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「GeForce RTX 2070」レビュー。Turing世代第三の矢は「コスパ」を語れるGPUになったか?
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印刷2018/10/16 22:00

レビュー

Turing世代第三の矢は「コスパ」を語れるGPUになったか?

GeForce RTX 2070
(MSI GeForce RTX 2070 GAMING Z 8G)

Text by 宮崎真一


画像集 No.002のサムネイル画像 / 「GeForce RTX 2070」レビュー。Turing世代第三の矢は「コスパ」を語れるGPUになったか?
 日本時間2018年10月16日22:00,「GeForce RTX 2070」搭載カードのレビューが解禁となった。販売は17日0:01解禁となる。
 NVIDIAは8月にGeForce RTX 20シリーズの3製品を発表済みで,最上位モデルの「GeForce RTX 2080 Ti」(以下,RTX 2080 Ti)とそれに次ぐ「GeForce RTX 2080」(以下,RTX 2080)の2製品は搭載カードの流通が始まっているわけだが,いよいよ“三男坊”的なRTX 2070の登場となるわけだ。

 GeForce RTX 2080シリーズのレビューで筆者は,性能こそ前世代比で順当に向上しているものの,「Turing」(テューリング)アーキテクチャにおける新要素,とくにリアルタイムレイトレーシング用の「RT Core」,AI推論エンジンアクセラレータとしての「Tensor Core」がゲーム用途でどれだけ使われるかが不透明であることと,それら追加のハードウェアを搭載した結果としての追加コストが搭載グラフィックスカードの販売価格に跳ね返ってしまっていること課題だと指摘している。
 それだけに,下位モデルとなるRTX 2070にはより多くのゲーマーにとって現実的な選択肢となることを期待してしまうが,果たしてどうだろうか。

 今回4Gamerでは,RTX 2070搭載のMSI製カード「GeForce RTX 2070 GAMING Z 8G」(以下,RTX 2070 GAMING Z)を同社より入手できたので,その実力に迫ってみたい。

GeForce RTX 2070 GAMING Z 8G
メーカー:MSI
問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン MSIお客様ご相談窓口 supportjp@msi.com
メーカー想定売価:8万9800円(税込9万6984円)前後(※2018年10月16日現在)
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GPUコアは「TU106」を採用。その規模は「TU102」の半分に


 Turingアーキテクチャ,そしてRTX 2070というGPUの基本仕様については西川善司氏が詳しく解説しているが,本稿でもおさらいしておこう。

RTX 2070のGPUパッケージ。シリコンダイ上の刻印は「TU106-400A-A1」だった
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 RTX 2070は,Turingアーキテクチャに基づくGPUコア「TU106」を採用するGPUだ。Pascal世代のGPUを採用するGeForce GTX 10シリーズでは「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)と「GeForce GTX 1070」(以下,GTX 1070)で同じ「GP104」コアを採用しており,伝統的にもシェーダプロセッサを「CUDA Core」と呼び始めて以降のNVIDIAは「十の位」が7となるGPUで8と同じシリコンダイを採用してきたが,今回はそうではないというのがトピックとなる。

 TU106は,12nmプロセス技術(12nm FFN)を用いて製造され,108億トランジスタを445mm2というサイズのシリコンダイに集積するが,上位製品や従来製品のスペックを下のとおり並べてみると,位置づけは分かりやすいだろう。ダイサイズ比でTU104比約82%,GP104比で約142%という規模である。「GeForce GTX 1080 Ti」(以下,GTX 1080 Ti)のGP102コアに近い規模感と乱暴にまとめることもできそうだ。

  • RTX 2080 Ti(TU102コア):12nmプロセス技術,186億トランジスタ,754mm2
  • RTX 2080(TU104コア):12nmプロセス技術,130億6000万トランジスタ,545mm2
  • GTX 1080 Ti(GP102):14nmプロセス技術,118億8000万トランジスタ,471mm2
  • GTX 1080&GTX 1070(GP104):16nmプロセス技術,72億トランジスタ,314mm2

 ブロック図は下に示したとおりで,CPUにおける「CPUコア」的な存在,あるいは“ミニGPU”的な存在と言える「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)数は3基構成だ。これはTU102,そしてTU104コアのちょうど半分となる。

 演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)数はGPCあたり12基で,これはTU102コアと同じ(※TU104コアはGPCあたりのSM数が8基)。SMが64基のCUDA CoreとWarpスケジューラ,命令発効ユニット,それにロード/ストアユニット,L1キャッシュ,テクスチャユニット,そしてレイトレーシングにおける光線の生成と衝突判定を行うRT Coreを1基と,行列同士の積和算に特化したTensor Coreを8基統合する仕様なのはTuring世代で共通となるため,TU106のスペックは,TU102のフルスペック――なのでRTX 2080 Tiとは異なる――のちょうど半分という理解でいいだろう。

TU106コアのブロック図
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 下に示したスクリーンショットは「CUDA Toolkit」に含まれる「deviceQueryDrv.exe」を実行した結果だが,これを見るとL2キャッシュ容量は4MBだと確認できる。ちなみに4MBというL2キャッシュ容量はRTX 2080 TI比で3分の2で,RTX 2080とは同じだ。RTX 2070のメモリインタフェースはRTX 2080と同じ256bit仕様なので,L2キャッシュの容量も揃えてあるということなのだろう。
 搭載するメモリチップがGDDR6で,動作クロックが14GHz相当,メモリバス帯域幅が448GB/sというスペックもRTX 2080と完全に同じである。

RTX 2070に対するdeviceQueryDrv.exe実行結果
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 ここまでを踏まえ,RTX 2070とRTX 2080,そして従来製品のスペックは表1にまとめたとおりだ。

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入手した個体でブーストクロックは最大1980MHzに達した
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 上の表1にあるとおり,RTX 2070のGPU動作クロックはベース1410MHz,ブースト1620MHzとなる。
 ただし今回のテストで用いるRTX 2070 GAMING Zは,ベースクロックこそリファレンスと同じながら,ブーストクロックは1830MHzとリファレンス比で210MHzも高い。MSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.6.0 Beta 9)からテスト中の動作クロックを追ってみたところ,GPUコアクロックは1980MHzまで上昇していたので,MSIのゲーマー向け製品シリーズ最上位モデルとなる「GAMING Z」らしい動作クロック設定になっていると言えそうだ。

NVIDIAコントロールパネルの「システム情報」を確認したところ。カード標準のGPUブーストクロックは工場出荷時設定で1830MHzとなっていた
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Dragon Centerから動作モードをOCへ変更した例。この状態で再度[OC]ボタンをクリックすると,動作モードは標準のPerformanceへ戻る
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 動作クロック関連の話を続けると,RTX 2080 GAMING Zでは標準で「OC」「Performance」「Silent」と3つの動作モードが用意されており,付属アプリケーションの「Dragon Center」(Version 1.0.0.15)から切り替えられるようになっている。
 工場出荷時設定はPerformanceで,OCに変更するとベースおよびブーストクロックがいずれも15MHz上がる。また,Silentを選択すると,ベース1200MHz,ブースト1620MHzに下がった。Silentモードではブーストクロックのみリファレンス相当になるわけである。

ブーストクロックを手動で1620MHzまで下げたときのブースト最大クロックは1740MHzだった
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 興味深いのは,「Afterburnerを使ってRTX 2070 GAMING Zのブーストクロックを手動でリファレンスと同じ1620MHzまで落とすと,ベースクロックはSilentモードと同じ1200MHzにまで下がる」こと。これがGPUの仕様かカードの仕様か,はたまた今回用意したAfterburnerの仕様なのかははっきりしないが,いずれにせよ,RTX 2070 GAMING Zにおいて,動作クロックを手動でリファレンス相当に揃えるというのはできないようだ。

 なお,RTX 2070でも上位モデルと同様に「GPU boost 4.0」を採用し,「Second Temperature Target」(第2温度目標)をユーザーが適宜設定できるようになっている。また,コア電圧と動作クロックを自動で設定し直す「NVIDA Scanner」は健在だ。このあたりについてはRTX 2080 TiおよびRTX 2080のレビュー記事NVIDIA Scannerのテストレポートを参照してほしい。


約295mmと長いRTX 2070 GAMING Z。電源回路はRTX 2080 Founders Editionとほぼ同じ


カード長は30cm近い
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 続いてRTX 2070 GAMING Zのカードそのものを見ていきたい。
 カード長は実測で295mm(※突起部含まず)。NVIDIAのRTX 2080 Founders EditionやGTX 1070 Founders Editionなどは同267mmなので,それらと比べて30mm弱も長い計算になる。
 さらに言えば,マザーボードに差したとき,マザーボードの垂直方向へI/Oブラケットから約34mmはみ出ており,クーラーの厚さも3スロット仕様なので,かなり大きな印象がある。

カードを別の角度から。RTX 2070自体がSLIに対応しないため,NVLinkや従来型SLI用のインタフェースはない。カード背面側は金属製カバーが基板のほぼ全体を覆っている
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カードはファンの側から見ても側面から見てもかなり大きい
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Torx Fan 3.0仕様のファンブレードに寄ったところ
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Twin Frozr 7は標準で,低負荷時にファン回転を停止させる「ZeroFrozr」機能が有効になっている。無効化したい場合はDragon Centerから切り替えが可能
 カードの巨大さの原因となっているーラーはMSI独自のもので,同社は今回「Twin Frozr 7」(ツインフローザー7)と呼んでいる。
 Twin Frozr 7は100mm角相当のファンを2基搭載し,さらに,ファンの羽根は途中から傾きが変わるものと,2つの突起があり,一部に光沢加工も施してあるものを交互に組み合わせた「Torx Fan 3.0」(トルクスファン3.0)仕様となっている。MSIによれば,Torx Fan 3.0により,エアフローと風圧の向上を実現できているとのことだ。

 補助電源コネクタは8ピン+6ピン構成。RTX 2070のリファレンスデザインだと表1のとおり8ピン×1なので,RTX 2070 GAMING Zは6ピン1つ分(=75W分)だけ電力供給量の強化を果たしていることになる。
 外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4a×3,HDMI 2.0b(Type A)×1,USB 3.1 Gen.2 Type-C×1という構成だ。このあたりは,RTX 2080 TiやRTX 2080のFounders Editionと,配置場所も含めてまったく同じである。5系統のうち,同時に使えるのは4系統までとなる点も変わりない。

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補助電源コネクタは8ピン+6ピン仕様。切り欠きを利用して,一段低い箇所に実装されている
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外部出力インタフェース一覧。スリットの形状が異なるものの,インタフェースの構成と配置はRTX 2080 Founders Editionと同じだ

 グラフィックスカードのクーラーを取り外すのはメーカー保証外の行為で,MSI製カードの場合,取り外しを試みた時点でメーカー保証は失効するが,今回はレビューのため,特別に取り外してみよう。

GPUクーラーの背面カバーを取り外したところ
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 すると,カード背面の金属板が単なる補強用ではなく,熱伝導シート経由でGPUとメモリチップの熱を受けてヒートシンクとして機能するようになっていることや,Twin Frozr 7クーラーには8mm径が1本,6mm径が5本と計6本のヒートパイプが走り,2ブロックに分かれた放熱フィン部を結んでいること,GPUと枕経由で接触するほうとは別の放熱フィン部は熱伝導シート経由で大きな電源回路の熱を受けられるようになっていること,メモリチップと小さなほうの電源回路を覆う補強板兼ヒートシンクの用意があることなどを確認できる。

Twin Frozr 7を取り外したところ(左)。右はクーラーの底面側を別の角度から撮影したカットだ。ヒートパイプの流れや熱を受ける構造が見てとれる
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Twin Frozr 7単体を真上から撮影。2か所ある放熱フィン部を100mm角相当のファンがそれぞれカバーしている
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カード上面側の補強板兼ヒートシンクは,メモリチップと,外部インタフェース側の電源回路を覆う仕様になっていた

基板の表と裏
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 いま話に出てきた電源回路は,GPU用が8+2フェーズ,メモリチップ用が2フェーズという構成だ。GPUを中心として,電源コネクタ寄りの広いスペースに8フェーズ,外部出力インタフェース側に2フェーズという構成になっているのはRTX 2080 Founders Editionと変わらない。

 GPU用電源回路の8フェーズには,On SemiconductorのNチャネル型MOSFETである「FDPC5018SG」をフェーズあたり2基ずつ組み合わせ,一方の2フェーズにはUbiq SemiconductorのNチャネル型MOSFET「QA3111」をやはりフェーズあたり2基ずつ実装するといった豪華な仕様だ。
 チョークコイルの詳細は明らかになっていないが,8フェーズのほうにMSIのゲーマー向け製品でお馴染みとなっている「Gaming Dragon」のイラストが入っているのはなかなか印象的である。

 なお,搭載するメモリチップはMicron Technology製のGDDR6となる「MT61K256M32JE-14」(14Gbps品,チップ上の刻印は「8QA77 D9WCW」)だった。8Gbit品の同チップを8枚搭載することで,メモリ容量8GBを実現している。

8フェーズ電源回路には計16基のMOSFETが並ぶ(左)。右はその背面側で,こちらには電圧および電流モニタリング用としてOn Semiconductorの「NCP45491」が2基搭載されているのを確認できる
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画像集 No.029のサムネイル画像 / 「GeForce RTX 2070」レビュー。Turing世代第三の矢は「コスパ」を語れるGPUになったか?
2フェーズ分の電源回路には計4基のMOSFET
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搭載するメモリチップはMT61K256M32JE-14だ


ブーストクロックをリファレンスに手動で揃えた条件でもテスト


 テスト環境の構築周りに話を移そう。
 今回,比較対象としては,直接の上位モデルとなるRTX 2080と置き換え対象となるGTX 1070の両Founders Editionを用意。さらに,その性能がGTX 1080を超えるのではないかという推測の下,GTX 1080とその上位モデルであるGTX 1080 TiのやはりFounders Editionを用意している。

 主役となるRTX 2070 GAMING Zは,カード自体がメーカーレベルのクロックアップモデルであるため,今回はカードの定格と,それとは別に,ブーストクロックをリファレンスと同じ1620MHzへ手動で落とした状態(以下,MSI 2070@1620MHz)でもテストを行うことにした。

参考までに,RTX 2070 Founders Editionの製品イメージ(出典:NVIDIA)
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 ここまでお伝えしてきたとおり,RTX 2070 GAMING Zでブーストクロックを1620MHzへ落とすとブーストクロックも1200MHzに落ちてしまう。一方,搭載するGPUクーラーはFounders Editionと比べても明らかに規模が大きく,より高いブーストクロックを期待できるものになっている。そのため,「ブーストクロックをリファレンスと揃えた設定」ではあるものの,MSI 2070@1620MHzが必ずしもRTX 2070のリファレンス相当を示すものではない点はあらかじめお断りしておきたい。

 なお,MSI 2070@1620MHzでSilentモードを利用せず,手動設定を行っているのは,SilentモードでPower Target(電力目標)や電圧設定が変更になる可能性を考慮したためである。

 テストに用いたグラフィックスドライバは,RTX 2070のテスト用としてNVIDIAが全世界のレビュワーに配布した「GeForce 416.33 Driver」。Windows 10の電源プランは,最高性能が発揮できるよう「高パフォーマンス」を選択している。そのほかのテスト環境は表2のとおりだ。

画像集 No.068のサムネイル画像 / 「GeForce RTX 2070」レビュー。Turing世代第三の矢は「コスパ」を語れるGPUになったか?

 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション22.0に準拠。RTX 2070を「2560×1440ドット環境でのゲームプレイを想定したGPU」とNVIDIAが位置づけていることから,今回は2560×1440ドットに,3840×2160ドットと1920×1080ドットを加えた3パターンとした。

 そのうえで今回は,RT Coreを使ってリアルタイムレイトレーシングを行う「Star Wars Reflections」デモと,Tensor Coreを活用して「DLSS」(Deep Learning Super Sampling)を適用する,「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITON」の公式ベンチマークソフト「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下,FFXVベンチ)のDLSS対応版(リビジョン 1216052)もテストに使うこととしている。

 追加した2つのテストはいずれもRTX 2080 TiとRTX 2080のレビュー記事で用いたものだが,Star Wars Reflectionsのほうは,Windows 10 October 2018 Update対応の最新版「RS5」になる。ちなみに前回使ったのは「RS4」だ。
 アプリケーションのバージョンは変わったが,テスト方法は変わらず。解像度の選択肢は3840×2160ドットと2560×1440ドットの2つのみなので,それぞれ2回ずつ実行し,全長50秒間をフレームレート計測ツール「OCAT」(Version 1.2.0)で測ることになる。
 ただし,OCATでは最小フレームレートを取得できないため,代わりに「1 percentile」(以下,1パーセンタイル)を指標として用いることにした。なのでスコアは平均フレームレートと1パーセンタイルの2つだ。

 FFXVベンチ特別版のほうでは,DLSSとTAA(Temporal Anti-Aliasing)の両環境でFFXVベンチを実行し,総合スコアを取得。同時に「Fraps」(Version 3.5.99)で,FFXVベンチ実行中の平均フレームレートと最小フレームレートも記録する。
 DLSS対応版の仕様上,解像度は3840×2160ドットに固定される。また,Pascal世代のGPUはDLSSが利用できないため,それらではTAA環境でのみテストを行うので注意してほしい。テストは2回実行し,その平均をスコアとして採用することにした。

 実のところ,後者についてはNVIDIAからはFFXVベンチの解像度2560×1440ドット版がレビュワーに対してアナウンスされていたのだが,残念ながら16日朝まで待ってもリリースされなかった。
 また,Star Wars Reflectionsのほうは,正常に動作するものが届いたのが日本時間16日朝という状況だ。NVIDIAからはEpic Games製の新しいデモ「Infiltrator」も同時に届いたが,こちらは時間の都合でテストできていない。


RTX 2070の性能はRTX 2080比でざっくり8割前後か。クロックアップモデルはGTX 1080を安定して上回る


 いつものように「3DMark」(Version 2.6.6174)の結果から順に見ていこう。
 グラフ1は,DirectX 11世代の「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものとなる。ブーストクロックをリファレンスと揃えたMSI 2070@1620MHzは,置き換え対象となるGTX 1070に対して22〜25%程度高いスコアを示し,さらに,1〜3%程度とわずかながらもGTX 1080を上回った。
 一方,カードの定格動作となるRTX 2070 GAMING ZはMSI 2070@1620MHzからスコアを6〜9%程度上げており,メーカーレベルの動作クロック引き上げ効果はなかなかに大きいことを確認できる。
 RTX 2080との比較で言うと,MSI 2070@1620MHzで約79〜86%程度のところが,RTX 2070 GAMING Zでは86〜91%程度という力関係だ。

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 続いてグラフ2は,Fire Strikeから「Graphics test」の結果を抜き出したものになる。
 ここでもMSI 2070@1620MHzはGTX 1070と比べて23〜24%程度高いスコアを示すが,GTX 1080に対しては「上回る」とまではいかず,ほぼ横並びになった。RTX 2070 GAMING ZはそんなMSI 2070@1620MHzに対して約9%高いスコアを示すので,もちろんGTX 1080に対しても約8〜9%程度高いスコアとなる。対RTX 2080だと85〜86%程度だ。

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 同じくFire Strikeから,ソフトウェアベースで「Bullet Physics」を実行する事実上のCPUテスト「Physics test」の結果を抜き出したものがグラフ3となる。CPUが共通なので,スコアはキレイな横並びとなっている。

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 GPUとCPU両方の性能がスコアに影響する「Combined test」の結果がグラフ4だ。
 Fire Strike“無印”だとCPUの相対的なボトルネックによりスコア差が詰まりつつあるため,「Fire Strike Extreme」以上を見てみると,MSI 2070@1620MHzのスコアはGTX 1070に対して31〜36%とかなり大きなギャップを生んだ。GTX 1080に対しても4〜7%程度高いスコアとなる。

 RTX 2070 GAMING ZにいたってはGTX 1070比で42〜49%程度,GTX 1080比で14〜17%程度高いスコアなので,Turing世代の優位性が明らかな数字だと言える。これはRTX 2080 TiおよびRTX 2080のレビュー時と同じ傾向だ。

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 3DMarkのDirectX 12のテストである「Time Spy」,その総合スコアをまとめたものがグラフ5となる。
 ここで注目したいのは,MSI 2070@1620MHzが,GTX 1070はもちろんのこと,GTX 1080,そしてGTX 1080 Tiすら上回るスコアを記録しているところだ。さらにRTX 2070 GAMING ZもGTX 1080 Tiとのスコア差を8〜10%程度と有意なレベルにまで広げており,全体的にとても景気がいい。

 RTX 2080 TiおよびRTX 2080のレビューでも指摘したが,CUDA CoreレベルでFP32演算とINT32演算のオーバーラップ実行が可能になったことによる恩恵を受けたか,Asynchronous Compute性能に手が入ったか,または両方が理由で,DirectX 12世代のアプリケーションを前にしてTuring世代のスコアが伸びているようだ。

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 次にグラフ6はTime SpyからGPU testの結果を抜き出したものになるが,ここでも総合スコアを踏襲するスコア傾向が出ている。具体的には,MSI 2070@1620MHzのスコアはGTX 1080 Tiに対して1〜3%程度高い。
 また,RTX 2070 GAMING ZはそんなMSI 2070@1620MHzからスコアを8〜9%程度伸ばし,GTX 1080 Tiとの差を10〜12%程度にまで広げている。

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 CPU testの結果がグラフ7だが,ここではFire Strikeと同様に,CPUが同じなのでスコアも横並びとなった。

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 実際のゲームだとどうか。グラフ8〜10は「Far Cry 5」のテスト結果となる。
 1920×1080ドット解像度で相対的なCPUのボトルネックが近いためかスコアが丸まりつつあるものの,2560×1440ドット以上だと平均フレームレートでMSI 2070@1620MHzはRTX 2080の79〜82%程度,GTX 1080の108〜109%程度,GTX 1070の131〜136%程度というスコアを示している。

 RTX 2070 GAMING ZがMSI 2070@1620MHzから平均フレームレートを7〜9%程度伸ばし,GTX 1080 Tiの96〜100%程度とかなりいい勝負に持ち込んでいる点も要注目だ。

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 グラフ11〜13にスコアをまとめた「Overwatch」では,ゲームの仕様上,フレームレートの上限が300fpsとなるため,1920×1080ドットではスコアの頭打ちが発生してしまっている。そこでそれ以外の解像度を見ていくと,MSI 2070@1620MHzの平均フレームレートはRTX 2080の約79%,GTX 1080の109〜110%程度,GTX 1070の125〜127%程度で,GTX 1080を約1割引き離している。

 RTX 2070 GAMING ZでMSI 2070@1620MHzより平均フレームレートが約9%向上しているあたり,そして高解像度になるにつれてGTX 1080 Tiとの比較で不利になっていくあたりはFar Cry 5と同じ傾向だ。後者はメモリ周りのスペックがゆえだろうか。

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 「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)のテスト結果がグラフ14〜16だが,ここでMSI 2070@1620MHzの結果はなかなかに良好と言ってしまっていい。

 平均フレームレートで比較すると,MSI 2070@1620MHzはRTX 2080の84〜85%程度,GTX 1080 Tiの91〜100%程度,GTX 1080の120〜123%程度,GTX 1070の約139%。1920×1080ドット解像度の最小フレームレートが144fpsを大きく上回っており,垂直リフレッシュレート144Hz対応ディスプレイのポテンシャルを「高」プリセットでも活かし切れそうな点で,GTX 1080およびGTX 1070とは一線を画している。
 一方,RTX 2070 GAMING Zの平均フレームレートはMSI 2070@1620MHzより4〜5%程度高いだけと,クロックアップの効果はFar Cry 5およびOverwatchと比べて明らかに弱い。

 なお,RTX 2070 GAMING ZとMSI 2070@1620MHzのいずれも高負荷になるとGTX 1080 Tiに置いて行かれる傾向も見てとれるが,これもメモリバス帯域幅の違いが要因だろう。

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 グラフ17〜19は「Fortnite」のテスト結果だ。ここでもまず平均フレームレートを見てみると,MSI 2070@1620MHzはRTX 2080の79〜80%程度,GTX 1080 Tiの93〜96%程度,GTX 1080の115〜121%程度,GTX 1070の137〜142%程度と,GP104コアを採用する2製品に対する優位性がはっきり出た。「エピック」プリセットを選んだ状態で最小フレームレートが115.5fpsというのも,垂直リフレッシュレート120Hz超級のディスプレイを活用したいときに心強いデータと言える。
 RTX 2070 GAMING ZはそんなMSI 2070@1620MHzに対して8〜10%高い平均フレームレートを示しており,このあたりはFar Cry 5やOverwatchと同じ傾向になっている印象だ。

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 「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)の結果がグラフ20〜22だが,MSI 2070@1620MHzは平均フレームレートでGTX 1080 Tiに対して97〜98%程度と,あと一歩のところまで迫っている。GTX 1070に対しては3840×2160ドット条件で1.5倍という強烈なスコア差を付けており,GDDR6を採用するRTX 2070の持つ,GeForce GTX 10シリーズに対する足回りの強さを確認できよう。

 RTX 2070 GAMING ZのスコアはMSI 2070@1620MHz比で107〜108%程度なので,ここでもクロックアップの効果は出ている。平均フレームレートでGTX 1080 Tiを4〜5%程度上回っている点にも注目しておきたい。

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 続いてグラフ23は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
 ここでは1920×1080ドットで相対的なCPUのボトルネックが近いためスコア差が縮まりつつあるものの,2560×1440ドット以上だとMSI 2070@1620MHzがGTX 1080に7〜9%程度のスコア差を付けているのが分かる。また,RTX 2070 GAMING ZはそんなMSI 2070@1620MHzからスコアを7〜8%程度伸ばしている一方,GTX 1080 Tiには届いていないのも分かる。

 4Gamerのベンチマークレギュレーションでは,スクウェア・エニックスの最高指標となるスコア7000を超えるスコア8500をハイエンド環境の合格ラインとしているが,RTX 2080が3840×2160ドット条件でクリアしていくのに対してRTX 2070 GAMING Zは届かないというのは,NVIDIAの言う「RTX 2070は2560×1440ドット環境を想定したGPU」らしい結果と言えそうだ。

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 そんなFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ24〜26である。
 平均フレームレートはおおむね総合スコアを踏襲するが,RTX 2080 TiとRTX 2080のレビュー時と同様に,最小フレームレートはMSI 2070@1620MHzとRTX 2070 GAMING Zは,CPUの性能依存が高い1920×1080ドット条件でPascal世代のGPUより低い傾向が出ている。

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 「Project CARS 2」の結果がグラフ27〜29だが,ここではMSI 2070@1620MHzとGTX 1080が平均フレームレートで肩を並べている。RTX 2070 GAMING ZはMSI 2070@1620MHzからスコアを7〜9%程度伸ばしているものの,GTX 1080 Tiには届いていない。

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 Star Wars Reflections RS5のテスト結果がグラフ30,31である。
 RS4ではGTX 1080 Tiで実行可能だった解像度3840×2160ドット条件のテストが,今回はPascal世代のGPUすべてでエラーが出て実行できなかった。なので基本的にはGeForce RTX 20シリーズ同士で比較することになるが,平均フレームレートでRTX 2080と比べてMSI 2070@1620MHzが64〜73%程度,RTX 2070 GAMING Zで70〜80%程度という力関係は確認可能だ。
 RTX 2070のRT Core数は36基で,46基のRTX 2080と比べると約78%となるので,ここでのスコア差に純粋なRT Core数以外の要素も影響していることが分かる。

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 FFXVベンチの特別版を用いてDLSSのテストを行い,総合スコアをまとめたものがグラフ32だ。MSI 2070@1620MHzのDLSS有効時はTAA有効時に比べて約36%高いスコアを示した。TAAを有効化したGTX 1080 Tiと比べても約22%高いスコアである。

 RTX 2080でDLSSを有効化した状態と比べると約79%という結果だが,Tensor Coreの数はRTX 2080の368基に対してRTX 2070は288基と約78%の規模なので,妥当な結果と言っていいのではなかろうか。なお,DLSS有効時で比較するとRTX 2070 GAMING ZはMSI 2070@1620MHzに対して約8%高いスコアを示し,RTX 2080の約85%となっている。

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 グラフ33はそのFFXVベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートを抜き出したものになる。
 平均フレームレートは総合スコアに準じた結果となっているものの,最小フレームレートに着目すると,MSI 2070@1620MHzのDLSS有効時はTAA有効時に対して約39%高いスコアを示している。FFXVベンチは毎回微妙に異なるシークエンスを再生するので,必ずしも正確な比較ではないが,DLSSが最小フレームレートの改善に有効な可能性が高いとは言っていいのではないかと思う。

 なお,メーカーレベルのクロックアップが入ったRTX 2070 GAMING ZはDLSS有効時にクロック分だけしっかりとスコアを伸ばしている。

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クロック引き上げの代償としての「消費電力増大」には覚悟が必要。GPUクーラーの能力は申し分なし


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 RTX 2070のTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は175Wで,GTX 1070から25W増えてはいるものの,GTX 1080の180Wと比べれば5W低いレベルになる。では実際のところ,RTX 2070の消費電力はどの程度だと思っておけばいいのか。またRTX 2070 GAMING Zはクロックアップモデルだが,クロック引き上げの影響はどの程度あるのか。
 まずは「4Gamer GPU Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の電力推移を確認していきたい。

 その結果はグラフ34のとおりで,GTX 1080とGTX 1070には300Wを超える場面が一度も生じないのに対し,MSI 2070@1620MHzは23回もあるのを確認できた。消費電力は従来世代と比べてかなり増大しているわけだ。
 付け加えると,RTX 2070 GAMING Zでは300W超えの局面が30回に増えている。

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 グラフ34でまとめたテスト結果から中央値を求めた結果がグラフ35だが,こうして並べてみると,MSI 2070@1620MHzおよびRTX 2070 GAMING Zにおける消費電力の高さが浮き彫りとなる。
 MSI 2070@1620MHzはブーストクロックをリファレンス相当にまで落としているにもかかわらずGTX 1080 Tiより20W弱高く,RTX 2070 GAMING Zに至ってはRTX 2080まであと少しというレベルだ。大型のGPUクーラーを搭載し,リファレンスより多くの電力を供給できるカード設計を行ったことのデメリットが表れたと言えるだろう。

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 さらに,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を比較したものがグラフ36となる。
 なお,テストにあたっては,Windows 10の電源プランを標準の「バランス」に戻したうえで,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されるように設定。そして,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分間放置した時点を「アイドル時」とする。

 というわけでデータを見てみると,ここではGTX 1080 Tiの最大消費電力が明らかに高い。それを除くと4Gamer GPU Checkerで計測した結果を踏襲しており,MSI 2070@1620MHzはGTX 1080に大差を付け,またRTX 2070 GAMING ZはRTX 2080に迫るものとなった。

※そのまま掲載すると縦に長くなりすぎるため簡略版を掲載しました。グラフ画像をクリックするとグラフバーに値の入った完全版を掲載します
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 最後に,「GPU-Z」(Version 2.12.0)を用いて計測したGPUの温度データも並べておきたい。ここでは,室温を約24℃に保った環境でシステムをPCケースに組み込まない,いわゆるバラック状態でテストを実施することにした。そのうえで,3DMarkを30分間連続実行した時点を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-ZでGPUの温度を取得したものがグラフ37となる。

 GPUごとに温度センサーの位置が異なる可能性が高く,また,温度の制御法もGPUクーラーも異なるため,横並びの評価に意味はない。それを踏まえたうえで結果を見ていくと,MSI 2070@1620MHzとRTX 2070 GAMING Zはともに高負荷時で69〜70℃程度とかなり低めだ。消費電力の高さを考えると,搭載するTwin Frozr 7クーラーの冷却性能は相当に高いと言っていいだろう。
 なお,アイドル時の温度がむしろ高めなのは,Zero Frozrが有効になってファンの回転が停止するためである。

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 Twin Frozr 7の動作音について,筆者の主観であることを断ったうえで簡単に述べておくとするなら,このクラスの製品としては十分静音性が高いように感じられる。少なくともRTX 2080 Founders Editionよりは確実に静かという印象だ。


税込価格は7万円台前半から9万円台半ば。やはり「新機能」がカギに


RTX 2070 GAMING Zの製品ボックス
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 RTX 2070 Founders Editionなど,NVIDIAのリファレンスかそれに近い仕様のカードを入手できていないため,正確なことまでは断言できないが,ブーストクロックをリファレンス相当にまで落とした状態でもテストした限り,RTX 2070の性能はRTX 2080比で約8割程度で,GTX 1080と以上のものを期待できるレベルとまとめられそうだ。
 さらに,メーカー独自でクロックアップを行い,かつ適切な冷却機構と電力供給を行った製品であれば,増大する消費電力と引き換えにしてGTX 1080 Tiと勝ったり負けたりの性能を得られる可能性もあるだろう。3D性能という観点で言えば,そのポテンシャルはかなり高い。

RTX 2070 GAMING Zはファンの周囲と本体側面のロゴ部にLEDが埋め込んであり,色や光り方を付属アプリケーション「Mystic Light」から細かく調整できる
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 気になるRTX 2070搭載カードの価格だが,リファレンス仕様で499ドル,NVIDIAのFounders Editionが599ドル(いずれも税別)という北米市場におけるメーカー想定売価に対し,国内価格は6万6000〜9万円(税込7万1000〜9万7000円)程度になりそうだ。たとえばMSIは国内でRTX 2070 GAMING Zと,もう1つ,リファレンスクロック設定の「GeForce RTX 2070 ARMOR 8G」という製品も用意しているが,同社によるメーカー想定売価は以下のとおりとなる。

  • RTX 2070 GAMING Z8万9800円(税込9万6984円)前後
  • GeForce RTX 2070 ARMOR 8G6万5800円(税込7万1064円)前後

 実際に購入を検討する立場からすると,「十の位」が7のグラフィックスカードに10万円近い投資というのはやはり厳しいというのが正直なところではないだろうか。とくに,リアルタイムレイトレーシングやDLSSといった,RT CoreやTensor Coreを活用する新要素が,レビュワー向けのテストすら十全には間に合っていない現時点の話となるとなおさらだ。

MSIはRTX 2070 GAMING Zとは別に,リファレンスクロック設定のカードとしてGeForce RTX 2070 ARMOR 8Gも用意しており,こちらは6万5800円(税込7万1064円)で10月23日発売予定となっている。“初値”でこれくらいならなんとか手が届くという人もいるのではなかろうか
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 RTX 2080と同様,RTX 2070の普及も,リアルタイムレイトレーシングやDLSSといった新要素が,多くのタイトルでちゃんと使えるようになり,さらに,価格がこなれるのを待つ必要があるのではなかろうか。純然たる3D性能には期待できるだけに,新要素の普及と搭載カードの販売価格動向が今回もカギとなるだろう。

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NVIDIAのGeForce RTX 20シリーズ製品情報ページ


MSIのRTX 2070 GAMING Z製品情報ページ

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    GeForce RTX 20,GeForce GTX 16

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    G Series

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