下村陽子氏によるゲーム音楽をメインとした演奏＆トークイベント「RMAJ Presents トークぷらすライヴ Vol.11 〜下村陽子のゲーム音楽を中心に〜」の模様をレポート

　NPO法人RMAJ（レコーディング・ミュージシャンズ・アソシエイション・オブ・ジャパン）は2018年11月16日，作曲家の下村陽子氏をゲストに迎えた「RMAJ Presents トークぷらすライヴ Vol.11 〜下村陽子のゲーム音楽を中心に〜」を，府中の森芸術劇場ウィーンホールにて開催した。
　作曲家，編曲家，演奏家を招いてのトークと音楽を楽しむ「トークぷらすライヴ」の第11回公演となる今回は，公演名にもあるとおり下村陽子氏のゲーム音楽をメインプログラムとした，少人数の室内楽編成の演奏が行われた。このコンサートの模様をレポートする。

「RMAJ Presents トークぷらすライヴ Vol.11
〜下村陽子のゲーム音楽を中心に」プログラム

Balrog's Theme　ストリートファイターII　編曲：穴沢弘慶
Guile's Theme　ストリートファイターII　編曲：森下 唯
殺陣！　ライブ・ア・ライブ　編曲：亀岡夏海
滅びし煌きの都市　聖剣伝説 LEGEND OF MANA　編曲：亀岡夏海
廻る運命の輪　聖剣伝説 HEROS of MANA　編曲：亀岡夏海
Papaver Somnferum　テラバトル　編曲：成田 勤
Somnus　FINAL FANTASY XV　編曲：亀岡夏海
Careening into Danger　FINAL FANTASY XV　編曲：亀岡夏海
ココネのテーマ　映画「ひるね姫〜知らないワタシの物語〜」　編曲：森下 唯
EGGLIA〜赤い帽子の伝説〜メドレー　編曲：穴沢弘慶
　Legend of Redcap〜Green Days〜Onry Your Tears
ハイスコアガールBGM　TVアニメ「ハイスコアガール」　編曲：森下 唯

アンコール
Ryu's Theme　ストリートファイターII

演奏：RMAJ ULTRA WONDERFUL ENSEMBLE

　演奏は「ストリートファイターII」の「Balrog's Theme」からスタートした。同作の四天王の1人，バルログのステージのテーマ曲で，オールドファンには懐かしい曲だが，近年の同作の復刻やリメイクにより，耳にしたことがある人も多いはず。テンポの早いスパニッシュな演奏が展開された。続く「Guile's Theme」も同作のガイルのテーマ曲。こちらではピアノを主旋律とした，原曲とは雰囲気の異なるアレンジの演奏を聴かせた。

　ここで壇上には下村氏とRMAJ理事長の篠崎正嗣氏が登場。ヴァイオリニストの篠崎氏はかつて「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」の楽曲で下村氏と共演していて，今回の公演でコンサートマスターを務めるヴァイオリニストの伊藤友馬氏，そしてピアノを演奏した森下 唯氏も同様に下村氏の過去のレコーディングに参加したことがあるという。

　「ストリートファイターII」は下村氏がカプコン入社後の1991年にリリースされ，そのほとんどの楽曲を手がけたということもあって，自身の楽曲の中でも最も知られていると自負しているそうだ。ただ，当時は今回のように楽曲が生演奏されることはまったく考えていなかったと下村氏は語る。また，ステージごとに聞こえる特徴的な効果音（ダルシムステージなら象の声，春麗ステージなら自転車の音）を入れようと提案したのは下村氏だったという。
　ちなみに今回のライブの演奏は，作品のリリース順となっていて，下村氏の作曲家としての歴史を綴るような構成だった。

　3曲目「ライブ・ア・ライブ」の「殺陣！」では，ゲストの和楽器ユニットHIDE×HIDEによる尺八と中棹三味線をメインに据えた演奏となった。2人は過去に行われた同作のライブにも出演していて演奏も慣れたもので，会場が一気に和の雰囲気に染まる。


　続いては「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」の「滅びし煌きの都市」と「聖剣伝説 HEROS of MANA」の「廻る運命の輪」。どちらもピアノの演奏が耳に残る美しいアレンジの2曲で，下村氏も「奏者によって吹き込まれる命は凄い」とそのアレンジを絶賛し，「聴いていて泣きそうになった」と感想を述べている。

　そして第1部最後の曲は「テラバトル」より「Papaver Somnferum」。ピアノから入るイントロから中盤まで少しずつ盛り上がって，最後は明るいフレーズで締めくくられた。


　休憩を挟んでの第2部は，「FINAL FANTASY XV」の楽曲から始まった。ヴァイオリニストの伊藤氏は，「FINAL FANTASY XV」の前身となる「ファイナルファンタジー ヴェルサス XIII」で，篠崎氏率いる「篠崎正嗣ストリングス」のメンバーとしてレコーディングに参加していたことを，後に下村氏と偶然出会った焼肉屋で告白し，以降いくつかの作品で共演しているという。「Somnus」と「Careening into Danger」では，そんな伊藤氏によるヴァイオリン演奏が客席を魅了した。


　ここからのトークには，ピアニストの森下氏も参加。伊藤氏と同じく，下村氏の作品でピアノを弾くことが多いという森下氏は，かなり難しい譜面でも弾きこなしてしまう腕前の持ち主で，今回の演奏でも，何曲かの編曲を担当した亀岡夏海氏が「難度を気持ち爆上げした」という楽曲を見事に演奏している。
　この後演奏された「ココネのテーマ」と「ハイスコアガールBGM」の2曲は森下氏のアレンジで，ピアノの旋律が冴え渡る演奏が展開。また「EGGLIA〜赤い帽子の伝説〜メドレー」は，今回の公演で演奏されたゲーム作品の中では最も新しいタイトルであり，作品の物語性を感じさせるメドレーとなっていた。

　アンコールではHIDE×HIDEが再び演奏に参加し，「ストリートファイターII」の「Ryu's Theme」を演奏。RYUのエンディングとのメドレー形式にアレンジされたこの曲は，尺八と三味線による力強い演奏に，伊藤氏のヴァイオリン，森下氏のピアノが追従し，コンサートのラストを飾った。

NPO法人RMAJ公式サイト