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[TGS 2019]設立から約1年半が経過したJeSUが成し遂げてきた成果と,これからの課題。TGSでの記者発表会レポート
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印刷2019/09/12 20:07

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[TGS 2019]設立から約1年半が経過したJeSUが成し遂げてきた成果と,これからの課題。TGSでの記者発表会レポート

 東京ゲームショウ2019のビジネスデイ1日目(2019年9月12日),e-Sports X RED STAGEで「JeSU活動報告記者発表 AESF戦略発表会」と題した講演が行われた。この講演では,JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)が発足からおよそ1年半の間に行ってきた活動の成果と,これまでJeSUが各種大会を共催してきたAESF(Asian Electronic Sports Federation,アジア電子スポーツ連盟)の今後の戦略についての発表がなされている。
 本稿ではJeSU活動報告記者発表を中心に,詳しくお伝えしたい。

JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)公式サイト



さまざまな局面で活性化するeスポーツに対するサポート


JeSU会長 岡村秀樹氏
画像集 No.003のサムネイル画像 / [TGS 2019]設立から約1年半が経過したJeSUが成し遂げてきた成果と,これからの課題。TGSでの記者発表会レポート
 まず登壇したのはJeSU会長の岡村秀樹氏だ。
 岡村氏は最初の報告として,JeSUが経済産業省から「令和元年度新コンテンツ創造環境整備事業(eスポーツに係る市場規模等調査分析事業)」を受託したと発表。岡村氏によれば「eスポーツの統括団体としてJeSUがとりまとめて事務局をしてほしい」と提案された事業であるとともに,「これこそJeSUが取り組んでいく事業と考えている」という。

 この事業は2つの項目に分かれるが,簡単に言えばeスポーツの持つ経済効果と社会的意義について,国内外における事例の経緯・現状・展望を調査分析する,ということになる。
 JeSUとしても,eスポーツに関連したさまざまな産業への経済効果や社会的意義について議論を進めていくことは,重要な意義があると考えていると岡村氏は話す。現状,日本のeスポーツは地方での盛り上がりも見せつつある(JeSUにも地方支部の認定を求める応募が29県から寄せられている)ことから,地方の経済振興にも寄与すると見込まれている。また社会的意義については,これまで「統一的な検討や議論がなされてこなかった」ことから,重要視しているということだ。

 この検討にあたっては,オープンな検討会を開催していくという。第1回は9月24日に開催(詳細は後ほどJeSUの公式サイトで発表)され,参加者として,ときど選手やSCARZ代表の友利洋一氏といったプロ選手・プロチームはもちろん,C4LAN総合プロデューサーの田原尚展氏といったコミュニティ側からの参加も発表されている。
 さらに地方自治体や保険・金融,法律実務家,さらには国立病院機構八雲病院(筋ジストロフィー症や重い障害を持つ人の専門医療を行う病院で,eスポーツにも取り組んでいる)の田中栄一氏といったメンバーも名を連ねており,広範な議論が期待できる。
 前述のとおり,この検討会は公開されるため,興味のある人は自由に傍聴できるという(ただし場所に限りがあるため,満員御礼はあり得るとのこと)。

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 JeSUの公認タイトルについては,新たにコーエーテクモゲームスの「DEAD OR ALIVE 6」が加わったというのがトピックとなる。
 だが同様に大きなニュースとしては,これまでオフライン限定だったJeSUの公認大会が,オンラインにも拡張されるという発表があった。これによって,大都市圏のeスポーツ選手にチャンスが限定されがちだった現状から,より広い地域の選手がプロライセンスや賞金を獲得できる可能性が高まると岡村氏は語る。

 もっとも,現状でもJeSUがサポートする大会が少ないというわけではなく,JeSUが後援してきたイベント・大会はこれまで35件ある。「1か月あたり,およそ3回のペース」(岡村氏)という計算になる。
 またサポートするタイトルも多様性が増大しており,TGSではARゲーム「HADO」の体験会&発表会をJeSUブースで行う。岡村氏は「テクノロジーの進化はコンテンツの進化をもたらす」と指摘するとともに,「eスポーツ熱が全国に広がる中,より幅広いタイトルやプラットフォームでの普及を目指す」と語った。

 もちろん,このようにして急速にeスポーツが広まっていくという状況は,言い換えれば「これまでまったくこの分野の経験がなかった人々が実務に携わっていく」ことが増えるということでもある。
 これに対してJeSUでは「放送委員会」を発足。初めてeスポーツ大会を配信する個人や団体を対象に,配信ノウハウ(著作権問題,対象年齢,配信プラットフォーム,配信機材など)を共有する「配信サポートマニュアル」を作成しているという。

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日本におけるeスポーツの法的な課題について


 さて,日本におけるeスポーツの展開において,大きな問題となるのが「賞金」や「会場(興行)」にまつわる法的な課題だ。
 これについて岡村氏はまず,景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)と刑法賭博罪に関してJeSUが行ってきた取り組みを発表した。

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 そもそもJeSUがプロライセンス制度を定めたのは,「仕事の報酬としての支払いであれば高額賞金が設定できる」という解決策にあたって,「仕事であることを保証するシステムの一部としてプロライセンスを発行する」という経緯があったという。だが,現状すでに,プロライセンスが発行されていないゲームにおいても,「仕事の報酬として高額賞金が支払われる」という事例は起きている。

 これについてJeSUは消費者庁にノーアクションレター(法令適用事前確認手続)を提出。「プロライセンス選手のみが参加する大会で,賞金を提供」と「プロライセンス選手に限定せず,一定の方法により参加者が限定されている大会において,賞金を提供」の2パターンについて,景品表示法に抵触しないのかという点を確認した。

 そして消費者庁からの回答は「前者・後者とも景品表示法に違反しない」であり,要は「ちゃんとしたレギュレーションで適切に大会が運営されていれば,プロライセンスに基づかない大会でも高額賞金を提供して問題ない」という判断が下されたことになる。
 これについて岡村氏は「非常に大きな前進であり,ここまできたかという感慨がある」と述べるとともに,プロライセンスを「賞金の条件」以上の価値を持つものとして今後も発展させていくという方針を示した。

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 2つめの法的課題である刑法賭博罪の問題は,「大会参加者から一定の参加料を徴収したうえで,その総額の一部を参加者に賞金として提供した場合,賭博行為に該当する可能性がある」というものだ。
 これについては,従来の「賞金や商品が第三者から提供されるならば問題なし」という判断に加え,「参加料が大会運営費にのみ充当され,賞金・賞品に充当されていないならば問題なし」という解釈が提示されている。
 ただし後者を正しく行うためには,大会運営の透明性や説明責任が問われることになる。このためJeSUとしても「何がリスクで,何が大丈夫かを,JeSUなりにアドバイスできる仕組みを作っていく」とのことだ。

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 加えてもう1つの課題として,風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の問題がある。これは「会場にゲーム機をたくさん並べ,入場料を取る」という形式は,ゲームセンターに相当する(=風営法の適用範囲に入る)可能性があるという問題だ。このことはeスポーツの練習場や大会会場が広がっていくにあたり,大きな問題となり得る。
 これについてもJeSUでは警察庁や各種事業者と協議を続けており,「安心安全な取り組みの形を整理していく」と岡村氏は語った。


海外への取り組み


 岡村氏の講演の最後は,海外への取り組みについてのものだ。
 まず大きな進展としては,IOC(国際オリンピック委員会)の指名に基づき,JeSUがELG(Esports Liaison Group,eスポーツ検討会)に参加したというものがある。
 ELGはeスポーツがオリンピック公式競技となるための課題を共有し協議する団体で,伝統スポーツも含めてeスポーツ関係のステークスホルダー40団体が参加している。これを通じ,JeSUはeスポーツがオリンピックにどう関わっていくかを提言していくとのことだ。

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 また国際大会への選手派遣としては,AESFが主催する「eアジアカップ」「e-Masters トーナメント」「カレッジチャンピオンシップ」,またIeSF(International e-Sports Federation,国際eスポーツ連盟)が主催する「Esports World Championships」の4大会に選手が派遣される(もちろんアジア大会でのエキシビションへの参加などは別途行われる)。
 ちなみに「e-Masters トーナメント」は,2020年3月に中国・深センで開催される。公式競技は「eFootball ウィニングイレブン 2020」「Arena of Valor」「Warcraft 3: The Frozen Throne」で,近々もう1つが発表されるとのこと。またデモ競技として,VRドローンレースやAIロボットを使ったゲームも発表されている。

 大会以外にも,前述のELGや,日中韓文化コンテンツ産業フォーラムといった国際会議への出席も行われていると岡村氏は語った。

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 本講演はJeSUがどんな成果を上げてきたのか,まとまった形で確認することができるものとして,価値ある講演だったように思う。「eスポーツにはもちろん問題もあるが,解決された問題もあるし,解決に向けて前進している問題もある」ということと合わせて,今後にも期待したいところだ。

 最後に,岡村氏の講演に合わせて行われたAESF戦略発表会での,登壇者3者の講演内容をまとめて,本稿を締めたい。

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AESF会長 Kenneth Fok氏
AESFはアジアオリンピック評議会に認められている唯一のeスポーツ団体であり,Fok氏いわく「遠くから監督するだけの組織ではなく,会員と協会が協力して活気のあるシーンを作っていくことが目標」となる。この指針に基づき,2021年以降もアジアのさまざまな都市で大会を開催し,「アジアのすべての人がアクセスできる大会にしていきたい」「アジアにおけるeスポーツの未来は明るい。やがてはeスポーツに誰もが参加できるようにしていきたい」とその意気込みを語った。


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Sun Media Group President Xing Jing氏
「日本はゲーム・コミック・アニメといった領域において,世界の複数世代に影響を与えてきた。また多くの有名デベロッパが若い人に寄り添うゲームを作っている。加えてAI技術に関しても革新的な前進が見られる」と日本の現状を評価。これと中国のeスポーツシーンが持つ「巨大な聴衆,分厚い選手層,さまざまな技術やシステム」が組み合わされば,アジア全体における大きなチャンスとなるだろうと語った。


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コナミデジタルエンタテインメント 執行役員 事業推進本部 本部長 石原靖士氏
「アジア大会はアジアオリンピック協議会が行っており,インドネシアで開催されたアジア大会で参考競技としてeスポーツが採用された際にはAESFが主催している。つまりAESFは世界的に見ても例のない,『スポーツ』として厳格なルールを持ったeスポーツを作り上げた組織」と指摘。またコナミが推進する「eFootball」が,eスポーツをスポーツとして高めていくための一助となることを期待すると述べた。


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