懐かしの名作から近年リリースされた人気作まで,お琴や三味線,尺八といった日本の伝統楽器だけで演奏される本公演について,ファミ箏を主宰する箏奏者の沖政一志氏にインタビューを行った。
お琴との出会いから,和楽器アレンジの裏側,そしてアメリカのグラミー賞受賞バンドの結成へとつながった,国境を越えた奇跡的なエピソードまで,たっぷりと話を聞いた。
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大学で出会った「お琴」の衝撃
4Gamer:
今日はよろしくお願いします。
まず,沖政さんがどのようなステップで和楽器奏者になられたのかを教えてください。
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子供の頃からテレビゲームが大好きだったのですが,中学生の頃に音楽もすごく好きになりました。実は,本格的にピアノを弾きたい,音楽をやりたいと思ったきっかけが「ファイナルファンタジーV」と「VI」の「ピアノコレクションズ(ピアコレ)」だったんです。
4Gamer:
お,ピアコレですか! 当時,非常に人気の高かった楽譜・CDの企画ですね。
沖政氏:
そうなんです。生まれて初めて買ったCDが「ファイナルファンタジーIII」のサントラだったくらいゲーム音楽に魅了されていて,やっぱりサントラを聴いていると「この曲を自分で弾いてみたい!」と思うじゃないですか。
そこにちょうどピアコレの楽譜が出たので,すぐに買いに走りました。当時はうまく弾けないなりに,一生懸命頑張って鍵盤に向かっていましたね。
楽譜の読み方などの音楽の基礎は,すべてこの時期のピアノから学びました。実家が音楽一家だったというわけではない僕のような人間にとって,ゲーム音楽は音楽を始めるための,本当に大きなきっかけになったなと今でも強く感じています。
4Gamer:
そこからさらに,大学で和楽器へとつながっていくのが面白いですね。転機はどのように訪れたのでしょうか。
沖政氏:
音大ではなく普通の大学に進学したのですが,「日本でしかできないことを何か一つ身につけたい」と思い,そこで入った箏曲部で出会ったのが「お琴(箏)」だったんです。
初めてお琴に触った瞬間,頭の中に電流が走るほど「なんて面白い楽器なんだ!」と衝撃を受けまして,留年するくらい文字どおり泥沼にハマりました(笑)。そこから約10年間,ひたすら箏曲の勉強やコンクールへの挑戦などをしていました。
4Gamer:
和楽器奏者の方は,ご実家の環境などで幼少期から習っているイメージが強いので,大学から始められたというのは意外です。
沖政氏:
そう思われがちですよね。でも実は,ファミ箏のメンバーである尺八の神永大輔や大賀悠司,三味線の田辺 明も,大学から和楽器を始めているんです。
和楽器は日常での露出が少ない分,高校や大学で初めて出会って文化的な背景(歴史や古典文学)とともにその魅力に気付き,一気にのめり込むケースがとても多いんですよ。
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mixiのコミュニティから生まれた「ファミ箏」
4Gamer:
では,和楽器でゲーム音楽を演奏しようとなったきっかけを教えてください。
沖政氏:
当時,「mixi」の中に,ゲーム音楽を演奏したり聴いたりするコミュニティがありました。そこに参加しているうちに,「昔のゲーム音楽を,せっかくだから和楽器で弾いてみたら面白いんじゃないか」と考えるようになったんです。
そんなときに,「4starオーケストラ」というイベントの主催者から,「『がんばれゴエモン』と『月風魔伝』を演奏しませんか?」と声をかけていただいて,「やります!」と即答しました。それが2011年のことですね。
4Gamer:
それがファミ箏の原型になった,と。
沖政氏:
はい。ゲーム音楽好きな和楽器奏者を集めて演奏したところ,非常に手応えがありました。せっかく素晴らしい編曲ができあがったのだから,一回きりで終わらせるのはもったいないと思い,その半年後に「ファミ箏」として第一回演奏会を開催しました。
そのときは「がんばれゴエモン」「月風魔伝」に加えて,僕が大好きな「ファイナルファンタジーV」の「ビッグブリッジの死闘」や「ファイナルファンタジーVI」の「決戦」などを演奏しました。
そこからゲーム好きな和楽器奏者の仲間がさらに増え,第二回では「サクラ大戦」や「サガ」シリーズのメドレーに挑戦するなど,徐々に規模を拡大していきました。
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西洋楽器以上の“制約”が,ファミコン音源とシンパシーを生む
4Gamer:
ゲーム音楽は本来,和楽器で生演奏されることを想定して作られていないものがほとんどだと思います。和楽器ならではのアレンジの苦労はどこにあるのでしょうか。
沖政氏:
和楽器は,西洋楽器に比べて圧倒的に「構造上の制約」が多い楽器です。例えば,一般的なお琴は弦が13本しかありませんし,三味線は3本の弦しかありません。フレットもないため,本来は激しい転調や,半音階が多用される洋楽的なゲーム音楽をそのまま弾くこと自体,物理的に不可能なケースが多々あります。
4Gamer:
それをどのようにして和楽器の楽曲として成立させるのでしょう。
沖政氏:
「いかに原曲の雰囲気を保ったまま,音を“抜く”か」という引き算のバランス,そして演奏者の高い技術による勝負になります。
ただ,この「限られた音数や音域,音色のなかで工夫する」という作業は,実はファミコン時代の作曲家の方々が,限られた同時発音数のなかで名曲を生み出していった苦労と一致するのでは? と,シンパシーを感じているんです。
4Gamer:
確かに。制約のなかで最大のリズムとメロディを生み出すという構造が,かつてのゲーム音楽の作曲と和楽器への編曲で共通する部分があるんですね。
沖政氏:
そうなんです。もう一つ,和楽器の大きな利点として,お琴や三味線などの撥弦楽器(弦をはじく楽器)には「音の立ち上がりが非常に早い」という特徴があります。ヴァイオリンなどの擦弦楽器(弦をこする楽器)に比べてアタック感が強いため,ファミコンやスーパーファミコンのキレのあるピコピコ音の再現性が非常に高いんです。
よく和楽器というと,お正月のBGMのような優雅でゆったりとしたイメージを持たれがちですが,実はドラムなどの打楽器がなくても,楽器自体が強いビート(グルーヴ感)を生み出せる,非常にエネルギッシュでテンションの高い楽器なんですよ。
4Gamer:
確かに,以前,ファミ箏の演奏会にうかがったとき,激しいビート感に驚かされた記憶があります。
ちなみに,和楽器アレンジとの相性がとくに良かったタイトルは何でしょうか。
沖政氏:
圧倒的に「天穂のサクナヒメ」ですね。作曲の大嶋啓之さんが和楽器の特性や制約をものすごく研究して作られているため,フレーズをそのまま和楽器に落とし込むだけで,パズルのピースがピタッとハマるような素晴らしい仕上がりになりました。
アレンジしながら,原曲の完成度の高さに衝撃を受けましたね。
「The 8-Bit Big Band」誕生の裏に,ファミ箏の存在が?
4Gamer:
ファミ箏は過去に2枚のアルバム(CD)をリリースされていますが,このCDにまつわる面白いエピソードがあるそうですね。
沖政氏:
はい。アメリカに,ゲーム音楽をジャズオーケストラ編成で演奏し,グラミー賞を3回も受賞している「The 8-Bit Big Band(ジ・エイトビット・ビッグバンド)」という,世界的に大人気のビッグバンドがあります。
実は,彼らがそのバンドを立ち上げるきっかけになったのが,僕達が2016年12月にリリースした2ndアルバムだったんです。
4Gamer:
それは一体,どのような経緯が……?
沖政氏:
数年前,バンドのリーダーであるチャーリー・ローゼン(Charlie Rosen)さんが来日したとき,衝動的に三味線を購入したものの,扱い方が分からず困っていたそうです。
そこで共通の友人であったミュージシャンのザック・ジンガー(Zac Zinger)さんから,「チャーリーに三味線を教えてあげてくれないか」と連絡があり,僕の稽古場に招くことになりました。
稽古場には,大好きな「がんばれゴエモン」のサントラボックスを飾っていたのですが,それを見たチャーリーが「おお! ゴエモン!」とテンション爆上がりになりまして(笑)。
大のゲーム音楽好きだと分かったので,お土産に「がんばれゴエモン」の和楽器アレンジが収録されているファミ箏の2ndアルバムをプレゼントしたんです。
4Gamer:
「がんばれゴエモン」がつないだ縁だったんですね。
沖政氏:
そうなんです。彼がアメリカに帰国した直後,「このCDはめちゃくちゃエキサイティングだ!」と大興奮のメッセージが届いたんです。そしてその約半年後,彼がThe 8-Bit Big Bandを結成したんです。
後にアメリカのメディアのインタビューで,チャーリー自身が「ファミ箏のCDを聴いて,『自分のスタイル(ニューヨーク・ジャズ)で,ゲーム音楽への愛を叫べばいいんだ』とインスピレーションを受けて,バンドを立ち上げる決意をした」と語っていました。
僕達がこだわり抜いて作った和楽器のCDが,海の向こうでとんでもないバタフライエフェクトをもたらしていたことを知り,音楽の力は世界共通なのだと深く感動しました。
昨年,チャーリーが来日したときには一緒に飲みに行きました。大切な友人です。
第5回演奏会のプログラムで異彩を放つ「妖星乱舞」
4Gamer:
さて,8月7日の「第5回演奏会」ですが,今回も非常にバラエティ豊かなプログラムですね。
沖政氏:
今回は全体として非常に「和」の統一感を持たせられた選曲になっています。先ほどお話しした「天穂のサクナヒメ」のほか,ノイジークロークの伊藤圭介さんとのご縁で実現した「不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録」,そして僕自身が公式コンサートのバンドメンバーとしてレコーディングにも参加させていただいた「アナザーエデン」から,和の国をテーマにした舞台の楽曲などを演奏します。もちろん,思い入れの深い「がんばれゴエモン」も外せません。
「風来のシレン6」の楽曲を和楽器グループ「ファミ箏」が演奏。「風来のシレン30周年記念 不思議のダンジョンストア」のミニライブをレポート
12月6日,「風来のシレン30周年記念 不思議のダンジョンストア」にて,「風来のシレン6」のミニライブが開催された。和楽器グループ「ファミ箏」による生演奏に加え,ゲストの作曲家・いとうけいすけ氏が登壇し制作秘話を語った。マイクを通さない生の和楽器の音色が響き渡った,昼公演の模様をレポートする。
4Gamer:
その「和」のラインナップの中で,一際異彩を放っているのが「ファイナルファンタジーVI」ですね。
沖政氏:
そうですね(笑)。今回は音楽的な大挑戦として,アレンジャーの田辺 明が緻密に計算し,ラスボス曲「妖星乱舞」を和楽器だけで演奏します。
4Gamer:
あのプログレッシブ・ロックの超大曲が,和楽器だけでどんな演奏になるのか,想像もできません。
沖政氏:
普通は想像がつかないですよね(笑)。それぞれの楽器の限界ギリギリを攻めるような,非常に緻密な転調を繰り返す凄まじいアレンジになっています。
和楽器ならではのアタック感とスピード感で,あの「妖星乱舞」がどう生まれ変わるのか,ぜひ会場で体感していただきたいです。
4Gamer:
先ほど話題に出たCDは,当日会場で購入できるのでしょうか。
沖政氏:
1stアルバムは僕の手元にも残り数枚しかなく幻となっていますが,2ndアルバムは,当日会場の物販で販売予定です。
4Gamer:
公演当日が楽しみです。本日は,ありがとうございました。
沖政氏:
こちらこそ,ありがとうございました。8月7日に向けて全力で準備を進め,究極の仕上げでお待ちしておりますので,ぜひ足をお運びください。
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■ファミ箏 第5回演奏会
2026年8月7日(金)
開場:18時30分
開演:19時00分
(終演予定:20時30分)
■会場
かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
最寄り駅:京成線「青砥」駅下車 徒歩5分
■チケット
一般:5,500円
学割:2,000円
※税込
※未就学児入場不可
※当日体調不良の場合は、ご参加をお控えください。
[チケット一般販売]
2026年5月1日(金)より販売開始
受付ページはこちら(teket)
■出演者
ファミ箏
・箏
沖政一志
芦垣雪衣
神谷舞
小池摩美
中嶋ひかる
平野寿里
・三味線
浅野藍
田辺明
・尺八
大賀悠司
神永大輔
吉岡龍之介
■演奏タイトル
・「天穂のサクナヒメ」より
・「不思議のダンジョン 風来のシレン6」より
・「アナザーエデン 時空を超える猫」より
・「ファイナルファンタジーVI」より「妖星乱舞」
・「がんばれゴエモン」シリーズより
■主催
株式会社ブエン・カミーノ
■お問い合わせ
info@famikoto.net




















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