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2016年1月20日に正式サービスが開始されるPS4版「World of Tanks」。シカゴで行われたスタジオツアーで,開発者にさまざまな話を聞いた
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印刷2016/01/14 12:00

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2016年1月20日に正式サービスが開始されるPS4版「World of Tanks」。シカゴで行われたスタジオツアーで,開発者にさまざまな話を聞いた

 「World of Tanks」「World of Warships」で日本のプレイヤーにもおなじみのWargaming.netは,2016年1月20日の正式サービス開始が発表されたPlayStation 4版「World of Tanks」関連記事)のプレスツアーをシカゴで開催した。オーストラリアや韓国,香港などのメディアが集まったこのツアーでは,PS4版「World of Tanks」の試遊のほか,ゲームの説明やインタビューなどが実施された。

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PlayStation 4版「World of Tanks」公式サイト


 開発を担当するWargaming Chicago-Baltimoreスタジオは,Xbox版「MechAssault」(2002年)や,PlayStation 3版「F.E.A.R.」(2005年),「F.E.A.R. 3」(2011年)などで知られるDay 1 Studiosが母体だ。2013年にWargamingの傘下に入り,これまで「World of Tanks: Xbox 360 Edition」(2014年)と,Xbox One版「World of Tanks」(2015年)を制作しており,「World of Tanks」の世界をコンシューマ機市場に広げる役割を担ってきた。

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「World of Tanks」史上最大のマップが収録された
PlayStation 4版


 というわけで,ここでは合同で行われた開発者インタビューの模様をお伝えしたい。話を聞いたのは,リードゲームデザイナーのJeff Gregg氏と,シニアゲームデザイナーのChad Steingraber氏で, Gregg氏はコンシューマ機向け「World of Tanks」のすべてのゲームデザインを取りまとめる仕事をしており,主にほかのゲームデザイナーや,グラフィックスやサウンドなどのクリエティブ部門とのやりとりを行っている。またSteingraber氏は主にマップの開発に携わっており,コンシューマ機オリジナルのマップなども手がけているとのことだ。

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リードゲームデザイナーのJeff Gregg氏
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シニアゲームデザイナーのChad Steingraber氏

――本日は,よろしくお願いします。まず,PC版とPlayStation 4版との違いなどがあれば,教えていただきたいのですが。

Jeff Gregg氏(以下,Gregg氏)
 そうですね。最も大きな違いとしては,主にコンシューマ機のプレイヤーはゲームのさまざまな情報が直感的に,すぐに分かるようなものを求めているということが挙げられるでしょう。PCゲームのプレイヤーはディスプレイのすぐ前に座り,ゲーム画面を見つめてプレイしますが,コンシューマ機の場合は,居間の大きなテレビから距離を置いたソファに腰を下ろしてプレイすることが多いと思います。そのため,ユーザーインタフェースやゲーム画面の構成などを細かく調整しています。

――なるほど。ユーザーインタフェースで気を使った部分はどういうところでしょうか。

Gregg氏
 とくに重要なのは,無駄な情報を省くということですね。プレイヤーに与えられる情報量はPC版とコンシューマ機版で同じでなくてはならないのですが,例えばチームメンバーの情報がマップを拡大したときにのみ表示されたり,ウインドウを分けたりなど,情報をできる限りシンプルかつ直感的に得られるようなものにするためのいろいろな工夫を施しました。

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――PlayStation 4版のみのフィーチャーとしては,どういうものがあるのでしょうか。

Gregg氏
 見た目の部分では,Xbox 360/Xbox One版とほとんど同じで,大きな違いはありません。ですが,PlayStation 4版はPlayStation Vitaのリモートプレイにも対応していますし,コントローラのボタンの配置や形状,機能がまったく異なるので,それを使って可能な限りプレイしやすくなるようにデザインされていたりします。

Chad Steingraber氏(以下,Steingraber氏)
 また,Xbox 360/Xbox One版には専用のマップ「Pacific Island」が実装されました。これは,周りがすべて海に囲まれたもので,PC版ではこのようなスタイルのマップはありませんでした。今回のPlayStation 4版でも新たに専用マップを制作しており,これは,今まで登場した「World of Tanks」のマップの中では最大のものになります。

――ちなみに,マップは全部でどれくらい収録されているんですか。

Steingraber氏
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 正式サービス後には30種類になる予定ですが,これは,同じマップに雨が降っていたり,夜だったりするといったバリエーションも含んだ数になります。マップそのものはPC版に用意されたものとほぼ一緒ですが,コンシューマ機に向けた調整を行っています。こうした調整は,日本時間の1月8日〜11日にかけて行なわれたオープンβテスト(関連記事)や,実際にサービスが開始されたあとでも,プレイヤーの声を参考にして続けられていく予定です。
 一つ注目してほしいのは,マップの見かけがPC版と同じだったとしても,PlayStation 4版のために新たに作り直されているところで,例えば雨が降るマップでは,あたりが濡れていたり,道に泥があったり,ぬかるみがあったりします。ですから,PC版でよくプレイしているマップでも,PlayStation 4版でプレイすると,まったく違った印象を受けるかもしれませんね。

――マップだけでなく,サウンドや戦車そのものも新たに作り直しているんですか。

Gregg氏
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 そうです。Blendanというサウンドデザイナーがいるのですが,彼は音に関してものすごいこだわりがあって,実物の戦車のさまざまなところにマイクを仕掛けて,実際の音を収録しています。スナイパーモード(砲手視点)になったときには,戦車を三人称視点で見たときとはまた違う音が聞こえてくるなど,まるで本当の戦車に乗ったかのように感じられるほど,凝ったものになっていますよ。
 雨のマップでスナイパーモードにしたときには,戦闘室内で装甲板に雨粒の当たる音が聞こえてきますが,これは,装甲板と同じ鋼板にスプリンクラーの水を当てて収録したものなんです。

――戦車そのものも,PlayStation 4版で作り直しているんでしょうか。

Steingraber氏
 そうです。しかも,戦車とその周囲の装備品――後部の丸太やドラム缶,フェンダーに置かれたヘルメットなどは個別のオブジェクトとして作られており,戦車を進めてみると,それらが車体と同じではなく,別々に揺れているのが分かると思います。

Gregg氏
 戦車のディテールも,非常に細かく再現されています。PlayStation 4のグラフィックス性能はとてもパワフルなので,それに合わせて,例えば戦車の主砲のライフリングなど,普段見えないようなところまで細かく作り込んでいます。

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――そうなんですか。PC版の戦車もかなりリアルだと思ったのですが,それ以上なんですね。

Gregg氏
 「リアル」という言葉の扱いは,とても難しいですね。PC版のプレイヤーは,主砲口径やエンジンの馬力といった数値上のリアルさも求める人が多いのですが,PlayStation 4版では,そういう細かい数字より,なんというか,もっと直感的なリアルさを求めるプレイヤーが多いので,簡単には比較できません。
 何より大事なのはゲームバランスですから,そのため,PC版に比べて戦車の性能は変更しています。一つの特徴が強調されていたり,コントローラでプレイするのに適した性能になっている戦車などがあるわけです。

――なるほど。そうした変更を行った,何か具体的な例を挙げてもらえますか。

Gregg氏
 例としてはTier 1の車両が挙げられますね。プレイヤーが一番最初に手にする戦車なので,まずそこで楽しんでもらわなければ意味がありません。そのため,PC版と比べて機動力が高かったり,砲塔の旋回速度が速かったりと,より快適に遊べるようになっています。

Steingraber氏
 また,PC版に比べて戦車の開発速度も速いので,がんばれば1日でTier 5ぐらいまでは行けますよ。

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――先ほど,PlayStation 4版専用のマップの話が出ましたが,もう少し詳しく説明してもらえますか。

Steingraber氏
 名前は「Scorpion Pass」になります。ほかと同じようにマップのあちこちにさまざまなオブジェクトを配置したのですが,これまでにないほど大きなマップだったので「オブジェクト制限数」に初めてひっかかってしまいました。これまで,そういう例はなかったので,私としては新鮮でしたね。茂みを芝生にしたりして,対応しました。

――そもそも,「これまでで最大のマップを作ってみよう」と思った動機はなんなんですか。

Steingraber氏
 たくさんのプレイヤーから,「大きなマップが欲しい」という要望があったからです(笑)。基本的に,大きすぎるマップはあまり楽しくないだろうと考えていましたが,やはり一度は巨大マップを試してみたいという気持ちもありましたし,PlayStation 4版の専用マップとしてサイズがセールスポイントになるのではないかという思惑もありました。OBTに収録されていたので,プレイした人も少なくないと思います。Tier 5以上の戦車を使ったときに,登場したはずです。

Gregg氏
 制作に当たっては,プレイヤーが広大なマップを遊んだとき,本当に面白いのかというのが最大の問題でした。とくに重戦車は移動速度がゆっくりなので,ただ移動するだけで終わってしまうことにもなりかねません。そのため,テストプレイを何度も繰り返しました。
 その結果として,移動時間を考慮して,敵陣地を占領する際の時間を通常の2分間から6分間(1台で占領する場合)に延長しましたし,ゲームモードによってもスタート地点が異なるなど,細かい調整を入れています。

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――では,OBTで「Scorpion Pass」の評判がよければ,さらに大きなマップに挑戦することもありますか。

Gregg氏
 もちろん,我々はいつも新鮮なゲーム体験を提供できるように,新しいことに挑戦し続けています。試してみたらあまり面白くなかった,という理由でボツになったアイデアも実はたくさんあるんですよ。

――今後の展開について,現段階で聞かせてもらえることはありますか。

Gregg氏
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 現在,最も力を入れているのがチュートリアルです。「Wolrd of Tanks」を初めてプレイするという人が最初に触れるところですし,いきなりPvPは怖い,という人も少なからずいますので。そういった意味で,チュートリアルは今後もできる限り充実させていきたいし,もし分かりにくい部分があれば,それを直していきたいと考えています。
 次に力を入れているところが,PvPのしやすさですね。小隊を組みやすくしたり,トーナメントを開催したりなど,PvPをより楽しめるようにしていこうと思っています。今回のPlayStation 4版をきっかけに「World of Tanks」を始めた人に,より高みを目指してもらえたら嬉しいですね。ちなみに現在,クランをサポートする仕組みは入っていないのですが,今後,実装していきます。
 ちなみに,最初のOBTのフィードバックで驚かされたのが,多くのプレイヤーがマウスとキーボードでプレイしたいという要望を持っていることでした。現段階で断言はできないのですが,その要望についても十分検討していますので,もしかしたら将来,マウスとキーボードでのプレイが可能になるかもしれません。
 開発側としては,そうしたプレイヤーの意見を大切にしていますので,今後も多くの方々にさまざまな要望をもらえたらと思っています。

――そもそも,マウスとキーボードのゲームをコントローラで操作できるようにするというのが大変な作業だったと思います。

Gregg氏
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 もちろん,それはすごく大変でしたね。キーボードに比べてコントローラはボタンの数が限られていますので,どのボタンにどの機能を割り当てるのかが難しかったですね。すでにXbox 360/Xbox One版で実現していたことではあるんですが,PlayStation 4とはコントローラの形状などが異なるので,基本的に作り直しになりました。また,アナログスティックには強弱があり,最初はゆっくり前進して,それからフルスロットルという移動が可能です。キーボードのW/A/S/Dは単純なスイッチですので,それを対応させるのも大変でしたね。
 PlayStation 4版の専用機能としては,タッチパッドを使ってマップなどをブラウズすることができることが挙げられます。

――コントローラで操作するという点で,気をつかった部分はありますか。

Gregg氏
 プレイヤーに「考えさせない」ということですね。自分の戦車をあの建物の影に移動させて敵を待ち伏せしたい,などというとき,プレイヤーがいちいちコントローラのボタンを眺めて考え込むようでは大失敗です。思った操作を直感的に行えるということを,第一に考えています。

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――では最後に,日本の読者にコメントをいただけますか。

Gregg氏
 今回のPlayStation 4版によって,初めて「World of Tanks」を体験する人が増えることを望んでいます。このゲームはとてもチームワークが大切であり,FPSのように,1人で立ち回って戦うようなタイプではありませんので,仲間と共にさまざまな戦略を試すことができます。ゲームにはいろんな国の戦車が多数出てくるし,ゲームモードも豊富にありますので,ぜひプレイして,自分に一番合った戦車やゲームモードを見つけてください。

Steingraber氏
 PlayStation 4が強い日本市場に,ついにPlayStation 4版がリリースされます。これを機会に「World of Tanks」をプレイして,その面白さをぜひ感じてください。

――本日はどうもありがとうございました。……何か言い残したことはありますか。

Gregg氏
 そうですね,「World of Tanks」はむちゃくちゃ面白いので,ぜひ遊んでください。コンセプトがよく分からないという人は,RPGに例えてもらえればいいと思います。駆逐戦車は必殺の一撃を放つアサシンですし,重戦車は強力な攻撃と高い防御力を持った戦士のような存在です。こうしたそれぞれの戦車の特質を理解して戦えば,より面白くなると思います。

Steingraber氏
 実は新マップの「Scorpion Pass」には,小さな一匹のサソリが走り回っている場所があるんです。広いマップの中に,一か所だけですので,ぜひそれを見つけてください。

――サソリが一匹ですか。撃つとポイントになるとか。

Steingraber氏
 それはないですね。

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迫力のサウンドやグラフィックスはこのようにして作られた


 続いて話を聞いたのは,上記のインタビューにもチラリと登場していた,シニアサウンドディレクターのBrendan M. Blewett氏と,戦車のグラフィックスを担当したシニアアーティストのAndy Dorizas氏。プレイヤーの目と耳に直接触れる部分の開発には,どのような苦労があったのだろうか。

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シニアサウンドディレクターのBrendan M. Blewett氏
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シニアアーティストのAndy Dorizas氏

――本日はよろしくお願いします。OBTも終わって,今はゆっくりしているところですね。

Andy Dorizas氏(以下,Dorizas氏)
 同じことをよく聞かれるんですが,実をいうともう2つ先のアップデートに向けて作業を進めているので,全然休めません(笑)。ただ,私としては仕事を楽しんでいるので,いいことだと思います。

――そうなんですか。ところで,サウンドもグラフィックスも,PlayStation 4版に向けて作り直したという理解でいいんでしょうか。

Brendan M. Blewett氏(以下,Blewett氏)
 音はすべて新しく録られたものです。採録そのものはPCチームと一緒に作業したんですが,そうして得られた音素材を編集したり,ゲームに配置したりするという作業はPlayStation 4版の独自のものになります。

――なぜ,同じではいけないんですか。

Blewett氏
 プレイする環境が異なるからです。PC版のプレイヤーはヘッドフォンを使ったり,すぐ近くに置いてあるスピーカーの音を聞いたりするわけですが,PlayStation 4版はテレビから離れてプレイすることになり,スピーカーもテレビのものだったり,ホームシアターシステムだったりします。
 そのため,サウンドをまったく違う形に編集する必要があるわけです。また,ユーザーインタフェースやゲームプレイもPC版とは多少異なるので,それに合わせた編集が必要になるんですね。

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――実際の戦車を録音しに行ったりしているのでしょうか。

Blewett氏
 シアトルのスタジオと協力して,アメリカ国内で6両の戦車の音を収録したほか,海外のチームに手伝ってもらって,ロシアで20両以上の戦車のサウンドを集めました。録音をどういう形でやるかについては,ある程度固まったものがあり,マイクをどこに置くか,どういうコースを走ってもらうかなど,すでにテンプレート的なものが用意されています。

――戦車の音というのは,それぞれ,そんなに違いますか。

Blewett氏
 まったく違いますね。特徴的なのはもちろんエンジン音で,6気筒のガソリンエンジンと12気筒のディーゼルエンジンでは相当異なります。それだけでなく,装備品などが立てる音が違いますので,それぞれの車両は非常に個性的です。そのため,各車両を収録する必要があるわけです。

――さすがに,大砲の発射音などは作ったものですよね。

Blewett氏
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 いえいえ。実はヨルダンに戦車を個人所有している人がいまして,そこで主砲や機関銃の発射音などを収録させてもらいました(笑)。ただ,問題としては,主砲の発射音などは大きすぎるため,それに耐えるマイクがないんですね。そのため,正確な音を採るのが非常に難しいんです。ですから,手に入った素材にライフルや銃の発砲音や爆発音などを合成して,できるだけ迫力のある音を作ったりしています。というわけで,全部が全部,本物というわけではありません。

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――では,戦車が破壊される音はどうですか。これは想像だと思いますが。

Blewett氏
 それはそうですね。一応,どんな音がするものなのか,廃棄された車両にRPG(対戦車ロケット)や大砲を撃ち込んだりしてみたんですが,思いのほか,こちらが期待していたような音ではありませんでした。そのため,破壊音に関してはゲームとして楽しめるような,迫力あるものを我々が作り出しています。

――戦車から距離があると,主砲の発射から音が聞こえるまで,時間差があると思うのですが,そのへんは再現されているのですか。

Blewett氏
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 いい質問です。大砲のサウンドを収録するときは,近い場所から遠い場所まで,さまざまな距離でマイクを設置して,最終的にそれらを合成して1つにするんですが,そうやって収録した音源を再生すると,音が聞こえるまでの時間差がかなりあることがよく分かります。私はそれが好きで,いいなと思ってゲームで再現したのですが,発射の閃光が見えてから音が聞こえるまでにタイムラグがあると,プレイヤーが混乱してしまい,おかしいと思われてしまうんですね。そのため,個人的には残念ですが,距離と音の遅れという概念はゲームではなくなっています。

――サウンド制作で気にしたのは,どういう部分ですか。

Blewett氏
 基本的に,戦車というのはすごくうるさいんです。走る音も発射音も,とてもうるさい。プレイヤーに「本物の音」を体験してもらうと,それはただの騒音であり,そこで音量を下げられてしまっては苦労も水の泡になってしまうので,常にメリハリを考え,静かなときとうるさいときが波のように来る音作りを行っています。
 なにより大事なのは,聞いていて不快にならない,楽しいものであることですね。

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――続いてグラフィックスについてお聞きしたいのですが,戦車を作り直したというのは

Dorizas氏
 戦車のベースとなるモデルはPC版と同じですが,これをPlayStation 4版に適用にするにあたって,大きく変更しています。テレビは現在,高解像度の4Kに切り替わりつつありますので,それに対応するためベースモデルのポリゴンを増やしてやる必要がありました。また,テレビの画面は一般にPCのディスプレイよりサイズが大きいので,それを考慮する必要もあります。

――ということは,PlayStation 4版のほうがPC版より解像度が高いんですね。それは驚きました。

Dorizas氏
 ハードウェアのグラフィックス性能が大幅に上がったせいで,そうしたことが可能になりました。

――実際にあるものをゲームに再現するのは,想像で宇宙船を作ったりするより大変そうですね。

Dorizas氏
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 本物を作るというのは,いつでも挑戦的なものです。我々の会社にはヒストリカルリサーチの専門家もいて(関連記事),スタッフは「そこにボルトが何本あるのか?」ということまで気にしているので,そんな彼らと協力して,できる限り細かく戦車を再現するようにしています。とはいえ,これはゲームですので,プレイヤーが見て楽しいということが何より重要です。そのために,一部の塗装などをゲームに合わせてちょっと変更する,といったことはやっています。本物より明るく見えたりとかですね。その場合も,現実とのバランスを取ることが大切ですが。

 このゲームの最大の特徴は,300両以上の戦車が登場することです。ユニークなキャラクターが300以上も出てくるようなゲームはほかにはあまりなく,多くはパーツを使い回したりして容量を抑えるものですが,PlayStation 4版「World of Tanks」ではそうしたことをほとんどせず,それぞれ,一両につき約4万4000のポリゴンが使われています。それは車両だけの数字で,履帯や装備品などを含めると,膨大な数になるでしょう。
 これほど大量のポリゴンを使った戦車を自由に動かせるのも,PlayStation 4ならではでしょうね。

――ゲームに登場する戦車,一両を制作するにあたり,何人で,どれくらいの時間がかかるもんなんですか。

Dorizas氏
 基本的に,4人で7週間から8週間というところです。時間がかかるのは,完成したモデルをヒストリカルリサーチの専門家に回して,正確かどうか確認をとるところですね。

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――いろんな意味で大変そうですね。ちなみにゲームエンジンは「BigWorld」ですか。

Dorizas氏
 サーバーは,そうですね。クライアントは,「BigWorld」を大幅にカスタマイズしたものを使っています。サスペンションや履帯などは,こちらがあらかじめ動くようにモデルを作りますが,実際にそれらを動かす物理シミュレーションはサーバー側が管理しています。
 また,すべての車両に独自のファイルが用意されていて,サスペンションの上下動の範囲や履帯の動きなどがそこに収められています。頭がおかしくなりそうでしょ。

――Blewettさんは,ゲームサウンドも担当しているのでしょうか。

Blewett氏
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 現在,PlayStation 4版の「World of Tanks」にバトルミュージックは入っていません。よりゲームに集中してほしいというのがその理由で,あえて当初は外してあるんですが,将来的にBGMを入れる予定はあります。
 ちなみにPlayStation 4版「World of Tanks」のサウンドは5.1chですが,ドルビーデジタルを採用しており,7.1chにも対応しています。ですから,FPSのように音で敵戦車の位置を判断したりすることもできますよ。
 ほかにも,ダイナミックサウンドの実装も計画していまして,夜中にプレイしてもうるさくないとか,奥さんが寝ていてもプレイできるとか,いろいろと便利に使えるはずです。

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――では最後に,PlayStation 4版「World of Tanks」の聞きどころと見どころを教えてください。

Blewett氏
 ええ,基本的に私としては,すべてのサウンドを苦労して作っているので,それらすべてを聞いてもらいたいのですが,ゲームをプレイすると,あらゆるものがまとまって流れてくるので,一つ一つを聞き分けるのは難しいと思います(笑)。ともあれ,音を生かしてうまく戦い,勝率を上げ,ゲームを楽しんでもらえればと思います。

Dorizas氏
 自分が本当に戦車を操っているかのように思えるよう,たくさんの時間をかけ,がんばってモデルを作ってますので,主砲のライフリングの一つ一つまでよく見てください。戦車の移動にそって,後部の装備品なども細かく揺れていますよ。また,マップのさまざまなオブジェクトを破壊することも可能になっていますので,そのあたりにも注目してもらえればと思います。

――本日はどうもありがとうございました。

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 約240人のスタッフにより,1年以上の歳月をかけて作り上げられたというPlayStation 4版「World of Tanks」。グローバル企業のスタジオとして,開発においては言葉や時差の問題にも悩まされたそうだが,OBTも無事に終わり,いよいよ正式サービスが迫ってきた。
 PC版やXbox 360/Xbox One版の話は聞いていたが,プレイしたことはないというPlayStation 4ユーザーも,プレイするチャンスが到来したわけで,興味があるならぜひ挑戦してほしい。冒頭にも書いたように,正式サービス開始は2016年1月20日が発表されており,あとわずかだ。コラボ企画など,詳しい情報が入り次第お伝えしたい。

最後に,せっかくなのでシカゴ科学産業博物館(Museum of Science and Industry, Chicago)に展示してある潜水艦や飛行機の写真を掲載しよう
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このUボートは第二次世界大戦中,アメリカ海軍のタスクグループ22.3に鹵獲されたIXC型で,艦名はU-505。全長が約77mもあるので,もう全然フレームに収まってくれない
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弾痕も生々しい,Ju87 シュトゥーカも展示されている。完全な形で残る,数少ない機体だそうで,天井から吊るしているヒモが切れないか心配
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最後は,シカゴで最も高いビルWillis Towerから見下ろした夕闇迫る市街の様子。ミシガン湖はどう見ても海だが,なめたら塩辛くなかったので,やはり湖だった
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