規版がない,という数字も(信憑性はともかく)提示されている。

 いずれにしても,あらゆるゲームジャンルにおいてアラビア語のゲームが供給不足となっているのが,アラブ諸国のゲーム市場における大きな問題である。


テストマーケティングの場としてのサウジ


 続いて,国別の特徴が概説された。

・サウジアラビア

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 アラブ最大のゲーム市場であり,またアラブ諸国のゲーム市場に参入するにあたってのテストマーケティングに最適の国といわれる。というのも,サウジアラビアはアラブ諸国のなかで最も保守的なイスラム教国であるため,文化的な規制が強い――逆に言えば,「サウジアラビアでOKならほかの地域では基本的にOK」ということで,これがテストマーケティングに最適とされるゆえんである。
 このように非常に保守的な文化政策を採る一方で,2005年からスタートした留学援助プログラムによってすでに約10万人の若者が欧米の大学に留学,欧米式のライフスタイルや文化を身につけている。
 ゲーム市場の中心となるのは10〜20代の男性で,コーヒーショップ(ネットカフェとは異なり,文字どおりのコーヒーショップ)に複数人が集まり,コンシューマゲームやオンラインゲームがプレイされている。なお,女性はゲーム市場においては現在あまり中心的ではないが,「今後ソーシャルゲームがもっと普及すれば,変化が起こりうる」と佐藤氏は指摘する。

・アラブ首長国連邦

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 アラブ諸国では2番目に大きなゲーム市場で,モバイルゲームやスマートフォンゲームの市場として有力。コンシューマゲーム市場も育っている。
 一人あたりのGDPが4万8880ドルと非常に高く,先に説明があったように携帯電話やスマートフォンの普及率は世界最高。GDPに関しては算出にあたって出稼ぎ労働者も含まれていることから,UAEに限っていえばもっと高い数値になるのではないかという観測がある。

・クウェートと北アフリカ

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 市場としてはアラブ諸国で第3位だが,規模はかなり小さくなる。
 北アフリカは市場として未発達だが,エジプトは大きなオンラインゲーム市場を有する。


資源がなければ人材を:ヨルダンのケース


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 さて一方で,佐藤氏が調査や講演を行っていたヨルダンは,ほかのアラブ諸国と比べてさまざまな特徴を有する。
 まず何より,ヨルダンは石油などの天然資源を産出しない(原油自給率は日本以下)。このため経済規模は小さく,「だいたい日本の島根県程度」であるという。
 一方,アラブ諸国のなかでは最もリベラルな国の一つで,周辺諸国に比べて政情は安定しており,国内の治安も良好であるという(警察の信頼度評価で,ヨルダンは世界29位。日本が23位,アメリカが30位,フランスは30位中盤と,世界的に見ても治安状況は良い)。
 また天然資源を産出しないことから,人材育成に積極的な傾向がある。このため知識労働者の比率が高く,伝統的にアラブ諸国に対する高等人材を供給してきた。

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 ゲーム産業においてもこれは反映されている。中東におけるゲーム開発のハブとなるべく,ヨルダン政府がゲーム産業に支援を行っており,現在アラブ製ゲームの70%はヨルダンの企業によって制作されているといわれる。大学にもゲーム制作専門のコースがあり,2010年にはヨルダン国王が主催するiOSアプリゲームのコンテストも開催されている。

 ヨルダンのゲーム企業にはモバイルゲーム,ソーシャルゲーム開発会社が多く,オンラインゲームのローカライザーなども存在する。2010年にはJordan Gaming Taskforceと呼ばれる業界団体が6社によって結成され,2011年にはJordan Game Summitを開催。国内外から400人以上の関係者が参加し,またSONYやUnityといった大手企業もこれに参加している。

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 実績もすでに上がってきており,Maysalward(アラブ最大のモバイルゲーム開発会社)が開発した「Dominoes Pro」はロシアやメキシコなど6か国でiOSゲームアプリの1位を獲得,「Cocktail Mania」はタイで全iOSアプリを通じての1位を獲得した。また7月26日にリリースされた「2022 Space Invasion」はシューティング系のゲームで,App Storeで購入可能だ。

 ローカライザーとしてはGate2Playが活躍しており,アラブ諸国向けのオンラインゲームやモバイルゲームのマーケティングリサーチやローカライズを行っている。Facebookにおいてソーシャルゲームの巨大なムーブメントを起こしたZyngaのプリペイドカードを中東・北アフリカの16か国/地域で扱っているのがこの会社であるといえば,その存在感が理解しやすい。

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 面白いところでは,Mixed Dimentionsがとても興味深い活動をしている。この会社はUnityのアセットストア(ゲーム制作ですぐに使える素材の販売)を中心に活動しているのだが,「中東のゲーム制作会社である我々こそが,中東を舞台としたゲームにおける最良のアセットを提供できる」というスタンスを取っている。確かに「諸般の事情でFPSには中東を舞台としたものが多く」(佐藤氏談),餅屋が餅を売るというか何というか,実にたくましい商魂を感じる会社である。


実はとても有望な市場?


 最後にまとめとして,佐藤氏は「アラブのゲーム市場,とくにモバイルゲーム・ソーシャルゲームは非常に大きな発展の余地を持っているが,コンテンツ供給が追いついていない」ことを再度強調した。しかし,サウジアラビア市場で大丈夫ならほかでもだいたい大丈夫という比較的具体的な指標が存在しており,またヨルダンのように,IT産業振興の一環としてゲーム産業を政府が支援しているケースもあり,世界的な成功を収める企業も出現しつつあることから,今後の見通しは決して暗くはない。

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 興味深いことに,アラブ社会のIT産業においては,女性の進出率が非常に盛んだという。Oasis500というIT向けのファンドがあるが,ここに持ち込まれた起業案件のうち,実際に採用された案件の実に40%が女性によるものなのだそうだ。ニューヨークで女性起業家の比率は20%,シリコンバレーではもっとその比率は下がるといわれていることから,この40%という数字がいかに高いかよく分かる(講演後,CEDECの会場にいたUnityの大前氏に筆者が個人的に聞いてみたところ,Jordan Game Summitでは参加者の男女比がほぼ1:1だったという)。
 この背景として,佐藤氏は「アラブ社会においては,旧来的な産業構造はどうしても男性がポストを占めていく傾向にある。そのため新興産業であるITに女性が進出するケースが増えている」と分析する。

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 こうしたアラブ市場に日本のコンテンツ産業が参入していけるか,という問題について,佐藤氏は非常にポジティブな見解を示していた。

 まずそもそも,日本のゲームやアニメはさまざまなルート(残念ながらこれは海賊版も含めてという意味)でアラブ諸国に受け入れられており,総じて評価も高い。実際,アラブで大人気のアニメは「グレンダイザー」であり,「キャプテン・マジド」(=キャプテン翼)も非常に高い人気を誇る。もちろんと言っていいのかどうか,「NARUTO」のようなニンジャものも人気だ。これらのアニメは子供が見ているだけでなく,大人も揃って見る,世代を越えた人気コンテンツとなっている。ただし「日本のコンテンツが受けている」というよりは,日本に限らずアジア産(中国や韓国)のコンテンツが受け入れられていると佐藤氏は語る。

 また若干,負の側面の話になるが,やはり積年のアレコレがあるためか,成長が期待できる市場に欧米企業がどんどん参入して……という展開には,現在のところなっていない(Ubisoftがカサブランカに支所を持っている程度)。

 中東地域,イスラム教圏では,かつてポケモンが販売制限や販売禁止となったことがあるなど,「予測不能なリスクを含んだ地域」という雰囲気があるが,佐藤氏はその例について「これはサウジアラビアにとっての国内法の問題」と語る。そして「中東は地道なネットワーク作り,経験の蓄積がものをいう地域」「まずは政治関係者,それから法曹関係者に連絡を取っていき,問題がないかどうかを先に確認すればリスクは最小限に抑えられる」と指摘した。

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 中東のゲームシーンにおいては,かねてよりさまざまな作品がプレイされており,「Under Ash」のような政治的主張を強く含んだゲームが注目されることもあった(関連記事)。
 一方,例えばUnder Ashのようなゲームがプレイされる横で,実際には「カウンターストライク」の対戦に興じる若者が圧倒的多数であったというデータもあり,佐藤氏も「現地では『Call of Duty:Modern Warfare』のようなゲームが大いにはやっている」と語る。政治的・文化的な云々があったとしても,面白いゲームは面白いということだろう。日本人も「Call of Duty: World at War」に興じていることを考えれば,そこに目立った不自然さはない。

 とはいえ「中東のゲーム市場は,ネイティブな言語で楽しめるゲームを求めている」(佐藤氏)。またモバイルゲーム,ソーシャルゲームが強いこと,スマートフォンの普及率が極めて高いこと,そして日本のコンテンツが支持されていることを踏まえると,広い意味における「ローカライズ」の壁を越えれば,日本のゲーム産業にとって有望な市場として中東のゲーム市場があり得るのではないかという予測は立つ。
 民間で作られた4足巨大ロボ「クラタス」の開発者が,「アラブの石油王がうっかり買ってくれないものか」ということを冗談めかして語っているが,ゲームを含めた日本のコンテンツがアラブ諸国を一つの有力なマーケットとしていく可能性は,まんざらでもない――そんなことを思わせてくれる講演だった。

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