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印刷2008/03/19 12:01

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ゲーマーのための読書案内
公界と苦界,憂き世と浮き世 第37回:『無縁・公界・楽』→コミュニティ,戦国モチーフ

 

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『[増補]無縁・公界・楽 日本中世の自由と平和』
著者:網野善彦
版元:平凡社
発行:1999年6月(原書は1987年5月)
価格:1223円(税込)
ISBN:978-4582761504

 

 これもまた,いまさら紹介するのがためらわれる有名な本なのだが,今回は故・網野善彦氏の『[増補]無縁・公界・楽 日本中世の自由と平和』を題材としたい。江戸,織豊,戦国,室町期を通じてさまざまな形で史料に現れる駆入寺や自治都市など,そこに逃げ込めば外界からの追及を逃れられるという“アジール”の実像と,そこに流れる精神に迫った本だ。なんというか,文明史/思想史研究におけるマイルストーンとも呼ぶべき著作である。

 そんな大著をなぜいまここで紹介するかというと,例えば「Online Game & Community service conference 2008」(OGC 2008)でしばしば俎上に載ったコミュニティ論と,まことに符節の合う論点が扱われているからだ。
 子供の遊び「エンガチョ」から説き起こしつつ,網野氏は世俗の縁が切れる場所として「無縁所」と呼ばれる寺が,江戸時代には婚姻関係を解消する「縁切り寺」として,戦国期以前には主従関係や犯罪者の捕縛/処刑すら無効にするアジールとして現れることに着目,それらが時の領主の保護を受けつつも,駆け入った人に自由と平和をもたらす場所として機能してきた経緯を追う。そして同様の機能が“主流社会”のあり方から少し外れたところに広く展開していたことを,丹念に追っていく。
 それは例えば港であり,河原であり,道路であり,市場であり,街であり,その延長としての自治都市である。これらの場所は本来的に無主の地であり,領主/領民関係とは構成原理の異なる,水平的な組織によって支えられていた。以前紹介した『一揆』で描き出されたのと同種の,前近代としてはイレギュラー(と思われている)なあり方である。外界からかかる力に抗して独自の自由と平和を守る,それでいて主従関係とは逆の精神的伝統「無縁の原理」に,網野氏は注目したわけだ。

 こうしたアジールそのものは,権力との対立関係に敗れ,次第に失われていったのだが,無縁であるがゆえに自由という社会関係は,ヨーロッパ史における「都市の自由」にも似て,近代的な自由の先触れとなった面もある。とくに社会経済史の分野では,自由な契約と競争の誕生をめぐって日本史の中でも研究が進められ,その成果が積み上げられつつある。
 書名に「楽」の語が入っていることからも分かるように,それは楽市楽座の起源にも及ぶ議論である。もともと,物の売買や事業の受発注は人間関係にほかならなかったわけだが,それがいつどんな形で変容していったのか,という話なのだ。

 ではどこがOGC 2008のコミュニティ論と重なるのか。ひろゆき氏は属人情報の蓄積によってコミュニティが「内輪」の場となり,新規参入者が減って衰退していくので,定期的に捨てるかテコ入れする必要があると述べた。これを濱野智史氏は都市論と的確に捉え,かつ「2ちゃんねる」に参加することは単に属人情報を捨てることではなく,「2ちゃんねらー」の仮面をかぶることだと分析,それを仮に「ひろゆきメソッド」と呼んだ。

 ここで働いているのは無縁の原理/一揆の原理に一脈通じる感覚だと,筆者Guevaristaは思う。属人情報という,外部の社会で認められる地位や記号と縁を切り,人は匿名掲示板という無縁の地に入る。そして『一揆』で描き出された寺院の集会(しゅうえ)さながらに,異形異類の「2ちゃんねらー」となったうえで,さまざまな話に興じる……。
 互いに匿名性と一体性を保ったうえで初めて,自由で盛り上がる会話が成り立つという構図には,全員が覆面で顔を包み,鼻をつまんで声音を変えつつ発言したという,僧兵の寄り合いが思い起こされる。どちらも,そうした“変身”を経たうえでこそ,平等で発展的な議論が可能になると考える感覚,発想が,生み出した作法のように思えるのだ。

 人間社会が生物学的進化でなく,“文化の記憶”によって発展してきた以上,例えば社会的制約と個人の自由との,距離と位置関係が似たような構図になれば,似たような行動様式が出てきても不思議ではないと思う。
 また,アジールの話題でいえば「電脳コイル」の話も思い起こされるわけだが,話題を社会インフラに限定せず,一つの作品として捉えたとき,近未来社会で神社というアジールが機能している点も,私には注目すべき部分に思えた。人が生きていくに当たってはどこかで,社会制度から逃れられる部分や,タテマエを超えられる局面が,必要とされるのではないかとも感じるからだ。裏を返せば,そもそも人の予見能力,社会制度の設計能力は過信できないということだ。

 OGC 2008の開催目的から短絡した牽強付会な議論かもしれないが,現行のオンラインゲームが持つ“つまらなさ”というか“浅はかさ”は,そうした社会構成的なダイナミズムを欠く点にもあると思う。人の持つ多様な興味の受け皿となるためには,負の側面も含んだ深さが必要だ。
 ここで何か心に引っかかるものを感じた人は,ぜひ近江国堅田の海賊(琵琶湖の湖賊?)の歴史を調べてみてほしい。そこにはかつて我々が「Ultima Online」で目撃したとおりの顛末が記されている。オンラインゲームだって本来,捨てたものではないはずなのである。

 

「海賊衆」と「警固衆」は同じ人達。それが中世

PKとPKK,平たく言えばどちらもPK。

 

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■■Guevarista(4Gamer編集部)■■
無駄な読書の量ではおそらく編集部でも最高レベルの4Gamerスタッフ。どう見てもゲームと絡みそうにない理屈っぽい本を読む一方で,文学作品には疎いため,この記事で手がけるジャンルは,ルポルタージュやドキュメントなど,もっぱら現実社会のあり方に根ざした書籍となりそうである。
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