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「世界一のプロゲーマーがやっている努力2.0」発売記念インタビュー。ときど氏に書籍の内容や大会で勝ち抜くための秘訣,近況についてを聞いた
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印刷2019/12/05 00:00

インタビュー

「世界一のプロゲーマーがやっている努力2.0」発売記念インタビュー。ときど氏に書籍の内容や大会で勝ち抜くための秘訣,近況についてを聞いた

画像集 No.017のサムネイル画像 / 「世界一のプロゲーマーがやっている努力2.0」発売記念インタビュー。ときど氏に書籍の内容や大会で勝ち抜くための秘訣,近況についてを聞いた
 東大卒の経歴を持つプロゲーマーときど氏による初のビジネス書「世界一のプロゲーマーがやっている努力2.0」(以下,努力2.0)が,本日(2019年12月5日)ダイヤモンド社から発売される。価格は1500円+税。

 国内のeスポーツ黎明期よりプロとして活躍し,さまざまな大会で結果を残し続けているときど氏。2017年には,世界最大級のeスポーツ大会「Evolution Championship Series」(通称,EVO)で劇的な優勝を果たし,コアなeスポーツファンだけでなく,観戦していた多くの日本人に感動を与えた。

EVO 2017より Photo by タイナカジュンペイ
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 ときど氏は,2014年に自身の半生を記録した自叙伝「東大卒プロゲーマー: 論理は結局、情熱にかなわない」(以下,東大卒プロゲーマー)を執筆しており,本書は2冊目の自著となる。従来の努力で勝てなくなったスランプから抜け出すためにたどり着いた,「努力のアップデート=努力2.0」が記されているという。
 4Gamerでは,発売直前のタイミングでときど氏にインタビューを実施。「努力2.0」で書かれる内容や大会で勝ち抜くための秘訣,自身の近況についてを聞いてみたので,その模様をお届けしたい。

※インタビューは2019年11月25日に実施

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アップデートのきっかけは第3期「TOPANGAリーグ」のももち戦。「努力2.0」ではそのノウハウが記される


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。12月5日にときどさん初のビジネス書「努力2.0」が発売されます。こちらはどのような内容になりますか。

ときど選手:
 ひと言で言うとノウハウ本です。自分の半生をまとめた「東大卒プロゲーマー」では,本の最後に「自分は今後やり方を変えて,がんばっていくんで皆さん応援してください」といった内容を書いたんですが,実際にどのように取り組み方を変えて結果を残してきたか,といった部分にフォーカスを当てました。

4Gamer:
 「東大卒プロゲーマー」が発売されたのが2014年ですから,それ以降の取り組み方の変化について伝えているということでしょうか。

ときど選手:
 東大の合格やプロゲーマーになるまでの努力が「Ver.1.0」で,そこからさらに結果を残すために「Ver.2.0」にアップデートしたわけです。自分のようなゲーマー風情が偉そうに言えることではないかもしれませんが,ビジネスマンだったり,自分と同じように勝負の場に立っている人たちに,何か伝わるものがあるんじゃないかと思って。
 
4Gamer:
 東大に合格するほどの努力であっても,勝負の世界ではさらに改良する必要があったわけですね。

ときど選手:
 はい。自分はこれまでの人生で2回,大きな壁にぶつかっています。1回目は大学院時代なんですが,対策不足で希望していた研究室に入れなかったんです。その時はただ逃げるように離れてしまいました。今だからこそ言えることだとは思うんですが,その当時の自分がこの本を読んだら,違う道を歩んでいたかもしれません。

4Gamer:
 そうなると,もう1つの大きな壁が努力をアップデートするきっかけになったわけだと思いますが,その壁とは何だったのでしょうか。

ときど選手:
 これはいろいろな場所で話してはいるんですが,2013年に開催された第3期「TOPANGAリーグ」入れ替え戦のももち選手との試合です。それまでの大会や試合でも,力量や技術の差を感じるときはあったんですが,年に数回もない重要な試合,多くの人が観てくれる場所で,自分の弱さや拙(つたな)さを見せてしまったんです。この試合は自分の人生の大きな転換につながりました。

4Gamer:
 勝負事には負けも付きものですし,とくに格闘ゲームは対策の有無で大きく勝率が変わります。そこまでショックを受けた理由はなぜですか。

ときど選手:
 「TOPANGAリーグ」は基本的に10本先取の長期戦で行われるのですが,負け方がとにかく酷かった。6-1まで自分がスコアを優勢に進めたのですが,そこからももち選手が自分の動きに完全に対応してきて,逆転負けを喫したんです。対戦相手とキャラが分かっているからお互いに準備をして,勝負をするわけですが,自分が持ち込んだ材料が少なすぎました。完全に力負けでした。

4Gamer:
 ももち選手との試合がきっかけで努力のアップデートを行ったとのことですが,そのなかでもとくに大きな変化はなんだったと思いますか。

ときど選手:
 どれも大きな変化だったんですが,強いて言うなら,プレイするタイトルを1本に絞ったことになると思います。それまでは何本も並行してプレイしていて,上位入賞はできていたんですが,どうやってもトップは取れませんでした。
 今後全体のプレイヤーレベルが上がったり,もっと才能がある人が現れたら,自分がトップを取るどころか,存在感を出すことも難しくなってしまうことを感じたんです。

4Gamer:
 プロになりたてのころは確かにマルチで活躍するプロゲーマーという印象が強かったことを覚えています。

ときど選手:
 当時は日本のプロ格闘ゲーマーも少なく,全体的な競技レベルが未成熟でした。現在はプロ格闘ゲーマーも増え,お金も稼げるようになり,ゲームに対して多くのプレイヤーが本気で取り組むようになりました。昔のようにマルチに活躍すること自体がかなり難しい状況だと思います。

4Gamer:
 広く浅くから,狭く深くに練習方法を変化させたわけですね。

ときど選手:
 浅いところの攻略はもうほとんどのプレイヤーが知っていて,本気でプロとして勝つために,もっと深い攻略――ほかの人が気付かないような攻略で差を付ける必要性が出てきたんです。

4Gamer:
 タイトルを1本に絞るにあたって,「ストリートファイター」シリーズを選びましたが,これには何か理由がありますか。

ときど選手:
 単純に,最もレベルの高い選手が集まっている競技だと思っているからです。倒したいと思える魅力溢れるプレイヤーが多かったから。一筋縄ではいかない相手ばかりで,倒しがいがありますよ。

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4Gamer:
 ときどさんと言えば,最近は体を鍛えたり,空手に通ったりと,ゲーム外の鍛錬も欠かしていないイメージが強くあります。これらも努力のアップデートを行った結果ということなんでしょうか。

ときど選手:
 トレーニング関連は学生時代から興味がありまして,実はかなり昔から取り組んでいるんです。ただ,本腰を入れ始めたのはももち選手との試合後ですね。ゲームを1本に絞ることで,ゲーム外のいろいろなことを見るようになったんです。複数タイトルをプレイしていたときは,空いた時間はほかのゲームを……といった感じで練習1本だったので,時間の使い方が変わりました。

4Gamer:
 ゲーム外の鍛錬や努力で,とくに結果につながったと感じるものは何になりますか。

ときど選手:
 いろいろと並行して取り入れましたから何が一番かは分かりませんが,大会成績は大きく伸びましたよね。筋トレも空手もメンタルの安定につながっていますし,大会はどうしても緊張してしまうものなんですが,そんな中でもいい集中をできていると感じています。

4Gamer:
 複数タイトルで活躍していた頃のときどさんは,上位に残るものの,勝ちきれない大会が多かったように思えましたが,近年はそんなイメージも払拭され,大舞台でも多く結果を残していますよね。

ときど選手:
 以前の自分は,勝負どころで無難な選択肢――豪鬼で言うと「阿修羅閃空」といったパスできる行動ばかり選んでいました。安定行動ではあるんだけど,1点読みに弱い行動と言いますか。今は勝負所で逃げずに,勝負を仕掛けるようになりました。

※阿修羅閃空:豪鬼が使用する必殺技。攻撃判定がない移動技で,一定距離を完全無敵になって移動する。相手の攻めに対して強力な拒否行動となるが,硬直もあり,1点読みされると手痛い反撃を受けやすい

 ただ,これもプレイするタイトルを1本に絞った結果かもしれません。分かりやすく強い安易な選択肢に頼るのでなく,もっとほかに選択肢はないかを探れるようになったおかげだと思います。それで自分のプレイが粘り強く見えるようになったのかもしれません。

4Gamer:
 今年のカプコンプロツアーでも多くの大会で上位に残り,3位という結果で決勝大会出場を決めています。

ときど選手:
 自分の使っている豪鬼が性能面で高い水準をキープしてくれているので勝てているということはあると思います。ただ,今年は2017年,2018年と比べると勝ちにくくなりました。「ストV」も今年で4年目ですが,全体のレベルは相当上がっているように感じます。

4Gamer:
 豪鬼と言えばときどさんの代名詞で,2017年に追加された直後から使用しています。やはりキャラ愛はありますか。

ときど選手:
 あるにはあると思うんですけど,もし,どうにもできなくなったらキャラ変えも考えなければならないでしょう。ただ,豪鬼って“必殺技が多彩で移動が速い”というキャラコンセプトがあるんで,そこが崩れなければ勝てる武器は見つけられるんじゃないかなと思っています。

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大会を勝ち抜くためにはメンタルの安定が必要不可欠


4Gamer:
 「努力2.0」の表紙は,「EVO 2017」優勝直後のものですよね。この時のグランドファイナルの対戦相手は,Punk選手でした。当時どの程度勝算はあると思っていましたか。

ときど選手:
 勝てると思っていました。練習で対戦した時に相手の戦い方を理解できましたし,自分にはPunk選手と同じキャラを使っていたマゴがいたので対策もできていました。アメリカには豪鬼使いが少なかったことも大きかった。
 ほかにも自分はLoser'sを進んでいったわけですが,内容のいい試合が多くて調子が上がっていました。こういった状況も大きなアドバンテージだったんだと思います。

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4Gamer:
 近年のときどさんはLoser'sに落ちても,そこから巻き返しを見せる大会が多いように感じます。

ときど選手:
 Loser'sに落ちてしまうとショックを受ける選手は多いと思いますし,実際に昔の自分もそうでした。ただ,いまの自分は逆に気合いが入ると言いますか,Loser'sに落ちて,後がない状況であるからこそ,負けるにしても前のめりで負けようと思い,戦っています。
 1度負けたあとなんで当然メンタルに出やすいんですが,それを自覚したうえで対処法を確立させておくことが大切です。

4Gamer:
 思考が完全にプロアスリートのそれですね。

ときど選手:
 これは自分のプロゲーマーのキャリアの積み重ねの結果であって,経験が少ないプレイヤーは切り替えが難しいかもしれません。自分だけでなく,シーンのトップで活躍しているプレイヤーはトーナメントの戦い方を熟知していると思いますよ。

4Gamer:
 「EVO 2017」では,Loser'sラウンドを勝ち進み,前日に敗れたPunk選手をも打ち破り,見事優勝を果たしました。用意されていたような展開で,まるでドラマを見ているようでした。

ときど選手:
 いや,本当にそうですよね。あの年を超える展開をいつかまた見せられたらとは思うんですが,難しいかもしれません。当時のPunk選手はちょうど名が売れてきたところで,若く勢いもあって,「EVO 2017」でも絶対的な存在でしたし。

4Gamer:
 同年に開催された「Capcom Cup 2017」でもときどさんは準優勝という結果を残しました。グランドファイナルの対戦相手となったドミニカのMenaRD選手は,やはりダークホース的な存在だったのでしょうか。

ときど選手:
 正直,完全にノーマークでした。ただ,本当に強かった。Punk選手もそうでしたが,若く勢いのある選手って,自信に溢れたプレイを見せるんですよ。それが乗ってくるともう手が付けられない。海外の環境だと,何年に一度かそういった選手が出てくるんですが,日本だとちょっと出にくい土壌ができてしまっているように思えます。

4Gamer:
 と言いますと,どういうことでしょうか。

ときど選手:
 自分と同じ世代のプレイヤーが強すぎるんです。強くやる気に満ち溢れた若手選手も多くいるんですが,我を通すプレイだとどうしても勝てなくなってしまう。そのまま自分のプレイに自信を持って伸びていければいいんですが,その壁が高く分厚いんです。

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英語力の原点は17歳の「EVO」初参加


4Gamer:
 日本のプロ格闘ゲームシーンも続々と若手が参戦しています。ときどさんから見て,有望株はいますか。

ときど選手:
 今がんばっている若手はみんなめちゃくちゃ強いですよ。自分が若い頃より全然強いですし,真面目にやっているのを感じます。

4Gamer:
 ときどさんは常々,プロ格闘ゲーマーには強さだけでなく,コミュニティからの信頼感も必要とおっしゃっています。若手プレイヤーがそれを獲得するには何をするべきだと思いますか。

ときど選手:
 今の若手って家庭用機のオンライン対戦や,みんなで集まるオフライン対戦会がメインだと思うんですが,そういった環境では,身内からの信頼感は得られてもシーン全体からの信頼感がなかなか得られないんです。自分が若いころはゲームセンター全盛期で,年上のプレイヤーがいろいろと教えてくれたり,上下関係を学ぶことができた。それに変わる何かを自分たちがしてあげられるのがいいと思っているんですが……。

4Gamer:
 年齢も立場も異なるプレイヤーが集まっていたゲームセンターという環境は,ある種の社交場という側面もあったわけですね。

ときど選手:
 自分は17歳の時に初めて「EVO」に参加したんですけど,ゲームニュートンの松田さんやヌキさんと一緒に行ったんですよ。松田さんに“通訳”に任命していただいて(笑)。当時の自分からすれば「まじかよ……勘弁してくれ……」って感じだったんですが,実際すごくいい経験になりました。

4Gamer:
 それは聞くだけで大変そうな経験ですね。

ときど選手:
 ただ,海外の格ゲーコミュニティとの橋渡しをすることで,「これまで勉強してきたことが役に立つこともあるんだな」って体験できたんです。だから日本に帰ってからさらに英語の勉強をがんばりましたし,今では本当に感謝しています。

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4Gamer:
 ときどさんは英語も堪能ですし,海外勢とも友好な関係を築けていますよね。今年ドミニカで開催された「Gamer Over 2019」では大会で現地勢に誕生日を祝ってもらっていましたね。

ときど選手:
 あれは本当にうれしかった。MenaRD選手の家にお邪魔したんですけど,彼のお母さんにご飯をつくってもらいましたし,コミュニケーションが確実にプラスに働いています。日本は格ゲーのメッカですけど,それに甘えず,海外勢とも交流して,いい部分を吸収していくことが大切だと思っています。
 そもそも,今の自分が英語でコミュニケーションを取れるのだって,松田さんとヌキさんとの「EVO」参加がきっかけですし,やはり2人には感謝しかないです。

4Gamer:
 そこに帰結するわけですね。

ときど選手:
 自分はゲームをしてかなり得をしていますね。英語が得意になったり,海外勢の友人が増えたり,さらにプロゲーマーとして仕事にもなっていますし。ゲームへの恩返しじゃないですけど,ゲームで得られた素晴らしい体験や経験を一般の方にも伝えていきたいです。

4Gamer:
 「Gamer Over 2019」では誕生日を祝われつつ,さらに優勝という結果を残しました。大会中はプレッシャーもすごかったのではないでしょうか。

ときど選手:
 あの大会は絶対に勝たなくてはいけないって思って戦っていましたし,その日だけ勝てればいい動きになっていました。結果的に優勝できてよかったんですけど,内容的には褒められたものではなかったと思っています。ただ,それほどまでに何としてでも勝ちたい大会でしたね。

4Gamer:
 ときどさんは大会で優勝をしても喜ぶ様子をあまり見せませんし,負けても淡々としているイメージがあります。そういった話を聞くと,内心ではけっこう喜んだり,悲しんだりしているんですね。

ときど選手:
 自分は感情はため込んだほうがいいと思っていて,あまり外に発散させないように意識はしているんです。発散させてしまうとそれで満足して,ゲームをやらなくなってしまうので。

4Gamer:
 選手によっては,全身で感情を表現する人もいますよね。

ときど選手:
 もちろん自分もうれしいですよ(笑)。ただ,自分の場合,戦いってずっと続いていくものなんです。そこで満足はなかなかできないなって思ってしまいます。負けたときも,納得は当然していないんですけど,悔しがってもしょうがない,次は……といった気持ちが強いです。

4Gamer:
 先ほども話が出ましたが,メンタルのコントロールはできていると。

ときど選手:
 ただこれは大会のルールが要因だとも思います。2セット先取のダブルエリミネーションで本当の実力を測るのは無理があります。だから,入れ替え戦でももち選手に負けたときはショックでしたし,最近だとウメさん(ウメハラ選手)との獣道もそうでした。

4Gamer:
 確かに獣道では敗北後に涙を見せるシーンもありました。普段のときどさんからは考えられないリアクションで,驚いたファンも多かったかもしれません。

ときど選手:
 獣道は事前にキャラを申請して,10本先取でどっちが強いか決めようっていうルールですから,言ってしまえば昔のアーケードスタイルです。自分にとっては絶対に勝ちたかった特別な試合だったので,負けたときは本当にショックを受けました。

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人生の目標は“最もコミュニティから信頼される人物”になること


4Gamer:
 ときどさんは自身の目標として最強のプレイヤーになることを公言しています。ときどさんが考える最強のプレイヤー像とはどのようなものなのでしょうか。

ときど選手:
 「EVO」で優勝するとか,「Capcom Cup」に優勝するとか,そういうことではなくて,もちろん強さは絶対に必要な要素なんですが,それに加え,ほかのプレイヤーやシーンのファンといったコミュニティ全体から,最も信頼を受ける人が,自分が考える最強のプレイヤーです。

4Gamer:
 その目標は何をすれば達成できると考えていますか。

ときど選手:
 何をとはなかなか言えませんが,1つ基準を作るのであれば,1つのゲームをどこまでも深く追求して,やり尽くし,そのプレイを見せられるかってことです。ただ,これも自分は全然できていなくて,現時点ではウメさんのほうが深く追求できていると思います。

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4Gamer:
 日本では現在,eスポーツブームが来ています。ブームはいつまで続くと思いますか。

ときど選手:
 いつまでも続いてほしいですよね(笑)。ただ,自分もあぐらをかくのでなく,プレイヤーとして最大限の努力をします。今は頼りになる仲間もたくさんいますし,魅力あるプレイヤーがこれから増えていけば,ブームで終わるようなことはないんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 ウメハラさんがプロ格闘ゲーマーの道を拓いてから9年が経ち,格闘ゲームのプロもかなり増えました。

ときど選手:
 今は時代が変わって,就職する気構えでプロゲーマーになる人も少なからずいるような気がします。賛否はあると思いますが,プロになれるチャンスが増えて,素晴らしい時代になったなと感じています。

4Gamer:
 9年前に同じ状況であれば,もっとプロゲーマーは増えていたと思いますか。

ときど選手:
 いろんな人がプロになっていたんじゃないでしょうか。鉄拳だったら二代目メンストリュウは絶対プロになれる実力でしたし,ウル4だったらwaoさんもすごかった。プロの道を選んでいたかどうかまでは分かりませんが,少なくともオファーは絶対に来たと思います。

4Gamer:
 最近ではプロ格闘ゲーマーの結婚や出産のニュースも増えました。ときどさんも続く予定はありますか。

ときど選手:
 業界的にはすごくいいニュースばかりですよね。それだけ安定した生活が送れるようになったということですし。ただ,自分がするかと言われると悩ましい……。自分は好きなことをしたくてプロゲーマーになったわけで,もし嫁さんにゲームと自分,どっちを選ぶのって聞かれたら,ゲームって言うんじゃないかって……。

4Gamer:
 間もなく今年の総決算とも言える「Capcom Cup 2019」がアメリカで開催(現地時間12月13〜15日)されます。自信や展望を聞かせてください。

ときど選手:
 自分はかなりきついブロックに放り込まれたんですが,モチベはめちゃくちゃ高いですね。1回戦の相手がこれまでかなり煮え湯を飲まされてきたザンギ使いのキチパーム選手なんですが,今はとにかくザンギ対策を詰めまくっています。

4Gamer:
 今年の注目選手はご自身以外ですと誰になりますか。

ときど選手:
 毎年本命が勝っていない大会ですし,今年はとくに日本と海外の実力差が埋まってきているので,誰が勝ってもおかしくないですよ。カプコンカップは毎年全員がめちゃくちゃ気合入れて仕上げてくるんで,参加する身としては楽しみで仕方ないです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。最後に本日発売となりました「努力2.0」を楽しみにしている方に向けてメッセージをお願いします。

ときど選手:
 「努力2.0」には,自分が取り組み方を変えて,プロゲーマーとしてさらに結果を残せるようになったノウハウが詰まっています。最初にも少し触れましたが,さまざまな職種の方や,勝負の場に立っている方に何か通ずるものがあると思い,書かせていただきましたので,ぜひ一度お手に取って読んでもらえればと思います。

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