インタビュー
[E3 2013]「新生FFXIV」のPS4版は,2014年の早い時期に登場。PS4版の概要といよいよ開始されるβテストフェーズ3について,吉田直樹氏に聞いてみた
PlayStation 3版はミリ秒単位で最適化をかけ,ほかの追随を許さないクオリティを実現
4Gamer:
それではPS3版についても,改めて教えてください。今回のハンズオンでプレイしたものは,前回見せてもらった画面から,なんとなく印象が変わった気がします。
開発チームが頑張ってくれて,パッと見であれば,すぐにPC版かPS3版か気がつかないレベルにまで仕上がったと思います。これは,SCEさんにもご協力いただいて,ミリ秒単位で最適化をかけているんですよ。また,ディファードライティングを使っていたり,例えば旗の揺らめく影もリアルタイムで揺れていたりしますし。おそらく,ファンタジーを題材に,かつ多人数同時プレイ可能で,ここまでのレベルで作り込んでいるPS3のゲームタイトルは,あまりないでしょうね。
4Gamer:
さすがに画像だったり,ディスプレイを横に並べてPC版と比較すると,違いは分かりそうですが,それでもPS3上でこのクオリティというのは,凄いと思います。全体的にフレームレートも上がっていますよね?
吉田氏:
上がっています。社内では200人規模でテストをしていますが,フレームが落ちても操作不能に陥るようなこともないです。
4Gamer:
200人規模で操作不能にならないということなら,例えば大規模戦争であっても,MMORPGであれば十分に遊べるレベルですね。
吉田氏:
またユーザーインタフェースについては,描画バッファと別にUI専用のバッファを持つように設計したので,メインの描画部分のフレームが落ちても,インタフェースは常に固定の高フレームレートで,軽快に操作できます。
4Gamer:
確かに,いざという時にUIまで一緒に重くなると,かなりのストレスになりますから,それは嬉しいですね。しかし,ここまで作り込むのは相当な苦労だったと思うのですが……とくにMMORPGは,大量のメモリを使いますからね。
吉田氏:
そうですね。「新生FFXIV」ではゾーンを分けてこそいますが,ハードディスクからのストリーミングを使って,オープンワールドに近いフィールド感を作ることができました。また,いまPS3版は,どこまで自動描画する草の表示距離を伸ばせるかといった細かな部分を粘って,最後の調整をしているところです。
というのも,PS3は7年前のハードですから,メモリサイズや搭載されているハードディスクの回転数は,もう今の標準的PCとは違います。これがPCやPS4であれば,メモリもハードディスクも高速かつ大容量なので問題ないのですが,読み込み速度の面で,どうしても差を付けられてしまうんです。
4Gamer:
メモリについては,ニコニコ超会議2で,最後のメモリを顔の影に割り振るか,ティアリング(※)が出ないようにバッファを持たせるかで迷っているという話でしたが。
※1画面に複数のフレームが表示され,画面が歪んだり,ちらついたりする現象
吉田氏:
結局,両方やりました。あのときのやり取りを生放送で観ていた描画プログラマーが触発されて,ティアリング対応にメモリを使わず,一晩で実現してしまったんです(笑)。
4Gamer:
なんという,ジェ○ンニ……。
吉田氏:
ええ,やってくれました(笑)。それまで僕らは,プレイ中のティアリングは,MMORPGとして長くプレイするうえでは,スクリーンショットを撮ったり,高品質のカットシーンを見るのに比べ,それほど気にならないと考えていたんです。むしろFFだからこそ,スクリーンショットで自分のキャラの顔の影が綺麗じゃなかったらガッカリするだろうと。それでメモリを顔の影に使うと決めたんですが,描画プログラマーが「ティアリングも処理で何とかしますから,β3のパフォーマンスを0.01秒ください」と言って。しかも,「その0.01秒もリリースまでにはどこかで削ってみせます」と言われれば,GOサインを出しますよね。
4Gamer:
それで,どちらかではなく両方実現したというのは,プレイヤーからすると,お見事と言うほかないですね。
吉田氏:
僕が言うのもなんですが,PS3版は本当によくできています。コンフィグも,βテストの段階でここまで細かく設定できるタイトルは,ほかにないでしょう。それでもまだ足りないというフィードバックには,製品までに,そしてリリース後もきっちり対応していこうと思っています。
4Gamer:
まさにこれが,PS3での限界ギリギリというわけですね。続いて,PS3版の操作についてですが,βテストフェーズ2でゲームパッドモードが公開されましたが,やはりまだターゲットという面では大変でした。
吉田氏:
そうですね。まずターゲット速度ですが,これはもともとポインティングデバイスであるマウスが速いです。しかし,手くせでアクションの実行を覚えるという点においては,ゲームパッドが有利だと思っているんです。
フェーズ3では,ゲームパッドモードに「ターゲットサークル」の機能を公開し,その設定項目も相当細かく設定可能です。絶対にエネミーをターゲットしない,逆にプレイヤーをターゲットしない,あるいは自分に対して敵視があるエネミーしかターゲットしないといったように任意に設定可能で,かつその設定したサークルタイプをショートカット的に切り替えることができます。
4Gamer:
いちいちコンフィグで切り替えるのかと思いましたが,即座に切り替え可能なのはいいですね。
吉田氏:
ええ。シチュエーションに応じたターゲットの絞り込みが瞬時にできるんですよ。ですから,突き詰めていくと,任意のターゲットをポイントするのはマウスが有利。でも,ターゲットを絞り込むのはパッドの方が有利です。デバイスの方向性が違うので,比較というよりは好みで選んでいただければと思います。
4Gamer:
実際に,プレイヤーがガッツリと遊ぶまで未知数といったところですね。
吉田氏:
以前も言いましたが,僕はゲームパッドモードのクロスホットバーを使いこなして,PvPランキングやエンドコンテンツ最速クリアの上位に顔を出すプレイヤーやフリーカンパニーが絶対出てくると思っています。
4Gamer:
実はあのプレイヤーはゲームパッド操作だった! みたいなことはありそうですね。ところで,ゲーム中,ほかのプレイヤーのプラットフォームや,ゲームパッドを使っているかどうかは,分かったりしますか?
吉田氏:
いえ,それは分からない仕様になっています。マウス vs. パッドみたいなことを煽りたくはないので。あとPS3版でも,HUDは自由にレイアウト変更ができますよ。
4Gamer:
固定というわけじゃないんですね。
吉田氏:
はい。やっぱりMMORPGって,やり込んでいくと自分のキャラを見なくなるじゃないですか。
4Gamer:
そうですね。各種ゲージとログが中心になります。なるほど,PS3版であっても,至れり尽くせりといった感じです。
吉田氏:
ローンチ前のMMORPGとして,まずあり得ないくらいのオプション項目を用意させていただいたので,ぜひいろいろお試しください。
4Gamer:
あまりに多すぎて最初は迷うかもしれませんが,必ず触るものではないですし,慣れてきたらといった感じですね。カスタマイズできる幅が広いのはプレイヤーとして嬉しいですし。
吉田氏:
ですよね。またサウンドの可聴範囲にも,今回,祖堅(「新生FFXIV」サウンドディレクター 祖堅正慶氏)がこだわっていて,プレイヤーキャラに合わせるのか,カメラに合わせるのかを選ぶことができます。カメラに合わせた設定なら,遠くに引いた画面でも臨場感のあるサウンドが楽しめます。
4Gamer:
これもMMORPGの特徴ですね。慣れてくると,引いた画面でできるだけ多くのキャラクター/情報を表示したほうがプレイしやすくなりますから。
吉田氏:
プレイスタイルは,得られる情報量が多くなるように変化していくでしょうね。それと,PS3版に限ったことではないのですが,バトル中に敵の範囲攻撃の広さやキャストタイムが確認できるようになりました。
4Gamer:
レターLIVEで,範囲攻撃は赤い丸枠が表示されていました。あれを見て,プレイヤーが避けるという感じなんですね。近接職でも避けられるんですか。
はい。モンスターは,特殊な技を使うときにその場で固定アニメーションを取ります。ですから,近接職もそうですし,壁役をやっている剣術士や斧術士,ナイトや戦士も避けられます。サーバーレスポンスにもこだわって調整しましたから,見た後で避けることが可能です。しっかり見ていてくださいね。
4Gamer:
キャストタイムも確認できるということは,うまくそのタイミングでスタンを決めれば妨害できますね。
吉田氏:
できますね。それこそ先ほどの話のように,イフリートの前兆行動を見たらすかさず妨害して,ファインプレイにつなげるわけです。このように,もうすべての情報を見せますので,うまく使って攻略してください。
4Gamer:
逆に言うと,これだけの情報をプレイヤーに公開するということは,開発チームとしてもシビアな調整が可能になります……よね?
吉田氏:
そういうことです(笑)。キャストタイムを見せて,逃げる時間を与える代わりに,当たったら即死みたいな攻撃ができるわけです。ただし,エンドコンテンツでのお話ですが。
4Gamer:
なるほど。あ……,トレイラーにオーディンが出ていましたが,まさか……。
吉田氏:
はい,ご想像のとおりです(笑)。「斬鉄剣」は,範囲内にいると真っ二つにされます。きっとキャストが始まったら,「皆,散れ!」となって,焦ったプレイヤーが「ロックしたターゲットが外れない!」という感じで,パニックが演出できるでしょうね。
4Gamer:
最後に「ぎゃー」とチャットで発言している姿が,容易に想像できますね……。正直,すごく楽しそうです。ところでPS3版ですが,プレイ中にディスクは必要になりますか?
吉田氏:
ディスクはインストールにしか使いませんし,起動時はPS3に挿入している必要もありません。ですが,ディスクは,綺麗なピクチャーレーベル仕様ですから,ぜひ保存しておいてください(笑)。
待望のβテストフェーズ3はレベル20までのシナリオを投入
4Gamer:
それでは6月14日から始まるβテスト フェーズ3について,気になる点を教えてください。レベルキャップはフェーズ2と同じレベル35だったと思いますが,ストーリーとしては,どのくらいまでプレイできるのでしょう?
レベル20までのメインシナリオがすべて入っています。ですから,シナリオを進めるとイフリートとも戦えますよ。
そこで,いよいよ「光の戦士として世界に必要とされる!」という展開で,フェーズ3で体験できるストーリーが終わるという感じですね。それが3都市分ありますし,漁師と巴術士を除いたクラスクエストもそれぞれレベル15まで用意しています。またダンジョンは7つ開放しますので,ぜひたっぷり遊んでください。
4Gamer:
「F.A.T.E.」(Full Active Time Event)は何種類ほどに?
吉田氏:
トータル200種類弱くらいですね。ローンチ時の目標が300種類です。
4Gamer:
フェーズ2で50種類近くということでしたから,かなり増量されてますね。フェーズ3中にすべてを体験するのは,難しいかもしれません。
ほかには,レターLIVEで「アーマリーチェスト」をチラッと見ましたが,パーツごとに25種類所持,そこから多数の「ギアセット」が登録できるという仕様には驚きました。
吉田氏:
あれもプログラマーとUIプランナーが本当に頑張ってくれました。MMORPGの場合,拠点に入ったら戦闘服からおしゃれ着に着替える,あるいはチョコボに乗っているときはヘルムを非表示にするというような,「ロールプレイ」をやりたいというプレイヤーも多数います。僕は長年,それができるシステムを実現したいと考えていて。とくに「新生FFXIV」にはアーマリーシステムがあるんだから,一瞬で着替えられる仕組みは絶対に必要だろうと。
4Gamer:
確かに敵に突撃するときに,わざわざヘルムを被るといった動作は,燃えるものがありますし,やりたくなるんですよね……。とはいえ,PS3版もあるなかで,それを実現したというのがすごい。
吉田氏:
実は,いろいろ試していく中で,最終的に現物のアイテムを装備に組み込むのか,エイリアス(1つの装備品を内部的にコピーし,複数のセットに組み込むというもの)で済ませるのかで悩みました。エイリアス式は確かに便利なのですが,1つの実体を複数からアクセスする方式はとても分かりにくいと思ったのです。
4Gamer:
αテストは,現物を装備するという形でしたね。
吉田氏:
はい。ですが,プレイヤーのみなさんからは,エイリアスの方が良いとフィードバックがありました。しかし,新規の人に分かりやすくエイリアスという形を伝えるために,できれば装備専用のボックスがほしいと考えたんです。
4Gamer:
それが,アーマリーチェストの原型になるわけですね。
そうです。しかし,武器や防具のデータは1つ当たりのデータがとても大きいんです。Rareアイテムの入手チェックなど,内部的に参照される機会がとても多いので,さすがに大量にアイテムが入る装備専用ボックスは諦めて,なんとかギアセットのエイリアス化だけ,UIの見せ方で分かりやすくできないかと皆川(リードUIアーティスト兼リードWebコンテンツアーティスト 皆川裕史氏)とUI担当者と一緒に頭を捻っていたのですが……。
そうしたら,あるときプログラマーが「メモリを空けたので全部突っ込んでいいですよ」と(笑)。
4Gamer:
なんだか,プログラマーが「やってくれました」という話が多いですね。
吉田氏:
「新生FFXIV」の開発チームは,課題が見つかると燃えるスタッフが多いんですよね。公式フォーラムやβフォーラムも熱心に読んでいて,何か見つけると,翌朝に実現していたりします(笑)。本当に,皆さんからいただくフィードバックが原動力になっている部分が大きいと思いますよ。
4Gamer:
なるほど,いくつかはβ版フォーラムで見た案だとは思っていましたが。
吉田氏:
皆さんのフィードバックの何にお応えしたのかは,フェーズ3の実施前に全部公開します。今回,お応えしなかった/できなかった部分についても,なぜできないのか,フェーズ4で実現するのか,ローンチ時なのか,それともサービスイン以降にパッチで対応するのかを説明していきます。もう見たくないくらいの量の案件が,今まさに僕のところにありますよ(笑)。
4Gamer:
えーと……頑張ってください(笑)。
さて,「新生FFXIV」のβテストも,いよいよフェーズ3に入り,ローンチのタイミングも決まりました。いまの吉田さんの所感を教えてもらえますか。
吉田氏:
「旧FFXIV」の改修を進め,同時に「新生FFXIV」のコーディングを始めてから2年,BGリソースを作り始めてから1年半,全エンジンをゼロから開発して,しかもPC版とPS3版を同時開発してこのクオリティにまで仕上げられたのは,本当に奇跡的だと思います。開発も死に物狂いできましたし,プレイヤーの皆さんにも本当に支えていただきました。しかし、もう二度とやりたくはないです(苦笑)。
4Gamer:
それは,そうですよね。
吉田氏:
ですが,やり遂げたことについては,開発チームを褒めてあげたくて。お客様は期待してくれているからこそ,完璧を求めてフィードバックいただく部分もありますが,一歩引いてゲーム開発者という観点から今の開発チームを見ると,本当にこれ以上なく,よくやってくれたと思います。
4Gamer:
これだけ全社の総力を挙げて取り組むプロジェクトというのも,そうそうないだろうなと思います。
吉田氏:
昔のFF開発は全社的な取り組みだったと聞きます。いくつか並行してプロジェクトが走っていても,坂口さん(坂口博信氏)の鶴の一声で「今日から全員FFの仕上げ!」みたいな感じだったそうです。聞きかじりですが。
4Gamer:
結果として,ゲームのテイストだけでなく,作り方までクラシックなFFシリーズに倣うことになったわけですか。
吉田氏:
ビジネスの観点だけから見れば,もっと計画的にやるべきですし,本当はよくないことなのでしょうけれど。ただ,世界で勝負するなら,そこまで本気にならないと勝ち負けにならないとは思っています。おそらく,欧米AAAタイトルのデベロッパも,そう考えて開発しているんじゃないでしょうか。
4Gamer:
建て直すこともそうですが,あらためて世界と勝負したいからこその総力だったわけですね。では最後に,「新生FFXIV」に期待している人に向けて,メッセージをお願いします。
吉田氏:
αテストから参加していただいているプレイヤーさんをはじめ,「フェーズ3はいつからなんだ」と,多くの皆さんに聞かれましたが,いよいよ6月14日にスタートします。
また今回,E3で発表させていただいた「FINAL FANTASY XIV "CRYSTAL'S CALL" 」トレイラーで「新生FFXIV」に注目したという方も,まだまだβテスター募集をしていますので,PC版でもPS3版でもご参加ください。触ってみて面白いと感じたら,製品版のパッケージ/クライアントの価格も,今回,ギリギリまで勝負しましたので,ぜひローンチ後も遊んでみてほしいです。
製品版をご購入いただければ,30日間無料で遊べますので,その間にストーリーをクリアするくらいの意気込みで遊んでいただけるとうれしいです。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
今回は,そもそも「FINAL FANTASY XIV "CRYSTAL'S CALL"」トレイラーの内容は知らされないまま,その場で観てからのインタビューとなったのだが,最後に映し出された「for PlayStation 4」の文字で,軽くパニックに。いずれ出るのだろう。そう思っていた人は少なくないだろうし,筆者自身もそうだったのだが……。このインタビューの時点では,まだ聞けない情報も多いPS4の周辺事情だが,続報に期待したい。
何はともあれ,6月14日からはグリダニアに加えて,リムサ・ロミンサ,ウルダハの3都市が加わったβテストフェーズ3が開始される。バディやリミットブレイクといったプレイヤーのあいだで話題のコンテンツも登場する注目のテストだ。βテスターは,PC版でのプレイはもちろんだが,PS3の性能を限界まで使ったというPS3版のクオリティも確認してみよう。
「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」公式サイト
FFXIV,公式コミュニティサイト「The Lodestone」
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