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ゲーム音楽を日本から世界に,そして100年後の後世に伝えたい――坂本英城氏に「東京ゲームタクト2018」へ懸ける想いを聞いた
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印刷2018/04/21 12:00

インタビュー

ゲーム音楽を日本から世界に,そして100年後の後世に伝えたい――坂本英城氏に「東京ゲームタクト2018」へ懸ける想いを聞いた

 “まったく新しい参加型ゲーム音楽フェスティバル”を謳うイベント「東京ゲームタクト2018」が,2018年5月4日と5日に東京の大田区民ホール・アプリコで開催される。

坂本英城氏
画像集 No.009のサムネイル画像 / ゲーム音楽を日本から世界に,そして100年後の後世に伝えたい――坂本英城氏に「東京ゲームタクト2018」へ懸ける想いを聞いた
 これはオーケストラによる演奏のほか,トークショーや作曲家との交流パーティーなどを含む,大規模なゲーム音楽のコンサートイベントだ。主催であるノイジークロークの代表を務める坂本英城氏は,これまでもゲーム音楽の知名度向上のため多くのイベントをプロデュースしてきた。

 今回は,「ゲーム音楽を日本発のカルチャーとして世界に広め,後世に残して行きたい」と語る坂本氏に,ゲームタクトというイベントの詳細や,そこに懸ける想いを聞いた。


 東京ゲームタクト 2018の概要については,これまでの記事(第1報 / 第2報 / 第3報)も参照してほしい。


「東京ゲームタクト2018」公式サイト


4Gamer
 本日はよろしくお願いいたします。まずは簡単に自己紹介をお願いします。

坂本英城氏(以下,坂本)
 ノイジークローク代表の坂本と申します。最近では「ドールズオーダー」iOS/Android)の一部楽曲や「V!勇者のくせになまいきだR」などのゲーム音楽を手掛けています。“作曲家の自分”,”プロデューサーの自分”,”社長業”という3つの軸を持って活動をしています。

4Gamer
 もともと音楽を始められたきっかけはどういったところだったのでしょうか?

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坂本
 4歳からクラシックピアノをやっていたこともあり,幼少期からクラシック音楽が好きで,当時から自分でオーケストラの指揮をしてみたいと思っていたんです。その後,10歳ごろにゲームにハマってから,クラシック音楽とゲームが徐々にクロスオーバーしていった感覚です。

4Gamer
 クラシックを切り口に,早い段階からゲーム音楽にも親しんでいたんですね。

坂本
 はい。私がゲーム音楽の仕事を志したのは中学生の頃でした。ただ,いざ「ゲームの音楽家を目指そう!」と思っても,当時は情報を得る手段が何も無かったんです。誰がどうやって作っているのかも,わかりませんでした。

4Gamer
 確かに,当時は書籍や雑誌媒体でも音楽に触れるような内容は殆どなかったように思います。

坂本
 雑誌もゲームの内容だけに触れるものがほとんどで,インタビューで出てくるのはプロデューサーまで。ゲームで活躍する作曲家の情報というのはほぼなかったような覚えがあります。ただ,今はインターネットがある。ゲームの音楽家を志す子供達が昔の自分と同じように悶々としているのであれば,ゲームの作曲家が「何を想い,どう作ったか」を伝える必要があるのではないかと考えたんです。

4Gamer
 ゲーム音楽に関するコンテンツやイベントがあれば,ゲーム音楽家を目指す方にとっては有意な指針になりますし,その職業を知らない方にとってはひとつの選択肢になりますね。

坂本
 はい。ですからまずは,“どんな人が作っているのか”をお知らせしたい,と思ったんです。最初は「ゲームミュージックコンポーザー座談会」を私の自宅で開催して,その記事がきっかけで「おとや」というニコニコ動画の公式番組も行うようになりました(関連記事)。番組は毎回3万人ほどの視聴者に見ていただけました。

4Gamer
 当時から作曲家の素顔を見せるような試みを多くされていたのですね。そこからゲーム音楽のコンサートイベントを企画していくに至るのは必然とも言える流れかも知れません。

坂本
 そうですね。コンサートは,2014年に琉球フィルハーモニックオーケストラの主催で「沖縄ゲームタクト」を開催し,国内外から非常に大きな反響をいただきました。“ゲームタクト”は,今回の「東京ゲームタクト2018」で3度目の開催になります。

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東京ゲームタクトが持つ3つのメリット


4Gamer
 東京ゲームタクトは“新しい参加型ゲーム音楽フェスティバル”と謳われていますが,どういった部分が既存のゲーム音楽イベントと異なるのでしょうか。

坂本
 ゲームタクトは,ユーザー,作曲家,メーカーにそれぞれのメリットがあると思っています。
 ユーザーにとってのメリットは,良質な音楽を聴くにとどまらず,実際に作ったクリエイターとの交流があるということです。演奏の間にはトークもありますし,アフターパーティーでは直接的な交流もあります。

4Gamer
 作曲家との交流という側面だと,奏者募集という試みも面白いと感じています。自分がオーケストラの一員として参加できるという。

坂本
 これもすごく面白くて! 譜面通りに正確、かつ音楽的な演奏をするプロフェッショナルな演奏と,「ゲームが好き」という強烈な想いが乗ったアマチュアの演奏。どちらが良いかは哲学的な問いにもなりますが……応募されてきた方の中にもプロの奏者がいたりして,レベルの高い演奏になっています。本番に向けて月1,2回のペースで練習を行うのですが,練習の場には原曲の作曲者がいて,一緒に音楽を作り上げています。

4Gamer
 それはすごい! 本家本元と一緒に練習をしているのですね。

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坂本
 はい。モーツァルトに直接「ここはどう演奏すれば良いですか?」と聞くことは出来ませんが,ゲームの作曲家はまだ多くが存命です。「どう演奏するか」を作曲家自身が直接答えてくれるとしたら,それが100%の正解になると思うんです。あと,大人になると“自分が好きな事に本気で取り組んで,全員で本番を迎える”というイベントってなかなかないじゃないですか。本番後は感極まって泣いてしまう,みたいな……そういう試みがしたかったんです。甲子園のような感じの。

4Gamer
 今のお話だけでも,現場では相当なドラマがあるのだろうと感じました。応募者数はかなり多いのでしょうか?

坂本
 ありがたいことに,数多くの応募をいただいてまして,オーディションというわけではないのですが,選考のようなものはしています。応募で集まったのはゲーム音楽好きな方々ですから,作曲家も含めて皆さん仲良しで交流が多いですね。リハーサルも笑いが絶えない環境です。

4Gamer
 作曲家の目線でも,自分の楽曲を熱意を持って演奏してもらうというのは,冥利に尽きるんじゃないでしょうか。

坂本
 ええ。譜面も財産として残りますし。ここでメリットの話に立ち返るのですが,作曲家にとってのメリットとは,「ゲームタクトという場を毎年設けますので,そこを作曲家の表現の場として使えます」ということです。皆さん,ここで演奏されるつもりで,一生懸命に音楽を作ってね,という。

4Gamer
 確かに,ゲームの音楽はサウンドトラックを除いて“実装されたら終わり”というものが多いので,こうした大きな表現の場が用意されることは日々の制作モチベーションに直結する感じがします。個人でイベントをやろうにも,この規模では難しいでしょうし。

坂本
 イベントを開催するということについても,ゲーム音楽の著作権は作曲家でなくメーカーに帰属していることが多く,なかなか実現が難しい場合もあります。我々も1社ずつ,1人ずつ許諾を取っているので,ものすごく手間暇を掛けていて……手前味噌ですが,これは他社では絶対にマネ出来ないとは思いますね。
 ゲーム音楽イベントは,特定のゲームの音楽を聞きに行くのが普通だと思うんです。ただ,ゲームタクトは野外フェスのような感覚とでも言いますか,ステージイベントなどを含めて新しい音楽を発見してもらえるような形にしています。

4Gamer
 なるほど。2日間でかなり多くの楽曲が演奏されますが,それをきっかけとして知らないタイトルの音楽に触れるという流れも見込めるわけですね。

坂本
 メーカーにとってのメリットは,そこにあります。演奏された楽曲に紐付いて,ゲーム自体もプロモーションされるということです。楽曲はゲームに実装された後もサウンドトラックなどで活用されますが,基本的にはそこで終わります。ですが,演奏を聴いたことで「音楽が良かったからゲームも遊んでみよう」となる方がいらっしゃれば,それはメーカーにとってはプラスに働くはずです。

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4Gamer
 選曲については,どのような基準で行っているのでしょうか。

坂本
 基本的には,後世に残したい楽曲か,素晴らしいゲーム音楽か……という基準で,しっかり吟味して選んでいます。ゲーム音楽史的に外せない名曲というのはたくさんありますが,「本当に良い曲を」と思って,真剣に選曲しています。

4Gamer
 それとは別に,近年の楽曲も演奏されるようですね。

坂本
 “新しい音楽を発見してもらう”という意味も込めて,近年のタイトルからも数多く採用しています。2日目に「室内楽で聴く近年話題のゲーム音楽」と銘打った公演を大ホールで行いますが,これはスマートフォンのタイトルも含め、比較的新しいゲーム音楽を中心に構成されています。また,オーケストラだけでなく和楽器やケルト楽器,吹奏楽もありますので,多くの方に楽しんでいただけるラインナップになっているかと思います。


ゲーム音楽好きは全員来てほしい


4Gamer
 現時点で未公開となっているイベントステージの内容について,お話いただけることはありますか?(※インタビュー実施日は4月10日。記事掲載時点ではプログラムの詳細が公開済)

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坂本
 詳細はこれからどんどん発表していくのですが,イベントステージではいろいろな作曲家の方がトークをしたり音楽を作ったりと,バラエティ豊かな内容が用意されます。ちょうどテレビ番組の公開収録みたいな感覚ですね。

4Gamer
 そうなんですね,ここは入場無料と聞いていますが,誰でもふらりと立ち寄れるのでしょうか。

坂本
 はい,まずは本当に様子見でもいいので,ゲーム音楽好きな方に足を運んでみてほしいと思っています。内容が面白ければ,当日券で実際に各公演に耳を傾けていただければと。
 あと,入場料500円のキッズコンサートも開催しているので,お子様連れでもぜひ。ゲーム音楽のファンには小さなお子様がいる家庭が割と多くて,オーケストラにはなかなか連れていけないと思うのですが,キッズコンサートはそういった方でも大丈夫な内容になっています。

4Gamer
 確かにオーケストラコンサートだと,子供同伴は少し抵抗感がありますよね。騒いじゃうんじゃないか……とか。

坂本
 ええ。オーケストラの演奏を聴くのは仰々しい感じがあるというか,少し堅苦しい気持ちがあるじゃないですか? 拍手のタイミングが分からなかったり,あとは服装に悩んだりとか。でも僕がロシアで初めてオーケストラの指揮をやった時は,買い物帰りのおばちゃんがふらりと入って来たり,演奏者が観客に向かってピースしたり……。全然思っていたのと違って,カジュアルなのも良いんだな,ということに気付かされました。ちなみにドイツは結構お堅いので,これはお国柄かも知れません。

4Gamer
 カルチャーショック的な,面白いエピソードですね。国ごとにそこまで様相が異なるとは。

坂本
 そうですね。そういう意味では,今回は「東京ゲームタクト」という名称ですが,これが「LAゲームタクト」などになっても良いと思っているんです。元よりゲーム音楽を世界に発信したい,というコンセプトがあったので,最初から世界を見ています。今回の会場は蒲田駅の近くなのですが,ここは羽田空港からも近いんです。海外の方にも来ていただけると嬉しいですね。

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4Gamer
 最後に,読者へのコメントをお願いします。

坂本
 現地に作曲家がたくさんいて,カラーのはっきりした公演がこれだけあって,子供も聴きに来られて,作曲家が入れ替わり立ち替わりで登場するイベントもあって……ゲーム音楽好きなら絶対に楽しめますし,馴染みがない方にもゲーム音楽を幅広く知ってもらえる場になっていると思います。
 クラシック音楽が歴史に名を刻んだように,我々もゲーム音楽を語り継いでいくべきだと思っていて,ゲームタクトは“100年後でも価値があるイベント”を本気で目指しています。まずは無料のイベントステージだけでも良いので,気軽に足を運んでいただければと思います!

4Gamer
 ありがとうございました。
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