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UE6については,すでにレポート済みだが,UF2026ではもうひとつ重要な発表があった。それが「Unreal Engine 5.8」(以下,UE5.8)である。
次世代ゲームエンジン「Unreal Engine 6」はゲーム開発用言語「Verse」を基盤技術に。「Unreal Fest 2026」基調講演レポート
米国時間2026年6月16日から18日までの3日間,Epic Gamesは,米国・シカゴで独自イベント「Unreal Fest 2026」を開催した。基調講演のメインテーマは,次期Unreal Engineとなる「Unreal Engine 6」だ。UE6がどのようなものになるのか,基調講演をまとめてみよう。
UF2026の基調講演で明らかになったUE5.8の主なトピックは,以下の6点だ。
- 「MegaLights」の本格運用
- 「Lumen Lite」によるNintendo Switch 2での間接照明対応
- PSOプリキャッシュの強化と「Advanced Shader Delivery」によるプチフリーズの低減
- 「Mesh Terrain」による地形制作システム
- 「MetaHuman」のマーカーレスアニメーション対応
- 生成系AIとUEの連携
一部のトピックについては,筆者が寄稿したインタビュー編やブースレポート編で取り上げている。詳しくはそちらを参照してもらうとして,本稿ではUE5.8の概要を見ていこう。
「Unreal Engine 6」はなぜオープンエコシステム構想を進めるのか? 創業者のTim Sweeney氏らにUEの未来を聞いた
Epic Gamesがシカゴで開催した「Unreal Fest 2026」にて,同社創設者でUnreal Engineのアーキテクトを務めるTim Sweeney氏と,UE開発チームの責任者であるMarcus Wassmer氏に,日本メディアとしては唯一の単独インタビューを行った。開発責任者が語るUEの未来とは。
Unreal Engineのイベント「Unreal Fest 2026」で見た最新技術や注目のインディーゲーム
2026年6月16日から18日にかけて,米国・シカゴでEpic Gamesが開催した独自イベント「Unreal Fest 2026」の展示会場には,企業ブースやインディーゲームの展示,物販コーナーもあった。そんな展示会場で見かけたユニークなゲームや技術をいくつか紹介したい。
MegaLightsの本格運用が始まる
「MegaLights」は,UE5.5で試験導入された直接光ライティングシステムだ。
Deferred Renderingの普及により,動的光源数の制限は理論上なくなった。しかし,実際には光源数が増えるほどライティングの演算負荷も増える。仕様上は動的光源を無制限に配置できても,闇雲に増やせば,GPUの性能によってはまともに動作しない。そのため,現実には無制限に使えるわけではなかった。
MegaLightsは,GPU性能をあまり気にすることなく多めに動的光源を配置し,描画時にはGPU性能に応じて直接光ライティングを行う仕組みである。
ゲームグラフィックスでは,遠くにある光源や,画面内の見た目にほとんど影響しない光源の処理を省くことが,有効な最適化手法とされてきた。MegaLightsでは,画面に描画するピクセルに対して影響の大きい光源から順に,GPU性能が許す範囲で直接光ライティングを行う。この処理には,GPUのハードウェアレイトレーシング機能を活用する(関連記事)。
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Switch2でも使える間接照明「Lumen Lite」
UE5.8で搭載された「Lumen Lite」は,UE5で導入されたリアルタイム間接照明エンジン「Lumen」の軽量版だ。
従来のUEにもある事前計算ベースの「Lightmass」と,今回追加されたLumen Liteの違いについては,インタビュー編で触れている。
一方で,Lumen LiteがLumenからどう変わったのか,そのアルゴリズムについては説明していなかった。ここであらためて紹介しよう。
Lumen Liteのアルゴリズムは,大まかに言えば以下のようなものだ。
まず,Lumenと同じく,サーフェスキャッシュの仕組みを活用する。ただし,処理対象のピクセルからサーフェスキャッシュへとレイを飛ばすことはない。
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その代わりに,プレイヤーの視界内にある3Dシーンの一定範囲に,プローブ(情報収集ポイント)をあらかじめ自動配置する。
各プローブからは,360度全方位に向けて適当な数,たとえば64方向に1本ずつレイを投げ,ライティング済みの直接光照明情報を取得するのだ。
このとき,レイがサーフェスキャッシュに当たれば,その情報を取得する。
この例のように,レイのキャスト数が64本であれば,レイが取得した情報は,8×8=64テクセルのテクスチャマップに格納する。
ただし,テクスチャマップにはキューブマップではなく,オクタヘドラルマップ(Octahedral Map:8面体状テクスチャ)を使う。
キューブマップが6面体で全方位のテクスチャを表すのに対して,オクタヘドラルマップは8面体でこれを表す。
そしてLumen Liteは,各プローブの全方位における直接光照明情報を,64テクセルの8面体テクスチャマップとして構築し,更新していくのだ。
Lumen Liteでは,この仕組みを「Irradiance Fields」(IF)と呼んでいる。
実際の間接光ライティング処理では,処理対象ピクセルの近くにある複数のプローブからIFを参照するという。
なお,このように離散配置された情報収集ポイントを使う間接光ライティング処理では,プローブ密度の粗さ(≒解像度の低さ)に起因する「光漏れ」(Light Leaks)が発生しやすい。
これを抑えるため,Lumen Liteでは,光の放射輝度を表すIFとは逆の意味を持つ「プローブ遮蔽情報」(Probe Occlusion,以下 PO)を,IFの生成と同時に構築・更新する。
具体的には,IF生成時にプローブから全方位へ投げたレイが,ほかの物体,つまりポリゴンに当たるまでの距離を,IFとは別の8面体テクスチャに記録するのだ。
実際のPOは,IFよりも高い解像度で生成することが多い。また,レイを投げる方向をフレームごとにずらし,時間方向にサンプリング精度を高める手法も採用される。
Lumen Liteでは,IFを使って間接光ライティングを行うときにPOを参照し,光が処理対象のピクセルに本当に届くかどうかを判定する。言い換えれば,そのピクセルが実質的に影になっているかどうかを調べるわけだ。
遮蔽されていれば,その間接光ライティングをキャンセルする。これにより,光漏れを抑えられるという理屈だ。
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なお,本稿では詳しく触れないが,図中(B)の「Radiance Field」の更新は,(A)でIrradiance Fieldを生成・更新するための前段階の計算と理解しておけばいい。
図中の(A)で使うプローブの総数は,視点から奥方向に向かって数百個程度,自動配置されるようだ。
仮に300個のプローブを使い,IF生成のために1プローブあたり64本のレイを飛ばすとする。この場合,64レイ×300プローブで,合計1万9200本のレイを放つ計算になる。
これだけ聞くと,処理負荷がとても高そうに思えるが,実際にはそうでもない。
たとえばLumenは,1ドットあたり複数本のレイを飛ばす方式だ。そのため,解像度1920×1080ドットの場合,少なくとも約207万本のレイを飛ばす必要がある。Lumen Liteと比較すると100倍以上も多い。
つまり大まかな計算では,Lumen Liteの負荷はLumenの100分の1程度に抑えられるわけだ。
これが,レイトレーシング性能の低いSwitch2でも,Lumen Liteを実現できる理由である。一方で,Lumenと比べて間接光の品質が劣るのは,投げるレイの数が約100分の1と少ないためだ。
Advanced Shader DeliveryとPSOプリキャッシュの導入
ゲームの初回起動時や,初めて訪れるエリアに進んだときに発生するプチフリーズの原因のひとつは,ゲーム中に突然発生するシェーダコンパイルである。
この問題を改善する仕組みとして,Microsoftは,事前にコンパイルしたシェーダのバイナリを,Steamのようなストアフロント経由で提供する「Advanced Shader Delivery」(ASD)の試験運用を始めている。
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UE5.8では,ASDと深く関係する重複したシェーダと「パイプラインステートオブジェクト」(以下,PSO)の削減に取り組み,さらに「PSOプリキャッシュ」を改善したと,Epic Gamesは発表している。
PSOとは,主にDirectX 12やVulkanのような,抽象化レイヤーの薄いAPIで導入された概念で,ゲームグラフィックスの描画パス,すなわちレンダリングパイプラインにおける各種設定をまとめた設定パッケージのようなものだ。
具体的には,ラスタライザの動作モード,使用するシェーダプログラム,ROPユニットの使いかた,ブレンド設定,深度/ステンシル設定などを定義する。
画面の描画だけでなく,マテリアルやエフェクトの描画でも,個別にPSOを定義しておく必要がある。
ゲーム起動時にコンパイル済みのPSO情報がないと,実行中に必要になったタイミングで,ドライバがその場でPSOを組み立ててコンパイルする。この処理が,プチフリーズの原因になりやすいのだ。
PSOプリキャッシュとは,ゲーム中で初めて必要になってからPSOを生成するのではなく,事前に必要なPSOを予測して作成しておく仕組みである。
また,同じ内容のシェーダプログラムやPSOが,別物として扱われることもありがちだ。こうした重複は,シェーダコンパイルやPSOコンパイルにかかる時間を長くしてしまう。
そこでUE5.8では,シェーダやPSOの不要なバリエーションを減らす仕組みを導入した。
具体的には,マテリアル,ライト,レンダリングパス,品質設定,Nanite,Lumen,Shadowといった要素の組み合わせによって,シェーダバリエーションが過剰に増えないよう最適化しているそうだ。
地形制作システム「Mesh Terrain」の導入
従来のUEでは,平面を上から引き上げたり押し下げたりする,ハイトマップ(Height Map)ベースの地形制作が主流だった。それに対してUE5.8では,ハイトマップによる制約を受けにくい,新しい地形制作システム「Mesh Terrain」が搭載されたことも,注目すべき点であろう。
Mesh Terrainは,算術的に地形を作るのではなく,地形パーツを組み合わせて,積み木やレゴブロックのような感覚で制作できるのが特徴だ(関連記事)。作成した地形には,トンネルを掘るような「Constructive Solid Geometry」(CSG,構成的立体幾何,立体形状の合成・切削)処理も行える。
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MetaHumanのマーカーレスアニメーション対応
「MetaHuman」は,人間の顔から身体までをモデリングできる,デジタルヒューマン向けのオーサリングツールだ。人体のアニメーションや,顔の表情も制作できる。
UF2026では,MetaHumanのオープンソース化が発表され,大きな話題となった。ただ,UE5.8に統合された「マーカーレスアニメーション」機能は,オープンソース化の対象には含まれない。
従来,人体や顔のアニメーションをモーションキャプチャで制作する場合,身体にピンポン球状のマーカーを付けたり,顔にドットシールを貼ったりする必要があった。UE5.8の新機能では,そうしたマーカーを使わない,完全マーカーレスのパフォーマンスキャプチャが可能になる。
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生成系AIとUnreal Engineの連携が可能に
UE5.8では,AI対応を実現したことも大きなトピックだ。
具体的には,プロンプトコマンドや自然言語による対話を通じて,UE5.8の各種機能,とくにUnreal Editorを利用できるようになる。
対応する言語モデルは,大規模言語モデル(Large Language Model,LLM)でも小規模言語モデル(Small Language Model,SLM)でもよく,モデルの種類は問わない。
この機能は,AIとアプリをつなぐプロトコル「Model Context Protocol」(MCP)を活用している。任意のAIを,UE5.8側が用意する「Unreal MCP Server」とやりとりできるようにすれば,そのAIからUE5.8を制御できる仕組みだ。
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言語系AIとUE5.8の連携機能としてはほかにも,「Semantic Search」が紹介された。
これは,従来のようにファイル名,フォルダ名,アセット名,タグをキーワードにして検索するのではなく,「テーブルに置けるような小物」といった,意味ベースの条件でアセットライブラリ内を検索できる機能だ。
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また,UE5.8のMCPは,LLMやSLMのような言語系AIだけでなく,画像生成・動画生成モデルとも接続できる。
名前が挙がっていたのは,以下のAIモデルだ。この機能は,2027年初頭のリリース予定である。
- Nano Banana
- ChatGPT Image
- Grok Imagine
- Luma
- Seedance
イベント会場で見たデモでは,Unreal Editorのビューポート,Depth Pass,Movie Render Graphを画像・動画生成モデルと組み合わせる様子を披露していた。
構図やカメラワークをUnreal Editor側で制御しながら,画像生成AIでスタイルフレームや動画を作るというものだ。つまり,Unreal Editorで大まかな3Dシーンのラフレイアウトを作り,それをもとに画像・動画生成AIで2D画像や2D動画を生成できるようになる。
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テキストプロンプトだけでも,任意の画像や動画をAI生成することはできる。ただ,舞台のレイアウトや登場人物の配置は,ある程度,ランダム性に左右されてしまうことが多かった。
それがUE5.8では,Unreal Editorで作った3Dラフと組み合わせることで,ユーザーの意図に沿ったコンテンツ制作を,AIで行いやすくなるわけだ。
UE5世代の集大成となるUE5.8。必要ならUE5.9も出す
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目新しい話題だけにUE6へ注目が集まりがちだが,今回発表されたUE5.8にも,MegaLights,Lumen Lite,Mesh Terrain,MCP Serverなど,斬新な機能が数多く搭載される。一般的なゲーム開発者の多くは,むしろUE5.8に強い関心を示すのではないだろうか。
世界的なメモリやストレージ不足の影響もあり,次世代ゲーム機の登場時期は不透明だ。
Epic Gamesは明言を避けているが,タイミングを考えれば,UE6はおそらく次世代機での活用を想定したゲームエンジンとして開発されているはずだ。ただ現状では,Epic Gamesが想定しているよりも,UE5のライフサイクルは長くなるのではないか。
2026年現在,家庭用ゲーム機ではSwitch2の人気が高い。今回発表されたUE5.8には,Lumen Liteのように,Switch2向けにチューニングされた機能も登場した。
UE5.8がSwitch2向けゲーム開発で広く採用されれば,UE5の第2期とも呼べる状況が到来するかもしれない。UF2026の終盤でEpic Gamesが語った「必要になったらUE5.9も出すかもしれない」というジョークも,むしろ現実味を帯びてくるのではないだろうか。































