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あの「M.U.L.E.」がボードゲームに! 30年越しで生まれ変わった惑星開拓ストラテジーを遊んでみた
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印刷2015/12/28 20:10

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あの「M.U.L.E.」がボードゲームに! 30年越しで生まれ変わった惑星開拓ストラテジーを遊んでみた

画像集 No.007のサムネイル画像 / あの「M.U.L.E.」がボードゲームに! 30年越しで生まれ変わった惑星開拓ストラテジーを遊んでみた
 近年,PCゲームを題材として作られたアナログゲームは,安定して作り続けられている。「シド・マイヤーズ シヴィライゼーション ボードゲーム」もそのひとつだし,SPIELl’15では,FPSの「METRO 2033」をベースにして作られたカードゲームも展示されていた。が,そんななか,明らかに一線を画した「PCゲーム原作のアナログゲーム」があった。それが「M.U.L.E. The Board Game」である。

 タイトルどおり,「M.U.L.E.」をベースにして作られたボードゲームなのだが……と言っても,少なからぬ読者は「M.U.L.E.」ってなんだっけ? という疑問が湧くに違いない。というわけで,そのあたりも踏まえつつ,プレイレポートをお贈りしたい。

「M.U.L.E. The Board Game」製品ページ(英語)



「M.U.L.E.」ってなんだ?


 まず最初に,「M.U.L.E.」とは何か,というところから,簡単に説明しよう。
 「M.U.L.E.」は1983年にAtari 400/800向けタイトルとして,Ozark Softscapeが開発を手がけ,Electronic Artsから発売されたタイトルだ。

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 1983年と言うと,初代ファミリーコンピューターが発売されたのがまさにこの年の7月であり,「それ覚えているわ!」と思った読者は,少なくとも今は30代中盤以降であるはずだ。古株のゲーマーが集う4Gamerとはいえ,なかなかハードルの高い知識と言えるだろう。
 ゲームとしては「ボードゲーム風味が極めて強い,マルチプレイヤーのストラテジーゲーム」といったところで,発売当時は数多くの中毒者を排出した。爆発的に売れたとまではいえないが,マニアに深く長く愛されるゲームだったのは間違いない(なお現代でもフリーゲームとして入手は可能だ)。

 その「M.U.L.E.」が,ボードゲームになって帰ってきた。それが本作「M.U.L.E. The Board Game」である。なんというか,もともとボードゲームライクに作られていたものが,ボードゲームとして再登場したのだから,相性はバッチリというところだろう。

 さて,ではそんなピンポイントにマニアックな「M.U.L.E. The Board Game」が,果たしてどんなゲームになっているのか見ていこう。

本作のデザイナーであるHeikki Harju氏。なおパブリッシャのLautapelitは,フィンランドの会社である
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未開の惑星を開拓せよ!


 本作は,非常に高いレベルで原作を再現したタイトルだ。なにしろゲームマップは,完全に原作準拠。なんというか「ここまでやるか」という感じで,もちろんゲーム内容も原作どおり,経済を扱っている。
 プレイヤーは未開の惑星の開拓者として入植し,汎用ロボットであるMULEを使って土地から資源を得る。そうやって獲得した資源をプレイヤー間で売ったり買ったりすることで,(願わくば)巨万の富を築いていくのである。

 プレイヤーが扱う資源には「金属」「エネルギー」「食料」「クリスタル」の4種類が用意されている。これらはすべてプレイヤー間で売買できるし,またその惑星の市場に対して売り買いもできる。
 市場に流通する資源の価格は,ゲームシステムによって自動的に決まり,当然ながら余りがちな資源は,値段が下がる。一方で市場に足りない資源は値段が高騰するメカニズムなので,プレイヤーはどこまで我慢して,どこで何を売るかの判断に迫られることになる。
 なおクリスタルだけは宇宙相場と連動しており,いくらで売れるかはランダムで決定される。クリスタルを購入することもできない。

 それぞれの資源は,自分の開拓マップ上に置いた資源タイルの上にMULEを配置することで,毎ターンごとに一定量を獲得できるようになる。獲得量は資源タイルに書かれているほか,同種の資源タイルを連続させることによるコンボボーナスもある。
 資源タイルは共有マップの上に伏せて置かれており,これを毎ターンランダムに引いて,自分の開拓マップを拡張していく。なお後述するが,アクションを消費すると,共有マップ上で伏せて置かれている資源タイルをこっそりめくり,内容を確認するといったことも可能だ(そして頻繁にその内容を忘れる)。

プレイヤーの手元に置かれる開拓マップ。緑のチップが「食料」,オレンジのチップが「エネルギー」,青のチップが「金属」だ。ちなみに青のチップは裏返すとMULEのコマとなる
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ゲーム進行と連動した市場価格


 本作で面白いのは,金属・エネルギー・食料の,いわば主要資源はすべて,「商品として売買する」以外の利用法があるということだ。というか,すべての資源は本来売買を目的に生産するのではない。

 例えばエネルギーは,MULEを働かせるために必要だ。エネルギーを払わなければ,MULEを置いても資源は獲得できない。
 また食料は,手番でアクションを行うために必要となる。理論上プレイヤーは1ターンに最大6アクションが可能だが,そのためには必ず食料6が必要になる。逆に言えば,食料が枯渇したら,アクションを行えなくなる(!)。
 エネルギーと食料は,ゲームのアクションに直結する資源だけに,基本的に大きな値動きは起きにくい。また,あらゆる意味でこれらの資源は生活必需品なので,惑星市場の在庫が減り始めても,なかなか補充されない。どれもみな,結構カツカツな生活を強いられるので,余剰を売るような状況は起こりにくいのだ。
 このため惑星市場を介した取り引きよりも「誰かエネルギー売ってくれないかなー」「食料と交換でいいなら?」的な,プレイヤー間での取り引きのほうが多い印象だった。
 ……ちなみにこのようなプレイヤー間での取り引きは,SPIELl’15会場でのデモプレイにおける,筆者が参加したテーブルでの話。参加するプレイヤーによって状況は大きく変化するはずなので,そこはご承知いただきたい。

筆者が参加したテーブルのプレイヤー4名,インストラクター1名のうち,交渉に最も多く用いられた言語は,なぜか日本語(3名)だった。もちろんプレイは英語で進行したのだが,言葉が通じる者同士,日本語やフランス語での密談が挟まれていく
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 金属は少し勝手が違っていて,ストックされる可能性の高い資源となる。というのもこの資源は,MULEを生産するために必要となる資源だからだ。
 プレイヤーは経営を拡大するためにMULEを購入していくので,必然的に市場に存在するMULEの数は減っていく。そしてMULEが枯渇するようになると,金属は一気にバブル期を迎え,しかるに市場に金属が溢れてMULEが大量生産されると,ふたたび金属市場はお通夜になる。実にダイナミックである。


マーケット系ゲーム好きなら


 かように荒れ狂うマーケットを睨みながらプレイは進行するのだが,恐ろしいことに本作には,運が介在する要素が非常に少ない。
 もちろん,まったく運が影響しないわけではない。例えばアクションの一つ「ウンパスを狩る」においては,カードを引いて成果を判定するし,イベントカードによって,毎ターンランダムなイベントが発生する。また共有マップから個人の開拓マップに資源タイルを持ってくる場合,事前にアクションを消費して偵察していない限り,どんなタイルが来るかは運次第だ。

資源タイルには4方向があり,どの辺を上に向けるかで得られる資源を変更できる。アイコンの数は,得られる資源の数とイコールだ
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 だがこういった運の要素は,市場の価格変動には滅多に直接的な影響を与えない。資源の生産量が変わることがあるので,間接的には影響するものの,結局のところ本作で勝敗を分けるのは,プレイヤー間での交渉と,ほかのプレイヤーの動向を読んでの市場操作ということになる。
 そういう意味では,本作はかなりガチなプレイヤー向けのゲームである。デザイナー自身,「競技性を重視したい場合は,ランダム要素を外してプレイすると良いですよ」と語っており,そういった真剣勝負にも向いたゲームであると感じた。一方でデザイナー本人は「僕としては運の要素もほしかったので,ランダムイベントを追加した」とのことである。

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 プレイ時間としては90分〜120分となっているが,フルターンプレイするのであれば,初回は2時間半ほど見ておいたほうがいいかもしれない。ルールはシンプルなのだが,市場のメカニズムやアクション管理など,把握しておくべきことは結構多く,全員が初心者だと,進行はより手間取るだろう。このあたり,PCゲームである原作の要素を引きずりすぎている印象もある。
 なおルールブックには,ゲームの基本を覚えるためのビギナーゲームと,競技性の高いトーナメント,そしてさまざまなオプションルールが提案されている。この辺りも,プレイヤーの練度や要求に応じて使い分けると良いだろう。

 「M.U.L.E. The Board Game」は,「M.U.L.E.」の開発者の遺族(作者であるDani Bunten氏は1998年に亡くなっている)から正式なライセンスを得て,長い開発期間の後に発表された労作といえる。原作となる「M.U.L.E.」のファンはもちろん,市場を扱ったゲームが好きな人であれば,本作は良い選択肢となるだろう。日本語マニュアル付き英語版が,ホビージャパンから2016年1月に発売される予定なので,興味のある人はぜひ手に入れてみてはいかがだろうか。

試遊ブースでは,ゲームデザイナーHeikki Harju氏の即席のサイン会も開かれていた
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