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  • 第四境界
  • 発売日:2023/10/20
  • 価格:6800円(税込)
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「物語と体験は同じ意味」 ARGブランド「第四境界」の総監督・藤澤 仁氏が語る“虚実軸”の物語論[BitSummit]
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印刷2026/05/23 13:07

イベント

「物語と体験は同じ意味」 ARGブランド「第四境界」の総監督・藤澤 仁氏が語る“虚実軸”の物語論[BitSummit]

 2026年5月22日に開幕したインディーゲームイベント「BitSummit PUNCH」のメインステージにて,ARG(代替現実ゲーム)ブランド「第四境界」のトークイベントが行われた。

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 登壇者は,スクウェア・エニックス在籍時に堀井雄二氏の右腕として「ドラゴンクエスト」シリーズのディレクションを手がけ,現在は第四境界の総監督を務める藤澤 仁氏。そして,同じく同ブランドのプロデューサーである平 信一氏だ。

(左から)藤澤 仁氏,平 信一氏
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 「日常侵蝕ゲーム」という独自のジャンル,いや概念を掲げ,現実と虚構の境界を揺るがし続ける彼らは,何を考え,どのような未来を描こうとしているのか。



現実をプラットフォームにしたARGブランド


 イベントの冒頭,藤澤氏は「僕たちのことがどれくらい認識されているか分からないので,少し丁寧に説明します」と前置きし,自分たちが開拓しているジャンルを紹介した。

 ARG(代替現実ゲーム)は一般に“謎解きゲーム”の延長線上にあると捉えられがちだが,その捉え方では藤澤氏らが作ろうとしている「物語と体験」はどうしても伝わりにくいという。
 そこで,自分たちの作品を「日常侵蝕ゲーム」と呼んでいる。その物語が現実に起こっていることなのか,それとも仮想の物語なのか。その境界が曖昧になるような作品を目指しているという。

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 第四境界の名を世に知らしめた代表作が,2023年にリリースされた「人の財布」である。通販で「本物の財布」を購入するところからスタートし,届いた財布の中身(レシートや身分証,謎のメモなど)を調査しながら,持ち主の背景にある物語を読み解いていくという前衛的な作品だ。

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 Team Project:;COLDは本日,謎解きが楽しめるお財布「人の財布」受注販売を通販サイト「ONLINE PARCO」で開始した。本商品は,普通のお財布に見えるが,中身をチェックすることで架空の持ち主の存在が明らかになる謎解きゲームだ。

[2024/01/16 15:35]
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 「第四境界」という名前は知っていても,それがなんなのかはつかみづらい。ならば直接聞いてみようとしたところ,そこに現れたのは意外な存在だった。それは第四境界の広報兼織工を名乗る“案内役”のAMGY(アンジー)。困惑しながらも話を聞いてみると,多面的な存在である第四境界の輪郭が見えてきた。

[2026/05/22 12:00]

 平氏は「少しカッコいい言い方をすると,現実世界そのものがプラットフォーム。そんなコンセプトを掲げているブランドです」と,第四境界のスタンスを補足した。

 そんな「現実世界を舞台にしたゲーム」を象徴するアイテムとして,平氏は黒いアタッシュケースから架空の携帯ゲーム機とゲームソフトを取り出した。これが初お披露目となる,第四境界の最新作「人のゲームカセット」だ。

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 第四境界は本日(2026年5月21日),ARG「人の」シリーズ最新作として「人のゲームカセット」を発売した。本作は,元の持ち主のセーブデータが残されたゲームをプレイし,隠された謎に迫るARGだ。

[2026/05/21 14:58]

 ゲームとの出会いは,新品を購入することだけではない。友人から借りたり,親戚からお下がりをもらったりするパターンもある。「人のゲームカセット」も一度市場に出回ったものであり,誰かがプレイした形跡がセーブデータとして残っているという設定だ。
 実際にゲームを遊びながら,以前の持ち主がどういう人物だったのかを考察していく。プロダクトだけでなく,その「外側」の体験もデザインし,プレイヤー自身を物語に巻き込む。それが第四境界の流儀というわけだ。

架空のパッケージまで作るこだわりぶり
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ドラクエとFFの違いも説明できる「虚実軸」とは


 なぜ,そこまで手間をかけて現実を侵蝕するゲームを作るのか。藤澤氏は「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」の体験を比較しつつ,ゲームにおける「自己投影」について語った。

 ドラクエとFFの決定的な違い──それは「自己投影のしやすさの度合い」ではないかと氏は指摘する。主人公が基本的にしゃべらないドラクエでは「主人公=自分」と説明されがちだが,それでも厳密には「主人公=自分」ではない。自分は現実の世界に暮らしている人間であり,特別な血を引いた勇者の末裔ではないからだ。
 どれだけ没入感があっても,主人公はあくまで操作するキャラクターであり,すべてを「自分ごと」としては捉えられない。

 その一方,「主人公=自分」という等式をとことん追求できるのがARGだという。「人の財布」のように,誰かの財布を手にすることは自分の身にも起こり得る。そこから始まる物語──これこそがARGにしかできない「自己投影」の表現である。

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 藤澤氏は6年ほどARGについて考え続けてきたというが,最終的にたどり着いたのが「物語と体験は同じ意味である」という結論だ。

 氏は,過去・現在・未来といった「時間軸」や,パラレルワールドやルート分岐といった「世界線」を例に挙げ,それらに類する新たな軸として「虚実軸」という概念を提示する。虚構と現実を一本の線で結んだとき,そこには虚実のグラデーションがあり,すべての物語は虚実の軸のどこに位置するかで説明が可能だという。

 例えば,人が車にひかれるという出来事。これが自分に起きれば「体験」(現実)だ。しかし,自分とは関係ない人に起きたら,自分にとっては「物語」(虚構)に近づく。
 また,ドラクエやFFは100%の虚構ではなく,プレイヤーの選択が介在するため,現実寄りに位置し,なかでもドラクエはFFより体験(現実)に近い。これが,虚実軸における捉え方となる。

 一般的なゲームは,グラフィックスや物語によって没入感を高めようとするが,どれだけ没入感を高めても虚実軸の中央を超えて,現実側に入り込むことはない。一方,第四境界の目指すものは,虚実軸のメーターを大きく現実側に引っ張り(作品によって濃淡はある),プレイヤーの現実そのものを物語の世界にしてしまうことだ。

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 虚実軸というグラデーションを前提にすると,既存のゲームジャンルに対する見え方も変わってくる。平氏はビジュアルノベルを例に挙げ,「選択して行動するという能動性がある以上,小説とは明らかに違う。ノベルゲームもまた,物語寄りの体験性を伴うものとして,グラデーションの上に位置している」とした。

 第四境界の作品は“謎解きゲーム”,あるいは“イマーシブ(没入型)エンターテインメント”の一種として分類されることも多い。しかし,藤澤氏には「謎解きゲームを作っている」意識はまったくないそうだ。

 第四境界が目指しているのは「新しい物語表現の発明」であり,謎解きの要素はプレイヤーの「自分ごと化」の度合いを高めるためのギミックに過ぎない。


同じことは2度とやらない。自らにかけた「呪い」


 イベントの終盤,平氏は「ビジネス的に考えれば,完全新作よりも続編を作るほうが売りやすい」とプロデューサーの立場から本音を漏らしつつ,「どんな素晴らしい体験も2回目以降は半減してしまう。であれば,常に新しさを追求していくべき」と続けた。

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 第四境界には「同じことを2度やらない」という,自分たちにかけた「呪い」のようなものがあるという。例えば,Webサイトを調査するARG「かがみの特殊少年更生施設」は,今や多くのフォロワーが生まれるほど受け入れられた作品だ。しかし,同じことは絶対に繰り返さないと決めている。
 第四境界が熱狂的に支持されている理由は「いつも新しいことで驚かせてくれる」という信頼感であり,そこは裏切りたくないと,藤澤氏はクリエイターとしての強いプライドをのぞかせた。

 最後に,藤澤氏はゲームを取り巻く時代の変化と,これからの抱負を語った。
 ドラクエのディレクターを務めていた1990年代後半から2010年頃までの15年間は,新しい発明や挑戦が世の中に通じにくい時代だった。だが環境は変わり,世の中が「新しいことをやっている人」を応援する時代が来たと感じているという。
 氏は「これからも新しい物語の発明をあきらめないし,その先にある驚きを作り続けていきたい」と締めくくった。

 自分たちが作ったセオリーにとらわれず,まだ見ぬ表現に挑み続ける第四境界。次はどのように現実を侵蝕し,物語の概念そのものを揺さぶってくれるのだろうか。
 ちなみに,今回のBitSummit会場には,藤澤氏が開発に携わったタイピングゲーム「Pain Pain Go Away!」も出展されている。


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