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「Detached」で知られるAnshar Studios・CEO,ルーカス・ハクラ氏トークセッション。「もうVRゲームの開発は懲り懲りだ」と話すワケ
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印刷2019/10/23 17:17

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「Detached」で知られるAnshar Studios・CEO,ルーカス・ハクラ氏トークセッション。「もうVRゲームの開発は懲り懲りだ」と話すワケ

 現地時間の2019年10月20日に閉幕となったゲーム開発者会議「Game Industry Conference Poznań 2019」において,Anshar Studiosの創設者でありCEOのルーカス・ハクラ氏(Lucasz Hacura)が,これまで複数のVRゲーム作品の開発で培ってきた経験とその事後報告をテーマにしたトークセッションを行った。

Anshar Studiosを率いるルーカス・ハクラ氏
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「Detached」で知られるAnshar Studios・CEO,ルーカス・ハクラ氏トークセッション。「もうVRゲームの開発は懲り懲りだ」と話すワケ
 元々は他メーカーの下請けを行ったり,公共展示向けのビジュアル作品を開発していたAnshar Studiosだが,国外で大きく注目されるようになったのは,VRアクションゲーム「Detached」(2017年)を開発してからのことだろう。
 筆者自身,試作中だったデモをgamescom 2015で体験したが,ヘッドマウントディスプレイを付けて数分もしないうちにVR酔いしてしまい,記事にするのを断念した記憶がある。このVR酔いは2年後に発売された完成版をプレイした人からも多く報告されていたが,「究極的な無重力遊泳」を実現すべく開発を進めていたということで,賛否両論が起こることは予想していたとハクラ氏は話す。

 40万ドルという低予算で開発したという「Detached」だが,先んじてリリースされていたReady at Dawnの「Lone Echo」には,クオリティ面でまったく歯が立たなかったというハクラ氏。「あの作品は,私たちがVRで実現したかったことをすべて盛り込んでいた」と素直に白旗を上げていたが,同時に「Lone Echo」はプラットフォームホルダーからの支援を有り余るほどに受けてリリースされていたことも事実であり,プラットフォームホルダーとパブリッシャの関係の重要性を認識したと語っていた。
 なお,現在に至るまでの「Detached」の販売本数は2万5000本,収益は41万ドルに収まる結果となったが,マーケティングをほとんど行わなかったにも関わらず,PlayStation VRプラットフォームで意外にも健闘していたことが評価につながり,次回作となる「Telefrag VR」を開発する後押しとなったようだ。

究極的な無重力体験を目指した「Detached」(2017年)だったが,同ジャンルの「Lone Echo」に惨敗してしまった
画像集 No.003のサムネイル画像 / 「Detached」で知られるAnshar Studios・CEO,ルーカス・ハクラ氏トークセッション。「もうVRゲームの開発は懲り懲りだ」と話すワケ

 「Telefrag VR」は,2019年7月にローンチされたばかりのVRタイトルで,「Detachedにはシューティング要素がない」というユーザーの声を取り入れて,テレポート要素とシューティングを取り入れ,対戦モードにフィーチャーしたものだ。
 マーケティングにも力を入れ,50万ドルの開発予算を費やしたと話す「Telefrag VR」だが,期待とは裏腹に現在までに2500本ほどしか売れていないとハクラ氏は告白する。収益にすると,3万1000ドルしか回収できていないという,惨憺たる結果だ。
 その理由として,ハクラ氏は「ヒット作のSUPERHOTに無料クーポンをバンドルしてもらう契約を早くから取り付けたが,SUPERHOTが売れまくったのでタダで配ったようなものだった」と笑い飛ばす。実際,発売から3か月ほどしか経過していないものの,ユーザーの購入額を平均してみると,半額以下の12.4ドルになってしまっているという。また,「Detached」が健闘していたPS VR市場でも低調であり,この理由についてはまったく想像もできないとのことだった。

リリースされたばかりの新作「Telefrag VR」だが,そのセールスは前作に到底及ばないという結果に……
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「Telefrag VR」のPS VRでの販売状況が悪い理由はハクラ氏にはまったく想像できず,「厳しいアートワークの審査を通すために,平凡なものに落ち着かせたためかもしれない」とのこと
画像集 No.005のサムネイル画像 / 「Detached」で知られるAnshar Studios・CEO,ルーカス・ハクラ氏トークセッション。「もうVRゲームの開発は懲り懲りだ」と話すワケ

 ちなみに,ハクラ氏が「Telefrag VR」の競合タイトルとして見ていた同ジャンルの「Space Junkies」も,Anshar Studiosの独自調査によると3万本ほどしか売れておらず,「Ubisoft EntertainmentでもVRゲーム市場で利益を上げられない状況なのだから,良いゲームを作るだけでは誰も満足はしない。完璧で独創的なゲームに仕上げなければならない」と心中を語る。VRゲーム市場は「VR元年」と言われた2016年から期待されたスピードで拡大していない一方,ユーザーが求めるクオリティは非常に高くなっており,開発者70人を抱えるAnshar Studiosでも,もはや手を出しずらくなっているようだ。

ハクラ氏が公開したAnshar StudiosのVRゲームの販売状況と,ライバルソフトとの比較。ライバルソフトについての情報は彼自身の調査によるものということだが,開発者がこうした情報を公開するのは貴重である
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現在,Anshar StudiosはVRゲームの開発から少し距離を置き,フラットスクリーン向けのアクションRPG「Gamedec」を開発中だ。未来のVR環境がテーマというのが意味深ではある
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 ハクラ氏のトークセッションは「VRゲーム市場で成功しなかった開発者の不平不満」的な内容になっていたものの,このセッションに参加していた後続の開発者たちには,「VRゲーム市場がなくなると言っているのではありません。IndexやQuestのように,ハードウェアは恐ろしいほどのスピードで進化しており,我々の表現したいことができやすいプラットフォームになっている」と念を押す。
 その上で,「今の段階ではゲーム以外のVRコンテンツにも目を向けることで,自分たちの開発力を伸ばすという手もある。なるべく低予算で小さなことに集中して開発するのも悪くはない」と語り,VRゲーム市場での成功の難しさについて持論を展開していた。

2018年7月に,Steamのアチーブメントの情報から販売本数を非常に正確にはじき出すという手法がインターネットで広がっていたが,ハクラ氏によるとそれらは「5%以内」の誤差程度に収まっているという。それにしても,VRゲームは余り売れていない
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「ボクらのような,パブリッシャからのサポートのない独立系開発者たちは,VRゲームの制作に疲れてしまっている」とハクラ氏は話す
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「Game Industry Conference Poznań 2019」公式サイト

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