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「XL2720」レビュー。BenQ ZOWIEの144Hz対応27インチディスプレイは他社製品と何が違うのか
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印刷2018/09/18 00:00

レビュー

BenQ ZOWIEの「144Hz対応27インチディスプレイ」は他社製品と何が違うのか

BenQ ZOWIE XL2720

Text by 米田 聡


 2018年6月に,BenQのゲーマー向け製品ブランド「BenQ ZOWIE」(以下,ZOWIE)から国内発売となった液晶ディスプレイ「XL2720」は,27インチで解像度1920×1080ドット,垂直リフレッシュレート144Hz対応のTN型液晶パネルを搭載する,ミドルクラス市場向けの製品だ。
 基本スペックだけ見ると,XLシリーズの従来モデルや他社製品と比べても大きな違いはない印象だが,果たして実際はどうなのか。性能をチェックしてみたい。

XL2720
メーカー:BenQ
問い合わせ先:テクニカルサポートセンター TEL 0570-015-533(平日9:30〜18:00)
実勢価格:4万5800〜4万7000円程度(※2018年9月18日現在)
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●XL2720の主なスペック
  • パネル:27インチ液晶,TN方式,ノングレア(非光沢)
  • バックライト:LED,フリッカーフリー
  • パネル解像度:1920×1080ドット
  • 最大垂直リフレッシュレート:144Hz
  • ディスプレイ同期技術:非対応
  • HDR対応:非対応
  • 輝度(通常):300cd/m2
  • 表示色:約1677万色
  • コントラスト比:1000:1
  • 視野角:左右170度,上下160度
  • 中間調(gray-to-gray)応答速度:1ms
  • 内部フレーム遅延:未公開
  • ビデオ接続インタフェース:DisplayPort 1.2入力×1,HDMI 1.4 Type A入力×1,Dual-Link DVI-D×1,アナログRGB(D-Sub 15ピン)×1
  • そのほかの接続インタフェース:3.5mmミニピン出力×1(ヘッドフォン用),USB 3.1 Gen.1 Type-A×3&Type-B×1(USBハブダウンストリーム2,アップストリーム1),USB Mini-B(※S.Switch用)
  • スピーカー:非搭載
  • チルト(上下回転):−5〜+20度
  • スイーベル(左右回転):左右45度
  • ピボット(縦回転):対応
  • 公称高さ調整:上下136mm
  • VESAマウント:100×100mm
  • 公称消費電力:50W(最大),25W(標準),23W(エコ)
  • 公称本体サイズ:約640(W)×270(D)×423〜559(H)mm
  • 公称本体重量:約7.5kg
  • 主な付属品:S.Switch,DisplayPortケーブル,Dual-Link DVI-Dケーブル,ACケーブル
  • 保証期間:3年(※パネルとバックライトは1年)


機能面は上位モデルとほぼ同等のXL2720


XL2720は3ピース構成
画像集 No.003のサムネイル画像 / 「XL2720」レビュー。BenQ ZOWIEの144Hz対応27インチディスプレイは他社製品と何が違うのか
 XL2720は本体とスタンド,スタンド台座からなる3ピース構成で製品ボックスに入っている。100×100mmのVESAマウント互換となっている溝へスタンドを填め込んだうえで,スタンドに台座を取り付け,台座の底面側にある蝶ネジで固定するだけなので,組み立ては極めて簡単だ。
 気を付けることがあるとすれば,27インチサイズなので24インチクラスの液晶ディスプレイと比べると場所を取ることと,組み立てた後の重量が実測約7.5kgあることくらいだろう。

左:スタンドは,本体背面側の溝に差し込むだけでロックできる。取り外すときも本体背面側にある丸ボタンスイッチを押すだけだ
中央,右:台座の取り付けにも工具は不要。溝に合わせて填め込んで回転させてから底面側の蝶ネジを締め込めば完了である
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 ビデオ入力インタフェースはDisplayPort 1.2×1,HDMI 1.4 Type A×2,Dual-Link DVI-D×1,アナログRGB(D-Sub 15ピン)×1。このうち垂直リフレッシュレート144Hzに対応するのはDisplayPortとDVI-Dだけで,ほか2系統のHDMIは最大垂直リフレッシュレート60Hz仕様となる。こちらはPlayStation 4やNintendo Switchなど,60Hzまでの垂直リフレッシュレートに対応した外部デバイスを接続するためのものという理解でいいのではなかろうか。

本体背面で下向きにずらっと並んだポート類。写真左から順にUSB Mini-B,DisplayPort,D-Sub 15ピン,DVI-D,HDMI Type A×2,USB Type-B(※アップストリーム),USB Type-A(※ダウンストリーム)となっている
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本体正面向かって左側面にはUSB Type-Aのダウンストリームポートが2系統と,DisplayPortおよびHDMI入力時のみ利用できる,3.5mmミニピンのヘッドフォン出力端子もあった
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 また,本体にはUSB 2.0ハブ機能があり,ビデオ入力インタフェースと同じ並びに1基,本体正面向かって左側面に2基のダウンストリームポートを備える。USB 2.0なので,ZOWIEとしてはキーボードやマウス,USB接続型ヘッドセットの利用を想定しているのだと思われる。

 ビデオ入力インタフェースの写真でUSB Mini-B端子があるのに気付いた人もいると思うが,これはXLシリーズでお馴染みのOSD(On Screen Display)メニュー操作用デバイス「S.Switch」(もしくは「S Switch」)用だ。XL2720には標準でS.Switchが付属しており,ここにつなぐことで利用できるようになっている。

S.Switch。マウスのセンタークリック的なクリックボタン機能付きスクロールホイールと4ボタンからなるデバイスだ。底面に滑り止めのゴムは貼ってあるものの,非常に軽いこともあって,S.Switch自体の安定性はほぼない
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S.Switchは単体で引き出して使うこともできるが,この状態だと軽さもあって「机上でどこかへ行ってしまう」ケースが出てくる
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 S.Switchは,XL2720のスタンド台座に左右どちらかから固定できるようになっている。具体的にはマグネットを内蔵してあり,近づけるとスタンドと一体化させることができる。
 多くの場合,S.Swtichを手前に引き出して使う必要はほぼないので,スタンド台座と一体化させることで,「気付いたらディスプレイの奥へ移動してしまっていた」ような事態を回避できるのは(XL2720で初採用というわけではないものの)いいアイデアだと思う。

スタンド台座の左右からマグネットで固定してしまえば,使いたいときにさっと利用できるようになる
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 組み立てと各種ケーブルの接続が終わると利用できるようになるが,この状態でXL2720の占有サイズは実測約640(W)×280(D)mm。高さはスタンドによる調整が可能で,実測約411〜555mmの範囲で高さが調節できる。

高さは約144mmの範囲で調整可能。27インチクラスの液晶パネルを搭載する製品としては選択の幅が広いほうだ
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 なおこのスタンド,頂部には持ち運ぶための取っ手があり,背面側にはヘッドセットやヘッドフォンを引っかけるためのフックがあり,さらにケーブルをある程度まで束ねられるスルーホールを備える。このあたりはXLシリーズ伝統の仕様なので,どれも目新しいものではないが,いずれもうまくまとまっていると言っていいだろう。
 ただし,上位モデルにある「高さ調整の参考にできる目盛り」はないので,その点は押さえておきたい。

スタンドの頂部にある取っ手は丈夫なので,ちょっと持ち上げたりするときに便利だ。もっともZOWIEとしては持ち運びを想定しており,製品ボックスには運搬時に液晶パネルを保護するためのカバーが標準で付属する
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スルーホールには十分な大きさがあり,とくに違和感なくケーブルを通せる。試してみたがDVIケーブルも問題なしだった
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ヘッドセットおよびヘッドフォンを引っかけるためのフックは背面側。机上で奥行きを確保できれば便利だが,基本的にはLANパーティなど向けか
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スタンドの高さ調整機構に「いつもと同じ高さへ戻しやすくするための目盛り」はない。ここは下位モデルらしいところだ

横回転で45度回した例
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 話を戻そう。XL2720は上下回転(チルト)と横回転(スイーベル),画面を90度回転させられる縦回転(ピボット)に対応している。
 チルトは手前5度,奥に20度,スイーベルは左右45度に対応。ピボットさせると本体の横幅は380mmに縮まるが,高さは机上から675mmの固定となる。いずれも可動機構の動きはスムーズだ。

上下回転の例(左,中央)。右は縦回転させた例になる
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もはや懐かしい3D Vision対応のシールが貼ってある
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 ところで,XL2720の額縁には「3D Vision」対応を示すシールが貼ってある。つまり,NVIDIAの立体視技術に対応するわけだが,2018年現在,少なくとも日本では3D Visionに対応した立体視用メガネを新品で入手することはできなくなっている。また,BenQの側でも何か特別に謳ってはおらず,使い方の説明もないので,本稿でもとくに触れることはしない。
 ただ,額縁の右下,3D立体視用のIRエミッタを内蔵しているらしき部分の上にタッチセンサー式のOSDメニュー操作系があることは押さえておきたい。使い勝手はS.Switchが圧倒的だが,ビデオ信号が入っていない状態ではここのタッチセンサーが入力切り替え用として機能するので,必要に応じてS.Switchと併用すると便利に使えるはずだ。

IRエミッタを内蔵しているっぽい部分の上がタッチセンサーになっている。ここを使ってもOSDメニュー操作は行えるが,基本的にはS.Switchを使うべきだろう。PCやゲーム機を起動する前に,あらかじめ入力を切り換えておきたい場合にはここも使えるかもしれない
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「DyAc」と「240Hz」非対応なのを除けば「XL」らしい仕様


 XL2720で利用できる機能は従来のBenQ製ゲーマー向けディスプレイを踏襲している。上位モデルが採用する残像感低減技術「DyAc Technology」をXL2720は持たず,また上位モデルのように垂直リフレッシュレート240Hz表示には対応しないが,それ以外の機能はお馴染みのものばかりだ。
 なので以下は,XL2720固有の事情に触れながら,主要な機能をざっくりと項目ごとに紹介していきたいと思う。

Black eQualizer


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Black eQualizerの設定項目
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インスタントモードの設定項目
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AMAの設定項目
 ガンマ値や明度,コントラストを変化させることで暗いシーンの暗い部分を浮かび上がらせる機能。XL2729では0〜20までの21段階で強度を設定できる。

インスタントモード


 内部映像処理の一部をバイパスして遅延を低減する動作モード。他社のゲーマー向けディスプレイ製品で言うところの「スルーモード」に相当する。XL2720ではインスタントモードを有効にしてもスケール変換の機能以外の画質調節は機能するので,基本的には有効化することになるだろう。

AMA(Advanced Motion Accelerator)


 液晶パネルのドライブ信号を最適化してパネルの応答速度を引き上げる技術。他社製ディスプレイにおける「オーバードライブ機能」と同じもので,XL2720では「プレミアム」「高」「オフ」の3段階から選択できる。その効果については後述したい。

画面モード


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 画面の縮尺を変えて他のディスプレイサイズをシミュレートする機能。ディスプレイが決められている大会に向けてトレーニングするためのものとされているが,XL2720では27インチという大サイズを活かし,以下のように9通りのサイズをシミュレートできる。

  • 17(4:3)
  • 19(4:3)
  • 19(5:4)
  • 19ワイド(16:10)
  • 21.5(16:9)
  • 22ワイド(16:10)
  • 23ワイド(16:9)
  • 23.6ワイド(16:9)
  • 24ワイド(16:9)

 なお,XL2720で画面モードの変更を行えるのは垂直リフレッシュレート設定が120Hz以下の場合のみで,144Hz設定時は利用できない。

画像モード


 ZOWIEは用途に応じた画質のプリセットを「画像モード」と呼んでいる。XL2720では以下に挙げる11通りから選択可能だ。

  • 標準
  • 動画
  • 写真
  • sRGB
  • エコ
  • FPS1
  • FPS2
  • RTS
  • ゲーマー1
  • ゲーマー2
  • ゲーマー3

 FPS1とFPS2,RTSが基本となるゲーマー向けプリセットで,3つはいずれもインスタントモードが「オン」,AMAが「高」で共通。Black eQualizerの設定値のみ順に10,12,15と異なる。基本的にはこれら3つから選んだうえで,必要に応じてカスタマイズしたらゲーマー1〜3に保存するという流れになるだろう。というのも,ゲーマー1〜3の内容はS.Switch上の[1〜3]ボタンと連係しており,ワンボタンで切り換えられるようになっているからである。

工場出荷時設定はFPS1なので,まずはこれを使いながらカスタマイズして,その内容をゲーマー1に保存するところから設定を行ってみるといいだろう
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色温度


画像集 No.035のサムネイル画像 / 「XL2720」レビュー。BenQ ZOWIEの144Hz対応27インチディスプレイは他社製品と何が違うのか
 色温度は一般的にディスプレイが備えている機能だが,XL2720では,

  • 標準
  • 薄青(※やや高めの色温度)
  • 薄赤(※やや低めの色温度)
  • ユーザー

から選択できる。ユーザー選択時はRGBそれぞれの強度を0〜100の101段階から調節できるようになっていた。

ブレ低減


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 バックライトを点滅させて画面をシャープに見せる機能だ。ZOWIE製ディスプレイのうち,リフレッシュレート144Hz以上をサポートする製品の一部に搭載させてきた機能で,XL2720が初というわけではない。見かけはたしかにシャープなるが,バックライトを点滅させるという仕組み上,どうしても輝度が下がって見えるため,暗いシーンが多いゲームだと使いづらいという弱点があるのもこれまでどおりである。

 なお,ブレ低減機能が使えるのはリフレッシュレート120Hzおよび144Hz時のみ。他のリフレッシュレート設定時は使えない。

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Overscanの設定項目
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ブルーライト軽減の設定項目

Overscan


 入力信号より表示領域を狭くしてオーバースキャンに対応する機能で,「オン」「オフ」が選択できる。PCでは必要のない機能だが,HDMI接続時,一部の出力機器と組み合わせたときに利用する必要があるかもしれない。

ブルーライト軽減


 目の疲れの原因になるとされる青系の色の明るさを抑える機能。XL2720では0〜10までの11段階で調節できる。


120Hz以下のリフレッシュレートでXL2430Tより1フレーム速いXL2720


 機能面をひととおりチェックしたところで,XL2720の性能検証に入っていこう。まずは,ゲームで重要な表示遅延からだ。

画像集 No.039のサムネイル画像 / 「XL2720」レビュー。BenQ ZOWIEの144Hz対応27インチディスプレイは他社製品と何が違うのか
 4Gamerではディスプレイデバイスの表示および操作遅延を測定するために「4Gamer Input and Display Latency Checker」というシステムを構築している。その概要は2017年12月28日掲載の記事を参考にしてほしいが,「マウスクリックからディスプレイに変化が現れるまで」の時間を1ms未満の精度で計測できるシステムである。

 今回はそれに,マウスクリックを検出して画面中央に白い四角を描く自作のWindows用ツール「Display Latency Tester」を組み合わせる。「Display Latency Testerがマウスクリックから白い四角を描くまでの時間」を4Gamer Input and Display Latency Checkerで1ターン100回計測し,測定された時間を頻度解析することにより,ディスプレイの典型的な表示遅延比較を行うという流れだ。

 どんな感じで測定するかという話はMSI製ディスプレイ「Optix MAG27CQ」のレビュー時に詳しく紹介しているので,興味のある人はそちらを参考にしてほしい。テストのやり方自体は当時から変わっていない。

 比較対象としては,4Gamerのリファレンス機でもあるBenQ ZOWIE製ディスプレイ「XL2430T」を今回も用いる。同じメーカー製だけにテスト設定を揃えるのは簡単で,XL2720,XL2430Tともに画像モードをFPS1としたうえで,インスタントモードを有効化し,かつAMAをプレミアムとした。

 基本的には,測定された「最も頻度が高い遅延時間」が,そのディスプレイの典型的な表示遅延と考えてもらって構わないことを述べつつ,テスト結果を示していこう。グラフ1は垂直リフレッシュレート60Hz,Vsync有効時の結果,グラフ2は垂直リフレッシュレート60Hz,Vsync無効時の結果だ。縦軸は測定された回数(=頻度),横軸はミリ秒(ms)単位の遅延時間である。

 グラフ1で垂直リフレッシュレート60Hz,Vsync有効時の結果を見てみると,XL2720では18〜20msと34msに高頻度のピークが見られるのに対してXL2430Tだと34msと50msにピークが出ている。60Hzの1フレームは約16.7msなので,XL2720のほうがXL2430Tよりちょうど1フレーム速いと見ていいだろう。

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 リフレッシュレート60HzのVsync無効時だと,XL2720は16msにピークがありXL2430Tは20msにピークがある。その差は4msと1フレーム未満だ。Vsync無効なので,もしかするとXL2720のほうがXL2430Tよりやや速く画面に反応が出ている可能性はあるが,測定誤差の可能性も捨てきれない。

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 続いてグラフ3は垂直リフレッシュレート120Hz,Vsync有効時,グラフ4は垂直リフレッシュレート120Hz,Vsync無効時のテスト結果となる。

 グラフ3でXL2720は12msと20msにピークがある一方,XL2430Tは18msと26msにピークがある。120Hz時の1フレームは約8.3msなので,XL2720のほうがXL2430Tよりちょうど1フレーム速いと見ていいだろう。

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 Vsyncを無効化したグラフ4でも同じような結果で,XL2720はXL2430Tと比べてちょうど1フレーム速いようだ。XL2430Tも決して遅いディスプレイではない……というか,かなり速いディスプレイなのだが,それよりも1フレーム速いというあたり,さすがBenQ ZOWIEというか,しっかり開発,改良を進めている証と言ってよさそうである。

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 グラフ5は垂直リフレッシュレート144HzのVsync有効時,グラフ6は垂直リフレッシュレート144HzのVsync無効時における結果だが,144HzだとVsyncの有効,無効設定にかかわらず同じ遅延時間にピークが出ているので,表示遅延は変わらないということになる。垂直リフレッシュレート144Hz設定は内部の表示処理が頭打ちになっている可能性が高い。

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 画面モードを設定したときに表示遅延がどの程度大きくなるかもチェックしてみることにした。前述のとおり,異なるディスプレイサイズをシミュレートできる画面モードの選択肢は9通りあるため,今回は垂直リフレッシュレート120HzのVsync有効という条件で揃え,テストした。その結果がグラフ7だ。
 線が重なってしまってちょっと分かりにくいかもしれないが,画面モードを設定しない「標準」だと12msと20msにピークが出るのに対して,画面モードを設定すると20msと26ms前後にピークが移動した。9つある画面モードごとの系統だった有意差はほぼ見られない。したがって,画面モードを設定した時点で1フレーム遅れるという理解でよさそうだ。画像の加工が入る画面モード有効時の表示遅延が1フレーム増で済んでいるのはまずまず優秀と言っていいのではなかろうか。

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 以上,XL2720の表示遅延は,垂直リフレッシュレート120Hz以下ではXL2430Tより1フレーム小さく,144Hzでは変わらないということになる。
 BenQ ZOWIEは従来製品に対して現行製品の表示遅延がどうであるかについてとくにアピールしていないため,「変わっていないのだろう」と高をくくっていたのだが,良い方向に裏切られた格好だ。


画面の見え方はTNパネルそのものだが応答速度は優秀


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 続いて画質や応答速度といったところを見ていこう。本機が採用するのはコントラスト比1000:1,応答速度5ms,中間色(gray-to-gray)応答速度1msというスペックのTN型液晶パネルだが,その見え方は高級TNパネルそのものと言っていい。27インチ,解像度1920×1080ドットでドットピッチが約0.3mmと目に優しいため,画面から少し離れても非常に見やすく,またノングレア(非光沢)加工済みなので外光の映り込みはほとんどない。また,発色は良好で,正面から見る限り,ことゲーム用途において発色が問題になることは考えられないレベルだ。LEDバックライトはフリッカーフリー仕様なのでちらつきもない。
 一方で,見る角度による色の変化は当然ながら大きい。画面サイズが比較的大きめなので,顔を画面に近づけすぎると四隅の色変化も気になるだろう。また画面を暗くするとバックライトのムラも目立つ。ゲーム以外に,色の再現性が求められる用途にも使いたいという場合は相応の覚悟が必要になる。

暗闇で角度をいろいろ変えて,表示を確認したところ。いかにも高級TNパネルといった見え方である
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 見る角度による色の変化が大きいという弱点にもかかわらず,ゲーマー向けディスプレイでTNパネルの採用例が多いのは,一にも二にも応答速度がVA型やIPS型と比べて高いからである。
 そこで,「画面のリフレッシュに合わせて点滅する白い四角」を描く自作ツールを実行し,それを光学センサーで検出したうえで,光学センサーの出力をRigol Technologies製のオシロスコープ「DS1054Z」で測定することにした。

 下の画面はAMAが無効,垂直リフレッシュレートが60Hzという設定で測定した波形だ。横軸が時間,縦軸が電圧(≒光の強さ)となる。画面にカーソルを出して暗い状態から最大の輝度に達するまでの時間を調べて,およそ8msかかるというのがこれで分かるわけだ。

垂直リフレッシュレート60Hz,AMA無効時の波形。波形グラフの下に並んでいるのが測定値で,「Max」のところにある「2.43V」がピークの電圧を示す。画面上には白い実線と破線を確認できるが,これらは測定用の「カーソル」だ。測定者がカーソルの位置を動かすと波形の時間や電圧を調べることができる。このスクリーンショットでは縦に伸びる実線と波線を使って時間を見ているが,X方向の実線が「カーソルA」,破線が「カーソルB」。カーソルAを信号の立ち上がり位置である0秒に合わせ,おおむねピークの電圧になっていそうな位置にカーソルBを合わせることで,カーソルBの位置が「8.000ms」となっていることが右側の表示で確認できた。なので「暗い状態から概ねピークの明るさになるまでに8msかかっている」ということになる
画像集 No.051のサムネイル画像 / 「XL2720」レビュー。BenQ ZOWIEの144Hz対応27インチディスプレイは他社製品と何が違うのか

 続いて示すのは垂直リフレッシュレート設定60Hzのまま,AMAを高およびプレミアムに変更したときの波形だが,ここで目立った変化が現れないというのはとても興味深い。
 オーバードライブを有効化すると,この波形が露骨に変わるディスプレイは少なくないのだが,AMAではそうならないようだ。ひょっとするとAMAでは中間調の変化のみにオーバードライブを適用するなどといった工夫がなされているのかもしれない。

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垂直リフレッシュレートを60Hz,AMAを高としたときの波形
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垂直リフレッシュレートを60Hz,AMAをプレミアムとしたときの波形

 次に,垂直リフレッシュレート120HzでAMAの設定を3段階に切り換えたときの波形を下に示すが,ピーク時の電圧は2.4Vと60Hz比で0.03V低下しただけに留まり,かつ立ち下がりが十分に速いため,続くフレームの描画への“かぶり”はわずかだろう。
 AMAの3段階設定で変化が見られないのは垂直リフレッシュレート60Hz設定時と同じだ。

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垂直リフレッシュレートを120Hz,AMAを無効としたときの波形
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垂直リフレッシュレートを120Hz,AMAを高としたときの波形
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垂直リフレッシュレートを120Hz,AMAをプレミアムとしたときの波形

 最後は垂直リフレッシュレート144Hz設定時だが,ここではまずピーク時の電圧が2.37Vと,垂直リフレッシュレート60Hz時に対して0.06V低下していた。前述したとおり,XL2720は最大輝度へ達するまで8msほどかかる。一方,垂直リフレッシュレート144Hz時の1フレームは6.9msで8msには届かない。よって,60Hz時の最大輝度に対して0.06V,つまり約2.5%低下するのは想定どおりと言っていい。
 立ち下がりが十分に速いので,次のフレームの描画への“かぶり”が少ないことを期待できる点と,AMA設定による違いが生じていないのはほかのテスト条件と変わらない。

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垂直リフレッシュレートを144Hz,AMAを無効としたときの波形
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垂直リフレッシュレートを144Hz,AMAを高としたときの波形
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垂直リフレッシュレートを144Hz,AMAをプレミアムとしたときの波形

 以上,暗→最大輝度の速度は垂直リフレッシュレート144Hzに若干追い付いていないものの,最大輝度→暗は高速なので垂直リフレッシュレート144Hz時でも前フレームから次のフレームへのかぶりは軽微だろう。ただ,このテストではAMAの効果が分からない。

 そこで,EIZOが公開している「Motion Blur Checker」(Beta)を利用して,4Gamerのロゴ壁紙を1フレーム単位で横スクロールさせ,その画面をソニー製のハイスピード撮影対応コンパクトデジタルカメラ「RX100IV」から960fpsで撮影することにした。
 今回は垂直リフレッシュレート設定60Hz,120Hz,144Hzで3通りのテストを行ったが,最大輝度から最低輝度まで2msほどかかることがオシロスコープの測定から分かったので,1フレームが約6.9msとなる垂直リフレッシュレート144Hz時に前フレームから次フレームへのかぶりがAMAによってどの程度変化するのか,しないのかが最も注目すべき点ということになる。なぜなら2msは垂直リフレッシュレート144Hz時の1フレームに対して約29%,つまり3割程度の時間を占めるからだ。

 その結果は下にムービーでまとめたとおりだ,最も重要なリフレッシュレート144Hz時のムービーに注目してほしい。ムービーでは3つのAMA設定を横に並べているが,コマ送りしてみると,AMA無効時には「画面がおおむね静止している画面」が1フレーム見られるのが分かるだろう。
 撮影スピードが960fpsなので,ムービーの1フレームの時間は1秒÷960≒1msになる。垂直リフレッシュレート144Hz時は1フレームあたり6.9msなので,6.9ms中1msは画面がおおむね静止する,つまり前フレームからかぶりがない画面になったというわけだ。
 コマ送りすると分かるが,ディスプレイは画面上から下に向かって書き換えを行っているので,個々の画素が静止している時間は1msより長いものの,画面全体を見ると1msしか静止しているフレームがないという形になっている。

 一方,AMAをプレミアムに切り替えると静止している画面が2フレームとなり,高ではオフとプレミアムの中間くらいに落ち着く。つまりAMAがフレームの切り替えを高速化できていることが動画から分かるわけだ。
 同時に,AMA無効時と比べると,高,プレミアムの順でロゴの縁にゴーストのような不自然さが現れることも見て取れるだろう。

 これは結局のところ,画面のシャープさを取るか,見栄えの自然さを取るかという話になる。AMAの強度を上げれば上げるほどシャープかつ不自然になっていくので,まずプレミアムにしてみて,不自然さを許容できなければ高,無効と試していくのを勧めたい。


 ブレ低減機能の効果も確認しておこう。これはLEDバックライトを点滅させて見かけの応答速度を高速化するものだが,これもなかなか興味深い機能だった。
 ブレ低減機能はバックライトを点滅させるため,AMAの検証のようなハイスピード撮影ができない。というのは,点滅と撮影した動画のフレームが同期してしまい,激しくチラチラする動画しか得られないためだ。コマで切り出して並べるという,面倒な手順を取るほかない。

 実際のところ,ブレ低減機能の効果を調べるためには,LEDバックライトの点滅をオシロスコープで調べるくらいしか方法がなかったりする……というわけで,実際に光学センサーとオシロスコープを使った検証結果を見ていこう。
 前述のとおり,ブレ低減機能を利用できるのは垂直リフレッシュレート120Hzと144Hz時なので,まずは120Hz時から見ていきたい。

 ここで注目したいのはピーク時間,そしてLEDバックライトが点灯する時間だ。下のスクリーンショットでMaxとある最大電圧は4.44Vと,先に示したブレ低減機能無効時と比べて非常に高い。LEDバックライトの点滅に伴う輝度の低下を抑えるべく,LEDに大電流のパルスを与えているようである。パルス駆動ならLEDはより大きな電流を流せるので,その特性を活用し,輝度の低下を可能な限り抑えようとしているのだろう。

垂直リフレッシュレート120Hzの条件でブレ低減機能をチェックしたところ。ピーク時の電圧を示すMaxが4.44Vを示している
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 ただ,それでも点灯時間が短いため,ブレ低減を無効した状態と比べると輝度はどうしてもかなり落ちる。下の画面は垂直リフレッシュレート120Hz時の点灯時間を調べたものになるが,1フレームあたり約1.8msだった。1フレームの約8.3msに対して点灯時間は約21%だ。
 パルス駆動でバックライトの輝度を2倍程度まで引き上げていることを加味しつつ,視覚補正の考慮なしにざっくりした概算を行うと,ブレ低減機能有効時の輝度は無効時の半分くらいといったところである。

垂直リフレッシュレート120Hz時のバックライト点灯時間をチェックしたところ。X軸方向のカーソルA(※実線)を0秒の位置に合わせたとき,カーソルB(※破線)が1.8msとなったので,点灯時間はおよそ1フレームあたり1.8msと分かる
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 なお,LEDバックライトの点滅は垂直リフレッシュレートに同期しており,垂直リフレッシュレート144H設定時は約6.9msに1回の割で点灯し,点灯時間は1.5msという結果が観測できた。下のスクリーンショットはそのときのものだ。

 波形の下に並んでいる測定値のうち「Period」が波形の1区間の時間を示している。Periodの値が6.94msとなっているので,垂直リフレッシュレート144Hzの1フレームの時間(約6.9ms)に等しいことが分かるだろう。
 カーソルAとカーソルBの間が,画面右側に表示されているとおり1.5msあることも分かるかと思う。

垂直リフレッシュレート144Hz時のバックライト点灯時間をチェックしたところ。カーソルA(※実線)が0秒位置のときカーソルB(※波線)が1.5msの位置となる。つまり垂直リフレッシュレート144Hz時にLEDバックライトは1フレームあたり1.5msだけ点灯するわけだ
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 テストして驚いたのは,XL2720のブレ低減機能がLEDバックライトをかなり真面目に制御しているということだ。なので,映像はかなりシャープに見える。
 バックライトを明滅させるというその仕様上,映像で示そうと思ってもただチラチラした録画データが取れるだけなのは残念だが,輝度の低下を許容できるタイプのゲームなら使う価値があるレベルだと述べておきたい。


ZOWIEらしい生真面目さが魅力のXL2720。価格に納得できるなら買いだ


製品ボックスの付属品一覧
画像集 No.064のサムネイル画像 / 「XL2720」レビュー。BenQ ZOWIEの144Hz対応27インチディスプレイは他社製品と何が違うのか
 以上,XL2720を見てきた。冒頭でも述べたとおり,ZOWIEが公表しているスペックだけ見ると,「垂直リフレッシュレート144Hz対応のTNパネルを搭載した,凡百のゲーマー向けディスプレイ」そのものなのだが,実際に使ってみると,従来製品と比べて垂直リフレッシュレート120Hz以下では内部遅延が1フレーム縮まっていたり,ブレ低減機能がLEDバックライトをしっかり制御してシャープな画面の実現に寄与していたりと,ZOWIEが真面目にゲーマー向けディスプレイの開発や設計に取り組んでいることがよく分かる。

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 ただ,そのアピールがあまりに弱い。結果として,2018年9月18日現在の4万5800〜4万7000円程度という税込実勢価格は,「なんか高い」という印象を与えてしまっている。「27インチで垂直リフレッシュレート144Hz対応のTNパネル搭載ディスプレイ」は,こだわらなければ3万円台後半から買えるうえ,サイズを24〜25インチクラスにまで落とせば2万円台半ばで手に入ってしまうわけで,それらと比べるとXL2720は「なぜこの価格設定なのか自分で調べて納得できる人にしか響かない」製品になっていると言わざるを得ないだろう。
 BenQの日本法人であるベンキュージャパンにはもう少しやりようがあるのではないかとも思うが,ともあれ,モノは間違いなく良い。違いの分かる読者にお勧めしたい。

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ZOWIEのXL2720製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)

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