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聞き手は,「アクアノートの休日」「太陽のしっぽ」「巨人のドシン」などの作品で知られ,現在は立命館大学映像学部で教授も務めているクリエイターの飯田和敏氏。語り手は,東京藝術大学大学院 映像研究科 ゲーム・インタラクティブアート専攻 教授であり,東京大学や立教大学,九州大学の特任教授・客員教授も兼任する工学博士の三宅陽一郎氏だ。
2008年にウィル・ライト氏の「Spore」の講演で知り合って以来,20年近い付き合いになるという2人。昨今の生成AIがもたらす“ハレーション”,つまりこれまで当たり前だと思われていた創作や仕事の前提が揺さぶられ,受け止め方に戸惑いが生まれている状況の本質から,クリエイターの未来,そして伝説のクリエイター・飯野賢治氏の思想を継承するプロジェクトまで,20分という短い時間ながらも濃密な話が交わされた。
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コンピュータゲームは50年前から「世界を生成」してきた
イベントの冒頭,2人はコンピュータの歴史を振り返りながら,昨今の生成AIをめぐる世間の反応について触れた。
現在,生成AIのインパクトがあまりに大きいため,コンテンツ業界では熱狂と同時にハレーションも起きている。飯田氏は,「たとえば街の手作りパン屋さんが『明日から機械で作ります』と言い出したときのような寂しさが,ユーザー側に生まれるのは理解できる」としたうえで,話題は「ゲームにおける生成とは何か」という方向へ進んでいった。
そこで三宅氏が指摘したのが,「コンピュータゲームの歴史は,そもそも物事をジェネラティブ(ジェネレーティブ / Generative)に作っていく歴史だった」という点だ。
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そもそもコンピュータは,弾道計算や気象予測など,世界のあり様をシミュレーションし,結果を自動生成――つまり計算するために誕生・発展してきた経緯がある。
その延長線上には,人間との対話を模した1960年代の人工無脳「ELIZA」(イライザ)や,画面上のドットがルールに従って生滅を繰り返す「ライフゲーム」のように,コンピュータ上で反応や世界を生成する試みがあった。
そしてゲームの分野でも,プレイごとにダンジョンや配置が変化する仕組みで知られる「ローグ」など,70〜80年代のゲーム制作を通じて,コンピュータは現実とよく似た世界,あるいはまったくの別世界をシミュレーションし,生成するようになっていった。
三宅氏は「ゲーム産業はずっと生成をやってきた。ダンジョンも森もモンスターの配置も,もっといえばストーリーも50年前から生成してきた。その手法がプロシージャルからディープラーニングに変わっただけで,開発者から見れば地続きのこと」と語り,開発者とユーザーの間で起きている感情的なすれ違いを端的にまとめた。
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自動翻訳と同様に,技術のない人にAIは使いこなせない
生成AIによって,少人数でも大規模に見えるゲームを作れるようになる時代において,クリエイターの役割はどう変わっていくのか。飯田氏は「大学でモデリングを学んでいる学生から,今後のAIの発展に不安を抱えているという声をよく聞く」と話を向けた。
自分たちが学んでいる技術を,将来も仕事にしていけるのか。そうした不安だ。
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これに対し,三宅氏は「いえ,大丈夫です!」と力強く答える。
分かりやすい例として氏が挙げたのが「自動翻訳」だ。英語を理解できない人が自動翻訳を使っても,その翻訳が本当に正しいのか,意図どおりなのかはジャッジできない。結局,自動翻訳を本当に役立てることができるのは,その訳が正しいのか,意図に沿っているのかを判断できるだけの素養や知識を持つ人ということになる。
クリエイティブの世界もそれと同じだ。AIが10万行のプログラムや高精細なモデルを出力したとしても,それを読めない,評価できない人がそれをリリースすることはできない。「そのゲームに価値があるのかどうかは,クリエイティブの知見を持つ人間にしか分からない。人間の役割は残り続けるでしょう」と,三宅氏はまとめた。
生成AIは制作ツールからゲームそのものへ。「ゲーム制作における生成AI活用の現状」ウェビナーレポート
生成AIの進化が加速する中,ゲーム制作の現場でもその存在感が確実に増しているという。デジタルコンテンツ協会主催のセミナー「ゲーム制作における生成AI活用の現状」で,スクウェア・エニックス・三宅陽一郎氏とAI Frog Interactive・新 清士氏が,ゲーム分野における生成AI技術の最新トレンドを紹介した。
AIの得意技は“千本ノック”。ゲームデザインの研究は加速する
続いて飯田氏は,自身の失敗談として,講義用のスライド作成をAIに手伝ってもらったときのことを振り返った。急いで作ったこともあり,生成された内容を十分に見直せないまま本番に臨んでしまったところ,自分では考えていなかった内容まで盛り込まれ,意図しないまとめ方になっていることにその場で気づき,あたふたしたという。
生成後の確認は怠ってはいけない。むしろ,そこが最も大事なのだと飯田氏は強調する。
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それを受けて三宅氏は,現在の生成AIに対する誤解を解くように,「AIは10のうち8までは生成できる。けれど,残りの2,つまりアートやテキストのセンス,ゲームデザイン思想のような部分を込めることはできない」と話した。そして「自力で8まで創れない人間は,残りの2を込めることもできない」と言い切る。
現状のプロンプトを使ったAIとのやりとりは過渡期の形であり,今後はより細部までAIと詰められるようになる。その時に問われるのは,結局は人間のセンスや「何が正しいか」を見極める力だ。
一方で,AIには人間相手には難しい“千本ノック”に喜んで付き合ってくれる性質もある。それこそが,クリエイティブにおけるAIの大きな強みともいえる。
たとえば「うまく言えないけど,こうじゃないんだ。でも自分の解釈ではこうなんだよね」といった曖昧な問いからのやりとりを,納得いくまで何度でも続けられる。人間相手に同じ密度でリテイクを重ねれば,やりとりの負担も関係性への負荷も大きくなるが,AIであれば24時間いつでも,何千回でもそのラリーに付き合ってくれる。
三宅氏は,そうしたラリーを無数に回すことで,今後のゲームデザインの研究はさらに加速していくだろうと展望を語った。
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17年越しに受け継がれる飯野賢治氏の「ワンドット」
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「ONE-DOT GAMES」は,けっしてAIによって飯野賢治氏を再現するような試みではない。飯野氏が遺した“1ドット”というミニマルなテーマを,氏と関わりの深かった人たちがあらためて受け止め,新たなゲームとして形にしたプロジェクトだ。
制作には,「one-dot enemies」に関わったSTUDIO-KURAをはじめ,飯野氏と親交の深かった飯田氏,そして飯田氏が教える立命館大学の“ゲームゼミ”の学生たちも参加。飯野氏をよく知る人だけではなく,その名をリアルタイムでは知らない若い世代が,それぞれの立場から“1ドット”に向き合ったゲームアプリ群と言えるだろう。
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[インタビュー]飯野賢治氏の“1ドット”から,新しいゲームが動き出す。「ONE-DOT GAMES」はいかにして生まれたのか
飯野賢治氏が遺した“1ドット”の発想から生まれたゲームコレクション「ONE-DOT GAMES」。飯野氏を知る作り手と,その名を知らなかった学生たちは,それぞれどのように小さな点を新たな遊びへと育てていったのか――企画合宿の様子とインタビューから追う。
Android版「ONE-DOT GAMES」が公開に。「1ドット」をテーマにした複数のゲームを楽しめるアプリ
フロムイエロートゥオレンジは本日(2026年5月26日),Android版「ONE-DOT GAMES」をリリースした。価格は無料。本作は,ゲームクリエイター,飯野賢治氏が2009年に発表したiOSアプリ「one-dot enemies」をベースにした作品。「1ドット」をテーマにした複数のゲームが収録されている。
この“1ドット”を現代の技術環境で捉え直すと,そこにはまた別の面白さが見えてくる。
三宅氏は,「90年代の画面の解像度は約400×300ピクセル。現代は2000×1600ピクセル超と約25倍になった。そして計算リソースは1万倍となり,現代の1ドットに費やせるパワーは当時の4000倍以上になる」と指摘する。
つまり,同じ“1ドット”であっても,そこに込められる情報量,それがプレイヤーに伝えうるものは,時代によって大きく変わっているということだ。
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昔とは比較にならないほどの計算リソースを使って,全ピクセルを同時に高速変化させたり,そこにAIを融合させたりしたとき,その複雑系の中で一体何が起こるのかは誰にも分からない。
飯田氏は「もしかしたら,それが飯野さんのやりたかったことかもしれない」と,飯野氏が残した“1ドット”という構想の先にある,表現の可能性に思いを巡らせていた。
最後に三宅氏は,「ドット絵の世界に生成AIや言語AIを融合させたら何が起きるのかを,5年くらいのスパンで研究していきたい」と今後の抱負を語り,イベントは締めくくられた。
わずか20分という駆け足の対話だったが,AIという最先端の技術を通じて,逆に人間のセンスやクリエイティブの継承という,不変の価値を浮き彫りにする時間だったと言えるだろう。
いま大きく議論されているAIについて,まずコンピューターやゲームの歴史に立ち返って考える。その大切さを感じさせるステージでもあり,もっと長い時間で聞いてみたくなる内容だった。
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