レビュー
想像以上に可愛くて,ちょっぴり切ない「PostPetDS 夢見るモモと不思議のペン」で,ゆったりした時間を過ごしてみた
マーベラスエンターテイメントが2009年12月24日に発売した,ニンテンドーDS用ソフト「PostPetDS 夢見るモモと不思議のペン」は,15年もの間高い人気を維持してきたメールソフト「PostPet」のキャラクター達と,ゆったりした生活を楽しめる作品だ。昨年末には本作の開発陣へのインタビューを掲載したが,ここでは実際にプレイしてみた印象を交えつつ,本作の内容を詳しく紹介していこう。
半人前のペット達の,夢を取り戻せ!
本作の舞台となるのは,ポストペット達が暮らす「ポストペッ島」(ぽすとぺっとう)。プレイヤーキャラクターがPCにメールソフトのPostPetをインストールしている途中で眠りに落ち,目覚めるとポストペッ島に倒れているというオープニングから,本作はスタートする。そしてポストペッ島で唯一の人間として,ペット達との暮らしを始めることになるのだ。
なんと,ポストペッ島の上空に出現したバクにより,半人前のポストペット達は夢を食われてしまい,半人前のままで暮らし続けている……というのが,その理由だ。
バクが食べた夢は,「ゆめのかけら」という形で地上に落ちており,これを食べさせることでペット達は夢を思い出すのだが,ゆめのかけらを見つけたからといって,ペット達がそれをすぐに食べてくれるわけではない。
ペットと一緒に遊び,ペットが抱くその時々の欲求を満たしてやったりしながら,ペットから飼い主への愛情を少しずつ高めていって,それがある一定のラインを超えたとき,初めてペットがゆめのかけらを食べてくれるようになるのだ。
お世話をして,一緒に遊んで,ペットから愛されよう
ただまあ,ペットからの愛情を高めるのは,それほど難しいことではない。ペットが遊びたいといえば,一緒にベンチに座ったり,ブランコに乗ったり,滑り台を滑り降りたりし,ペットがお腹を減らしていたら,ペットの好みやそのときの気分に応じたおやつをあげればいいだけだ。
ポストペッ島の住人と話をしていると,ピクメモを欲しがっていることがあるので,そのニーズに応えたピクメモを撮影し,飼っているペットに配達させればいい。それによって,ペットからの愛情が増すだけでなく,場合によっては謝礼をもらえたり,販売されているおやつの種類が増えたりする。いわば,ミニクエストのようなものだと思っていいだろう。
ゲームの基本的な流れは,以上のようになっている。ゲーム内で飼えるペットは11種類だが,やるべきことはそう変わらない。そのため,バリバリのゲーマーからしてみれば,単調な作業の繰り返しに感じられることもあるかもしれない。
だが,それぞれのペットが持つ可愛らしさ,性格,バックボーンなどが明らかになるにつれ,そんなことは言っていられなくなるはず。「可愛いこいつらのためなら,どんなことだってやってやるさー! 何でかって? 鍛えているからだー!」ぐらいの気持ちにさせられるのである。
随所に溢れる,「これでもか!」と言わんばかりの可愛さ
ペットの可愛さが,本作の大きなポイントであるのは,間違いのないところ。正直,筆者自身も「どうせ可愛いんだろう」程度に思っていたのだが,実際に遊んでいると「想像以上に可愛くて参る」ぐらいの気分になっていった。
可愛い要素は数多くあるし,どんな要素がプレイヤーの琴線に触れるかは,人それぞれだろう。ただ,個人的に可愛いと感じさせられた点をいくつかあげるとするなら,以下のようのものだ。
●造形の可愛さ
これはもう,好き嫌いを別にしてしまえば,疑いを挟む余地などないだろう。原作であるPostPetが,15年以上前から可愛いものであり続けるのだから仕方がない。
●モーションの可愛さ
造形の可愛さにも通じるものではあるが,とにかくペットのモーションが可愛い。PostPetで培われたものを踏襲しつつ,本作でしか登場しないような動きの一つ一つが,また憎たらしいぐらいに可愛いのだ。個人的には,“合体”状態で木の上のアイテムを取ろうとするときのモーションがたまらないと思う。
●セリフの可愛さ
ペットそれぞれの個性は,決して見た目だけで完結するものではない。発言の一つ一つもまた,そのペットらしいものに仕上がっている。また,セリフに合わせて鳴る音(声)も,やっぱり可愛い。原作の世界観を踏襲しながら,きちんと新しい可愛さが作り上げられているのには驚かされるばかりだ。
●アバターアイテムの可愛さ
ゲーム内ではプレイヤーキャラクターもペットを,さまざまな衣装や装飾品で飾ることができる。これがまた可愛い。全裸のペットにネクタイ! みたいな,人間がまねをしたらお縄になりかねないものだって,きちんと可愛い。
これはネタバレに直結する部分なので多くは語らない。が,半人前のペット達が夢を思い出したとき,その夢の可愛さにもやられた。こんな可愛い夢だったら,叶えてあげたくなるのが人情ってものだ。
遊びやすさに配慮された作り。でも決して,それだけではない
本作が2008年の東京ゲームショウで発表されたとき,”育成スローライフコミュニケーション”というジャンルであるということから,PostPetの世界観の中で,ただただ無目的に時を過ごすことだけを楽しめるような作品になるのではないかと思っていた。
個人的には,(実生活においても)次から次へとやるべきことが提示されないことには,何をして過ごせばいいのか分からなくなってしまいがちなので,その手のゲームが少々苦手である。だから,「まあ,可愛いんだけど,すぐに飽きる(何をしていいのか分からなくなる)んだろうな」ぐらいに思っていた。
だが前述したとおり,ゲームの中には小さいながら一つ一つ目的が用意されている。しかもそれらは,ストレスなく挑みやすいサイズであるため,これを遂行していくことが苦にならない。
あまりに大きな目的を繰り返さなければならないとなると,一つを達成したあと,次に挑むのが億劫になってしまうこともあるのだが,そういったこともなかった。
確かにペットを一人前にして送り出すときには,切なく寂しい気分にはなる。だが,とくに気に入ったペットを一人前にしたあとだって,次のペットに移ろうという気になるまでのハードルが低いのだ。
これはキャラクターの可愛さというのも大きな要因になっているのだろうが,それ以上に,ゲームのテンポや設計の部分が,遊びやすさを重視しているからではないかと思われる。
そう,日頃はそれほどゲームで遊ばない人であっても,気楽に楽しめるような作品に仕上がっているのだ。
かといって,ゲーム的に奥行きがないとか,遊びごたえがないかというと,そういうわけではない。ゲーム内で流れる時間や季節に応じて,ピクメモの被写体になりうるものも変化していくし,それらを撮影しては,新しいおやつを登場させる要素などは,なかなかやり込み甲斐がある。
また,個人的にはジャングルクルーズもお気に入りだ。これをクリアしないと手に入れられないアバターアイテムもあるため,ついつい繰り返し遊びまくってしまった。
“何か”を感じられれば,記憶に刻みたい一本になるかも
とはいえ,気になる点がないというわけでもない。
具体的には,タッチペンを使って不思議のペンを操作するときの操作方法だ。前述のとおり,ピクメモを撮影するときは対象物を線で囲めばいいのだが,ほかにも足下を軽くはくことで,不思議のペンを箒として使い,地面に落ちているお金などを拾うことができる。この使い分けで,誤認識されるケースが決して少なくなかったのである。
足下を掃きたいのに,ピクメモ撮影モードになってしまうことが続くと,妙にがっかりしてしまう。コツさえつかめば認識率は向上するのだが,遊びやすさに配慮した作りになっているようなのに,ここだけは「気合いでコツをつかめ!」的な仕様になっているのが気になったのだ。
それ以外にも,決定やキャンセルといった単純な操作すら,ボタンにはいっさい割り当てられておらず,タッチペンを使うことになっているのも,若干,気になった。まあ,その理由は,昨年末に掲載したインタビューで聞いたときに納得できたことなので,多くは語るまい。
かつてPostPetに愛着を持っていた人や,現在進行形でPostPetユーザーであるという人ならば,本作を最後まで遊んだときに“プレPostPet”という本作のコンセプトを心の底から理解できると同時に,PostPetへの愛着が増すことだろう。
そしてこれまでPostPetを使ったことのない人でも,本作をプレイしてみれば,あのペット達の持つ魅力に気づかされるはず。根を詰め,寝る間を惜しんで遊ぶたぐいの作品ではないが,空いた時間を使って気軽にペット達との交流を深めていく行為は,慌ただしい日常から切り離された,ゆったりとした時間を味わわせてくれる。
さらに人によっては,「あれ? 夢を忘れたまま,日々同じようなことを繰り返して過ごしている自分って,半人前?」みたいな気分になって,何かをあらためて頑張ってみようかなと思ってしまうかもしれない。
「PostPetDS 夢見るモモと不思議のペン」公式サイト
PostPet TM (C)2009 So-net Entertainment Corporation (C)2009 So-net Entertainment Corporation / Marvelous Entertainment Inc.