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[GDC 2023]このゲームのキャラクターは呼吸音からして違う! 「The Last of Us」シリーズの“息づかい専用のオーディオシステム”についてスタッフが解説
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印刷2023/03/24 15:43

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[GDC 2023]このゲームのキャラクターは呼吸音からして違う! 「The Last of Us」シリーズの“息づかい専用のオーディオシステム”についてスタッフが解説

 アメリカ・サンフランシスコで開催中の「GDC 2023」にて,「The Last of Us: Part I and IIに命を吹き込む」というタイトルのセッションが行われた。PlayStation Studiosのシニア・サウンドデザイナーであるビュー・ヒメネス(Beau Jimenez)氏,及びNaughty Dogのシニア・サウンドデザイナーであるジェシー・ガルシア(Jesse Garcia)氏の2人が登壇し,「The Last of Us」シリーズにおけるキャラクターのリアルな描写について語った。

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PlayStation Studiosのシニア・サウンドデザイナーであるビュー・ヒメネス(右)氏と,Naughty Dogのシニア・サウンドデザイナーであるジェシー・ガルシア氏。ヒメネス氏は,PlayStation 5へのテクノロジーの移行をサポートするために出向の形で開発サポートしたようだ
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 「The Last of Us」は,Naughty Dogの手がけるアクションアドベンチャーシリーズだ。PlayStationハードウェアの性能を最大限に駆使し,キャラクターの表情を含むグラフィックスや俳優の演技だけでなく,細かい部分まで気を配った,非常にリアルな人間描写を実現したことで高い評価を受けている。

 シリーズでは,敵に襲われた時は唸り声を上げながら応戦したり,走れた粗い息づかいで呼吸したりするといった緊迫感を高める表現をしていたそうだが,2013年にリリースされた「The Last of Us」(Part I)では,正確な表現ができていなかったそうだ。
 理由としては,呼吸音のサウンドクリップをアニメーションフレームのキューに合わせて手作業でタグ付けしていたこと,メモリーにロードするのではなくストリーミングという手法に頼っていたことが挙げられており,結果としてゲームの状況との遅延が起きていたのだという。

 これを踏まえて「The Last of Us: Part II」の開発では,「PlayStation 5」のソフトウェアエンジンに頼ることで,どれだけ表現を進化させられるかについて,ヒメネス氏とガルシア氏らを中心にさまざまな議論が行われたという。

 そこで生まれたのが,人間のキャラクターすべての呼吸音や,インフェクテッドの唸りや叫び,犬の吐息などを「Murmuration」(息づかい)としてまとめるというコンセプトだ。これにより,キャラクターの出す生物音はループ化したサウンドとしてデータ処理され,フレームごとに吐息をメモリー内で処理することになった。

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 例えば,犬のハアハアという息づかいのサウンドは,犬が吠えた際には当然止まっていなければおかしい。そこで,Murmurationを最下級のプライオリティとして位置付けし,アクションや会話が発生した際には自然にフェードアウトする仕組みにしているのだ。

 そして,Murmurationを実際に制御したのが,「Heart Rate」(脈拍)という隠しパラメータだ。これには「探索(歩行移動)」「ステルス(しゃがみなど)」「コンバット」という3つの肉体的な変化に,それぞれ「歩行」と「疾走」という2つの状態を組み合わせた6種類が存在。疾走時はさらに「走行」「スプリント」「全速力(疲労)」という3つの状態に細分化し,走れば脈拍が自動的に上昇し,移動を停止すればじょじょに脈拍が落ち着いていくというシステムを作ったのだ。

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画面右下にあるのが,各キャラクターの隠しパラメータと言うべき脈拍モニターで,歩行から走行に変化していくのに合わせて緑部分が増えていき,それに合わせて呼吸も荒くなっていく
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 Murmurationは,それぞれの状況6種類のボイスデータに合わせて,吸う音と吐く音が1回ずつサンプリングされ,それがルーピングするという仕組みだ。脈拍の状態に合わせていきなり吐息の効果音が変化するのではなく,自然な息づかいに聞こえるようシームレスに吐息のループに変化が加えられていることが,会場で公開されたデモムービーでも聞き取れた。

 Murmurationのルーピングは,キャラクターの移動時だけでなく,ゲーム中のストーリー体験にも大きく影響を与えている。近くに敵がいるために隠れている場合,敵が近寄ってくれば恐怖のために脈拍も一気に上昇し,呼吸音が平静を保てなくなっているかのような,喘ぎに近い音へと変化する。この際には,呼吸のループがカスタムアセットにオーバーライドされているのだという。

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 こうしたシステムは,Naughty Dogのプログラミングやアニメーション部門などにもしっかりと共有されており,「口を閉じて鼻で息をしている」という状況から「口を開けて大きく呼吸している」に変化していく表情アニメーションがサウンドにタグ付けされる。全力で走り続けていれば,顔もしかめっ面になっていくし,立ち止まって脈拍が正常化していくに従い,表情も穏やかに戻って行くなど,サウンドが引っ張る形の表情アニメーションを実現したという。

全力疾走中のエリーの表情。アニメーションは脈拍と同期されており,意外なほどしかめっ面していたことが分かる
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 ゲームにおけるサウンドでも,キャラクターの吐息まで聞いているゲーマーは少ないかもしれないが,こうした部分まで妥協することなく手が加えられているからこそ,ゲームは世代を超えて進化していく。「The Last of Us: Part II」をプレイする機会があれば,ぜひヘッドセットを装着してじっくりと呼吸音に耳をそばだててみると良いだろう。また,ありがたいことにヒメネス氏は2年前に,Twitterにてこのテクノロジーについての動画をいくつか公開してくれている。こちらもぜひチェックしてほしい。

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