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ルーツをたどれば物理シミュレーションの実験にさかのぼるプラットフォームであり,その根っこには「遊びながら学ぶ」というSTEAM教育のビジョンが,およそ20年を経たいまも貫かれている。
加藤氏の説明では,「ロブロックス」(PC / PS5 / Xbox One / PS4 / Meta Quest / Android / iOS)のデイリーアクティブユーザー(DAU)は1億3200万人にのぼり,1人あたりの平均滞在時間は2時間半に達するという。単に「よく遊ばれているゲーム群」という言葉ではくくりきれない,1つの巨大な生活空間がそこにある――そう表現したほうが実態に近いかもしれない。
そうなると,「子どものゲーム」というありがちな印象は,すでに現実とずれ始めている。同社によれば,13歳以下のユーザーは全体のおよそ3分の1にとどまり,残る3分の2は13歳以上――つまり中高生から大人まで,より高い年齢層が占めているという。
伸びているのはとりわけアジアと日本で,同社が示したデータではアジア全体のDAUが前年比57%増,エンゲージメント時間にいたっては同128%増。日本単体でもDAUが75%増と,突出した成長率を見せている。
![]() Roblox Kidsは背景が青く,通常のRobloxとは異なることがすぐに分かるという |
特徴的なのは,安全対策を一過性の施策ではなく,社内の「文化」として運用しているという姿勢だ。毎週4時間のCEOも含めたマネジメント会議のうち,1〜2時間を安全性の議論に費やしているという話は,その本気度を端的に物語っていた。会議時間の相当な割合を,機能追加でも売上でもなく安全に割く企業というのは,正直そう多くないだろう。
その文化がもっとも目に見える形をとったのが,2026年6月に日本を含む世界で一斉導入された,新しい年齢別アカウントだ。1つは5〜8歳向けの「Roblox Kids」である。チャット機能は初期設定で完全にオフとなっており,離れた場所から様子をうかがう保護者が一目で「安全な環境にいる」と判断できるよう,画面全体を青系の配色でまとめてあるという。安心して任せられるという印象を,配色というレベルにまで落とし込んでいるわけだ。細かいところではあるが,こうした設計思想の一貫性は,聞いていてなかなか唸らされる部分でもあった。
もう1つが9〜15歳向けの「Roblox Select」だ。こちらはチャットこそ使えるものの,年齢の近いユーザー同士に限って会話が成立する設計になっている。年齢差のある相手との不用意な接触を,個々の判断に委ねるのではなく,仕組みそのもので断つという考え方だ。子どもの側のリテラシーに期待しすぎない,という点で理にかなったアプローチといえる。
こうしたアカウントの土台を支えているのが,コンテンツに対する3段階の審査だ。開発者本人の確認から始まり,AIによるリアルタイムのシーン評価,そして審査を経たうえでの公開という流れで,人の目とAIを組み合わせて多層的にリスクを削ぐ構えになっている。さらに,保護者がデフォルトの制限を個別に解除して特定のゲームだけを承認できる機能や,管理権限を16歳まで延長できるペアレンタルコントロールの拡充など,「一律に縛る」のではなく「家庭ごとに調整できる」方向での設計が目立った。安全と自由という,本来なら相反しがちな2つを,設定の粒度でなんとか両立させようとしている印象だ。
そして,これらすべてを機能させる大前提となるのが,年齢そのものの確認である。ここでロブロックスが持ち出したのが,顔認証による年齢推定であり,同社はこれを「世界初」の取り組みと位置づけている。
顔をカメラにかざして年齢を推定する――と聞けば,真っ先に気になるのはプライバシーだろう。この点について加藤氏は,撮影された画像データは認証が済んだ瞬間に即時消去される仕組みだと説明した。そもそもデータを保持しないことを前提にした設計というわけだ。
さらに,家族向けの体験型空間「Family Zone」も登場。子どもが操作を教えつつ親子でプレイし,ペアレンタルコントロールの設定などを通じて,家庭内で安全なデジタル習慣を共に築ける設計になっている。
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もっとも,その仕組みが厳密にどう担保されているのかを外部から検証するのは難しく,このあたりは同社の説明に基づく情報として受け止めておきたい。
制度面では,国際年齢レーティング連合(IARC:International Age Rating Coalition)への移行も予定されており,開始は2026年後半の計画とのこと。独自基準から国際標準のレーティングへと,軸足を移していく流れにある。
こうした「守り」の話と,ロブロックスがもともと掲げる「学び」の話は地続きだ。同社によれば,ロブロックスの開発者の83%はコードの経験なしに制作へこぎつけ,89%は自らの作品をポートフォリオとして活用しているのだという。遊びの延長で作ったものが,そのままキャリアの入口になっている。
冒頭で触れたSTEAM教育のビジョンを思い返せば,安全対策と教育的側面は表裏の関係にあることがみえてくる。子どもを危険から遠ざけるだけでなく,安心して長く関わり続けられる環境を整えることで,その先にある学びや創作へとつなげるわけだ。
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ビジネスの側面にも触れておこう。ロブロックスの収益の核にあるのは,ゲーム内通貨「Robux」を通じたアバターアイテムの取引で,そこから同社が手数料を得る構造になっている。稼ぎ頭となる上位1000人のクリエイターの平均年間獲得額は,2億円以上にのぼるそうだ。
さらに広告も独特で,バナーをクリックさせる従来型ではなく,3Dアバターが仮想空間の中で広告そのものを体験する「没入型広告」を展開している。映画の公開前プレビューなどに活用されているそうで,広告すら“遊びの中の体験”に溶かし込んでしまう発想は,いかにもこのプラットフォームらしい。
ラウンドテーブルでは,日本企業の成功事例紹介にも時間が割かれた。鍵を握るのは自動翻訳機能で,翻訳をあらかじめ手配せずとも,コンテンツが即座にグローバル展開できる点が,日本発IPと相性のよい理由の1つに挙げられている。
象徴的なのがタカラトミーの「ベイブレード」をもとにしたゲームだ。これは累計1億5400万回プレイされ,そのアクセスの実に98%が海外からのものだったという。しかもデジタル上のヒットがリアルの玩具売上とも相関していたとのことで,ロブロックス内の盛り上がりが物理的な商品にまで跳ね返る構図が実証されたことになる。ほかにもカルビーが「じゃがりこ」で,デジタルアイテムの展開を通じてアルファ世代との接点を築いた例などが紹介された。
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なかでも示唆的だったのが,講談社と組んで導入したというライセンスマネージャーの取り組みである。非公式な二次創作を単にBAN(利用停止)するのではなく,公式が収益を折半して還元することで,ファンと共存するエコシステムを築こうとしているという。セガ,サンリオ,バンダイといった名前も参画企業として並んでおり,「取り締まる」から「一緒に作る」という,権利者側の発想の転換がうかがえる。ここは日本の権利ビジネスの観点からも,今後ていねいに追いかけたいテーマだ。
こうして一通り話を聞き終えて浮かび上がってくるのは,ロブロックスが「子ども向けの安全な砂場」という自己像から,多世代が長い時間を過ごす巨大な経済圏へと変貌しつつある現実である。
顔認証やIARCへの移行といった,コストも摩擦も大きい一手にあえて踏み込むのは,裏を返せば,それだけ守るべきものが大きくなったということなのだろう。ロブロックスがどこへ向かうのかは引き続き注視したい。

























