プレイレポート
[プレイレポ]「ユニコーンオーバーロード」は,序盤だけのプレイでも分かる“かなり骨太”なSLG。さすがのビジュアルとコアなゲーム性も印象的
「ユニコーンオーバーロード」公式サイト
これぞヴァニラウェアな圧倒的ビジュアルで描かれるファンタジー世界の物語
本作の舞台となるのは,5つの国家からなるフェブリス大陸。聖歴895年,国家の1つであるコルニア王国のヴァルモア将軍が,自らを古代ゼノイラ帝国の末裔であると主張し,王都グランコリンヌを急襲した。コルニアを滅ぼしたヴァルモアは皇帝ガレリウスを名乗り,フェブリス大陸全土へ次々に侵攻し,ついには新生ゼノイラ帝国による大陸統一を宣言。各地で反抗が続くも,強大な帝国には力およばず,人々は圧政にあえいでいた。
主人公のアレインは,女王イレニアによって密かに逃がされた,亡国コルニアの王子だ。コルニアの滅亡から約10年,イレニアより託された伝説の「一角獣の指輪」を手に,解放軍を率いてゼノイラと戦うことを決意する……というのが本作の導入部分である。
ゲームは,キャラクター同士の会話が描かれるストーリーパートを,「フィールド」の探索や「ステージ」(戦場)の攻略などを行いつつ進めていく。ストーリーパートにはさまざまなキャラクターが登場し,そのうち60人以上がゲームを進めていくと仲間になるという。
ステージでは,リアルタイムに味方のユニット(部隊)を指揮し,移動させたり,敵ユニットと交戦させたりすることとなる。そして,交戦時に表示される「制限時間内に敵将撃破」などの条件を満たすとステージクリアだ。
味方ユニットは任意に編成可能で,ゲーム開始当初は1ユニットにつき最大2人だが,ゲームを進めると拡充可能となる。各ユニットは,人間やエルフ,獣人,天使といった「種族」や,ロードやナイト,シーフといった「兵種」の特性,各ステージの敵ユニットとの相性を考慮しながら編成することとなる。
またユニットの編成にあたっては,誰をリーダーにするか,前後2マス×左右6マスで構成されている隊列のどこに各キャラクターを配置するかなども,戦闘に影響するようだ。
戦闘は,事前に各キャラクターに設定した「作戦」をベースにオートで進行する。作戦を設定するといっても難しいことはなく,各キャラクターが習得しているスキルの優先順位と,それぞれの発動条件を選択しておくだけ。なお,スキルには能動的に発動する「アクティブスキル」と,被弾したときなど特定の条件下で発動する「パッシブスキル」がある。
戦闘中は,各キャラクターの行動速度に応じた行動順に沿って,敵味方がアクティブスキルを発動する。アクティブスキルを発動する際はAP(アクティブポイント)を消費し,敵味方すべてのAPがなくなるか,敵味方どちらかが全滅すると戦闘終了となる。
またAPを使い果たして戦闘が終了した場合には,残りHPが少ない側が敗北となる。敗北した部隊は「ウェイト状態」となって一定時間動けなくなり,戦闘を仕掛けられると先制攻撃されてしまう。
ゲームシステムはSLGファン納得の奥深さだが,理解するのに時間がかかるかも?
そうやって各地に陣取っている敵部隊と戦って排除し,町や砦などの施設を解放。味方を増やして育成し,ユニットを拡充して戦力を高め,ゼノイラ打倒を目指すというのが大まかなゲームの流れだ。
今回はストーリー第3章の途中までプレイしたのだが,コアなSLG好きに刺さるさまざまな要素は感じつつ,とにかくステージを攻略するうえで覚えることが多いという印象を受けた。
プレイに慣れてくると,「このリソースがまだ残っているから,アレができるな」といったように,そんなに意識しなくとも味方ユニットを動かせるようになっていたが,それまでは「さっき学んだアレってどうやるんだっけ?」と迷いながらプレイすることもしばしば。上記でユニット編成や戦闘の説明をしているが,実はこれでも基本の部分を簡単に分かりやすくまとめたもの……のつもりだったのだが,それでも想定より長くなった。それくらい,最初から覚えることがたくさんあるのだ。
ヴァニラウェアの独特で美しいビジュアルワークに惹かれて本作に興味を持ったシミュレーションRPG未経験者や初心者には,この情報量と密度に「自分にプレイできるだろうか……」と思うかもしれない。実際,プレイするときはそれなりの覚悟もいるだろうと感じた。
プレイ後に確認したところ,難度設定は,SLG初心者や未経験者から上級者までが楽しめるようなバランス調整になっているとのこと。最低難度の「CASUAL」であれば,すべてのシステムを覚えて活用しなくてもゲームが進められるそうなので,難しそうと思った人やストーリーメインで楽しみたい人は「CASUAL」で始めてみるとよさそうだ。
これは,試遊範囲がゲームの序盤であり,また短いプレイ時間だったため十分に探索できていなかったこともあると思うが,TGS2023のインタビューで言及されていた進行の自由度に関しては,今回プレイした範囲では誘導されているように感じるところも少なくなかった。
このあたりもプレイ後に確認したところ,フィールドを探索して見つけたステージ戦やイベントといったクエストをどの順番で進めるのかはプレイヤーの自由で,メインストーリーは決まった展開はあるものの,そこにいたる過程や道筋は自分好みに楽しめるとのことだった。そのあたりは,製品版リリース後にじっくりとプレイして確かめたいところ。
初めてこういったジャンルのゲームを遊ぶ人には(サポートはあれど)入りにくさも感じるかもしれない本作だが,それだけ硬派な作りなだけに,コアなSLG好きやシミュレーションRPGファンであれば満足できるであろうかなり骨太で本格的な仕上がりだ。シミュレーションRPGをやり込んできたプレイヤーであれば,その経験や知識をもとに「こうやればアレもできる,コレもできる」と喜びながら,ゲームの手応えも感じられるだろう。
このように,往年のシミュレーションRPGが好きな人であれば,ステージ攻略の遊びごたえには期待していいだろう。本作のビジュアルを見てピンと来た人にも,王道とも言えるファンタジー世界を描く圧倒的なビジュアルと物語は,その期待に応えてくれるものだと伝えておきたい。
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