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市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載
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印刷2011/07/05 10:00

企画記事

市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載

基本無料+アイテム課金の時代(2004〜2010):

「スカッとゴルフ パンヤ」が示したセカンドゲームという概念


 ラグナロクオンラインと,ほぼ時を同じくしてリリースされた「ファイナルファンタジーXI」を含め,MMORPGが一世を風靡していた2002年〜2004年。オンラインゲーム企業各社が「もっと凄いMMOを」「もっと違うMMOを」と躍起になっているなかに現れたのが,ゲームポットの「スカッとゴルフ パンヤ」(以下パンヤ)である。

「スカッとゴルフ パンヤ」
画像集#011のサムネイル/市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載
 パンヤは,重厚長大なMMORPGとは打って変わって,短時間で手軽に遊べることが大きな特徴だ。当時,「カジュアルゲーム」という言葉でジャンル付けされた同作だが,長時間のプレイが前提であるMMORPGが中心だったオンラインゲーム市場において,ちょっとだけ空いた時間と言った“隙間”にうまく入り込んで成功したタイトルであった。
 事実,「人気MMORPGのサーバーメンテナンス時間には,パンヤのログイン数が急増する」という話(というより実話)も聞かれたほどで,人気タイトルがひしめくMMORPGというレッドオーシャンを避け,一人ブルーオーシャンを航海していった当時の本作の様子が,ありありと目に浮かぶ。

 少し考えれば容易に分かる話ではあるのだが,長時間のプレイを強いられるMMORPGをいくつも並行して遊ぶことは困難だし,それ以前にMMORPGは,一度はまると数年間遊び続けるというケースも少なくない。しかし,短時間で遊べるゲームであれば,MMORPGと並行して(ほかのゲームで知り合った友達と一緒に)楽しむことができる。パンヤは,オンラインゲーム市場で見落とされていた意外なマーケットを見つけることで成功したタイトルだったわけだ。

 さらに本作は,ビジネスモデルという意味でも,新機軸の戦略を打ち出したタイトルであった。これも今となっては当たり前となった,「基本無料」の「アイテム課金」というスタイルである。
 この基本無料と先に述べた無料βテストとの大きな違いは,有料化の後も「無理に顧客を閉め出さない」という点である。もちろん,正式サービス後も無料で開放されたままだという点も大きいが,これによって,無料時は賑わっていたが有料化した途端に閑古鳥が鳴く……といった極端なプレイヤー数の変動がほぼなくなった。プレイヤーの側から見ても,ゲーム自体は常に無料で開放されているので,遊ぶまでの障壁は少ない。ゲームをより深く楽しみたいと思ったら,その時はじめてお金を払えばいいのだ。
 また客単価という面から見ても,それまで主体の月額課金モデルでは月1500円前後という暗黙の壁(ウルティマ オンラインが作り上げた慣習法のようなものだ。あのとき,1ドルが500円であれば!)があったわけだが,アイテム課金は,それを打ち破る効果をもたらした。まったくお金を使わずに遊ぶプレイヤーがいる一方で,月に数万円,場合によっては数十万円をつぎ込むプレイヤーが生まれる基盤を作り出したからだ。

 ビジネススタイルの多様化によって,ゲーム(市場)の幅も広がる。「月1500円支払うプレイヤーを1万人集める」というシンプルなやり方だけではなく,嗜好性の高いコンテンツに特化させることで,「月1万5000円支払うプレイヤーを1000人集める」といった,ニッチ狙いの戦略も成り立つようになったためである。
 一方で,射幸心を煽りすぎるアイテム販売の危険性が指摘されたり,高額課金者にまつわるトラブルも散見されたりして,今もなお続くいくつかの重要な問題を,業界に課題として残すことにもなる。

「ファンタジーアース ゼロ」。基本無料のアイテム課金というビジネスモデルが確立されることによって,それまでは課金が難しかったアクションゲームなども,オンラインゲーム化の道が拓けた
画像集#020のサムネイル/市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載 画像集#021のサムネイル/市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載


ブラウザ&ソーシャルゲームの時代(2008〜2010):

ブラウザゲームはなぜ流行ったのか。ポイントは“非同期性


 パンヤの登場以降,「基本無料+アイテム課金」の方式は,その集客力の強さゆえにオンラインゲーム市場の隅々まで浸透していった。2010年時点で言うと,だいたい8割前後が基本無料を謳っているのだから,その隆盛ぶりは推して知るべし,である。

 こうした背景には,オンラインゲーム市場自体の成長が鈍化しているにも関わらず,各社から発表されるタイトル数が過剰供給気味だった点が上げられる。とにもかくにもプレイヤーに遊んでもらわないことには,「モンスターハンター」「ファイナルファンタジー」などの一流のブランドパワーがあるタイトル以外は,次々にリリースされる新作の中に埋もれ,サービス自体が成り立たなくなってしまう。
 有料ゲームがあるすぐ横で無料で遊べるゲームが公開されていれば,プレイヤーだって,どうしてもそちらに気が向いてしまう。オンラインゲーム各社間でのパイの奪い合いが激化する中で,後ろを見ながら前に進むことによって生まれた,チキンレース的な“まずは基本無料”という流れであったことは確かだろう。

 そうした状況を背景に,近年新たな潮流として登場してきたのが,2009年に一気に爆発した感があるブラウザゲームと呼ばれるタイトル群である。
 ブラウザゲームというジャンル自体は,以前から存在していた。比較的新しいところを見ても,GPコアエッジの運営する「アルテイル 〜神々の世界『ラヴァート』年代記」(2004年)などは,Flashベースで手軽に遊べることを売りにする,ブラウザゲームの先駆けのようなタイトルだったと言えるし,ハンゲームなどを始めとした,Webベースで遊べるゲームポータルが大変な賑わいを見せているのは,ことさらに指摘するまでもない。

「ドラゴンクルセイド」
画像集#014のサムネイル/市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載
 しかし,ベクターの「ドラゴンクルセイド」(2009年)を皮切りに火が付いた近年のブラウザゲームには,それまでのブラウザゲームとは大きく異なる点があった。ブラウザベースで,基本無料で……といったイージーに遊べる部分は従来からあったブラウザゲームと変わらない一方で,ゲームシステムを中心に見た場合に,「非同期性」を重視した設計になっているところが,大きな特徴だったのである。

 本書を読まれる方には解説の必要がない気もするが,ドラゴンクルセイドは,多人数参加型の戦略シミュレーションゲームである。プレイヤーはファンタジー世界に生きる一人の英雄に扮し,覇権を目指して内政や外交,そして戦争に明け暮れることになる。1日5分,10分と小刻みに操作(プレイ)するだけでもゲームに参加できるのが,本作の大きな特徴。それでいながら,オンラインゲームの醍醐味である他のプレイヤーとのコミュニケーションや連携,多人数型対戦ゲームならではのダイナミックな戦い(集団戦)も楽しめる。

 オンラインゲーム市場を俯瞰的に見た場合,後に続く「ブラウザ三国志」などにも代表されるこの系統のブラウザゲームは,基本無料の流れに沿って,ユーザー層を広げる必要に迫られて,生まれるべくして生まれてきた作品である。しかし,そこにさらに「プレイヤーの時間を以前ほどは拘束しない」(※)というオプションを付加させることで,既存のカジュアルゲームでさえ大変だと感じるプレイヤー層――ゲームを遊びたくても遊ぶ時間を持てない社会人や,昔はゲームをやっていたという“元”プレイヤーなど――を掘り起こすことに成功したわけだ。

 4Gamer.net上で集めたアンケートのデータを見ると,ブラウザゲームのプレイヤーの年齢層は比較的高めで,20代後半から30代がその中心を成していることに気付く。参考までに付記しておくと,アクション主体のMORPGやFPSなどは,10代〜20代前半のプレイヤーが中心なので,それより1,2段高いプレイヤー層であることはわかっていただけるだろう。

※実際は,「拘束」されるくらいプレイしないと勝てないことが多い。

「ブラウザ三国志」
画像集#016のサムネイル/市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載 画像集#017のサムネイル/市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載


総括:市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓である

流行り物にただ飛びつくのではなく,本質を見極めることが大切


 ここまで,駆け足気味ながらもオンラインゲームの歴史を振り返ってみたわけだが,こうして見ると,その時その時の独立したムーブメントにも,市場あるいはニーズとしては連続性があり,それぞれのエポックメイクなヒット作品は,決して偶然ではなく,流れの中で必然になって生まれてきたことがお分かりいただけるのではないだろうか。
 実は,本稿のオーダーは「2009年を振り返る」というテーマに沿ったものであった。普通に振り返れば,「ブラウザゲームがすごかったねぇ」というあたりに帰結する昨年が,ではなぜそうなったのかを,若干オーダーには沿わない形にはなったが,時間の流れと時々のエポックから導いてみたのが本稿である。

「FarmVille」。たった5週間で作られたこの作品が,一日のアクセス者数(デイリー平均ユーザー数/DAU)3200万人の世界最大規模のゲームに成長した
画像集#022のサムネイル/市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載
 通して読んでいただければもしかしてお分かりかとは思うが,2009年にブラウザゲームをエポックメーカーたらしめた「要素」は,例えば'96年のDiabloに,例えば'97年のウルティマ オンラインに,そしてラグナロク オンラインやスカッとゴルフ パンヤにおいて,すでに内包されている。本稿では取り上げていないが,PS3の「Demon's Souls」や,あるいはWebサービスとして見た「ニコニコ動画」といったあたりも加味していただければ,昨年のムーブメントの実態がよりはっきりと見えてくるのではないだろうか。
 革新とはよく言われるが,何から何まですべてが新しいものなど,そうそう登場するはずもなく,成功者もまた(いや,成功者ほど)過去に学んでいたりするということだ。
 別にゲーム業界に限った話ではないが,過去を振り返る理由は,未来をより良い方向へと向いて進むためである。積み重ねられた失敗や成功は情報の宝庫であり,そこから何かを学び,活かして次を作り上げていくことは――他人ごとではなく――たやすいようで,非常に難しい。

 昨今流行のモバイル市場にせよソーシャルゲーム市場にせよ,環境の大きな変化に素早く対応して順応し,事業という形で乗り出すことは,なるほど確かに大切である。買わない宝くじが決して当たらないように,始めない事業は決して成功しないのだから。加えて業界の性質上,スピードはとても大切だ。
 それでも,何が起こり,何が必要とされ,そのために何を成すべきか,それを考えず闇雲に鉄砲を撃ちまくっていても成功はおぼつかない。目に見えないニーズをいかに把握し,次なる一手を組み上げられるか,2009年に起きた(非同期型)ブラウザゲームの成功は,それをあらためて我々に知らしめたのだ。

 「オンラインゲーム市場は今後どうなるのか」「次にヒットするのはどんなゲームか」。仕事柄,いろいろなところでそれを聞かれるのだが,それは誰にも分からない。ただ,一つ言えることがあるとしたら,それは,歴史の中で市場の拡大を促したエポックメイクな作品は,常に「新しい視点からの顧客開拓」を果たした作品であったという点だ。新しい「顧客」ではなく,新しい「視点」という部分がより重要である。我々が気付いていないだけで,成功は目の前に転がっているのかもしれないのだ。
 より複雑さを増し,混迷とも言える状態が続くオンラインゲーム市場。しかし,まだまだ埋められていない“隙間”はあるはずだ。

「CityVille」
画像集#023のサムネイル/市場の拡大とは新しい視点からの顧客開拓――「激動の国内オンラインゲーム市場10年史」を掲載


 ■おまけ:オンラインゲーム簡易年表
日本のPCゲーム市場を中心に,北米の動向もあわせて参照できる形で,1990年以降のタイトルをまとめてみた。2000年以降はタイトル数があまりに多いため,人気タイトル(ある規模以上のユーザー数に達したもの)を中心にピックアップしている点はご了承頂きたい。ちなみに本表の「サービス開始」は,正式サービス開始日を軸にしている
年代 日本 北米
1979年 「Multi-User Dungeon 」が欧米で人気に
1983年 「MegaWars」がサービス開始
1987年 「AirWarrior」がサービス開始
「Neverwinter Nights」サービス開始
1990年 「ハビタット」がNIFTY-Serveでサービス開始
1992年 「メガウォーズ」がNIFTY-Serveでサービス開始
「AirWarrior」がNIFTY-Serveでサービス開始
1993年 「DOOM」がシェアウェアとして公開
1994年 「DOOM II」発売
1995年 「Windows 95」発売
1996年 「Meridian 59」サービス開始
「Quake」発売
「MSN Gaming Zone」サービス開始
1997年 「Age of Empires」発売
「東風荘」サービス開始 「Diablo」発売
「Ultima Online」サービス開始
1998年 「LIFE STORM」サービス開始
「Starcraft」発売
1999年 「EverQuest」サービス開始
「Ashelon’s Call」サービス開始
「ストーンエイジ」サービス開始
「Age of Empires II」発売
2000年 「Counter-Strike」が正式に発売
「Diablo II」発売
「レインガルド」サービス開始
「アプサラス」サービス開始
「ハンゲーム」サービス開始
2001年 「Dark Age of Camelot」サービス開始
「デプスファンタジア」サービス開始
「クロスゲート」サービス開始
「ファンタシースターオンライン(DC)」サービス開始
「リネージュ」サービス開始
2002年 「ラグナロクオンライン」サービス開始 「Xbox LIVE」サービス開始
「ファイナルファンタジーXI(PC/PS2)」サービス開始
「ガンダム ネットワークオペレーション」サービス開始
2003年 「信長の野望Online」サービス開始 「Second Life」サービス開始
「メイプルストーリー」サービス開始
2004年 「リネージュ II」サービス開始 「Steam」の正式サービス開始
「スカっとゴルフ パンヤ」サービス開始 「World of Warcraft」サービス開始
「モンスターハンター(PS2)」発売 「EverQuest II」サービス開始
2005年 「RED STONE」サービス開始 「Star Wars Galaxies」サービス開始
「マビノギ」サービス開始 「Guild Wars」サービス開始
「Master of Epic」サービス開始
2006年 「ファンタジーアース」サービス開始
「スペシャルフォース」サービス開始
2007年 「サドンアタック」サービス開始 ソーシャルゲーム「Zynga Poker」サービス開始
「モンスターハンター フロンティア オンライン」サービス開始
2008年 「Age of Conan」サービス開始
2009年 「The Tower of AION」サービス開始
「mixiアプリ」正式サービス開始 ソーシャルゲーム「FarmVille」サービス開始



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