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  • 発表日:2015/10/30
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GDC 2019の裏でNVIDIAの総帥は何を語ったのか。GTC 2019基調講演まとめ
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印刷2019/03/20 16:46

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GDC 2019の裏でNVIDIAの総帥は何を語ったのか。GTC 2019基調講演まとめ

 速報記事でもお伝えしているとおり,北米時間2019年3月18日,NVIDIAのJensen Huang(ジェンスン・フアン)CEOが,同社主催のGPU技術関連イベント「GPU Technology Conference 2019」(以下,GTC 2019)の基調講演に立った。

お馴染みの革ジャン姿で登場したJensen Huang氏(CEO, NVIDIA)
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 講演は2時間半近くに及んだが,今回はその中から,4Gamerとしてとくに注目すべきところを中心に,一通りまとめてみたいと思う。


なぜいまGeForce NOWなのか?


 GTCはGPUの守備範囲とNVIDIAが規定する全ジャンルを対象としたイベントだ。グラフィックスや深層学習ベースのAI,HPC,自動運転,ロボットなど幅広く,Huang氏が扱う話題も自ずと多岐にわたるわけだが,その中でも,4Gamer読者と最も親和性が高いと言えるのが,速報記事でもお伝えした「GeForce NOW Alieance」プログラムの立ち上げと,同プログラムにおける日本のソフトバンクおよび韓国のLG Uplusという具体的なパートナーの発表だろう。

GeForce NOW Alieanceプログラムを立ち上げ,2019年にもソフトバンクと共同でクラウドゲームサービスを日本国内で(再)展開すると予告した
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 そもそもの話にはなるが,GeForce NOW(旧称:GeForce Now)とは,NVIDIAが自社製のAndroid端末であるSHIELDシリーズ向けとして立ち上げたクラウドゲームサービス(=ゲームストリーミングサービス)だ。基調講演でHuang氏は「GeForce NOWは世界中の15か所にサーバーがあり,数百万のプレーヤーを抱えている」と語っていたものの,なら,日本では2015年10月にサービスインしていたことを知っている人がどれだけいるかという話になると……といったところで,最近はほとんど話題に上らなくなっていたというのが正直なところだろう。

 そんなGeForce NOWの大幅なテコ入れを,Huang氏がこのタイミングで発表したというのがトピックだ。クラウドの巨人であるGoogleがクラウドゲームサービス「Stadia」を発表するのに1日先駆け,しかもStadiaの初期サービス対象地域にならない日本と韓国でも携帯電話キャリアとの提携して2019年内にもサービスを開始すると予告したのは意味があるところである。
 Huang氏は基調講演で,「来たる5Gネットワークを用いて,高品質なクラウドゲームサービスを提供する」と語っていたが,要するに,クラウドゲームサービスの先行者として,少しでもGoogleより多くの実績を積み上げておきたいということなのだと思われる。

 さて,新生GeForce NOWに向けてHuang氏は,クラウドサーバー側の拡張も発表しているが,それが「RTX Server」だ。これは「GeForce RTX 2080」相当のGPUを40基搭載したブレードサーバーで,さらにそのサーバーを最大32台まとめた「RTX Server Pod」を構成できるという製品になっている。
 「極めて高密度化されたサーバーであり,1台のRTX Serverで最大320人のユーザーにゲームをサービスすることができる」(Huang氏)そうで,RTX Server Podであれば約1万人のユーザーにゲームをサービスできる計算になる。

1台あたり320人のゲーマーにクラウドゲームをサービスできるRTX Server。このRTX Serverを32台束ねたRTX Server Podなら約1万人に対して同時にゲームをサービスできる理屈だ
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 RTX Serverを活用するツールとしてもう1つ,3Dデザイナーのコラボレーションツール「Ominiverse」をHuang氏はアピールしていた。遠隔地にいる複数のデザイナーが共同でデザインを行うことができるというもので,Huang氏いわく「『Google Document』を使うような感覚で3Dのデザインが可能になる」とのことである。

Omniverseは3Dデザイナー向けGoogle Documentを目指して開発されたというコラボレーションツールだ。多数のアプリケーションに対応しており,住んでいる場所や国が異なるデザイナー同士が協力してデザインを行えるのがウリ
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 講演でHuang氏は,Autodeskの3Dモデリングおよびアニメーション制作ツール「Maya」,ゲームエンジン「Unreal Engine」,3Dペインティングソフトウェア「Substance」という3種類のアプリケーションを使ってコラボレーションする例をデモとして披露した。別の場所に住んでいるデザイナーが3Dのモデリングとペイント,そしてUnreal Engineを使ったアニメーションの制作を,Omniverse上で分担して行うというものだ。

MayaとUnreal Engine,Substanceという3つのソフトウェアを,それぞれ別の場所に住んでいるデザイナーが操り,Omniverseで1つのコンテンツを作る例。けっこうインパクトがあった
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 Omniveseはゲーム制作者向けのツールというわけではなく,3Dデザインに関わっている産業すべてで活用できるコラボレーションツールという位置づけだが,ゲームの制作も国際化しているので,場合によってはOmniverseで働き方が変わる開発者が出てくる可能性がありそうだ。

コンテンツ制作向けRTX ServerのメリットもHuang氏は語っていた。Quadro RTX 8000を3枚搭載したRTX Serverを導入すると,Skylake-Xベースのサーバーに比べて時間とランニングコストの大幅な削減が可能だという。「私はこれまでGPUを買えば節約できると繰り返し言ってきたが,RTX Serverは(電気代などを加味すれば)実質無料だ(笑)」とのこと
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RTXを用いた興味深いデモも披露


 基調講演でHuang氏は,リアルタイムリアルトレーシング技術「RTX」を用いたデモをいくつか披露している。
 1つは,Nexon Korea傘下のdevCAT Studioが開発を進めているオンラインRPG「Dragonhound」だ。RTXを用いた影や反射の表現が見どころとなっている。


 続いては,懐かしい「Quake II」にRTXを実装した技術デモだ。歴史に残るタイトルをリアルタイムレイトレーシング技術でリニューアルしたこともあり,会場でもかなり受けていた。


 もう1つは,リアルタイムレイトレーシングへの対応を果たした「Unreal Engine 4」を用いて制作された「Project Sol Part 3」である。
 Project SolシリーズはNVIDIAがRTX技術をアピールするためにQuadro RTXシリーズを発表した当時から制作を続けている技術デモで,第1弾第2弾に引き続き,今回もNVIDIAの映像チームが制作したものだそうだ。
 従来同様,光や映り込みのリアルな表現が見どころとなっている。


 以上はゲーム関連のデモだが,GTC 2019の基調講演でHuang氏はエンタープライズ向けアプリケーションでもRTXの採用が広がっているとアピールしていた。氏の挙げていた応用例の1つは,ゲームエンジン「Unity」を用いて,自動車の内外装をリアルタイムで見ることのできるデモだ。「ゲームエンジンを使った,非ゲーム用途でのリアルタイムレイトレーシング」は今後も広がっていくのだろう。

RTX対応版のUnityを用いて作られているというデモ。自動車の内外装をデザインをリアルタイム3Dグラフィックスでチェックできる
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AIライブラリセット「CUDA-X AI」がエンドツーエンドの高速化を提供


 ここからはゲーム以外の話題の中から注目できるものをざっくりとまとめていこう。まずは大テーマの1つであるAIからだ。

 Huang氏はNVIDIAを「世界で最も複雑なアクセラレータを設計している企業」と位置づけつつ,「コンピューティングの高速化はハードウェアだけで成し遂げられるものではなく,継続的なソフトウェアの開発と最適化が必要になる」と強調。そのうえで,NVIDIAが開発者らに向けて提供しているライブラリセットを新たに「CUDA-X」と命名することを明らかにしている。

NVIDIAが提供しているグラフィックスやAI,HPC向けのライブラリの総称として,今後はCUDA-Xを使うとHuang氏は明らかにした
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 要はCUDA関連ライブラリとしてこれまでもあったものにCUDA-Xと名前を付けただけだが,Huang氏によるとCUDA-Xの特徴は,

  • Programmable:プログラム可能である
  • Acceleration:高速化を支援する
  • Domains:幅広い分野に提供できる
  • Architecture:従来と同じCUDAアーキテクチャに基づく

点にあるとのことだ。

ProgrammableとAcceleration,Domains,ArchitectureがCUDA-Xの強みだとHuang氏。「略して『PRADA』だ(笑)」と冗談を飛ばしていた
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 そんなCUDA-Xの中でAIに関わるライブラリは「CUDA-X AI」と呼ばれることになる。CUDA-X AIはAI開発をエンドツーエンドでサポートできるそうで,つまりはデータの前処理や実装,学習,デプロイ(deploy,展開)まですべてをCUDA-X AIで行えるというのが強みだというわけである。

CUDA-X AIは開発からデプロイまですべてをカバーするエンドツーエンド仕様が最大の強みであるとHaung氏
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 たとえばデータ処理だと,データサイエンス向けのエンタープライズサーバーの多くがCUDA-X AIに対応した「Tesla T4」を搭載できているとHuang氏はアピール。そのうえで,Amazon.comのクラウドサービス「Amazon Web Services」(AWS)の新たな仮想インスタンスとしてTesla T4を用いたサービスを開始することも基調講演において明らかにしている。

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主要サーバーメーカーがデータサイエンス向けとしてCUDA-X AI対応のTesla T4搭載製品を展開中というスライド
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AWSの副社長であるMatt Garman氏が登壇。氏が,Tesla T4を用いたインスタンスの提供開始を発表した

 さらに,CUDA-X AIを用いたデバイスのデプロイに関わる新製品「Jetson Nano」もHuang氏は発表している。価格は99ドル(税別)だ。

超小型コンピュータ,Jetson Nano。スライドに映っている左側がベースボード,右側が本体だ。開発を行うときには両方必要になるはずである
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Jetson Nanoの製品イメージ
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 Jetson Nanoは,ロボットや家電製品など,いわゆるエッジデバイスと総称される機器に組み込むことを前提としたエッジ型超小型コンピュータだ。プロセッサとしてはAIアクセラレータを集積したSoC「Tegra TX1」を搭載しており,CUDA-X AIをエッジデバイス上で利用できるという。

基調講演でHuang氏が披露した,Jetson Nanoの実機。手の大きさとサイズを比較してみてほしい
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 ちなみに,予約がスタートしたJetson Nanoのラインナップは,上でHuang氏が手にしているエッジ型の製品と,シングルボードコンピュータ型の「Jetson Nano Development Kit」の2種類がある。前者はロボットなどのデバイスに組み込むことを目的とした産業用の製品で,後者は開発時やアマチュアの学習用途を想定した製品だ。
 価格は産業用のJetson Nanoが1000個ロット時単価129ドルで,一般ユーザー用のJetson Nano Development Kitは99ドル(税別)だ。これまでのJetsonシリーズと比べるとかなり手頃な価格と言っていいだろう。

NVIDIAのJetson Nano製品情報ページ


 ちなみに,Googleは3月上旬に,AI向けアクセラレータ「Edge TPU」搭載のシングルボードコンピュータ「Coral Dev Board」を正式発表したが,こちらの価格は149.99ドル(税別)。Edge TPUのみを搭載したUSB接続型の「Coral USB Accelerator」なら74.99ドル(税別)で購入可能となっている。

 Googleが独自に開発を進めているEdge TPUは,エッジデバイス向けとされているJetsonシリーズと競合するアクセラレータなので,NVIDIAとしてもその存在は当然意識しているだろう。Jetson Nano Development Kitが税別99ドルという非常に手頃な価格になっているのは,Edge TPUに対抗してのことかもしれない。

※お詫びと訂正
 初出時,開発にはJetson NanoとJetson Nano Development Kitの双方が必要としていましたが,Jetson Nano Development Kit単独で開発が可能でした。お詫びして訂正します。



トヨタとの包括的な提携を発表


 最後は自動運転の話題である。今回の目玉は,NVIDIAとトヨタの先進技術研究所「TRI-AD」との包括的なパートナーシップ発表だ。

トヨタの先進技術研究所「TRI-AD」との包括的なパートナーシップを発表。Huang氏は「NVIDIAは世界最大の自動車メーカー(=トヨタ)と緊密な協力関係を築いている」とアピールしていた
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 トヨタは自動運転の開発においてNVIDIAの自動車向けコンピュータ「DRIVE AGX Xavier」やCUDA-Xの技術を全面的に採用していくそうだ。また,仮想空間で自動運転の学習や検証を行うNVIDIAの「Drive Constellation Platform」がすでに稼働しており,それを初めて採用する企業がトヨタになることもHuang氏は基調講演で明らかにしていた。

仮想空間で自動運転の学習や検証を行えるDrive Constellation Platformは2018年9月の発表以降,開発中というステータスになっていたが,GTC 2019で,実用可能な状況にあることが明らかになった。世界で最初のユーザーはトヨタになるという
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 以上,Huang氏の公演の中から,主要なテーマと目玉の発表をまとめてみたが,やはりゲーマーとしては新生GeForce NOWが日本でどのような展開になるかというのが気になるところだろう。
 詳細はソフトバンクからいずれ明らかにされるはずなので,期待して続報を待ちたいところである。

GTC 2019: Huang Kicks Off GTC, Focuses on NVIDIA Data Center Momentum, Blue Chip Partners(英語)

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