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投資低迷の時代をインディー開発者はいかに生き抜くか。「新たなリスクマトリクス」と実践的生存戦略[gamescom]
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印刷2026/08/26 20:09

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投資低迷の時代をインディー開発者はいかに生き抜くか。「新たなリスクマトリクス」と実践的生存戦略[gamescom]

 gamescom dev 2026にて,オランダを拠点にするVlambeerの共同創業者として「Nuclear Throne」などの大ヒット作を手がけ,現在はインディーゲーム業界のコンサルタントとして世界的に活動するラミ・イスマエル氏が登壇した。
 イスマエル氏によるセッション「新たなリスクマトリクス:投資家がリスクを恐れる時代のインディーゲーム開発」(The New Risk Matrix: Independent Game Development in A Time of Investor Cowardice)を紹介しよう。

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 オランダとエジプトをルーツにするイスマエル氏は,インディーゲームが黎明期だった時代からビジネス担当者として業界で活躍していた。2013年にアーリーアクセス版がリリースされた「Nuclear Throne」が,当時としては80万本(PCのみ)という異例のヒットになったあと,個人開発者でもプレスキットを制作・配布しやすくなるツールを無料で公開したことで知られる人物だ。
 その後も中東やアフリカ地域でゲーム開発を広めるgamedev.worldの運営に携わっている。インディーゲーム業界の大御所の一人として,2018年の Game Developers Choice Awards(GDCA)でアンバサダー賞を受賞したのに加え,Forbes誌で「注目すべき30代以下の30人」にも選ばれている。

 コロナ禍の巣ごもり需要が明けてからは,ゲーム業界全体の投資縮小が顕著となっているが,イスマエル氏は「パブリッシャは自らの資金力を背景に進んでリスクを引き受けていたが,現代ではかつてないほどリスク回避的になっている」と指摘する。

 資金獲得のハードルが上がったことで,開発者はより安全なゲームを作りがちになり,結果として市場に似たような作品が氾濫してユーザーの関心が離れてしまいかねない悪循環が生まれている。
 さらに,インディーゲームの開発には今や100万ドル単位の予算が必要とされ,パブリッシャの回収条件厳格化により,ヒットしても開発元に利益が還元されにくい構造が形成されているという。


流行への追従を捨て「Ugly Prototype」で素早く検証する


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 このような厳しい状況下でイスマエル氏が強く訴えたのは,ビジネス上の都合や業界の流行から開発タイトルを選ばない姿勢だ。「Vampire Survivors」系やデッキビルド系など,今ヒットしているジャンルの真似を作っても,完成する頃には遅すぎる,と語る。ビジネスケースの計算よりも先に,自分たちが本当に存在する価値があると信じられる独自のアイデアを出発点にすべきだと強調した。

 アイデアの検証段階において同氏が提唱するのが「絶対に最初から本編のゲームを作り始めてはならない」という原則だ。完璧主義のプログラマーやデザイナーが美しいグラフィックスや完成されたコードを作り込もうとするのを制し,数日〜数週間で使い捨てられる「見た目の酷いプロトタイプ(Ugly Prototype)」を素早く構築することの重要性を訴えた。

 美しいアセットやレベルデザインがなくても,ボタンを押したときの手触りやゲームプレイの核だけで面白さが伝わるかを真っ先にテストし,グラフィックスが皆無の段階で第三者に触らせて検証を行う。手応えが得られなければ3週間程度で速やかにその案を切り捨てる決断が必要であり,歴史的な名作の多くもプロトタイプ段階で何度も破棄と再試行を繰り返して核に到達しているのだという。

「契約する前に,もう少しできあがったものが見たい」というのは,パブリッシャ側の常套句の1つだという
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「So What?」と「Google Later」ルールによる自己検証


 アイデアを固めるプロセスにおいて,市場で通用するかどうかを自己検証する実践的ツールとして,イスマエル氏は2つの独自ルールを提示した。

 1つ目は「So What?(だから何?)ルール」だ。「このゲームは面白い」という当たり前の主張に対して「だから何?」と自問自答を重ねていく。パブリッシャは連日大量のピッチを受けており,単に「楽しい」「革新的だ」という説明には耳を貸さない。自問自答の末に「これこそが自分たちの作る理由だ」と納得できる本質的な答えに到達したとき,初めて強力なフックが生まれる。

 2つ目は「Google Later(後で検索)ルール」だ。数年後にプレイヤーがゲームタイトルを忘れてしまった時,友人にどう説明すればGoogle検索でその作品に一発でたどり着けるかを考えるアプローチである。単なるジャンルの羅列や「ゾンビが出るサバイバル」といった表現ではなく,たった一文でゲームの核心的な個性を表現できるかどうかが,真のフックの有無を分ける。

イスマエル氏の経験則からは,パブリッシャから好意的な反応を受けるのは2%程度。それでもパブリッシング契約を結べるとは限らない
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パブリッシャとの交渉と開発者の心構え


 実際にパブリッシャへ売り込むピッチの段階に入った際,イスマエル氏は開発者に対して「アーティストやプログラマーとしてのこだわりを一時的に捨て,ビジネスパートナーとしての視点を持つこと」を求めた。マーケティングなどの管理も行ってくれるインディーパブリッシャの存在は,Steamだけでも年間2万本を超えるゲームがリリースされる昨今では重要だろう。

パブリッシャの存在にかかわらず,どこかの時点で無料のSNSを駆使した一極集中の宣伝をすることが効果的
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 パブリッシャが関心を持つのは,バックエンドの構造やアートのこだわりではなく,「なぜプレイヤーがこのゲームを気にかけるのか,どうやって利益を生み出せるか」の一点のみだとイスマエル氏は話す。また,パブリッシャが存在しない場合の自社パブリッシング計画と,パブリッシャの協力を得た場合のベストバージョンの双方を想定しておき,決して実現不可能な大風呂敷を広げないことが生存への道筋となる。
 パブリッシャが見つからなくても,自己出版できる道筋やノウハウを蓄えておくことで,「3年がんばったのにリリースするめどが立たなくなる」というような状況をなくし,そのためには当初からクラウドファンディングに頼らない計画を立てていくことも重要である。昨今のゲーム業界では,ほんの数年前の常識が通用しなくなっていることも示唆していた。

 gamescom dev 2026で披露されたラミ・イスマエル氏の講演は,投資の冷え込みに直面するインディーゲームデベロッパに向けた,力強いエールであり実践的な指針であった。単に市場の流行を追いかけるのではなく,作品にかける真の熱量を出発点にすること。そして素早い試作と割り切った検証を通じて,ゲームの核となる魅力を見極めていく粘り強さの大切さを説いた。
 過酷さを増す現代のゲーム業界において,作り手の情熱とアイデアを守り抜き,ファンやパブリッシャへと届けるためのセルフプロデュースの能力こそが,これからのクリエイターに求められる生存戦略となるはずだ。

パブリッシャやゲーマーの注目を集めるには,注目に値するだけの「フック(釣り針)」と「独特のグラフィックス」の2点に集中すべきという
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