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同氏は昨年開催された「ゲームメーカーズスクランブル2025」で,カットシーンに関する講演を行っていたが,今回は,よりプレイヤーが目にする機会が多くなりがちなバトル演出,それも「会心の一撃」を題材にしたものだ。
なぜあのムービーが印象に残るのか。カットシーンのクオリティの高さの正体から,演出テクニックの基礎を学ぶ[ゲームメーカーズスクランブル]
2025年8月30日,ゲームづくり系の無料イベント「ゲームメーカーズスクランブル2025」で,3DCGクリエイターLee氏による講演「〜アセットは見せ方が命〜 はじめてのゲームカットシーン演出」が行われた。カットシーンを見たときに感じるクオリティの高さの正体とは何か,それを考えるヒントも得られる。
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会心の一撃といえば,「ドラゴンクエスト」シリーズの「かいしんのいちげき」でおなじみだろう。本講演では,これを題材に,プレイヤーが気持ちよさを感じる仕組みが「期待」「時間」「コントラスト」の3つの視点から分解された。
Lee氏はゲーム開発会社に勤めるアーティストで,モーションやリグ,演出を主な担当領域としている。今回は会社としてではなく,個人としての登壇だ。
近年は立場的に自分の手を動かす仕事が減ってきたため,帰宅後の自主制作やインディーゲームのプロジェクトへの参加で制作欲の渇きを潤している。
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【おしらせ】
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なお,Lee氏が制作に携わっていない作品からの引用も含まれる。Lee氏は,冒頭,開発者や権利者の意図を代弁するものではない点を断っていた。
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演出とは,同じ事実を「どう見せるか」
まずは題材となる会心の一撃の確認からだ。「ドラゴンクエスト」シリーズに登場する強力な攻撃で,シリーズ第1作から続く伝統的なシステムのひとつ。他のタイトルでいうクリティカルに相当し,一定確率で発生する。
会心の一撃がユニークなのは,単純にダメージが2倍,3倍になるのではなく,敵の守備力を無視した計算になる点だ(命中判定や計算式は作品によって異なる)。
自分の攻撃力がそのまま相手に届くため,スライムのような柔らかい敵よりも,はぐれメタルのように普段まったく攻撃が通らない敵に発生したときのほうが,通常攻撃とのギャップが大きくなる。
ギャップが大きいほど成功体験は強くなり,気持ちよさにつながる。演出以前に,ゲーム仕様の段階ですでに快感が設計されているわけだ。
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去年の講演では,同じアセットでも見せ方によって印象がまるで変わるという話をしていて,今回扱う「演出」とは,簡単に言えばその見せ方のことだという。
見せ方によって被写体の印象がどう変わるのか?こちらの講演で話しています?YouTubeでアーカイブ動画公開中です。 https://t.co/Wpes71mriE
— ????? (@leedoppo) September 6, 2026
たとえば「敵が現れる」という仕様があったとして,画面に敵をそのまま出すだけでも仕様は満たせる。
しかし,「フィールドに宝箱があり,近づいたら人食い箱だった」という見せ方もできる。
バトルが発生するという事実は同じでも,プレイヤーが受ける印象は違ってくる。演出とは,プレイヤーの体験を豊かにしていく作業でもある。
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本講演では,そうしたゲームの演出を「期待」「時間」「コントラスト」の3つの視点から見ていく。
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視点1:プレイヤーは常に期待している
プレイヤーはゲームを遊んでいる間,この後に起こることを予測し続けている。何か光っているからアイテムがありそうだ,このタイミングでジャンプすればあの辺に着地できそうだ,ボロボロの木箱は殴れば壊せるかもしれない,いま撃った弾は当たってほしい。
ひとつひとつは小さいが,こうした期待の連続としてプレイは続いていく。
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予測や期待というのは,物語の制作側でも出てくる話題だ。
関連記事ゲームにそもそも物語や設定は必要か。制作サイドから見る物語の役割と,ロジカルな初心者向け制作手法[ゲームメーカーズスクランブル]
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2025年8月30日,「ゲームメーカーズスクランブル2025」にて行われた,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの𥱋瀨洋平氏による講演「エンジニアとアーティストにこそ知ってほしいゲームの物語と設定の作り方」のレポートをお届けする。
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演出において,この期待は強く意識すべきポイントだとLee氏は言う。アニメーション単体で見ても同じことで,見る側の期待に応えていく必要がある。
構えの時点でキャラクターの戦い方や性格が伝わり,予備動作でこれから攻撃することが分かり,次に剣を斜めに斬り上げるという動きが予測でき,最後にその結果に応える。
次に予測できるポーズを適切なタイミングで置いていくことが,アニメーションをスムーズに見せるうえで大事になる。
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ここでLee氏は,自身のバイブルだという「グラップラー刃牙」から,天内 悠というキャラクターのセリフを紹介した。
戦う相手が何を最も欲していないかを事前に察知して先手を打つ,喜ばせることと倒すことは表裏一体である,という趣旨の言葉だ。
天内は,元は大統領のボディーガードとして相手の考えを先回りする仕事をしていた。戦いになれば同じように相手を理解したうえで,今度は相手が最もされたくないところを突く。
相手を理解するという行為の裏表になっているわけだ。
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これはゲームにも通じる思想だとLee氏は指摘する。プレイヤーが何を求めているのかを理解して,適切にストレスと報酬を与えていくことが,ゲームデザインであり演出でもある。
刃牙には,予想は裏切るが期待は裏切らない,というキャッチコピーもある。
ゲームでは,プレイしていてありきたりな展開が続けばマンネリになるため,適度なサプライズで刺激を与える必要がある。
一方で,「これだけ苦労したのだから,何かいいことがあるはずだ」「報われるはずだ」という根本的な願いのほうには,しっかり応える必要があるという。確かに,頑張ったら,その分報われたいものだ。
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その観点で興味深いのが,会心の一撃が必ず当たるのかという問題だ。多くの作品では発生すれば必中となるが,一部のタイトルではまれに回避される。
せっかく会心が出たのに避けられてしまうのは,期待させて落とす形になり,あまり良くない設計かもしれないとLee氏は話す。
最初は外れる仕様だったものが後から必中に変更された事例もあり,「ドラゴンクエスト」第1作もスーパーファミコン版では必中になった。
実際の事情は分からないが,会心は成功を保証したほうがいいという判断があったのかもしれない,というのがLee氏の推測だ。
逆に,敵から受ける痛恨の一撃はほとんどのシリーズで回避できるが,こちらはプレイヤーの有利にしかならないため問題ないとした。
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自身の経験からの事例も紹介された。以前,あるアクションRPGでイベント設計を担当していたとき,ステージ攻略の途中に壁があり,破壊して進むという仕様があった。
Lee氏はいかにも壊せそうなヒビを入れたビジュアルを用意し,3回殴れば壊れる仕様のまま素直に実装し,イベントのディレクターに見せたところ差し戻しになる。
指摘は,進捗が示されていないというものだった。
プレイヤーは簡単に諦めるし,作り手が思うほど信用してくれない。1発殴って何も変化がなければ,これは壊せない壁なのだと判断して先に進むのをやめてしまうかもしれない。
壊せそうな見た目で期待を作るところまでは良かったが,殴ったときの手応えで期待を持続させ,最後まで裏切らないことが重要だったというフィードバックだ。
最終的には,殴るたびに壁の状態やSEが変化し,専用のリアクションが返る形に落ち着いたという。プレイヤーを過信せず,リアクションで期待に応える。ここまでやらないと付いてきてもらえない,というのがLee氏の実感だ。
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視点2:事実と知覚は一致しない
2つめの視点は時間だ。Lee氏は黒田鉄山氏を挙げる。剣術で知られる武術家で,座った状態から刀を抜く居合の演武が,目視できないほどの速さだという。
その黒田氏がインタビュー(YouTube)で語っているのが,「遅速不二」という武術の考え方だ。遅いと速いは表裏一体であり,実際のスピードは遅くとも避けられない,目に見えない動きがある。
つまり,事実と人間が受ける知覚は必ずしもイコールではない。これはゲームの演出にも深く関わってくる話だとLee氏は言う。
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たとえばゲームのテンポをもっと良くしたい,という課題があったとする。まず思いつくのは要素を削るアプローチだが,やりすぎると本当に伝えたかったことが伝わらなくなる。
事実と知覚の差を意識するなら,別のやり方もある。
ひとつは,要素は削らずにアクションをオーバーラップさせる方法だ。今年発売された「ドラゴンクエストVII」のリメイクもバトルのテンポが良く,敵と味方の行動が重なっていく仕組みになっている。
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「ドラゴンクエストVII Reimagined」から見えるドラクエリメイクの進化とRPGのストーリーテリング
「ドラクエ3 HD-2D」から始まり,「ドラクエ1&2」,そして「ドラクエ7 Reimagined」へと,時代に合わせた進化を模索し続けているドラクエのリメイク作。これらが克服しようとした問題点と手法,そして日本のRPGについて,ゲーム開発者の岩崎啓眞氏に語っていただいた。
もうひとつは,逆に要素を増やすアプローチだ。アクションとアクションの間に予兆となる繋ぎの演出を加え,そこでワクワクしてもらうことで,トータルの体感時間はむしろ圧縮できるかもしれない。
プレイヤーにとって重要なのは実際に何秒かかったかではなく,どう体感したかのほうだからだ。
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待ち時間はないに越したことはないが,どうしても待ってもらう必要がある場面もある。ならばその時間を活用しようという試みの有名な例が,初代「バイオハザード」のローディング演出だ。
当時はシームレスではなく,エリア移動のたびに次のマップモデルや敵をロードする時間が発生する。その間,暗闇の中にドアの3Dモデルだけが現れ,ゆっくり近づいて開けて入っていく。
グラフィックスとしては何も出していないにもかかわらず,ドアの向こうに何がいるのかとプレイヤーが勝手に恐怖を作ってくれる演出になっている。
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ここでもLee氏は,またも「バキ」からガイアというキャラクターのセリフを引っ張ってきた。
確実に来る幸福はその待つ時間の中にこそあり,確実に来る恐怖に対しては,人はその待つ時間にこそ恐怖する,といった内容だ。
作中のガイアは相手の視界を奪ったうえで,10秒のカウントダウンをして0で殴るという戦い方を繰り返す。
打撃1発ずつは致命傷ではないが,カウントダウンが終われば必ず殴られるという見えない中での恐怖に,相手は耐えられず降参してしまう。
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同じ待つという時間でも,楽しいことを待つのと嫌なことを待つのとでは感じ方が違う。
ゲームでも同様に,プレイヤーがワクワクするのか,イライラするのか,恐怖するのかは演出の力によって変わってくる。
視点3:普通があるから特別が際立つ
3つめの視点はコントラストだ。導入としてLee氏は,人が面白いと感じる物語の構造は6パターンに分類されるという研究を紹介した。横軸が物語の時間軸,縦軸が読み手の感情の変化を示したグラフで,結局はどこで上がってどこで下がるかという形にまとまっている。
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ゲームプレイの中にも当然,感情の波はある。全体を通したストーリーでの変化もあれば,短いイベントや必殺技の演出ひとつの中にも起伏がある。感情波形や感情曲線と呼ばれ,ゲームデザインに活用されている例も多いという。
この波形が着目しているのは,感情が上がるか下がるかという動きだ。ここから感情が動いて感動するという行為≒差分に生じているのではないか,というのがLee氏の仮説である。
止まっていたものが動く,なかったものが現れる,速度が変化する,強弱がある。静と動,無と有,遅と速,弱と強。その差分が感動の,快感のトリガーになるというわけだ。
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ただし,差分がありさえすればいいわけではない。前回の講演では画面の視線誘導として,際立った境界線に人は注目しやすいという話をしているが,演出でも緩急をつけることでプレイヤーが認識しやすくなる。
ここでもLee氏の事例が紹介された。過去に手がけたキャラクター育成要素が重要なゲームで,レベルアップでパラメータが上がるだけでなく,ゲームを通した成長感をもっと演出できないかとディレクターと話していたという。
そこで出たのが,パラメータの変動をキャラクターのモーションに連動させて加工するアイデアだ。
素早さに応じてアクションに速度スケールをかける,熟練度が上がると同じポーズでも重心が上がって達人らしい振る舞いになる,タイミングを変化させるといった加工を,すべてパラメータとリニア(無段階)に連動させて試した。が,結果ほとんど伝わらなかったそうだ。
テストプレイヤーが気づいてくれるのは,モーションの種類が変わったとか,エフェクトの量が変わったといった明確な変化のときで,微妙な変化は認識されない。
無段階で変化するものは止まっているのと同じで,どこが変化なのか分からない演出になってしまう。
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確実にプレイヤーに認識してもらうには,緩急とコントラストが必要になる。RPGのレベルアップも同じで,経験値と連動してリニアにパラメータを上げることもできるはずだが,あえて一定の経験値でレベルが上がるという段階的な演出にしているからこそ,強くなったという実感が生まれる。
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もっとも,この実験が完全に無駄だったわけでもない。ゲームは長時間遊ぶコンテンツなので,長く遊んでこそ,「いつの間にかキャラクターがこんなに強くなっていた」「後半にレベル1のキャラクターが加入すると全然違う」といった形で実感してもらえる可能性はある。
おそらくディレクターの思惑もその辺りにあったのだろうと振り返り,地道に積めばうまく機能する演出なのかもしれない,とLee氏は述べた。
会心の一撃を分解する
ここまでの3つの視点を踏まえて,改めて会心の一撃を分解していく。ゲーム内で起きている事実は,クリティカルの判定が通り,いつもよりダメージが多く入ったというそれだけだ。
これをどうプレイヤーに変換して伝え,感情を動かすのかが演出の力になる。
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例として挙がったのはファミコン版「ドラゴンクエストIV」だ。まず攻撃行動を示す文字表示があり,同時に攻撃のSEが鳴る。
ここまでは通常攻撃と同じで,会心が発生するとここで分岐し,会心を知らせる文字表示と会心のSEが提示される。
そこから1フレーム遅れてヒット処理が入り,敵のスプライトが点滅してダメージ数値が表示される。攻撃,会心,ヒットという流れだ。カメラシェイクの類はない。
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この時代は味方のグラフィックスも敵のアニメーションもなく,戦闘の内容はすべてテキストで表現されていた。技術的な制約もあっただろうが,あえてこの表現を選んだと言われている。
ロールプレイングゲームは想像で遊ぶゲームであり,アクションはむしろ邪魔になる,遊んでくれる子供たちの想像力に任せるべきだという考えだ。
シリーズが進むと戦闘の演出も変わっていく。VIでは敵が動くようになり,VIIIではプレイヤーの姿がバトル画面に登場するようになった。
比較的新しいXIの会心は,まず攻撃行動があり,通常攻撃と同じモーションで斬りかかるところまでは共通。ヒットの瞬間に会心で分岐し,会心を知らせる文字表示に加えて専用のSEとエフェクト,そしてスローモーションや通常より大きなカメラシェイクといったカメラ演出が入る。
要素は増えているが,流れ自体はファミコン版とそれほど変わっていない。
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近年のゲームの演出はどんどん派手になっており,それに比べるとカットインが入るわけでもない会心の演出は,意外とあっさりしていると思われるかもしれない。
ただ,かいしんのいちげきはどのキャラクターでも発生するし,連続で出ることもあれば,他の特技と一緒に発生することもある。
いちいち長い演出が入っていては疲れてしまう。ゲーム内での立ち位置に応じた,過剰でない演出調整が必要になるわけだ。
その演出がゲーム中でどれくらい見られるのか,ほかにどんな演出があるのかによって,最適な盛り具合は変わってくる。
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作り手はよかれと思って演出を盛ってしまうものだが,何でもかんでも盛るとすごさが鈍化する。すべてがすごいということは,すべてが普通になってしまう。
普通があるからこそ特別が際立つため,ゲーム内での立ち位置を把握したうえで計画的に作りたい,とLee氏は言う。
とはいえ,計画的に考えていても仕様は急に増える。ゲームを良くするためなのだから,そこは責められない。
ややこしいのは,技の数が増えるだけでなく,演出のカテゴリ自体が増えていくことだ。クリティカルがあり,特技があり,スキル効果があり,強化状態があり,装備依存の専用演出も欲しい,となっていく。
そこでせめて拡張性を意識し,同時に発生しても問題ない設計にしておくとよいという。
一例として示されたのは,クリティカルはヒットストップとエフェクトで見せる,特技は発動カットインを入れる,スキルはUIとSEに任せる,強化状態はポストエフェクトとSEの加工で表現する,装備は武器の軌跡の色を変える,といった棲み分けだ。
すべてが同時に出ても破綻しないように積み上げていく。
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それでも限界はあるため,仕様を増やしたいときはプランナーとグラフィックスや演出の担当者が顔を突き合わせ,慎重に決めていけるのが理想だ。
100%の演出はない。それでも工夫し続ける
講演の締めくくりとして,Lee氏は自らの不安を口にした。頑張って考えた演出がプレイヤーに思いどおり届かないかもしれない。
こうした不安はゲーム制作をしていれば尽きないもので,講演をしておきながら自分もあまり自信がない,と続けていた。
ただ,同じ葛藤を先駆者もすでに通ってきている。そこで紹介されたのが「マンガ ドラゴンクエストへの道」(1990)だ。
初代「ドラゴンクエスト」の開発ストーリーを描いた作品で,Lee氏が小学生のころに読み,ゲームを作りたいと思うきっかけになった1冊だという。
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引用されたのは,発売を2月から5月に延期した初代「ドラゴンクエスト」の開発が終盤に差しかかった場面だ。
堀井雄二氏が,アクションのないメッセージだけの戦いは受け入れてもらえるのか,ダメージを受けたときに本当に痛いと思ってもらえるのか,と不安を漏らす。堀井氏はメッセージだけの戦闘を自信を持って推していた一人だったが,それでも最後の最後で不安を吐露する場面が描かれている。
周囲が励ましても気持ちは晴れない。
そこにエニックスのプロデューサーである千田幸信氏が笑って返す。実はみんな不安なのだと。
そのうえで,これは冒険であり,ファミコン初の本格RPGを,そして世界一のゲームソフトを作るためなのだと続け,冒険に100%の安全などありえないと述べる。国民的RPGを作ってきた人たちも,自信や確証がないまま作っていたということだ。
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全員に刺さる100%演出,会心の一撃はないかもしれない。今日話した内容も,世の中にあるゲームデザインの知見も,万能ではない。
それでも誰かに刺さる一撃を生み出すには,プレイヤーのことを考えて工夫し続けるしかない,とLee氏は語る。
最後に投げかけられたのは,ではゲームを演出するのは誰なのか,という問いだった。プランナーなのか,ディレクターなのか,演出家のような担当者がいるのか。
Lee氏の答えは全員だ。演出は最後に誰かが味付けして終わりというものではなく,ゲームを作る工程のすべてがプレイヤーの体験を作っていく。
だから自分が担当している部分がどれだけ小さな要素でも,これはプレイヤーにどう感じてほしいのかを考え,工夫して演出するつもりで仕事をしてほしい。せっかくみんなで作っているゲームなのだから,力を合わせて面白いゲームを作り,ゲーム業界をもっと盛り上げていけたら楽しいのではないか,と講演は結ばれた。
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質疑応答を紹介
講演後には質疑応答の時間が設けられ,開発現場での運用に関する質問が相次いだ。一部を紹介しよう。
まず,時間の視点で,要素を減らしたりアクションをオーバーラップさせたりする話は実例があって分かりやすかったが,逆に余白を増やすほうは体感としてイメージがつかめなかった,というコメントに対してだ。
これについては,必殺技のカットシーンを想像すると分かりやすいという。同じアニメーションでも,待てる演出と長く感じる演出がある。タメの部分は引っ張れば引っ張るほど期待が高まるので,引き延ばしやすい。
そこで余白を入れて,顔をしっかり見せる。逆に単調にずっと同じ定点カメラで映していると,短くても長く感じたりする。
誇張するところはしっかり強調して,あえて時間を使うくらいにするとメリハリが出て,体感時間は実はそこまで変わらない。次に何が起こるか期待できるとワクワクして待ってもらえるが,何が起こるか分からない時間は長い。
行きより帰りの道のほうが長く感じるのと同じで,何か予想できれば人は待ってくれるのかなと,Lee氏は答えた。
次に,リニアな変化は気づかれにくいという話は,開発中に少しずつ演出を良くしていく場面にも当てはまり,作っているものをどう評価していくのかといった部分だ。
Lee氏は,モーションを題材に,フィードバックをもらったときに,少しだけ調整するのではなく,極端なくらい振り切ってみて,そこから探ることをよくやると伝えた。
自分が思っているものを飛び越えて調整する。ずっと見ていると自分では変化が分からなくなってくるので,意図的にそこを超えてみることと,人が見て分かるかどうかを確かめることが大事だと答えた。
最後,みんなで演出を作るという話に対して,企画側の人が質問をした。みんなで作るといっても細かいところが伝わりきらないことがあり,意図を共有するために何かしていることはあるか,資料を作り込むなどが対策になるかといったことだ。
まず資料については,だいたいの人が読まないという。そのためLee氏のチームでは,新しい資料を作るときに必ず説明会を開き,資料を決めた人が意図を説明する場を用意しているそうだ。
演出についても,文字だけの仕様書ではみんなが思っていることがバラバラになりがちなので,動いているものを見せたほうが早い。まず自分で仮の映像を作り,認識を共有したうえでそれぞれ手配していく。そういう意味では,演出を監修する人が1人いるとスムーズかもしれない,とLee氏は答えた。


















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