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[NDC18]「序盤の体験がゲームの楽しさに及ぼす影響」とは。Nexon Korea分析チームによる講演をレポート
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印刷2018/04/26 15:51

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[NDC18]「序盤の体験がゲームの楽しさに及ぼす影響」とは。Nexon Korea分析チームによる講演をレポート

(左)ムン・チョイ氏,(右)キム・セジン氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / [NDC18]「序盤の体験がゲームの楽しさに及ぼす影響」とは。Nexon Korea分析チームによる講演をレポート
 韓国・パンギョのNexon Koreaおよび周辺施設で開催されている韓国最大規模のゲーム開発者向けイベント「Nexon Developers Conference 18」で,Nexon Koreaの開発者による「それが知りたい! First Time User Experienceがゲームの楽しさに及ぼす影響について」と題されたセッションが行われた。

 登壇したのはNexon Koreaのインテリジェンスラボ「UX分析チーム」に所属するムン・チョイ氏キム・セジン氏。UXとは「User Experience」の略で,つまり,ユーザーの体験を分析し,ゲームを改善することを目的とするチームだ。

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「Nexon Developers Conference 18」公式サイト


 今回のセッションでばゲームを始めて体験する,あるいは復帰するうえでユーザーが感じることを「ゲームの先入観」「ゲームプレイへの導線」「ゲームの学習曲線」の3つに分け,それぞれ事例を交えて説明が行われた。

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 1つめの「ゲームの先入観」というのは,ゲームを始める前に広告や口コミなどで情報を得た人が,実際にゲームをプレイするとどのように感じるかというものだ。ここでは,日本でもサービス中のオンラインアクションRPG「アラド戦記」を用い,テスターに感想を聞くという形で分析が行われた。

 その結果,最初に良い印象を持っていたプレイヤーは,楽しむために能動的にプレイする傾向にあり,逆に悪い印象を持っていたプレイヤーは,受動的にプレイする傾向が見られたという。
 もう少し詳しく説明すると,良い印象のプレイヤーは楽しむために,「いいところを探しながらプレイ」するが,そうでないプレイヤーは「ゲームの悪い点ばかりが目についてしまう」ため,遊び方が変わり,離脱率も高まる。つまり,ゲームを遊ぶ前の段階で,良い印象を与えておくことが重要となるわけだ。

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 興味深いことに,同じジャンルのゲームをプレイした経験のあるプレイヤーは,新しい作品に好感を持つ傾向にあり,別のジャンルのゲームのプレイヤーは不満を持つ傾向にあるという。このあたりは個人の好みの問題なので,改善するのは難しいが,知っているといないでは,新規プレイヤーに対するアプローチの方法が異なってくるだろう。

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 2つめの「ゲームプレイへの導線」では,「Crazy Arcade」(邦題,「BnB」)の事例が挙げられた。「ゲームプレイへの導線」とはゲームを始めるうえで障壁になる部分はないか,というもの。障壁とは,例えば「会員登録」だったり,「ランチャーのインストール」だったり,「公式サイトの分かりづらいインタフェース」だったりなど,さまざまなものがある。復帰プレイヤーの場合は「忘れたIDを問い合わせる方法」なども障壁になる。

 普段からゲームに触れている筆者でも,「会員登録」や「ランチャーのインストール」を億劫に感じることがある。あまりゲームに慣れていない人なら,面倒くさいことおびただしいと感じるはずだ。
 プレイヤーを対象としたテストの結果,「インストールの不親切さ」「会員登録もしくは復帰手続きの複雑さ」が障壁になったという。

 また,ビジュアルが上記の「ゲームの先入観」に影響することも明らかになった。「Crazy Arcade」は昔からサービスされているタイトルで,2Dのドット絵を用いた,良く言えば懐かしいが,悪く言えば古臭いビジュアルだ。この見た目には,「可愛い」「懐かしい」という肯定的な意見がある一方,「子供っぽい」「古臭い」という否定的な意見も出たという。

 こうした印象やプレイするまでの障壁の影響で,「ゲームの楽しさ」に到達する前に離脱するユーザーが生まれるという。「ゲームを遊ぶ前に,遊ぶことをあきらめる」ということがないよう,遊ぶための導線をできる限り簡略化する必要性が語られた。

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 UX分析をするうえではデータを収集する必要があるが,サービス中のタイトルと正式サービス開始前のタイトルでは,当然ながら収集できる情報の量に差が生じる。クローズドβテストなどである程度のデータは収集できるが,正式サービスのデータとは異なる可能性もあるため,ある程度の推定は避けられないという。

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 3つめの「ゲームの学習曲線」では,韓国で2018年1月28日に正式サービスがスタートした「Durango: Wild Lands」(邦題,「野生の地:Durango」)のβテスト時の話が紹介された。

 UX分析では,序盤のゲームプレイを「プロローグ」「チュートリアル」「ブートキャンプ」「私有地の建設」の4つのステップに分け,6人のプレイヤーにステップごとに5段階の評価をしてもらい,その累計ポイントで分析が行われた。上のスライドを見てもらえれば分かると思うが,ステップが進むほど評価が下がる。右側はレベルごとの離脱プレイヤー数だが,ステップ2の段階で離脱数が急上昇し,ステップ3とステップ4でも山を作っている。

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 これらのステップ間の詳細なデータを見ると,共通する傾向があることが分かったという。上に掲載した画像は,上から「クエスト数」「学ぶ要素の数」「所要時間」で,ステップが進むほど,覚える数が増加し,所要時間が増えていく。1時間という短い時間の中で覚えるべき要素を詰め込みすぎて,プレイヤーに過剰な負担がかかってしまったのだ。

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 また,6人全員が難しいと感じた場所は,ゲームの進行のための説明が不足していたという。テスターのプレイシーンを収めた映像が講演で流れたが,「木を切れ」というミッションを受けたところで,「木を切るための斧がどこにあるのか分からない」「木を切る方法が分からない」と反応していた。

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 このテスト結果を見て,開発チームは強いショックを受けたという。その理由は4月25日に掲載したNDC18レポートに詳しいが,簡単に説明すると,一直線的なガイドの導入を開発スタッフは否定していたからだ。しかし,UX分析に基づいて一直線的なガイドに改めたところ,スコアは改善し,離脱率も低下した。

 これらの結果からキム・セジン氏は,序盤に良いプレイ経験を得るためには,3つの要素を把握しておくことが大切だと語った。1つめは「最初にゲームに接するときにどういった先入観を与えているのか」で,広告など何が原因で先入観が生まれているのかを知ることが必要とのこと。

 2つめは「進入過程が複雑でないか」ということ。現在はIDとPWを入力してログインするというスタイルが主流だが,そのやり方に満足せず,より早く簡単にログインできる方法を考える必要があるという。

 3つめは「学習過程」で,段階別に学習過程が用意されているか,普通の操作すらままならないプレイヤーに高度な要求をしていないか,などをしっかりと確認する必要がある。そのうえで,学習するために十分な時間と説明を用意しているか,必要なときに必要なものを提供できているかを考える必要があると説明した。

 最後にキム・セジン氏は,「UX分析により,ゲームをプレイするすべてのユーザーが笑顔になれるようにしたい」と締めくくり,講演を終えた。
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