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「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた
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印刷2021/10/19 12:00

インタビュー

「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた

画像集#001のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた
 対戦格闘ゲーム「MELTY BLOOD」シリーズの最新作「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」PC / PS4 / Xbox One / Switch,以下,TYPE LUMINA)がディライトワークスから2021年9月30日に発売された。

 フランスパンが開発を手がける本作は,8月26日に発売されたTYPE-MOONのノベルゲーム「月姫 -A piece of blue glass moon-」PS4 / Switch,以下,月姫R)の世界観をベースにした対戦格闘ゲームだ。
 いわゆる原作付きの“キャラゲー”の側面を持ちながらも,原作を手がけるTYPE-MOONと,格闘ゲームのデザインに定評のあるフランスパンの共同開発により,「月姫」ファンと格闘ゲームファンの双方から熱い支持を受けてきた「MELTY BLOOD」シリーズ。その最新作となる本作は,どんな思いから生み出されたのだろうか。

 発売からすでに2週間ほどが経過し,多くの人が物語や対戦を楽しんでいる状況ではあるが,その狙いをフランスパンのお二人に聞いてみたので,本稿ではその模様をインタビュー記事としてお届けしたい。答えてくれたのは,フランスパン代表のなりたのぶや氏と,ディレクターの芹沢鴨音氏だ。
 取材自体は発売前のため,すでに遊んでいる人にとっては今さらな話題も少なくないが,開発側の考えを知る一助として,読み進めてもらえたら幸いだ。

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 Project LUMINAは本日(2021年9月30日),2D対戦格闘ゲーム「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」を発売した。ゲームのインプレッションをお届けするとともに,勝負のカギを握るシステムの紹介と読み合いの解説,さらにはキャラクターごとの特徴をまとめたので,ぜひスタートダッシュに役立ててほしい。

[2021/09/30 00:00]
画像集#002のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた

「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」公式サイト



「月姫R」と共に生まれ変わった「MELTY BLOOD」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。「Actress Again」から13年,バージョンアップである「Current Code」から数えても11年ぶりとなる「TYPE LUMINA」ですが,開発はいつ頃からスタートしたのでしょうか。

フランスパン代表のなりたのぶや氏。同人ゲームとしてスタートしたMELTY BLOODシリーズの立ち上げに関わり,今作ではディライトワークスやTYPE-MOONとの連絡や交渉を担当したとのこと
画像集#004のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた
なりたのぶや氏(以下,なりた氏):
 今の「TYPE LUMINA」につながる開発という意味では2017年8月。ただTYPE-MOONさんとは,それ以前からTYPE-MOON作品の新作格闘ゲームの話はちょこちょこしていて,それも含めるなら「UNDER NIGHT IN-BIRTH」(以下,UNI)が始まる前の2011年あたりが本当のスタート……と言えるかもしれません。
 TYPE-MOONさんとのタイミングもなかなか合わず,状況が変わるのを待っていたところ,「月姫R」の開発スケジュール・完了時期が見えてきたとの連絡がありました。それが2017年の夏のことで,そこから話が具体的になってきたんです。

4Gamer:
 2017年としても4年前ですが,その時点でもけっこう形になっていたのでしょうか。

芹沢鴨音氏(以下,鴨音氏):
 いえ。2017年から2018年半ばまでは,いわゆる研究開発の期間でした。とりあえず2キャラクター――アルクェイドと翡翠だけ作ってみて,バトルデザインやグラフィックスの方向性を模索していた時期です。
 今作ではドット絵をただ表示するだけでなく,キャラクターや背景に影などのエフェクトを乗せたりしていますが,そうした細かいルックを決めていく必要がありました。

なりた氏:
 その時期が長かったよね。あとはキャラクターを「月姫R」に合わせてどう変えるか,そもそもどのキャラクターを登場させるかといった部分を,TYPE-MOONさんと詰めていったのもこの時期です。

4Gamer:
 ドット絵で行くというのは最初から決まっていたのでしょうか。昨今は3Dグラフィックスを採用した2D格闘ゲームも少なくないように思いますが。

なりた氏:
 かなり初期の段階では,3Dグラフィックスの制作という案もありました。ただ,そうすると我々にとっては初めての事で時間もかかってしまうでしょうし,ゲームが根本から変わってしまう可能性もありました。結果として,「MELTY BLOOD」(以下,メルブラ)らしいビジュアルは,やはり2Dドット絵だろうということで,ドット絵で制作することになりました。

鴨音氏:
 メルブラといえばヌルヌルしたドット絵のイメージなので,私としてはドット絵以外はあまり考えていませんでした。かつてのメルブラを,最新のドット絵で作り直したいという思いがあったので。

4Gamer:
 キャラクターの等身が上がって,スマートになりました。

鴨音氏:
 これは「月姫R」の雰囲気に合わせて調整したというのが理由の一つですが,あとは単純に解像度が上がったからですね。昔のメルブラの頭身が低めなのは,解像度が低い環境で表情を描くために,少し顔を大きくする必要があったためです。あの頭身のまま解像度を上げると,着ぐるみみたいになってしまいますので。

画像集#006のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた


“メルブラらしさ”とは何か


4Gamer:
 ではバトルデザイン面はいかがでしょうか。

鴨音氏:
 本作の目標は,これまでのシリーズを遊んでくださったコアなファンと,これまで格闘ゲームをあまりプレイしてこなかったTYPE-MOON作品ファン,その双方に満足していただけるメルブラを作ることでした。
 ただ前者は,歴史が長いだけあって,プレイしている時期や作品の違いから,メルブラに持っているイメージが皆さんけっこうバラバラなんですよね。最初の同人版だけ遊んだ人からアーケードでガンガン対戦していた人まで,その全員に「ああ,メルブラだ。懐かしい」と思っていただけるものにしたかった。
 だからバトルデザインの作業は,“メルブラらしさ”とは何かを再確認するところからはじめる必要がありました。

4Gamer:
 なるほど。“メルブラらしさ”とは何か,ですか。

フランスパン ディレクターの芹沢鴨音氏。「MELTY BLOOD Act Cadenza」からゲームバランスの調整に関わり,今作ではバトルデザインをはじめとした開発に関わる作業のほとんどを統括している
画像集#005のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた
鴨音氏:
 いわゆる分解と再構築です。なので,まずはゲームシステムの整理をすることにしました。これまでのメルブラはシステムが多すぎて,現役プレイヤーですら忘れているものがあるくらいなんです。間口を広げるならやっぱりシステムは簡略なほうが良いわけで,だから“メルブラらしさ”を維持しながらどこまでこれを整理できるかを,モックアップで試してみた。でも……どうもそういうことじゃないみたいで。

4Gamer:
 というと?

鴨音氏:
 “メルブラらしさ”を象徴するのは,ゲームシステムだけではなかったということだと思います。
 例えば,シールドと強制解放だけ残したらメルブラになるかというと,そんなことはない。2段ジャンプや空中ダッシュをなくしてみたり,「ビートエッジ」や「リバースビート」に制限をかけてみたり,あるいは簡単な操作で遊べるようにコマンドを簡略化してみたりもしましたが,どれも“どこかで見たゲーム”にしかなりませんでした。

※ビートエッジは通常技を通常技でキャンセルして攻撃を繰り出すゲームシステム。いわゆるチェーンコンボだが,一般的なチェーンコンボが[A]→[B]→[C](あるいは弱→中→強)の順でしかキャンセルできないのに対し,メルブラではこの逆順でも可能になっている。これをリバースビートと呼ぶ。

4Gamer:
 そこが本質ではないと。

鴨音氏:
 はい。そもそもメルブラのシステムはごった煮で,いろんなゲームシステムのいいとこ取りでできている。ではその中でプレイヤーが何を楽しんでいたのかというと……軽快な操作性とそれによって生まれる空中戦――つまり自由度の高さこそが面白さなんじゃないか。そこに気付いたら,バトルデザインの方向性はおおよそ決まったようなものです。

4Gamer:
 メルブラは,いわゆる“差し合い”を空中でするゲーム,とはよく聞く話です。

鴨音氏:
 ええ。差し合いの“差し”の部分をジャンプとジャンプ攻撃でやるのがメルブラです。それと象徴としての,エリアルから空中投げで締める空中コンボですね。でも,格闘ゲームを普段やらない人にとって,エリアルやジャンプキャンセルってやっぱり難しい操作なんです。なので,誰でも簡単に空中コンボが楽しめるシステムは,絶対あったほうがいいと考えました。

4Gamer:
 個々のシステムは後で詳しくうかがうとして,事前に少し触らせてもらった感触は,確かに“いつものメルブラ”という印象でした。もちろん現役のプレイヤーが触ったら,また違うのかも知れませんが。

鴨音氏:
 細部まで追いかけると,けっこう変わっているんですよ。例えばリバースビートに補正が掛からないとか,強制解放の性能が違ったりとか。久しぶりにプレイする人にとっては“いつものメルブラ”で,コアなプレイヤーにとっては“全然違うもの”。そこは狙ったところでもあります。

4Gamer:
 画角が16:9になりましたが,その影響はいかがですか?

鴨音氏:
 単純に横に長くなった,というか縦に短くなったので,カメラのスクロールなどを細かく調整しています。先にも言ったようにメルブラは空中戦が主体のゲームなので,横だけでなく縦にも戦えるようになっていますので,そこはご安心ください。
 ヒットストップやのけぞり時間といったゲームスピードに関わる部分も,これまでのメルブラに近い数値にしていますので,シリーズファンの皆さんも違和感なく遊んでいただけるんじゃないかと。

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選ばれた14組のキャラクター達


4Gamer:
 バトル部分についてはひとまず置いておくとして,参戦キャラクターについて聞かせてください。13人14組のキャラクターの参戦が発表されていますが,この中では軋間紅摩と有間都古の参戦がとくに意外でした。

鴨音氏:
 基本的には「月姫R」の登場キャラクターから選んだ形ですが,確かに軋間と都古の二人はちょっと例外的に見えるかもしれません。この二人はどちらかというとメルブラで活躍してきたキャラクターで,「月姫R」の舞台である総耶近辺には確かに存在しているものの,「月姫R」本編にはあまり影響しない。なので,ここで登場しても問題ないキャラクターだったんです。

なりた氏:
 都古は生粋のインファイターで格闘ゲーム向きのキャラクターですし,軋間は投げキャラという性能や男性不足を補う意味で,参戦の候補に挙がったキャラクターでした。「月姫R」の格闘ゲームでありながらも,格闘ゲームとしての幅を広げる必要があって,そうした個性を備えたメンバーとしてこの2人に登場してもらいました。

画像集#009のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた

4Gamer:
 確かにメルブラファンにとっては,欠かせないキャラクターだと思います。では完全新規のキャラクターとなったノエルとヴローヴについて聞かせてください。この2人はどんなキャラクターですか?

鴨音氏:
 ノエルは初心者にも扱いやすいキャラクターにしてほしいと,TYPE-MOONさんからプッシュされたキャラクターでもありました。巨大なハルバードによる攻撃が主体で,リーチが長く攻撃範囲も広い,それでいて飛び道具もあって小回りが利くという,手触りが良くて使いやすいキャラクターになったと思います。
 ただ,ノエルの性格は「強い相手には弱いけど,弱い相手には滅法強い」というもので,強い相手には無理しない設定なので,バトルコンセプトにもそれが反映されています。自分の都合のいいタイミングでは攻めに出られるけど,不得意な間合いになると,立ち回りで補う必要があり,とたんに苦しくなるといったような。

4Gamer:
 得意な間合いがハッキリしている?

鴨音氏:
 ええ。だから対戦のレベルが上がってくると,そうした弱点を克服する必要が出てきます。そういう意味でも,面白いキャラクターなんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 ヴローヴは「月姫R」だとほとんど動かないキャラクターでしたが,ギミックがいろいろあって面白そうなキャラクターだと感じました。

鴨音氏:
 「月姫R」では,固定砲台のような戦闘が印象的できたが,本作ではかなり動けるキャラクターになっています。近接戦闘でアルクェイドやシエルと刃を交えるシーンもありましたし,その辺りを反映しつつ,大きくてかっこいいパワーキャラクターに仕上げました。

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4Gamer:
 確かに。固定砲台にシューティングをさせるのは,リブート作品としてはちょっと早すぎかもしれません(笑)。

鴨音氏:
 ノエルと同じく新キャラクターなので,あまり難しいキャラクターにはしたくなかったというのもあります。こういうキャラって,つい作り込みたくなるんですが,そうはならないように。ボスキャラらしくシンプルに技が強くてかっこいい,中〜遠距離で戦うイメージです。

4Gamer:
 旧作のネロ・カオスやワラキアの夜みたいなポジションでしょうか。あとヴローヴにはモード変化もありますが,これは?

鴨音氏:
 そうですね。リーチが長くて判定が強い,とりあえずこれ振っとけば大丈夫,みたいな感じです。
 モード変化は相手にあと1ラウンドを取られると勝敗が決する場面で自動的に変化するもので,状況に合わせてモードを切り換えるような要素はありません。性能的にも,また設定的にも氷モードは炎モードの上位互換となり,モードが変わっても操作を大きく変える必要もないため,そう難しくはないはずです。

4Gamer:
 なるほど。単純に強化なんですね。

鴨音氏:
 ゲージを使って一定時間氷モードになるみたいなモード切り替えも考えはしたんです。けれど,ただ炎モードと氷モードを行ったり来たりするのはヴローヴらしくないので,そこは「月姫R」準拠で今の形に落ち着きました。

4Gamer:
 ゲストキャラクターであるセイバーも,メルブラとしては新規のキャラクターということになります。まず,参戦の経緯を教えてもらえますか。

なりた氏:
 実は「TYPE LUMINA」の開発が始まる前に,「TYPE-MOON作品の新作格闘ゲーム」の企画を我々からTYPE-MOONさんに提案していまして。そのときにサンプルとして作成したキャラクターがセイバーだったんです。それがきっかけですね。

画像集#042のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた

鴨音氏:
 フランスパンは,メルブラを通じてこれまで長い間TYPE-MOONさんの作品に携わらせていただいていますが,実はこれまでにセイバーを制作する機会はなかったんですね。僕らとしても,Fateシリーズの顔とも言えるセイバーを作ってみたいという想いはずっとあったので,今回の参戦は,その想いを受け止めていただけた結果なんです。

4Gamer:
 フランスパンさんからの要望だったわけですね。

鴨音氏:
 そうですね。ゲーム的にも,セイバーは“西洋騎士”という「月姫」のキャラクター達とは異なる特徴を持っていますから,格闘ゲームとしての“幅”を広げることに貢献してくれたと思います。
 また限定版特典の「MELTY BLOOD読本」には,セイバー参戦について奈須さん(TYPE-MOONの奈須きのこ氏)と武内さん(同代表の武内 崇氏)が語るインタビューも収録されていますから,そちらもチェックしていただきたいです。

4Gamer:
 バトルコンセプトとしては,どんなデザインなのでしょうか。

鴨音氏:
 セイバーは剣を使ったリーチの長い攻撃と,高速で移動できる技を持っていて,中距離から一気に間合いを詰めて攻め込んでラッシュを仕掛けるのが強力なキャラクターです。騎士王らしく,正々堂々と真っ向勝負を挑むバトルスタイルでキャラクターのイメージを再現しています。使いやすい通常技と多彩な派生を持つ必殺技を持っているので,両方を使いこなせば,見切られにくい攻めができると思います。

4Gamer:
 分かりました。では既存のキャラクターはいかがですか。技のモーション的にはこれまでのメルブラを踏襲しているように感じましたが,変化した部分はあるのでしょうか。

鴨音氏:
 アルクェイドはかなり変わっているので,ぜひ注目してほしいですね。これまでアルクェイドは,すごく長くてテクニカルなコンボが要求されるキャラクターで……「月姫」のイメージとちょっと違うのがずっと気になっていたんです。なのでガラっと変えています。

4Gamer:
 そう言われてみると,確かに「月姫」のイメージとはちょっと違うかもしれません。

鴨音氏:
 パワーがあって,スピードもあるけど小細工を弄すわけではない。かつヒロインで人気キャラでもあるので,難しくもしたくない。とっかかりに触ってもらうキャラクターとして簡単でありながら,その中にもやりこみ要素は残したい。そうしたことを考えながら調整しています。

画像集#029のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた

4Gamer:
 ちなみにシエルはいかがですか。基本は変わっていないように見えましたが。

鴨音氏:
 シエルはこれまでのメルブラに比べて,黒鍵使いの面を強調した調整を加えています。「月姫R」でも黒鍵が大活躍していましたし,飛び道具の使い勝手がかなり向上しているかと。ちなみにこうした「月姫R」の設定に準拠した調整は,シエルに限らず随所に入っています。

4Gamer:
 設定に準拠した調整というと,ほかにはどんなものがありますか?

鴨音氏:
 例えば,志貴を象徴する技にガード不能の溜め[C]があるんですが,今作ではこれがかなり強力になっています。当たればダメージが大きいうえに,シールドで防ごうとしても立ちシールドでしか防げないという。……直視の魔眼を持つ志貴が「見えた!」って言って攻撃してるんだから,これくらい強力じゃないと,という調整ですね(笑)。

4Gamer:
 秋葉は標準の私服Ver.でなく,制服秋葉がベースのようですが,これはなぜでしょうか。

鴨音氏:
 秋葉は「月姫R」本編でまだ深く語られていないキャラクターなので,今回は遠野家当主としての姿ではなく,制服姿での参戦になりました。そのうえで,ほかのキャラとの差別化も考えつつ,「フルムーン」寄りの性能になっています。

※「MELTY BLOOD Actress Again」以降で採用されていたゲームシステム。キャラクターごとに「クレセントムーン」「ハーフムーン」「フルムーン」の三つのスタイルが選択可能で,それぞれ異なる通常技や必殺技,ゲームシステムが用意されていた。

画像集#013のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた

4Gamer:
 今作ではスタイル選択システムがなくなったので,それぞれのキャラクターがどのスタイルを引き継いでいるのかも気になるところですね。

鴨音氏:
 そのキャラクターを代表する技や,皆の記憶の中にあるキャラクターのイメージに近いものを選んでいるので,完全にどれか一つのスタイルを踏襲しているというわけではありません。

4Gamer:
 複数のスタイルの融合になっていると。

鴨音氏:
 そうですね。ただ「Act Cadenza」や「Re・ACT」の頃で記憶が止まっている人が多いだろうという想定から,結果的に「クレセントムーン」がベースになっているキャラクターが多いとは思います。

4Gamer:
 では,これは聞いておかなければならないと思うのですが,シオンが不参戦となったのはなぜでしょうか。ある意味,メルブラの顔と呼べるキャラクターだと思うのですが。

なりた氏:
 これは「月姫R」の格闘ゲームであることを第一に考えたから,というのが一番の理由です。シオンが登場するとタタリ関連の話になってしまうので,どうしても「月姫R」よりも先のお話となり,別の物語が始まってしまう。なので,今回は一旦不参加ということになりました。

鴨音氏:
 UNIにゲスト参戦していたので簡単に出せるんじゃないかと思われるかもしれませんが,なかなかそうもいきません。今回登場しないほかのキャラクターもそうですが,今のところは現状の14組のキャラクターで楽しんでいただければと思っています。

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「MELTY BLOOD」が生まれた日


4Gamer:
 話題を変えて,シリーズそのものの成り立ちについて聞かせてください。同人からスタートしたメルブラですが,以前にお話を伺ったとき,なりたさんは権利関係をクリアにしたゲームを作ろうとしたのが発端とおっしゃっていました。その辺りをもう少し詳しく聞かせてください。

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 2012年9月20日に稼働を開始したAC「アンダーナイト インヴァース」。その開発元・フランスパンは,「MELTY BLOOD」で同人から商業デビューを果たした,伝説的な同人サークルでもある。初の完全オリジナル作品となった同作で,フランスパンは何を目指すのか。代表のなりたのぶや氏と,プランナー芹沢鴨音氏に話を聞いた。

[2012/11/03 00:00]

なりた氏:
 そうですね。あの当時は自分達の周囲でも権利関係のトラブルの噂がいくつかあって,明日は我が身という状況でした。なので二次創作は一刻も早く止めるべきと分かってはいたんですが……いきなりオリジナルに行く勇気もなく,迷っていた時期が長かったように思います。

4Gamer:
 メルブラの前夜,2000年頃のお話ですね。

なりた氏:
 はい。そんな時期に突如現れたのが「月姫」でした。同人の世界は二次創作じゃなくてもいいんだって,事実を突きつけられた気がして。あの日を境に,世界が一気に変わってしまった。

4Gamer:
 あの頃の同人ゲーム界隈は,熱かったですね。まさにその場に立ち会ったなりたさんなら,さぞかし熱量を感じたことでしょう。

なりた氏:
 もう,衝撃的でした。商業で人気の成人向けノベルゲームで染まっていたジャンルコードの勢力図がオセロのように塗り替わっていって,そこから“同人の同人”という,当時としては珍しいムーブメントも生まれてきた。「だったら僕達が月姫の同人ゲームを勝手に作っても問題ないんじゃ?」なんて魔が差した瞬間もありましたが(笑)。それだと権利的な問題という同じ失敗の繰り返しなってしまう。

4Gamer:
 それでTYPE-MOONさんに連絡を取った?

なりた氏:
 いえ。さすがに同じ同人ソフト畑でもそこまで踏み込めず(笑)。最初は全然関係ない冗談企画だったんですよ。知り合いから月姫の同人本を作るから原稿を書いてって言われ,嘘ゲームの広告を1ページ載せてもらったんです。それが奈須さんと武内さんの目に留まったみたいで……あるとき武内さんから「あれ見ましたよ。じゃあ,いつ作りましょうか」ってお声がかかりまして。

同人誌に掲載された「MELTY BLOOD」の嘘広告(画像提供:富山きさら
画像集#041のサムネイル/「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」開発者インタビュー。フランスパンのなりたのぶや氏と芹沢鴨音氏に,10年越しの思いを聞いた

4Gamer:
 すると最初のアプローチはTYPE-MOONさんから?

なりた氏:
 最初はまあ,軽いノリだったんだと思います。こちらも「いやいや,あなた方は絶対にビッグになるので,ここで僕らなどと関わって経歴を汚すべきではない」って返答したくらいですから(笑)。だけど「改めて話しましょう」って言ってもらえて。それで開発がスタートしたんです。

4Gamer:
 無印のメルブラはノベルパートがあったりして,格闘ゲームとしてはかなり異色な作品だったように思います。

なりた氏:
 ノベルパートや登場キャラクター,世界観なんかは基本的にTYPE-MOONさんにお任せでした。僕らはTYPE-MOONさんから提案をもらって,「こんな素晴らしいものを……本当にいいんですか?」という気分で制作していましたね。

4Gamer:
 発売後の反響はいかがでしか?

なりた氏:
 当時人気絶頂の「月姫」のスピンアウトなわけですから,それはもちろん好評でした。ただ……。

鴨音氏:
 自分は当時プレイヤーの立場でしたけど,発売に興奮した半面,起動しないわ落ちまくるわで怒り心頭でした(笑)。

なりた氏:
 ……あれは本当にひどかった。当時の内部事情によるものですが,それは要するに責任者たる僕の問題なので申し訳なかったです。

4Gamer:
 鴨音さんは当時,どう受け止めたのでしょうか。

鴨音氏:
 自分の感想としては,なんというか「龍虎の拳」みたいだなと。シオンか志貴を選んでCPUと戦いながらストーリーを楽しむ,多くの人は1人用ゲームとして楽しんでいたように思います。
 自分は当時,同人格闘ゲームのコミュニティにいて,対戦会を開いたりしていたんですが,そこでは結構すぐに飽きられてしまって。対戦バランスがめちゃくちゃだったのである意味当然なんですけど,自分を含む数人はずっと続けてました。

4Gamer:
 鴨音さんがそこでプレイし続けた理由はなんだったのでしょうか。

鴨音氏:
 やっぱり「月姫」が楽しかったし,好きなキャラクター達が登場するわけですから,その魅力が大きかったんだと思います。あとは……新しい時代というか,未来を感じていたのかもしれません。

なりた氏:
 格闘ゲームにするかアクションゲームにするか,開発終盤まで悩んでいたんですよね。奈須さんからは「ノベルパート軽く作ります!」と聞いていたのに,あがってきたらものすごいボリュームで。これで格闘ゲームに振るのは厳しいと感じていたんです。ただ,このときにはもうエコールさんからアーケード版の話が来ていたので……。

「MELTY BLOOD Act Cadenza」  (C)TYPE-MOON/ECOLE,1999-2007
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4Gamer:
 えっ,アーケードの話はそんな早くからあったんですか?

なりた氏:
 そうなんです。まだ無印を頒布する前なのに,「これは同人で出すべきじゃないからアーケードで出しましょう!」ってエコールさんに言われて。「いや出せるわけないでしょ」って,正直最初は思いましたけど(笑)。
 なので格闘ゲームとしての完成度はアーケード版で追求することにして,今回はハチャメチャなアクションに振ろうという考えに,次第になっていきました。結局,時間切れでみっともないことになっちゃいましたが。

4Gamer:
 なるほど……。鴨音さんが開発に関わるようになったのは,どういう経緯だったんでしょうか。

なりた氏:
 「Re・ACT」から開発側にまわったんだっけ?

鴨音氏:
 いや,「Re・ACT」のときはただのクレーマーでした(笑)。バランス悪すぎるからここを直せとか,これが永パになるから硬直を減らせとか,パッチが当たるたびにリストにしてサイトに掲載していたという。そうしたらデバッグやテストプレイやりませんかって連絡が来まして,面白そうだと出かけていって……いつの間にか開発に関わるようになってました。

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ゲームメカニクスとグラフィックスの源流


4Gamer:
 先にも少し話題に挙がりましたが,メルブラといえば空中戦というくらい,空中戦に重きを置いたゲームメカニクスになっていますが,これはどのように生まれてきたのでしょう。当初から意識されてたのでしょうか。

なりた氏:
 本当に最初の最初は,カプコンさんの「X-MEN CHILDREN OF THE ATOM」「MARVEL SUPER HEROES」(以下,MARVEL)あたりの影響が強かったと思います。あの躍動感が好きたったので,月姫キャラが動くならこうでなくてはというビジョンがありました。なのでジャンプは最初から高く設定していました。

鴨音氏:
 なりたさんの話は正しいんですが,プレイヤーの視点だとちょっと違っていて。地上技の隙が大きすぎたんですよね。絵の枚数が多くて全体フレームが長いので,立ち回りで技が振れないですよ。一方,ジャンプ攻撃が鋭くて,隙も少ないという。

4Gamer:
 純粋にジャンプ攻撃が強かったと。

鴨音氏:
 そうです。地上技と比べてジャンプ攻撃が強くて,いわゆるチキンガード(ジャンプ移行ガード)のリスクもほとんどなかったことから,結果として空中戦が主体のゲームになっていったのではないか。自分はそう考えています。

なりた氏:
 絵の枚数,そんな多かった?

鴨音氏:
 多かったですよ。絵を描きたいグラフィッカーの熱意と,「MARVEL」風にしたいプランナーの狙いのズレが生んだデザインなんじゃないかって,当時思ってました。

「MELTY BLOOD Actress Again Current Code」
(C) TYPE-MOON / ECOLE Developed by FRENCH-BREAD Published by ARC SYSTEM WORKS
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4Gamer:
 なるほど……。結果として,唯一無二の格闘ゲームができあがったと。鴨音さんが惹かれたのも,そうしたゲームデザインだったのでしょうか。

鴨音氏:
 それはもちろんありましたが,どちらかといえば今話したヌルっとしたドットアニメーションに惹かれたんだと思います。当時の自分は「ヴァンパイア」シリーズのサスカッチやビシャモンが好きだったんですが,メルブラのキャラクターやグラフィックスは私にとってそれ以上に魅力的で。今までにない衝撃でした。技もはちゃめちゃで……というと,語弊がありますけど。パッションが先行しているところが好きでしたね。

4Gamer:
 でも,クレームは書いていたんですよね。

鴨音氏:
 それはそれ。格闘ゲーマーの自分もちゃんといて,クレームは書いてました(笑)。

4Gamer:
 (笑)。でもフランスパンさんのドットグラフィックスには,確かに独自の美学を感じます。あれはずっと同じ人が手がけてるのでしょうか。

なりた氏:
 実はそんなに同じ人がずっと関わってるわけではないんですよね。最初の二次創作時代は我妻と僕が出張ってドット絵を頑張って,メルブラの時代で急にクオリティが上がったのは我上院さんが先導してくれたお陰。今のHD環境ではUNIのイラスト描いてる吉原(フランスパンの吉原成一氏)がメインな感じですかね。

鴨音氏:
 立ち上げは吉原で,途中から新人にも入ってもらっています。吉原から技術を伝えていけるようにと。「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」と「TYPE LUMINA」は,その若い子達がメインですね。

4Gamer:
 なるほど……結構入れ替わっているんですね。

鴨音氏:
 チェックとかはするので職人的に伝わっている部分はあるでしょうし,基礎の部分は言語化もされています。でも,昔のメルブラからのつながりは,ほとんどないですね。

なりた氏:
 うちでグラフィックスをやろうなんて人は,皆同じゲームを見て育ってきているわけだから。結果的に同じ方向を見ているんだと思いますよ。

4Gamer:
 個人的な印象ですが,フランスパンさんのドットは緩急が大きいのが特徴のように感じています。ヌルヌル動く部分とそうでないところがはっきりしているというか。背景もシンプルではあるんですが,主張が激しくなくて,プレイの邪魔をしないところが素敵だなと。

鴨音氏:
 昔はドッターが自分達で進行管理していて,描きたいだけ描く,みたいな感じだったんですよ。でも自分がディレクションするようになったUNIからは,スケジュールや予算を考えて枚数を調整するようになったので,その影響かもしれません。
 背景もそこにリソースを割くなら,キャラクターのドットに割り振るべきだろうという考え方ですね。バトルの空気感を大切にしたいので,戦うキャラクター達に合った背景を心掛けています。

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