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東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載
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印刷2009/12/02 19:14

レビュー

歴史の教科書に出てくる「東インド会社」ってこういうことだったのかー

イースト インディア カンパニー
【完全日本語版】

 17世紀〜18世紀半ばのイギリス,神聖ローマ帝国,ポルトガル,スペイン,スウェーデン,デンマーク,フランス,オランダの8か国,いずれかの「東インド会社」の総統となって,他国の東インド会社を活動不能に追い込むことを目的としたストラテジーゲーム「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」(以下,EIC)が,サイバーフロントから10月30日に発売された。

画像集#014のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 フィンランドのNitro Gamesが開発し,サイバーフロントから日本語にローカライズされてのリリースとなる本作。開発元は2007年に設立されたばかりの新興デベロッパで,ほかにも,海賊をテーマにしたゲームを開発していることから,海戦モノを得意としているようだ。

 香辛料,紅茶,陶器,絹織物……そうした当時貴重だった交易品を一手に担い,巨万の財を築き上げた「東インド会社」。自国政府から特許状を与えられ,領土を獲得する権利,領土内での法律の制定,さらには戦争の権利までも有する,現在の企業とはかけ離れた特権を持つ存在であった。

画像集#021のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 ここでいう「東インド」とは,現在のインド共和国という特定の国を指すわけではなく,おおむね地中海以南のアフリカ大陸から日本を含む東アジアまでの広範囲を示していた。まぁ要するに,すでに発見されていたアメリカ大陸はヨーロッパより西だから「西インド」,東にあるのは「東インド」なのだという,なんともざっくりしたものだったのだ。
 このゲームで扱っている地域は,アフリカ大陸全域から東はインドのカルカッタ,インドネシアのアチェまでの範囲だ。

 実際の東インド会社は常備軍まで持っていた組織なので,国家運営にも非常に強い影響を与えていた。ただし本作で扱うのは,あくまで各国にある東インド会社同士の利権をめぐる争いの部分だ。各地にある港での交易を独占し,軍隊を所有してライバル国と海戦を繰り広げ,実質的に植民地を運営していたので,実際のプレイ感覚は,普通の海洋マネジメントゲームとだいたい同じと思っていいだろう。

画像集#003のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 ではゲームを見ていこう。EICは,大きく三つのパートに分かれている。「戦略レベル」では広範囲の地図が3Dで表示され,リアルタイムでゲームが進み(倍速や停止も可能),全体的な船舶の往来を監視できる。艦隊を選択して具体的な行き先を選択したり,敵の艦隊に攻撃を仕掛けたりするのも,この画面だ。

 海戦については後述するが,「戦術レベル」画面で船舶に直接指示が可能で,ダイナミックな海戦シーンをリアルタイムで見られる。いわゆる戦闘画面だ。

 戦略レベルから「港」を選択することで移行する「港湾画面」では,各地に点在する港で,港の施設にアクセスして船を建造したり,海兵を雇ったり,施設を建設したりといった細かい指示を行える。ここでは時間が常に一時停止された状態だ。

画像集#019のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 EICのシングルプレイでは3種類のモードをプレイできるが,そのうちメインとなるのは「キャンペーンモード」だろう。先述のとおり,キャンペーンの大きな特徴は,マネジメント部分と,リアルタイムストラテジーが混在したゲームデザインになっていることにある。つまり内政や外交,船舶の管理といったマネジメントをしつつ,海戦はRTSでダイナミックに楽しめるというゲームなのだ。

 キャンペーンは4種類用意されているが,目標が設定されていないフリーキャンペーン以外は,どれもスタート年が違うだけで,国王から提示されるキャンペーンミッションの内容は同じ。

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 スタート時にまずキャンペーンの種類,3段階の難度,戦闘のリアルさを選択する。難度の設定は,スタート時に所有する資産の増減,ミッション報酬額などに違いがあるようだ。いずれのキャンペーンも,開始された当初はどの国も同じ条件となっているが,最終的に他国の東インド会社すべてを活動停止に追い込むか,インドの12港すべてを征服すれば勝利となる。


船を造り,艦隊を編成し,交易し,港を占領する
他国を出し抜き東インドの利権を独占するのだ


・建造
 ここで具体的なゲームの進行を説明しておこう。戦略レベルのマネジメント部分では,矢継ぎ早に舞い込む情報を頼りに,造船の進捗や他国の動向,海賊の情報,ミッション依頼など,全体的な情勢を把握し,的確な判断と行動を求められる。

画像集#024のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 何はともあれ,船がなければ話にならないということで,キャンペーンを開始すると,まず船の建造から始めることになる。母港へアクセスし,造船所で作りたい船を選び,建造ボタンを押せば,あとは建造期間(数か月)が経過するとドックに船が用意される仕組みだ。もちろん船の建造には,かなりのお金が必要となる。
 船ができたら,艦隊を編成していよいよ出航となる。一つの艦隊につき最大5隻まで編成でき,1艦隊に一人,指揮官が任命される。指揮官にはレベルがあり,高レベルな人材ほど特殊能力を数多く持つが,年俸は高くなる。特殊能力は艦隊の特定の能力を20%上昇させるとか,そういったものが多い。

・交易
 スタート時から建造済みのカッター艦が1隻与えられているので,造船所の船の竣工を待たずとも交易を始められる。1隻だけの艦隊を組み,港の交易所で購入した物資を船に積み込んで,交易の目的地に向かわせよう。交易に関する基本的な流れは,これの繰り返しである。

画像集#023のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 交易で得た利益でさらに船を建造し,また新たな交易品を求めて他の港に向かわせる。もちろん交易品は売れば売るほど値段が下がるので,この価格をチェックすることも重要になる。とくに序盤では保持している資金も船舶も少ないので,価格が安く,かつ利益率の高い交易品をスポットで輸出入することになるだろう。自動交易も可能で,二つの港を設定すれば,艦隊が自動で行き来して勝手に交易を行う。海路が安全で,そこそこ資金に余裕があるときに使うといいだろう。

・ミッション
 闇雲に交易をしてお金を稼げばいい,というわけでもない。キャンペーンを開始して間もなく,国王からキャンペーンミッションを言い渡される。これは期限内にいくつインドの港を征服しろだの,磁器を何トン輸入しろだの,敵の船を何隻沈めろだのといった内容で,達成できなかった場合は,国王から特許状を取り上げられてゲームオーバーとなる。

画像集#001のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 また,次第に国王や商人などから,海賊退治や港のアップグレード,あるいは書簡の配達といった個別のミッションを依頼されるようになる。こうした細かいミッションをこなしていくことで,さらに小銭を稼ぐことも可能だ。
 ただし,ミッションを受けて目標を達成できなかった場合は,報酬と支払われるはずだった金額の半分を逆に損害賠償させられてしまう。うっかり配達品を忘れていた場合など,かなり凹むことになるので,忙しい時期は無理して引き受けないほうがいいだろう。

・商船と戦艦
 徐々に資産を蓄えていくと,じき商船が海賊や他国の艦隊に襲われるようになり,おのずと戦艦を建造せざるを得なくなる。海賊や他国の艦隊に戦闘で勝つには,より強力な船を,より多く揃える以外にない。
 船は種類によって貨物の積載量,最大速度,耐久力,重砲の数などが決まっており,当然ながら大型で高性能な船ほど莫大な資金を必要とする。やがて小型船だけでは生き残れなくなるので,艦隊のアップグレードは必須だ。

画像集#010のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 船の種類によって戦艦向き,商戦向きといった特徴は多少あるものの,貨物スペースに海兵を積むか,荷物を積むかで,どちらにも転用できる船が多い。最初から建造できる船の種類は限られており,新しい船は資金と引き換えにアンロックする仕組みだ。
 交易が順調に回り出し,資金が桁違いに貯まるようになってくると,つい気持ちが大きくなってしまうのだが,大型の船を何隻も建造すれば資金はあっという間に吹っ飛ぶ。また,強力な艦隊をいくつも持つと,調子に乗って港を次々と攻略したくなるが,艦隊の維持や港の支配にも莫大なお金がかかるということをお忘れなく。

画像集#017のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

・港の攻略
 東インドの港には,それぞれ「特産品」があり,それらは「主交易品」と呼ばれていて戦略マップ上にもアイコンが表示されている。

画像集#006のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 一つの主交易品を三つ(一部二つ)の港が主として扱っているのだが,どこかの国がその港を占領すれば,他国は取引ができなくなる。先住民が港を取り戻さない限り,8か国のうちいずれかの独占取引港となるので,中盤以降はどれだけ多くの港を自分で独占できるかが勝敗の分かれ目となるのだ。

 といっても,港の攻略は簡単なことではない。港には「要塞」や「守備隊基地」といった防衛施設があるので,これを上回る攻撃力,兵力をもって攻撃しなければならない。一度にアタックできるのは1艦隊のみなので,よく考えて攻略に当たらなければ全滅の憂き目に遭うが,ぐずぐずしていると港の守りが固くなってしまい,どうにも攻略できなくなってしまう恐れもある。
 一応,攻撃を繰り返すことで港の防衛施設を破壊(ランクダウン)し,攻略しやすくはできる。つまり艦隊をいくつか用意しておき,波状攻撃を仕掛けることで,いずれは陥落させることも可能だ。ただし商船の護衛なども考えると,かなりの艦隊が必要になる。港を一つ落とすというのは,実に大変なことなのだ。

画像集#025のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 逆に港の防衛を考えれば,防衛施設のレベルを上げていく必要があるが,これまた資源や資金がかなり必要になるうえ,年間維持費も跳ね上がっていく。つまり強固な港にすればするほど維持費がかかり,資金を圧迫するというジレンマがあるのだ。

 ここでちょっと不満なのが,“港の攻略”が戦術レベルでゲーム化されておらず,単に攻略が成功したか否か,敵味方の損害が表示されるだけなのだという点。砦に艦砲射撃をして,兵を上陸させるなど,少しでもプレイヤーが介入できる要素があれば,もっと楽しめたと思うのだが。

画像集#005のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 ともあれ,こうして交易を続け,時に海戦を交え,港を占領していくことで,それぞれの船(の船員)や指揮官の経験値が溜まり,レベルアップしていく。海戦で生き延びたとしても,多くの船員が失われると,船のレベルが下がることもある。

 こうして見ると,あちらを立てればこちらが立たず,的なジレンマが多く,そのあたりをどうバランス取りするかというところに,総督としてのプレイヤーの手腕が問われる。本当にちょっとしたズレ……例えば船舶の建造をちょっと多めにやったとか,占領港を一つ増やしてみたとか,あるいは弾薬が残り少ない状況で戦闘してみたとか……そんなことで,あっという間に経済が破綻してしまう恐れがあるあたり,なかなかシビアである。


海戦では複数の砲弾を使い分けた砲撃
白兵戦による乗っ取りなどの熱い戦いが


 EICの特徴となっている,ダイナミックな海戦について説明しよう。
 EICの海戦は,キャンペーンの戦略レベル画面で敵艦隊を襲うか襲われるかしたときに発生し,戦術レベル画面に切り替わる。
 海戦だけを楽しみたい場合は,タイトル画面からシングルプレイモードの「戦闘」や「簡易戦闘」を選べば,独立した海戦RTSとして楽しめる。戦闘と簡易戦闘の違いは,最大5隻からなる艦隊の構成をプレイヤーが構成するか,ランダム生成に任せるかの違いだけだ。

画像集#013のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 戦術レベルでは,帆船艦隊によるダイナミックな戦闘が楽しめる。視点を船舶の近くに寄せれば,船員や海兵が大砲を撃ったり,近づいてきた敵艦にマスケット銃で応戦したりしている姿が見て取れる。大砲は側面にしか撃てないので,位置取りが非常に重要になり,敵の動きを予測しながら艦隊を移動させていくのは,なかなか楽しいものがある。

画像集#016のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 砲弾は,船体にダメージを与える鉄球弾,帆を破壊する鎖弾,船員を殺傷するためのぶどう弾などがあり,細かい部分も凝っている。砲弾の飛距離を稼ぐには波のうねりに合わせて船体が傾いたときに発砲すると良いなど,海戦ならではの戦術を楽しめる。
 また船体を敵艦にぶつけて大ダメージを与えたり,敵艦に船体を接近させて強行乗船し,船ごと強奪したりという手段も用意されている(筆者は一度も成功したことがないが……)。

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 逆に戦闘を望まない場合は逃亡もできるし,その場合は積み荷を捨ててスピードを稼ぐ,といった方法も用意されている。あるいは白旗を上げて降伏もでき,その場合は積み荷は略奪されてしまうものの,船体は敵艦隊が満席(5隻)の場合,奪われることなく帰ってくる。

 ただし望まない戦闘が発生した場合,本作には少々問題がある。キャンペーンで戦闘が発生すると,少しばかりのロード時間を経て海戦RTSとなる。実はここが曲者で,序盤の平和な時代ならまだしも,次第に敵が増えてくると頻繁に戦闘が起こることになる。だが商船では戦艦や格上の商船に勝ち目はないので,とにかく逃げるしかない。

画像集#015のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 しかし,航路はどの国もさほど変化がないため,逃げても逃げても戦闘が起きる。そのたびにロードが発生し,無駄に時間がかかってしまうのは苦痛だ。「自動決着」という機能はあるが,勝てない戦力差の場合あっさり全滅してしまうことが多く,使えない(「自動逃走」があればよかったのだが)。
 この部分を改善するだけでも,ずいぶんプレイのテンポが改善されるだけに残念である。


とても手軽に大航海時代を楽しめるゲーム
中級者以上には物足りなさが感じられるかも


 EICは全体的に見て,良く言うなら分かりやすい,悪く言えば底の浅い作りであり,どちらかといえば初心者向けのゲームだ。複雑なルールやセオリーを覚える必要がなく,すぐに面白さが分かるという点においては,マネジメントゲームとして際立っているといえる。
 相手は船なので,艦隊の進みはかなりゆっくりしており,ゲームの進行速度を最大の4倍速に上げてプレイしてしまいがちである。プレイ中はさまざまな情報が飛び交うが,だんだん目を通しもしなくなってくるし,それで遊べなくなることもない。

画像集#004のサムネイル/東インド会社ってこういうことだったのかー「イースト インディア カンパニー 完全日本語版」のレビューを掲載

 とはいえ,突き詰めて遊ぼうとすればなかなかに奥深いプレイも可能であり,キャンペーンの難度「ハード」を,3日〜1週間程度かけてぼちぼち攻略するというのが本作の最も正しい遊び方だろう。
 イージーやノーマルでプレイすると,外交や臨機応変な交易をしないまま,ある程度大雑把なプレイをしても勝ててしまうため,初心者でも手軽に勝利する喜びを味わえる半面,中級者以上なら物足りなさを感じてしまうのだ。
 こうした大航海時代のゲームを初めてプレイするというプレイヤーには,入門用として向いているといえるだろう。英語版ではあるが体験版もあるので,試しに遊んでみてはどうだろうか。

「East India Company」英語体験版


  • 関連タイトル:

    イースト インディア カンパニー 【完全日本語版】

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