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本作は1930年代の古典的なカートゥーンと,ノワールでハードボイルドな探偵活劇を融合させたFPSだ。
1コマ1コマ手描きされたラバーホースアニメ(手足がゴムホースのようにグニャグニャ動く1920〜30年代のスタイル)調のビジュアルは,数年前から多くの期待を集めていた。リリース後のSteamでの評価も「圧倒的に好評」(4月22日時点)で,待った甲斐のある仕上がりだ。
さっそく筆者も,冷めてしまったコーヒー……いや,本作風にいえば「冷めたチーズフォンデュ」を流し込んで,事件の調査へ向かおうと思う(冷めたチーズフォンデュは流し込めないだろうが)。
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ムード作りのおかげで「泥沼」にハマれる
さて,初回起動時は,映像や音楽を「どう劣化させるか」を決めることとなる。映像なら古いモノクロフィルムの汚れや縦線をどの程度再現するか選べるわけだ。
ときにムーディーで,ときに激しいビッグバンドジャズのようなBGMも音質を選択できる。クリアな音質もいいが,最大限まで劣化させてみると……これがなかなかハードボイルドな雰囲気になる。アナログテープやAMラジオのくぐもり方を,さらに強烈にしたような音だ。
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本作の主人公,ジャック・ペッパーの声を担当するのはトロイ・ベイカー(Troy Baker)氏だ。「The Last of Us」のジョエルや,「ファークライ4」のパガン・ミンなど,ゲームでも数々の役を演じてきた彼が,本作ではチーズ臭い……もとい,キナ臭い事件を追うジャックを演じている。
「カートゥーンキャラにトロイ・ベイカーのボイス?」と思うかもしれないが,これがなかなか合っている。激しいジャズが流れる中,少し皮肉っぽい一人称の語りが続くうちに,もはやジャックのマウス顔も苦み走って見えてくるから不思議だ。
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さて,本作の舞台はネズミたちが暮らす眠らぬ街・マウスバーグ(アナハイムや浦安ではない)だ。私立探偵であるジャック・ペッパーのもとに,なじみの新聞記者ワンダが持ち込んだ魔術師バンデルの失踪事件から物語は始まる。
物を消すのは朝飯前のマジシャンが,自分まで消えてしまったという事件の手がかりを求めて踏み込んだ屋敷の地下,そこでジャックが目にしたのは,新進気鋭の女優・ベティを精巧に再現した「ロボット」だった。
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一方,街の「聖人街」では,トガリネズミたちが警官から不当な暴行や拘束を受けており,彼らは下水道を使って海へと運ばれていることが判明する。
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一見,無関係に思える「魔術師の失踪」「女優の面影を持つロボット」「トガリネズミへの弾圧」という3つの事柄。それに加えて,いかにも“ファム・ファタール”な謎の美女・ビビアンからの依頼まで引き受けてしまい,ジャックは泥沼へとハマりこんでいく。
バラバラに見えた事件の断片は,妙なところでつながり始め,マウスバーグ全体を揺るがす出来事へと発展するのだった──。
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こだわりが詰まった銃をしっかり使い分ける
シナリオやバックグラウンドについてはこの辺にしておいて,次はゲーム内容の解説に移ろう。古今,探偵の仕事は足で稼ぐものとされているが,この街では弾丸を撃つ機会のほうが圧倒的に多い。
ゲームは飛行船上の戦いから始まるのだが,なにやらファシスト風の敵が闊歩しており,某マウス氏の映画やノワール映画というよりは,インディー・ジョーンズのような冒険活劇といった趣もある。
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シューターとしての手触りは,いたってシンプルだ。アーマーと体力を拾いながら,地形に身を隠しつつ敵を撃つ。まさにFPSの原点に立ち返ったような,ストレートな遊びを楽しめる。
広い場所では四方から敵が迫ってくるので,「音」の方向も意識しておくと盤石だろう。とはいえ,昔のゲームのように男らしく棒立ちで戦うだけでなく,身をかがめたり,回避アクションがあったりと,現代的かつカートゥーンキャラらしい立ち回りもできる。
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使用できる銃もさまざまだ。まずマウザーっぽいデザインのマイサー(製造元は,Mauser社ならぬMouser社)は,初期こそ単発のみだが,強化後はマシンピストルならではの連射モードも使えるようになる。
こういった「特殊攻撃」が武器ごとに用意されており,ショットガンの「ブームスティック」なら強力なチャージ射撃,アニメの修正液っぽい「デバニッシャー」なら着弾した周囲にもダメージを与えられる。
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さらにドラムマガジン付きの「ジェームズガン」の発射音は「タララララララララ」と心地よく,まさにこの時代を象徴する「シカゴ・タイプライター」っぽい使用感だ。
ちなみにジェームズガンのジェームズとはギャング映画のアイコン的俳優,ジェームズ・キャグニーの名前が由来と思われる。おそらく映画監督ではない。こうした細かなネーミングひとつとっても,開発陣のジャンルへの愛が感じられる。
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なお,銃器は事務所の近くの工房で,3段階の強化が可能だ。真価を発揮するのは強化後なので,どんどん強化していこう。
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気をつけたい点として,特に序盤のうちは無駄撃ちが厳禁となることだ。昨今の「弾が余る」シューターに慣れていると,このちょっとしたリソース管理に少し戸惑うかもしれない。
手持ちの弾をうまく使いまわしつつ,かつ遠距離に対応できるマイサーの弾を保険で残しておくなど,きめ細かい銃の使い分けがポイントだ。
戦いのメインは四方八方から迫ってくるギャングたちとの銃撃戦だが,各ポイントには強力なボスが待ち構えている。
槍を構えて突進してくるプリマドンナ,ガンマ線を照射するロボット,ジャンゴ砲(いわゆるガトリングガン)を構える下水道のワニ……などユニークな面々で,回避アクションを駆使しつつ,少し機転を利かせて戦う必要がある。
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ジャンルはまったく違うのだが,本作のボス戦はどこか「Cuphead」を思い出させるところがあった。攻撃パターンを見極めて対応する緊張感や,グラフィックスや音楽のトーンなどが似ているからだろうか。
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もちろん,探偵なので,銃を撃つだけではない。行く手を阻む扉や金庫をピッキングし(しっぽを使うのがネズミ流),2段ジャンプやホバリングを駆使したアクションをこなしつつ,ステージを突き進むシーンもある。
各ステージのクリア時間は30分強といったところだが,シークレット要素の「コミック」や「ベースボールカード」といった収集アイテムもあり,各ステージに20個ほど配置されている。これらを集めるならもう少し時間がかかるかもしれない。
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また,コミックはしっかり読めるようになっているし,カードは実際にゲームとして遊べる。単なる収集要素で終わらせないところにこだわりを感じる。
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「マウスバーグ」という街を舞台に,操作を妨害するギャングを撃ち,しっぽでカギを開け,ときにカードゲームに興じる……。
そんな探偵ジャック・ペッパーとして事件に挑む体験は,「あとちょっと,いや次のステージまで遊ぼう」といった感じで,不思議と後を引くものだった。
少し慣れれば小気味良く戦えるバトルと,様式美ながらもキャッチーなストーリーラインが,互いをうまく引き立てているからだろうか。その感触もまた「古き良き時代」のゲームを思い出させる。
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ベースはノワールでハードボイルドなのだが,たまに下水道のワニや,某T-800のように親指を立てて溶けていくロボットなど,あまりノワール映画とは関係ない小ネタもいろいろ仕込まれている。ビジュアルに惹かれた人はもちろん,映画ファンにもおすすめなタイトルだ。
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